米国の放射性廃棄物技術審査委員会(NWTRB)は、2015年11月20日に、「高レベル放射性廃棄物及び使用済燃料の地層処分場のサイト選定プロセスの設計」と題する報告書(以下「NWTRB報告書」という)を公表した。NWTRBは、1987年放射性廃棄物政策修正法に基づいて、エネルギー長官が行った高レベル放射性廃棄物処分に係る活動について、技術的及び科学的有効性を評価することを職務として設置された独立の評価組織であり、本報告書も連邦議会及びエネルギー長官に宛てたものである。
今回のNWTRB報告書の目的は、米国及び他国における高レベル放射性廃棄物の地層処分場の立地に向けた取組に関する情報を政策決定者に提供することとしており、NWTRBは日本を含む10カ国での過去半世紀に行われた24のサイト選定活動事例の比較検証などを行った上で、以下のような4つの勧告を行っている。
- 1984年にエネルギー省(DOE)が策定した「放射性廃棄物処分場の候補サイトの予備的スクリーニングに関する一般指針」(10 CFR Part 960、以下「1984年一般指針」という)は、将来のサイト選定プロセスを構成する規則の策定においても確固とした基盤として採用すべきである。DOEが2001年に策定したユッカマウンテン・サイト適合性指針(10 CFR Part 963)のように、技術的に複雑な性能評価に依拠するようなサイト適合性規則については、サイト選定の初期段階での確固とした基盤を提供するものとはならない。
- 1984年一般指針は、岩塩、結晶質岩及び粘土層/頁岩(シェール)の3岩種における高レベル放射性廃棄物及び使用済燃料の処分に係る地層固有の処分概念(関連する人工バリアを含む)に適用できるよう、母岩固有の基準で補完されるべきである。
- 新たなサイト適合性基準の策定においては、可能な限り、基準の適用に係る実施主体の裁量を許すような曖昧さを最小化し、プロセスの客観性、及び結果に対する公衆の信頼性を確保しやすいようにすべきである。仮にプロセスの途中で基準の変更が必要となった場合、実施主体は、透明で意味ある参加型プロセスを用いるべきである。
- 新たなサイト選定プロセスにおいては、最終的なサイト選定を詳細な地下の特性調査の完了後とし、1982年放射性廃棄物政策法での要件を維持すべきである。
なお、放射性廃棄物技術審査委員会(NWTRB)は、新たなサイト選定活動が、米国での高レベル放射性廃棄物の第1処分場または第2処分場の何れに適用されるかは政策決定者が決定すべきものであり、NWTRBは、その技術的な職務に沿って、いずれの立場も取っていないとしている。
【出典】
- 放射性廃棄物技術審査委員会(NWTRB)プレスリリース(2015年11月20日)
http://www.nwtrb.gov/press/prl201.pdf - 放射性廃棄物技術審査委員会(NWTRB)、「高レベル放射性廃棄物及び使用済燃料の地層処分場のサイト選定プロセスの設計―概観・サマリー」(2015年11月)
http://www.nwtrb.gov/reports/siting_report_summary.pdf - 放射性廃棄物技術審査委員会(NWTRB)、「高レベル放射性廃棄物及び使用済燃料の地層処分場のサイト選定プロセスの設計―詳細分析」(2015年11月)
http://www.nwtrb.gov/reports/siting_report_analysis.pdf
(post by inagaki.yusuke , last modified: 2023-10-11 )