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英国政府が過去の原子力債務の管理に関する法案の草案を発表-原子力廃止措置機関(NDA)設立の法制度整備に向けて

2003年6月24日、英国政府は、公的機関の商業用原子力債務の処理を目的とした原子力廃止措置機関(NDA)の設立を規定する「原子力サイトおよび放射性物質法案」の草案を発表した。同草案の発表は、2002年11月の議会開会時において1年間の会期内の実施が予告されていたものであり、政府としての情報公開および透明性についての公約および利害関係者との約束を履行したものである。今回の発表では、NDAの設立に関連する文書類も同時に公開され、同草案については、2003年9月16日を期限としてコメントの募集が行われている。

通称「原子力遺産」とも呼ばれている商業用原子力債務の管理に責任を有する新しい組織の設立については、2001年9月に発表されたコマンドペーパー「放射性廃棄物の安全な管理」の中で原子力債務管理機関(LMA)という名称で、検討オプションの1つとして言及されていた。その後、2001年11月28日に貿易産業相が下院に対して声明を発表し、LMA設立に関する政府の意向を表明した。2002年7月4日にはコマンドペーパー「原子力遺産の管理-実行のための戦略」が発表され、新しい管理計画を実施するための政府提案の詳細が公表され、2002年10月18日までの期間、コメントの募集が行われていた。今回の発表はこの流れを受けたもので、組織の名称をNDAに変更し、設立に向けた法整備への第一歩となっている。

NDAが最初に対象とする商業用原子力債務として、以下のものが挙げられている。

  • 英国原子力公社(UKAEA)と英国核燃料公社(BNFL)によって現在管理・運営されている、1940~60年代に政府の研究計画を支援するために開発された原子力サイトおよび施設、またそれらの計画によって発生した放射性廃棄物、放射性物質、使用済燃料
  • 現在、政府に代わってBNFLが管理・運営している、1960~70年代に設計および建設されたマグノックス炉、マグノックス燃料の再処理のために使用されるプラントや施設および関連する全ての放射性廃棄物および放射性物質

これらの歴史的債務は英国全体の原子力債務の約85%を占め、割引なしの総費用は、2002年3月末の段階で479億ポンド(約8兆9,094億円、1ポンド=186円で換算)と見積もられている。

NDAは、法律に基づくNDPB(政府外公共機関)として、以下の点について政府に代わって機能することが求められている。

  • 原子力債務の戦略的なプログラム管理者として、サイト管理方法を決定する。
  • 最も効果的かつ安全な方法で債務を処理するために、NDAはサイトの許認可取得者(UKAEAおよびBNFL)および、安全、保安、環境規制当局と協力して作業を進める。
  • 競争原理の導入と促進によって、英国内の原子力債務管理および処理についての市場を拡大させる。
  • 管理効率を確保するための枠組みを構築する。
  • 英国の公的機関の商業用原子力債務の管理に対する公衆の信頼感を高める。

今回の草案では、NDAの法的枠組みの確立の他に、最高の技術で最良の結果を得るための競争原理の導入と促進、NDAへの資産と債務の移転と、それに伴うBNFLの再編、処理計画を進めるために必要な権限のNDAへの付与、第三者原子力損害賠償責任に関するパリおよびブラッセル条約に対する変更の履行、1993年放射性物質法の修正による、放射性物質の排出に関する許認可移転プロセスの迅速化等が盛り込まれている。なお、BNFL、UKAEAなどの対象となる機関は、今回の草案の発表について一様に歓迎の意向を示している。

同法案の議会への提出は2003年/2004年の会期中になると予想されている。今後の予定では、NDAの設立は2004年の秋となり、2005年4月には本格的な活動が開始される見通しである。

【出典】

  • 貿易産業省(DTI)ウェブサイトの6/24付けの新着情報 (http://www.gnn.gov.uk/gnn/national.nsf/TI/0980487C8BF0FD3E80256D4F00332B2D?opendocument)
  • 原子力サイトおよび放射性物質法案の草案 (http://www.dti.gov.uk/nuclearcleanup/pdfs/print-05publication.pdf)
  • DTIの過去の原子力債務の管理に関するウェブサイト (http://www.dti.gov.uk/nuclearcleanup/index.htm)
  • BNFLウェブサイトの6/24付けの新着情報 (http://www.bnfl.com/website.nsf)

(post by f-yamada , last modified: 2012-07-31 )