米国のエネルギー省(DOE)は、2015年12月23日付けの連邦官報において、高レベル放射性廃棄物の貯蔵施設及び処分施設の立地に向け、同意に基づくサイト選定プロセスの実施に関する意見募集の開始を告示した。DOEは、同意に基づくサイト選定プロセスでは、「統合放射性廃棄物管理システム」 を構成する施設の立地に関心を示す自治体、州などと協働するとしており、今回告示した意見募集に加え、同意に基づくプロセスの構築について議論するため、自治体などと一連のパブリックミーティングを開催する意向も示している。
今回の意見募集の案内では、同意に基づくサイト選定プロセスに関して、公正で有効なプロセスを設計する上で重要な検討事項について意見を求めるとして、以下の5つの質問が示されている。
- DOEは、どのようにしたらサイト選定プロセスの公正さを確保できるか。
同意に基づくサイト選定では、現在及び将来における費用、便益、リスク及び責任の公正な配分を目指すが、どのようにすればサイト選定プロセスで公正さが確保できると思うか。 - サイト選定プロセスを設計する上で、DOEはどのようなモデル、経験を活用すべきか。
サイト選定では、先行事例や進行中の事例から学ぶ必要があるが、サイト選定プロセスの設計において、どのような経験やモデルを考慮、導入すべきと思うか。 - サイト選定プロセスには誰が関与すべきか。また、それぞれの役割は何か。
DOEは、様々な自治体等がサイト選定について学ぶことや参加を希望していると考えているが、サイト選定プロセスへの参加は重要な責任を伴うものとなる。誰がサイト選定に参加すべきであり、その参加者の役割はどうすべきか。 - どのような情報や資源が参加を促すものになると思うか。
DOEは、サイト選定に全面的かつ効果的に関わるに当たって、十分な情報と資源の利用が必要と考えているが、サイト選定プロセスについて最大限に学び、参加を可能にするため、どのような情報や資源が最も重要と考えるか。 - 他に何を考慮すべきか。
以上の質問は、同意に基づくサイト選定プロセスの設計に係る議論の出発点になるが、関連する質問や問題点、アイデアなど、その他に重要と思うものがあるか。
今回の連邦官報で告示された書面による意見募集は、2016年6月15日まで行われる。書面による意見とパブリックミーティングでの意見とを得た上で、その後、同意に基づくサイト選定の段階的なプロセスについての初期段階の案を策定することととしている。サイト選定に関するドラフト報告書は2016年夏に公表し、意見募集を行う予定としている。
なお、同意に基づくサイト選定アプローチの構築に向けた取組を開始し、連邦官報により意見募集を行うことなどは、2015年12月21日に、DOEのウェブサイトにおいて公表されていた。DOEのウェブサイトでは、同意に基づくサイト選定イニシアティブのウェブサイトが設けられ、使用済燃料等の貯蔵や処分を巡る現状と課題、統合放射性廃棄物管理システムとDOE戦略 、同意に基づくサイト選定プロセスの構築などの今後に向けた情報が掲載されている。同意に基づくサイト選定プロセスについては、下の図に示されたような形で、段階的に構築する計画が示されている。
なお、DOEの同意に基づくサイト選定イニシアティブのウェブサイトでは、キックオフミーティングとして、第1回目のパブリックミーティングを2016年1月20日にワシントンD.C.で開催することが示されている。
【出典】
- エネルギー省(DOE)、放射性廃棄物の貯蔵・処分施設の同意に基づくサイト選定プロセスの設計のための意見募集の案内(連邦官報、2015年12月23日)
https://federalregister.gov/a/2015-32346 - エネルギー省(DOE)原子力局、同意に基づくサイト選定イニシアティブのウェブサイト
http://www.energy.gov/ne/consent-based-siting
【2016年2月5日追記】
米国のエネルギー省(DOE)は、2016年1月20日に、同意に基づくサイト選定イニシアティブのキックオフミーティングをワシントンD.C.で開催した。キックオフミーティングには、各方面のステークホルダーを代表する120名以上が参加したほか、オンラインで200名が参加した。キックオフミーティングでは、DOEの科学・エネルギー担当次官の基調講演に続いて、DOE原子力局(NE)の3名によるパネルディスカッション、及び質疑応答が行われた。また、質疑応答の終了後には、約1時間のポスターセッションが開催され、約100名が参加した。
