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英国政府が「地域の代表のための作業グループ」(CRWG)の活動状況を公表

地層処分施設のサイト選定プロセスの初期活動を進めている英国政府は、地域との協働プロセスの策定に関する進捗について、「地域の代表のための作業グループ」(Community Representation Working Group、CRWG)の活動状況に関する情報を公表した。

英国における地層処分施設のサイト選定プロセスは、エネルギー・気候変動省(DECC)が2014年7月24日に公表した白書『地層処分の実施-高レベル放射性廃棄物等の長期管理に向けた枠組み』(以下「2014年白書」という)によって見直され、次の2つの段階(期間)で構成されている。

  • 英国政府及び実施主体による初期活動(2年間、2014年~2016年)
  • 関心を表明した地域と実施主体との正式な協議(15~20年間、2016年以降)

現在、2年間の初期活動において、①英国全土(スコットランドを除く)を対象とした地質学的スクリーニングの実施、②2008年計画法の改正、ならびに、③地域との協働プロセスの策定が進められている。このうち、③地域との協働プロセスの策定については、英国政府が設置するCRWGの主導で検討が進められている。

 

■地域の代表のための作業グループ(CRWG)設置の目的

2014年白書に基づくCRWGの主要な活動は次のとおりである。これらの活動は、専門家、ステークホルダー等の関与による確かで根拠のある情報に基づくものとなる。

  1. 地域の代表あるいは地域の意思表示に関する定義

    地層処分施設の開発に関心を表明する地域における自治体の役割や責任などを定義し、自治体を含む地域を関与させる方法を含めて、地域の代表のための効果的なプロセスを定義する。

  1. 住民の支持を調査・確認(test)する方法の策定に向けたプロセスの開発

    住民の支持を調査・確認する方法について、その適切な実施時期や方法を明確にする。

  1. 地域への投資

    投資時期やその管理方法を含めた、地域への投資のための資金拠出オプションを開発する(地域の地理的境界内での投資の効果や、資金活用の申請に係る評価基準の作成を含む)。

■地域の代表のための作業グループ(CRWG)の構成メンバー

DECCからの代表者を議長とするCRWGは、地層処分の実施主体である原子力廃止措置機関(NDA)の放射性廃棄物管理会社(RWM)、関係省庁、地方政府、学術界など、英国政府による地域との協働プロセスの策定を支援できる能力や専門性を有するメンバーで構成されている。

CRWGの構成メンバーは次表のとおりである。なお、英国政府の諮問機関である放射性廃棄物管理委員会(CoRWM)もオブザーバーとして参加している。

議長 トム・ウィントゥル(DECC)
メンバー ホルムフリダー・ビャルナドティル(スウェーデン原子力廃棄物評議会)
メンバー アンドリュー・ブロウワーズ(英国国立オープンユニバーシティ‎社会科学名誉教授)
メンバー リサ・レビー(広報・ステークホルダー関与の分野の専門家)
メンバー キルスティ・ゴーギャン(気候・エネルギー分野のコミュニケーションの専門家)
メンバー フィル・リチャードソン(英国の地質学会(The Geological Society)会員)
メンバー フィル・マシュー(原子力遺産諮問フォーラム(NuLeAF))
メンバー ニック・ピジョン(カーディフ大学環境心理学部教授)
メンバー フィル・ストライド(テムズ川トンネル事業長)
メンバー チェリー・ツィード(RWMの主席科学アドバイザー)
メンバー ナタリン・アラ(RWMの地層処分施設立地部長)
メンバー ジュリアン・ウェイン(地方自治体における再生・住宅分野の専門家)
メンバー ジュディス・アーミット(ローカル・パートナーシップス社取締役)
メンバー 英国財務省からの代表者
メンバー コミュニティ・地方自治省からの代表者

 

地域の代表のための作業グループ(CRWG)の活動状況

CRWGは2015年3月12日に第1回会合を、2015年4月16日に第2回会合を開催している。今後、CRWGは約6週間に1度のペースで会合を開く予定であり、次回の第3回会合は2015年6月11日に予定されている。

また、CRWGの活動は、ローカル・パートナーシップス社(Local Partnerships Ltd、LP社)の支援を受けており、実例や関連情報等の収集、ステークホルダーの関与、検討資料の作成などの実務面を担っている。LP社は、英国財務省と地方自治体協議会(LGA)が共同出資して設立された会社であり、公共部門の業務効率化や公共サービス等の向上を目的とした支援活動や助言を提供する専門組織である。

 

【出典】

【2015年7月3日追記】

英国政府は、2015年7月1日に、地域との協働プロセスの策定に向け、Call for Evidence(根拠に基づく情報提供の募集)を開始し、情報提供を2015年9月4日まで受け付けることを公表した。

今回の情報募集は、「地域の代表のための作業グループ」(CRWG)の主要活動である、①地域の代表あるいは地域の意思表示に関する定義、②住民の支持を調査・確認(test)する方法の策定に向けたプロセスの開発、③地域への投資に関して、特に情報を収集することを目的としている。

英国政府は、原子力産業や放射性廃棄物プロジェクト関係者に限らず、学術界、産業界、大規模社会基盤プロジェクト関係者、自治体等から広く情報提供を求めるとしている。また、英国政府は、上記の①に関する情報提供について、地域において何らかの問題への対応に迫られた際の代表の決め方、地域が何らかの意思表示を行う必要があった事例等に関する具体的な経験情報の提供を要望している。

【出典】

【2016年3月7日追記】

英国政府は、2016年3月4日に、地域との協働プロセスの策定に向けたCall for Evidence(根拠に基づく情報提供の募集)への回答状況を取りまとめた報告書を公表した。情報提供の募集は2015年7月1日から2015年9月4日まで行われていた。英国政府は、今回提出された情報に基づいて、地域の代表あるいは地域の意思表示に関する課題について検討していくとしている。英国政府が今後策定する地域との協働プロセス案についての公開協議は、2016年夏に行われる見込みである。

今回の情報提供の募集に対しては54件の回答があり、その回答者の内訳は以下の表の通りであった。

回答者 回答件数 割合(%)
自治体 25 46
個人 17 32
その他(電力会社、地域コミュニティグループ、代表団体等) 10 18
学術界、研究機関 2 4
合 計 54 100

また、英国政府は今回提出された回答の主なポイントとして、以下を挙げている。

  • 英国政府がサイト選定に関する新たなプロセスを設計する場合には、他の事業における最良事例を参考にすべきである。
  • 過去に実施された地層処分場のサイト選定プロセスから得られた教訓を活かすべきである。
  • 地域の代表、あるいは地域の意思表示に関する定義を行うことは非常に難しい課題である。
  • 海外の類似事例から得られた教訓を活かすべきである。

【出典】

(post by emori.minoru , last modified: 2018-06-11 )