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《フランス》長寿命低レベル放射性廃棄物処分の候補サイトとして2つの自治体を選定

放射性廃棄物管理機関(ANDRA)の2009年6月24日付のプレスリリースによると、フランス政府は、長寿命低レベル放射性廃棄物(黒鉛及びラジウム含有廃棄物)処分の候補サイトとして、オーブ県にある2つの自治体(コミューン)、オークソンとパール・レ・シャヴァンジュを選定した。両地域では2009年から2010年にかけて詳細な調査が実施される。政府は処分サイトの最終決定を行う前の2011年に公開討論会を開催することも要請している。

同プレスリリースによると、両自治体は、放射性廃棄物管理機関(ANDRA)が地質学的に好ましい地域に属する3,115の自治体に対して2008年6月から開始した処分場の募集 に応じた約40の自治体の中から選定された。今後、2009年から2010年にかけての両地域における地質及び環境に関する調査の実施により、中深度(深度15m~200m)での処分の実現可能性が確認される。政府は今回の選定において、2008年12月末にANDRAが提出した地質及び環境に関する調査報告書を拠り所とした。更に政府は、関係地域からの選出議員との協議に加え、原子力安全機関(ASN)及び放射性廃棄物等の管理に関する研究進捗状況を評価する国家評価委員会(CNE)との協議も行っており、両組織はANDRAの報告書の内容確認も行っている。これらの協議により、選定された両地域がプロジェクトの遂行にとって最も望ましい指標を示すという結果が得られたとしている。

両自治体における調査が終了した後、処分サイトが決定される前の2011年には公開討論会が開催され、両自治体に対しては処分場立地の意思確認が行われる。また、同プレスリリースでは、今回の選定を含めた今後のスケジュールについて、次のように示している。

  • 2009年6月:政府による、詳細な調査を実施する2つの自治体の選定
  • 2009年~2010年:地質及び環境に関する調査、処分場に関する情報提供と対話、自治体による地域プロジェクト開発、処分場概念やエンジニアリングに関する検討等
  • 2011年:自治体の意思確認のための公開討論会の開催と政府によるサイトの選定
  • 2011年末~2014年:選定サイトにおける詳細調査の継続、処分場の設置許可の準備と申請
  • 2015年~2016年:公衆意見聴取と設置許可申請のレビュー、処分場建設の認可申請、地域情報委員会(CLI)の設置
  • 2017年~2019年:処分場の設置許可交付を条件としての、処分場の建設と施設の操業許可申請
  • 2019年~2040年:処分場の操業
  • 2040年~:処分場の閉鎖と監視

【出典】

  • 放射性廃棄物管理機関(ANDRA)、2009年6月24日付のプレスリリース

【2009年6月26日追記】

放射性廃棄物管理機関(ANDRA)は自身のウェブサイトで、長寿命低レベル放射性廃棄物の処分場に関する2009年6月24日付のプレスリリースを掲載するとともに、“2009年及び2010年におけるオークソン及びパール・レ・シャヴァンジュ自治体(オーブ県)での詳細調査”と題するプレス資料を公表した。同ウェブサイトやプレス資料によると、今後の詳細な調査は、今回選定された2つの自治体にある3つの候補サイトで実施される(オークソン自治体では北部と南部の2つの候補サイト、パール・レ・シャヴァンジュ自治体では1つの候補サイト)。また、公開されたプレス資料では、これまでの選定経緯として、約40の応募自治体の殆どがANDRAの既存の施設(低中レベル放射性廃棄物処分場や地層処分研究のためのビュール地下研究所)の周辺からのものであったこと、応募した自治体のうち、2009年5月までに9つの自治体が応募を取り下げたこと、2008年10月の応募締め切り後に、ANDRAが地質、環境、社会経済的な観点での評価を行い政府に報告したことが示されている。

また、今回の政府による候補サイトの選定に関して、原子力安全機関(ASN)は2009年6月25日付のプレスリリースにおいて、ASNは政府からの要請により、ANDRAが提出した地質及び環境に関する調査報告書に対する意見書を2009年1月15日に策定していたことを紹介し、同意見書を公表した。同意見書では、ANDRAが地質学的評価において採用した基準が、2008年5月にASNが策定した同処分の安全に関する一般方針に合致したものであるとしている。

【追記部出典】

  • 放射性廃棄物管理機関(ANDRA)ウェブサイト、http://www.andra.fr
  • 放射性廃棄物管理機関(ANDRA)の2009年6月24日付のプレス資料、http://www.andra.fr/download/site-principal/document/dossiers-de-presse/090624_projet_favl.pdf
  • 原子力安全機関(ASN)の2009年6月25日付プレスリリース、http://www.asn.fr/dechets-de-faible-activite-vie-longue-l%E2%80%99asn-publie-son-avis-relatif-l%E2%80%99analyse-du-contexte-geologique
  • 原子力安全機関(ASN)の2009年1月15日付の意見書、http://www.asn.fr/sites/default/files//files/AVIS-2009-AV-0068-ANDRA.pdf

【2009年7月10日追記】

オーブ県は2009年7月9日付のプレスリリースで、長寿命低レベル放射性廃棄物処分の候補サイトとして選定されていた同県のパール・レ・シャヴァンジュ自治体がサイト選定プロセスから辞退したことを公表した(同プレスリリースには辞退の理由等の情報は示されていない)。また、同プレスリリースでは、政府が代替候補サイトの選定の準備を進めていることも伝えられている。
放射性廃棄物管理機関(ANDRA)のウェブサイトでは、2009年7月4日に同自治体の議会が辞退を決定したとされている。

【追記部出典】

  • オーブ県の2009年7月9日付のプレスリリース、http://www.aube.pref.gouv.fr/andra_un_point_presse_s_est_tenu_ce_soir_sur_le_processus_de_recherche_d_un_site_pour_accueillir_un_centre_de_stockage_de_dechets_radioactifs_de_faible_activite-h1128.html
  • 放射性廃棄物管理機関(ANDRA)ウェブサイト、http://www.andra.fr/index.php?id=actualite_6_6_1&art=5286

【2009年8月18日追記】

放射性廃棄物管理機関(ANDRA)が同機関のウェブサイトにおいて、長寿命低レベル放射性廃棄物処分の候補サイトとして選定されていたオークソン自治体の議会が、サイト選定プロセスからの辞退を2009年8月11日に決定し、併せて、同自治体長が同年8月4日付けで辞表を提出していることを伝えた。

オークソン自治体が属するオーブ県は、同自治体議会決定の法的有効性を踏まえて、オークソン自治体のサイト選定プロセスからの辞退を今後正式決定する予定である。ANDRAは、辞退の正式決定の後に、処分プロジェクトの今後についての発表を行うとしている。

なお、オークソン自治体長が8月4日付けで県に提出した辞表に関連して、フランスの国内メディアは次のように伝えている。

  • 辞表に対するオーブ県の対応は9月5日まで保留。
  • 自治体議会の賛成を得て昨年10月に自治体として候補サイトへの応募をしたにもかかわらず、今回の自治体議会議員の態度変化への落胆等が自治体長の辞意理由の1つ。

【追記部出典】

  • 放射性廃棄物管理機関(ANDRA)ウェブサイト、http://www.andra.fr/index.php?id=actualite_6_6_1&art=5293
  • France 2 ウェブサイト、http://info.france2.fr/environnement/56545041-fr.php

(post by emori.minoru , last modified: 2023-10-11 )