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《カナダ》チョークリバー研究所における浅地中処分場プロジェクトの環境影響評価手続きのためのパブリックコメントの募集が開始

カナダ原子力安全委員会(CNSC, Canadian Nuclear Safety Commission)は、2016年5月24日、カナダ原子力研究所(CNL)が計画している「チョークリバー研究所(CRL)における浅地中処分施設プロジェクト」の環境影響評価手続きのためのパブリックコメントの募集を開始した。今回のコメント募集は、カナダ原子力研究所が作成した『プロジェクト概要書』について、プロジェクト実施予定のサイトや環境影響評価のための情報を一般から幅広く収集する目的であり、書面によるコメントの受付締め切りは2016年6月24日(1ヶ月間)である。CNSCは、コメントの募集期間終了後、環境影響評価で検討すべき事項や範囲を決定するとしている。

カナダ原子力研究所(CNL)は、カナダ原子力公社(AECL)のCANDU炉開発部門が2011年に売却された後に残された原子力研究等の業務を継承した民間企業であり、AECLとの長期契約に基づき、AECLが所有する放射性廃棄物の管理を実施する。チョークリバー研究所(CRL) 1 は、CNLに管理を託されているAECLの施設の一つであり、研究炉のほか、複数の原子力施設が存在している。

CNLの浅地中処分場プロジェクトの計画概要

図: カナダ原子力研究所(CNL)が計画している浅地中処分場の概念図

図: カナダ原子力研究所(CNL)が計画している浅地中処分場の概念図.低レベル放射性廃棄物をマウンド状に積み上げ、上部を覆土する。

カナダ原子力研究所(CNL)は、自社の活動で発生する低レベル放射性廃棄物を受け入れる浅地中処分施設(右図参照)をチョークリバー研究所(CRL)の敷地内に建設する計画である。当初は現時点で発生が見込まれている約50万m3の処分施設を建設し、最終的に100万m3に拡張する。カナダ原子力研究所は、処分施設の操業期間を2020~2070年の約50年間とし、施設閉鎖後の監視段階を2400年まで継続する計画としている。浅地中処分施設で処分する低レベル放射性廃棄物には、以下の3つの種類のものがある。

  1. カナダ原子力研究所(CNL)が過去に行った研究や廃止措置を通じて発生し、現在貯蔵されている廃棄物
  2. 既存のCNLの建屋や構造物の廃止措置、及び汚染された土地の環境修復を通じて発生する廃棄物
  3. CNLの今後の研究や商業活動、将来建設される建屋や構造物の廃止措置、サイトの最終的な閉鎖時に実施される土地の環境修復を通じて発生する廃棄物

カナダの環境影響評価プロセス

カナダにおける環境影響評価の根拠法であるカナダ環境評価法に基づくパブリックコメント募集は、計画されているプロジェクトに対して、関係する個人、団体、組織のほか、国・地方自治体のあらゆるレベルの行政当局から書面による意見を収集するプロセスである。提出された意見書は原則として、カナダ環境評価局(CEAA, Canadian Environmental Assessment Agency)のインターネットサイト(環境評価レジストリと呼ばれる)に登録・公開される。カナダ原子力研究所(CNL)が計画している浅地中処分施設プロジェクトの環境評価レジストリのURLは以下の通りである。

https://iaac-aeic.gc.ca/050/evaluations/proj/80122

またCNSCは今回のコメント募集の開始とともに、今後の環境影響評価プロセスにおいて、一般公衆やその他の関係者を支援するための参加団体の募集を開始している。この参加団体には、最大10万カナダドル(約920万円)の資金提供がなされることになっており、CNLが今後作成する環境影響評価書などのレビューや公聴会への参加するための費用に利用できるほか、評価プロセスにおいて独自の意見を提出することが期待されている。

【出典】

 

【2017年3月22日追記】

カナダ環境評価局(CEAA, Canadian Environmental Assessment Agency)は、2017年3月17日付けの公告で、カナダ原子力研究所(CNL)が計画している「チョークリバー研究所(CRL)における浅地中処分施設プロジェクト」(NSDFプロジェクト)に関して、CNLが提出したドラフト環境影響評価書(EIS)を公開するとともに、カナダ原子力安全委員会(CNSC, Canadian Nuclear Safety Commission)が60日間の期限でドラフトEISに対するパブリックコメントの募集を開始したことを明らかにした。書面でのコメント提出期限は2017年5月17日とされている。

「カナダ環境評価法」では、環境影響評価書(EIS)において、事業者が申請するプロジェクトについて、技術的・経済的に実現可能な代替手段を説明し、その環境影響も検討するよう定めている。このためCNLはドラフトEISにおいて、施設の種類、設計、立地等の5項目について、実現可能性のある代替手段とNSDFプロジェクトで採用する手段を比較・分析した結果を提示している。このうち施設の設計に関してCNLは、「工学閉じ込めマウンド」(ECM) 2 案と「地表コンクリートボールト」(AGCV) 3 案を比較することにより、ECM案が好ましい選択であることを説明している。