パネルディスカッションでは、2015年12月23日付けの連邦官報に示されていたとおり、同意に基づくサイト選定イニシアティブの重要性と進め方、サイト選定基準、輸送関連、超深孔処分なども含めた技術分野の活動状況、同意に基づくサイト選定イニシアティブにおける公衆参加について、DOEから説明が行われた。また、質疑応答の時間も約1時間が確保され、会場参加者及びオンライン参加者からの質問が集められた。質問は、同意に基づくサイト選定、輸送、貯蔵及び処分、その他に4分類され、質問内容に応じてパネルディスカッションのパネリストが回答を行った。質疑応答の時間内に約30件の質問への回答が行われたが、時間の関係で取り上げられなかった質問については、DOEが回答を作成中としている。
同意に基づくサイト選定イニシアティブの今後のパブリックミーティングについては、2016年3月にイリノイ州シカゴ、2016年4月にはジョージア州アトランタで開催する予定であり、その後は調整中とされている。
【出典】
- エネルギー省(DOE)原子力局(NE)、「活動及びイベント―同意に基づくサイト選定のキックオフミーティング」のページ
http://www.energy.gov/ne/activities-and-events - エネルギー省(DOE)原子力局(NE)、同意に基づくサイト選定のキックオフミーティングのビデオ(第1部:基調講演、パネルディスカッション)
https://www.youtube.com/watch?v=v0_Z_mWUChY&feature=youtu.be - エネルギー省(DOE)原子力局(NE)、同意に基づくサイト選定のキックオフミーティングのビデオ(第2部:質疑応答)
https://www.youtube.com/watch?v=zGG7k2CvH5k&feature=youtu.be - エネルギー省(DOE)原子力局(NE)、同意に基づくサイト選定のキックオフミーティングのポスターセッション掲示ポスターのページ
http://www.energy.gov/ne/downloads/meeting-materials-consent-based-siting-initiative-kick-meeting
【2016年2月19日追記】
米国のエネルギー省(DOE)は、2016年2月18日に、同意に基づくサイト選定イニシアティブに係るパブリックミーティングの今後の開催予定などを公表した。パブリックミーティングは、2016年7月にかけて合計8回開催される予定であり、最初の2回については具体的な日時や議事次第(案)も公表され、参加受付が開始されている。なお、DOEは、2016年1月20日に、ワシントンD.C.でキックオフミーティングを開催している。
今回公表された今後のパブリックミーティングの開催予定は下表の通りである。DOEは、開催地の選定は全米からの参加が可能となるよう行ったが、会場参加ができない場合にはオンラインでの参加も可能としている。
回 | 開催日 | 開催地(州) | 議事等 |
---|---|---|---|
1 |
2016年3月29日 |
シカゴ(イリノイ州) |
|
2 |
2016年4月11日 |
アトランタ(ジョージア州) |
|
3~8 |
~2016年7月 |
ボイジー(アイダホ州) |
未公表 |
なお、第1回のシカゴ及び第2回のアトランタでのパブリックミーティングの議事次第(案)では、DOEからの説明及びパネルディスカッションの後は、ワシントンD.C.で開催されたキックオフミーティングでの質疑応答に代わり、小グループでの議論(Facilitated Small Group Discussions)の時間が設けられている。
【出典】
- エネルギー省(DOE)原子力局(NE)ニュースリリース(2016年2月18日)
http://www.energy.gov/ne/articles/energy-department-announces-locations-consent-based-siting-initiative-s-eight-public-0 - エネルギー省(DOE)原子力局、同意に基づくサイト選定イニシアティブのウェブサイト
