ドイツの高レベル放射性廃棄物処分委員会(以下「処分委員会」という)は、2014年5月22日の正式発足以降 、2015年5月18日までの約1年間に、合計12回の会合を開催している。処分委員会では、1年目を情報取得フェーズ、2年目を実施フェーズと位置づけて活動を行ってきており1、2015年4月及び5月に行われた第11、12回会合において、2016年6月を予定している最終報告書の取りまとめに向け、3つの常設作業グループに分かれて検討している事項のうち、今後の処分オプションの検討方針及び公衆参加に関する方針について決議を行った。
2015年4月20日に開催された第11回会合では、今後の処分オプションに関する検討方針として、すでに知見のある「岩塩、粘土層、結晶質岩への坑道内処分」を今後の処分委員会において詳細に検討する処分オプションとすることを決議した。この決議は、処分委員会の下に設置された常設作業グループの1つである、作業グループ3「社会・科学技術上の意思決定基準ならびに欠陥是正措置に関する基準」の提案に基づくものである。また、処分委員会は、作業グループ3に対して、この処分オプションについてさらに検討を進めるよう指示した。
2015年5月18日に開催された第12回会合では、作業グループ1「社会対話、公衆参加、透明性」の検討結果として、処分委員会による連邦政府に対する提案の取りまとめに向けた活動への公衆参加の形式・タイミングに関する提案を決議した。この提案には、公衆参加の形式として、市民対話集会、ワークショップの開催、ドキュメンタリー映像の制作、書面・オンラインでの意見表明、最終報告書の採択会合への招聘などが含まれている。このうち、2015年6月20日に開催する市民対話集会では、参加者がテーマ別のグループに分かれて議論するフォーカスグループ・セッションや、参加者がテーブルを巡回して関心のある議論に参加するワールドカフェ形式のセッションが企画されている2。市民対話集会への参加者は200名程度を公募するとしており、議論の結果は処分委員会の最終報告書の取りまとめにおいて考慮する予定である。
なお、処分委員会は、2015年3月2日に行われた第10回会合において、処分委員会事務局が提示した最終報告書の構成案も承認している。その上で処分委員会は全作業グループに対し、この構成案に従いさらに議論を進めるよう指示した。処分委員会は今後、報告書案の改訂状況を随時公開していくとしている。
【出典】
- 高レベル放射性廃棄物処分委員会、2015年4月20日付プレスリリース、
http://www.bundestag.de/blob/371088/48fc4057c6b7afb7bdc39f9312c4a11f/pressemitteilung_7-data.pdf - 高レベル放射性廃棄物処分委員会、2015年5月20日付プレスリリース、
http://www.bundestag.de/blob/375322/0a2fae1e570852cd9b04d4c458f017de/pressemitteilung_12-data.pdf - 高レベル放射性廃棄物処分委員会、2015年4月20日委員会会合決議文書(K-Drs.102neu)、
http://www.bundestag.de/blob/372492/863f065c69ad047b374103a1bdd4e66a/drs_102-neu-data.pdf - 高レベル放射性廃棄物処分委員会、2015年5月15日付文書(K-Drs.107a)、「委員会報告書作成における公衆参加コンセプト」、
http://www.bundestag.de/blob/374922/c83fa290a165300394367305c40f6ad6/drs_107-a-data.pdf - 高レベル放射性廃棄物処分委員会、2015年5月15日付文書(K-Drs.107b)、「2015年6月20日開催の市民対話 サイト選定の構想」、
http://www.bundestag.de/blob/374924/3e31e25e299ead1856ca049431ad4ef5/drs_107-b-data.pdf - 発熱性放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定に関する法律(サイト選定法)
【2015年6月26日追記】
高レベル放射性廃棄物処分委員会(以下「処分委員会」という)は、2015年6月20日に、ベルリンで市民対話集会を同日に開催し、事前に申し込みを行った200名以上の市民が参加したことを公表した。市民対話集会では、処分委員会から委員会の活動等に関する情報提供が行われたほか、フォーカスグループやワールドカフェ形式による議論が行われたとしている。
