スウェーデンの放射性廃棄物処分の規制監督機関である放射線安全機関(SSM)は、2014年4月10日付のプレスリリースにおいて、使用済燃料の処分に関する公衆の理解状況1 を確認するために実施した世論調査の結果を公表した。この世論調査は、処分プロジェクトや安全審査に関する公衆への情報提供の必要性を検討する一環として、SSMが外部の調査会社を活用して実施したものである。
今回の世論調査では、2013年12月4日から2014年1月3日にかけてインターネット上に用意した質問票に回答する方式によって、スウェーデン国内3,543名から回答を得ている。この調査結果によると、スウェーデン国民の67.6%が使用済燃料処分場の計画の存在を認識しており、提案されている処分方法についても42.2%が正しく回答しているものの、その計画に対して最終決定を行うのは政府であることを正しく理解している割合は17.4%と低かった。SSMは、使用済燃料の処分は社会的に重要な問題であり、この問題に関する知識をスウェーデン国民に広く届ける必要があるとしている。
〇スウェーデンにおける使用済燃料処分場の審査プロセス
SSMは現在、2011年3月に使用済燃料処分の実施主体であるスウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)が提出した、エストハンマル自治体のフォルスマルクでの使用済燃料処分場の立地・建設許可申請書の安全審査を行っている 。スウェーデンにおける使用済燃料処分場の立地・建設許可申請では、環境法典と原子力活動法の二つの法律に基づく3つの申請書の審査が並行して進められている。
(2011年3月16日に土地・環境裁判所に提出)…環境法典に基づく申請
(2006年11月にSSMに提出済、2011年3月16日更新)…原子力活動法に基づく申請
(2011年3月16日にSSMに提出)…原子力活動法に基づく申請
環境法典に基づく申請(枠内①)を審理する土地・環境裁判所は、案件に関係する様々な行政機関、自治体、環境団体等に意見書の提出を求めており、SSMも自身の見解を提出することになっている。原子力活動法に基づく許可が必要な案件の場合、土地・環境裁判所が直ちに判決の形で許可発給を行うことはできず、政府の判断を仰ぐ必要がある。
一方、原子力活動法に基づく申請(枠内②③)を審査するSSMも、安全審査において案件に関係する様々な行政機関、自治体、環境団体等に意見書を求め、使用済燃料の処分場とキャニスタ封入施設に関する安全審査を行うが、SSMは許可発給権を持たない。SSMは審査意見を政府に提出し、許可発給は政府が行うことになっている。
環境法典、原子力活動法のいずれの法律に基づく審理・審査プロセスにおいても、最終的には政府の判断がなされる必要があり、この時期の調整が図られている。SSMのプレスリリースによれば、SSMが政府に審査意見を提出する時期は2015年の予定である。
【出典】
- 放射線安全機関(SSM)、2014年4月10日付プレスリリース
http://www.stralsakerhetsmyndigheten.se/Om-myndigheten/Aktuellt/Nyheter/Manga-vill-veta-mer-om-slutforvaret/ - 放射線安全機関(SSM)、世論調査結果
http://www.stralsakerhetsmyndigheten.se/Global/Slutf%C3%B6rvar/Intellecta%20-%20Slutfo%C2%A6%C3%AArvar%20-%20la%C2%A6%C3%AAn.pdf
- 今回の世論調査は「地層処分に賛成・反対」の態度ではなく、使用済燃料処分について国民がどの程度知っているか、何を知っていて、何を知りたいと思っているか、誰(政治家・規制機関)の判断を信頼できると考えているかを探るものとなっている。 [↩]
(post by sahara.satoshi , last modified: 2023-10-11 )