http://www.energy.gov/ne/consent-based-siting - エネルギー省(DOE)原子力局(NE)、同意に基づくサイト選定のパブリックミーティングの資料掲載ページ
- エネルギー省(DOE)原子力局(NE)、同意に基づくサイト選定のキックオフミーティングの参加申込ページ
【2016年3月23日追記(2016年3月29日開催日更新)】
米国のエネルギー省(DOE)は、2016年3月22日付けの連邦官報において、同意に基づくサイト選定イニシアティブに係る意見募集の期間を延長し、2016年7月31日までとすることを告示した。
なお、意見募集に並行して開催されるパブリックミーティングについては、最新の開催予定等は以下のとおりとなっている。
回 | 開催日 | 開催地(州) | 議事等 |
---|---|---|---|
1 |
2016年3月29日 |
シカゴ(イリノイ州) |
|
2 |
2016年4月11日 |
アトランタ(ジョージア州) |
|
3 |
2016年4月26日 |
サクラメント(カリフォルニア州) |
|
4 |
2016年5月24日 |
デンバー(コロラド州) |
- |
5 |
2016年6月2日 |
ボストン(マサチューセッツ州) |
- |
6 |
2016年6月23日 |
テンピ(アリゾナ州) |
- |
7 |
2016年7月14日 |
ボイジー(アイダホ州) |
- |
8 |
2016年7月21日 |
ミネアポリス(ミネソタ州) |
- |
【出典】
- エネルギー省(DOE)、コメント期間の延長:放射性廃棄物の貯蔵・処分施設の同意に基づくサイト選定プロセスの設計のための意見募集の案内(連邦官報、2016年3月22日)
https://www.federalregister.gov/articles/2016/03/22/2016-05797/extension-of-comment-period-invitation-for-public-comment-to-inform-the-design-of-a-consent-based - エネルギー省(DOE)原子力局、同意に基づくサイト選定イニシアティブのウェブサイト
http://www.energy.gov/ne/consent-based-siting - エネルギー省(DOE)原子力局(NE)、同意に基づくサイト選定のパブリックミーティングの資料掲載ページ
- エネルギー省(DOE)原子力局(NE)、原子力規制委員会(NRC)規制情報会議(RIC)での発表資料(2016年3月10日)
https://ric.nrc-gateway.gov/docs/abstracts/furstenaur-th33-r1-hv.pdf
【2016年7月27日追記】
米国のエネルギー省(DOE)は、高レベル放射性廃棄物の貯蔵施設及び処分施設の立地に向けた同意に基づくサイト選定イニシアティブの一環として、プロセスの構築について議論するためのパブリックミーティングを開催しており、2016年7月21日にミネソタ州ミネアポリスでの開催により、全米8カ所で予定されていたパブリックミーティングをすべて終了した。
DOEの同意に基づく立地選定プロセスのウェブサイトでは、8回にわたるパブリックミーティング、及びパブリックミーティングに先立って開催されたキックオフミーティングについて、ミーティングで提示された資料の他、質疑応答を含めたミーティングの議事録、ビデオ等が掲載されている。各々のミーティングの資料、ビデオ等は、下表に示すリンクから確認可能である。
なお、同意に基づくサイト選定プロセスに関するパブリックコメントの募集は、2016年7月31日まで行われている。DOEは、提出されたパブリックコメント、及び8カ所のパブリックミーティングで示された意見を踏まえ、サイト選定に関するドラフト報告書を2016年後半に公表し、意見募集を行う予定としている。
【出典】
- エネルギー省(DOE)原子力局、同意に基づくサイト選定イニシアティブのウェブサイト
http://www.energy.gov/ne/consent-based-siting - エネルギー省(DOE)原子力局(NE)、同意に基づくサイト選定の活動とイベントのページ
http://www.energy.gov/ne/activities-and-events
(post by inagaki.yusuke , last modified: 2023-10-11 )