NSDFプロジェクトの環境影響評価プロセスの今後の予定として、パブリックコメントの募集期間の終了後、CNSCはCNLが今回提出したドラフトEISの内容が十分かどうかを検討し、必要に応じて追加情報の提出を求める。また、CNSCは、今回のパブリックコメントで寄せられた意見書の全てに回答を提示する意向である。最終的な環境影響評価書の受領後、CNSCは環境アセスメント(EA)報告書を作成する。EA報告書は、2018年1月に開催予定のEAに関する公聴会の60日前に公表される予定である。

【出典】

 

【2017年9月5日追記】

カナダ原子力安全委員会(CNSC, Canadian Nuclear Safety Commission)は2017年8月31日付けのプレスリリースにおいて、カナダ原子力研究所(CNL)が計画している「チョークリバー研究所(CRL)における浅地中処分施設(NSDF)プロジェクト」に関して、CNLが提出したドラフト環境影響評価書(EIS)の技術的評価が終了したことを公表した。CNSCは、ドラフトEISに対するパブリックコメントの募集期間に寄せられた意見を含め、記載内容に関する情報の追加要求や意見を約200項目リストアップしている。

CNLは、ドラフト環境影響評価書(EIS)に対する情報の追加要求などを反映した最終的な環境影響評価書(EIS)を2018年1月にCNSCに提出する予定である。最終的なEISの受領後、CNSCは環境アセスメント(EA)報告書を作成する。CNSCは、2018年7月に開催予定の環境アセスメントに関する公聴会の60日前までに、EA報告書を公表するとしている。

【出典】

 

【2017年11月29日追記】

カナダ環境評価局(CEAA, Canadian Environmental Assessment Agency)及びカナダ原子力研究所(CNL)は、CNLが計画している「チョークリバー研究所(CRL)における浅地中処分施設(NSDF)プロジェクト」の環境影響評価手続きのスケジュールが遅延することを公表した。CNLは現在、2017年3月に公表したドラフト環境影響評価書(EIS)に対するパブリックコメントで寄せられた意見等への対応を進めており、そのために十分な時間が必要であるとしている。なお、新しいスケジュールは今後公表するとしている。

今回の公表に先立つ2017年10月にCNLは、NSDFプロジェクトで処分する廃棄物から中レベル放射性廃棄物を除外することを公表している。2017年3月に公表されたドラフトEISでは、処分対象廃棄物に体積で約1%の中レベル放射性廃棄物が含まれるとしていた 4 。CNLは、中レベル放射性廃棄物については、処分方法が開発され承認されるまでの間、貯蔵を継続する方針に改め、これを最終環境影響評価書に反映するとしている。

【出典】

 

【2021年7月13日追記】

カナダ原子力研究所(CNL)が計画している浅地中処分施設(NSDF)プロジェクトに関しては、CNLが2021年5月に最終環境影響評価書(FEIS)を取りまとめてカナダ原子力安全委員会(CNSC)に提出し、CNSCがFEISの審査を進めていた。CNSCは、2021年7月2日付で、CNLが提出したFEISについて、受け入れ可能であると判断したことをCNLに通知した。また、CNSCは、原子力安全管理法に基づきCNLが提出しているNSDFプロジェクトの許認可申請書及び裏付け文書についても、2021年7月8日付で受け入れ可能である旨を通知した。

CNLは、自社の活動で発生する低レベル放射性廃棄物を受け入れる浅地中処分施設(NSDF)をオンタリオ州北東部に位置するチョークリバー研究所(CRL)の敷地内に建設する計画である。NSDFプロジェクトに関しては、当初CNLが2017年3月に取りまとめたドラフト環境影響評価書に対するパブリックコメントから、今回のCNSCによる最終環境影響評価書(FEIS)の受け入れ決定までに、一般公衆、先住民、州や連邦から450件を超えるコメントが寄せられていた。CNLがこれらのコメントに対応するため、NSDFプロジェクトの環境影響評価手続きは、予定よりも3年以上にわたって遅延していた。

CNSCは今後、2012年カナダ環境アセスメント法 5 に基づいて、公聴会を開催する必要があり、開催のために環境アセスメント(EA)報告書、許認可申請書の審査報告書等の作成作業を進めており、準備が整い次第、公聴会の開催日程を公表することとしている。

【出典】


  1. CRLは、首都オタワから北西に約200km、ケベック州との州境のオンタリオ州側のレンフルー郡に位置している。[]
  2. Engineered Containment Mound[]
  3. Above-ground Concrete Vaults[]
  4. パブリックコメントで寄せられた意見等の中には、NSDFプロジェクトでの中レベル放射性廃棄物の処分に懸念を示すものが含まれていた。例えば、環境気候変動省(ECCC)は、オンタリオ・パワージェネレーション(OPG)社が低・中レベル放射性廃棄物の地層処分場プロジェクトを進めていることに言及し、中レベル放射性廃棄物の処分方法として浅地中処分が最も適していることの正当化が必要であると指摘している。[]
  5. カナダでは2019年6月に影響評価法が制定され、環境影響評価手続きを担当する連邦政府の組織がCEAAからIAACに変更された。ただし、NSDFプロジェクトは同法の制定前に手続きが開始されたため、2012年カナダ環境アセスメント法に基づき手続きが進められることとなっている[]

(post by sahara.satoshi , last modified: 2023-12-27 )