フォーカスグループのセッションは、以下の5つのテーマ別のグループに分かれて実施された。
- 社会的合意に基づくサイト選定のあり方
- 公衆がサイト選定手続きに及ぼす影響
- 地層処分の代替オプション
- 発生者負担の原則に則った放射性廃棄物管理費用の適正な負担
- 連邦政府による処分場建設・操業・管理のための新たな体制構築の是非
フォーカスグループのセッションでは、サイト選定手続きへの公衆参加について、より幅広く、早い段階からの参加が望ましいとする意見や、公衆にわかりやすい情報提供を行うとともに、公衆が参加しやすい環境の整備が必要との意見が出された。また、定置した廃棄体の回収可能性を維持すべきとの意見のほか、現在、原子力発電事業者が引当金で個別に確保している放射性廃棄物管理資金について、新たに基金か財団を設置して管理すべきという意見なども出された。
一方、ワールドカフェ形式のセッションでは、処分委員会が第12回会合で決議した、処分委員会活動への公衆参加の形式・タイミングに関する方針について、参加者が話し合いを行った。参加者は処分委員会の方針について概ね肯定的であったが、過去のサイト選定手続きの分析が必要といった意見も出された。
【出典】
- 高レベル放射性廃棄物処分委員会、2015年6月20日
http://www.bundestag.de/blob/380092/29fedcbc28c68bd945814872bf1b4f25/pressemitteilung_13-data.pdf
【2015年7月7日追記】
ドイツの高レベル放射性廃棄物処分委員会(以下「処分委員会」という)は、2015年7月3日及び4日に、第13、14回会合を開催した。処分委員会は、最終報告書の採択期限を半年間延長して2016年6月30日とすることを正式に決議したほか、最終報告書の作成に向けたスケジュールを決定した。
2013年7月に制定された「発熱性放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定に関する法律」(以下「サイト選定法」という)では、サイト選定法に基づいて設置する処分委員会の最終報告書の採択期限を2015年12月31日としているが、この期限は委員の3分の2以上の賛成により、1度に限り6カ月間延長できることが規定されている。
処分委員会は当初、2013年中の発足が見込まれていたが、委員選定の難航などにより設置が遅れて2014年5月22日に正式に発足した 。このため、活動期間の確保を目的として期限延長が検討されていた。
また、処分委員会の最終報告書の作成スケジュールについては、次のように決定した。
- 2016年1月初頭までにドラフト報告書を作成
- ドラフト報告書について公衆協議を行い、必要に応じて修正を実施
- 2016年6月30日までに最終報告書を採択して連邦政府・連邦議会に提出
【出典】
- 高レベル放射性廃棄物処分委員会、2015年7月6日
http://www.bundestag.de/endlager/mediathek/textarchiv/kw27_pa_endlagerkommission2/381078 - 高レベル放射性廃棄物処分委員会、最終報告書の採択期限延長決議案、2015年6月30日
http://www.bundestag.de/blob/380954/5c2c6dc4ef41b13354ffeb2ca2bd762b/drs_110-data.pdf - 発熱性放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定に関する法律(サイト選定法)
- 発熱性放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定に関する法律(サイト選定法)では、2015年末までに最終報告書を提出することが規定されているが、1回に限り半年間(すなわち2016年6月末まで)の延長が可能とされている。委員会発足が遅れたことなどから、最終報告書の提出期限は半年間延長される方針が示されている。 [↩]
- フォーカスグループによる議論では、モデレータの調整・進行のもと、少人数の参加者により特定のテーマについて議論が行われる。ワールドカフェ形式は、会議での討論の一方式であり、複数のテーブルが用意され、テーブルホスト以外の参加者が各テーブルを移動しながら議論を繰り返し、最後に各テーブルホストが自分のテーブルに置ける議論を取りまとめ、参加者全員に対して報告する。 [↩]
(post by tokushima.hideyuki , last modified: 2023-10-11 )