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《スイス》地層処分場の環境的・経済的・社会的影響に関する評価手法案に基づいた調査を開始

スイスの連邦エネルギー庁(BFE)と国土計画庁(ARE)は、2009年5月14日のプレスリリースにおいて、地層処分場が環境、経済、社会に及ぼす影響を評価するために用いられる「地域開発上の評価手法」(草案)に基づいた調査を、2009年5月から10月にかけて実施することを公表した。プレスリリースによれば、この草案は、今回の調査結果を基に修正され、特別計画「地層処分場」(以下「特別計画」という)に基づくサイト選定の第2段階において適用される。

同プレスリリースによれば、候補サイトに関する地域開発上の評価は、安全性の検証とともに、サイト選定手続の一部をなしており、サイト選定における重要な根拠の一つであるとされている。今回の調査で用いられる「地域開発上の評価手法」(草案)は、2008年に国土計画庁(ARE)のワーキンググループによって作成されたものであり、環境、経済、社会のそれぞれにおいて以下のような項目が調査されるとしている。

環境 必要とされる面積、地下水の保護、植物相及び動物相に対する影響、掘削ズリの利用、大気汚染、騒音公害、輸送による環境影響など
経済 設備費用、地域における収入・雇用への影響、観光業・農業及び経済の諸部門に関する一般的環境の変化、地域自治体の財政の変化など
社会 人口構成・独自性・文化の変化、住環境及び居住地の開発計画に対する影響、景観及び近郊レクリエーション地域の変化など

また、同プレスリリースによれば、今回の調査は、アールガウ州の17の自治体、バーゼル・ラントシャフト州の29の自治体及びドイツの3つの自治体を対象として実施され、「地域開発上の評価手法」が実際に適用可能かがテストされる。なお、今回の調査は、架空の地層処分場プロジェクトを基にして実施され、調査が行われる地域は、2008年11月に公表された実際の地質学的候補エリア以外の地域であり、将来の地層処分場とは関係ないとされている。また、州とドイツ側が提供する地域に関するデータを基にした机上調査であるため、調査対象地域の住民にはいかなる影響も生じないとされている。

スイスでは、処分場のサイト選定の基準や手続を定めた特別計画が2008年4月に連邦評議会によって承認された 。特別計画では、3段階の手続でサイト選定が行われることが定められており、第1段階で行われる地層処分場の建設に適した地質学的候補エリアの提案は、2008年10月に放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)によって行われ、11月に公表されている 。特別計画によれば、サイト選定の第1段階では、国土計画庁(ARE)が地質学的候補エリアのある州と協力して、「地域開発上の評価手法」を確定する。プレスリリースによると、連邦評議会による地質学的候補エリアの承認とともに、「地域開発上の評価手法」は2011年に最終版とされる見込みである。

【出典】

【2010年4月26日追記】

環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)は、2010年4月21日付で、同日発表されたシャフハウゼン州(低中レベル放射性廃棄物の地質学的候補エリア) による独自の地層処分場の社会経済的影響に関する調査に関して、特別計画に基づくサイト選定手続とは関係なく実施されたものであり、地質学的候補エリア間の比較を可能とするものではないことから、サイト選定手続において検討対象としないとするプレスリリースを発表した。プレスリリースにおいてUVEKは、連邦政府は特別計画で定められたサイト選定手続を遵守し、社会経済的影響に関する調査は、全ての地質学的候補エリアを対象として、2011年半ばから実施するとしている。

【追記部出典】

【2010年6月3日追記】

連邦エネルギー庁(BFE)は、2010年5月28日付プレスリリースにおいて、架空の地層処分場プロジェクトを対象として2009年から実施された調査結果に基づき、「地域開発上の評価手法」を策定したことを公表した。この「地域開発上の評価手法」は、国土計画庁(ARE)を中心として、BFEや放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)、及びサイト選定に関係している州の専門家等によって開発されてきたものであり、2011年の連邦評議会による地質学的候補エリアの承認とともに最終版とされ、サイト選定の第2段階における調査で適用されることとなっている。

【追記部出典】

(post by y-nishimura , last modified: 2023-10-11 )