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《米国》廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)で放射線事象などが発生

米国のエネルギー省(DOE)のニューメキシコ州のカールスバッド・フィールド事務所(CBFO)は、2014年2月15日のプレスリリースにおいて、廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)で2014年2月14日の午後11時30分に放射線事象が発生したことを公表した。地下での放射線の検知後に換気システムが自動的にフィルターモードに切り替わり、地表への放射性物質の漏洩は最小限に抑えられ、健康や環境に影響はないとされたが、WIPPでの操業は中止されている。

WIPPは、軍事起源のみのTRU廃棄物の地層処分場であり、操業者であるDOEは、1999年3月26日の操業開始以降、順調に放射性廃棄物を受入れて、地下での処分を実施してきた。

DOEのプレスリリースでは、2014年2月15日の午後2時49分に放射線事象の発生の第一報と合同情報センター(JIC)の設置が公表され、2014年2月16日の午後6時32分にJICの閉鎖が伝えられるまで3度にわたる放射線事象報告で情報の更新が行われた。これらの放射線事象報告では、WIPPの敷地境界での放射線計測により、健康や環境に影響がないことが強調されるとともに、装置類・人員・施設の汚染はないが、重要業務以外の職員はサイト外へ退去したこと、放射性物質の発生源は調査中であることなどが公表された。

一方、2014年2月19日には、WIPP周辺の環境放射線モニタリングを行っているニューメキシコ州立大学に付属するカールスバッド環境モニタリング・研究センター(CEMRC)が、WIPPから約1kmの観測地点で微量のアメリシウム241とプルトニウム239/240を検出したことを公表した。これは、2014年2月16日の午前に回収された環境エアサンプリングステーションのフィルタを分析したものであり、アメリシウム241として0.64Bq、プルトニウム239/240として0.046Bqが検出されている。なお、これまでのCEMRCの観測では、アメリシウム241とプルトニウム239/240は過去に4回検出されているが(最高でアメリシウム241が0.004Bq、プルトニウム239/240が0.0005Bq)、何れもWIPP起源のものではなく、過去の核実験によるものとされている。

また、DOEも2014年2月24日のプレスリリースにおいて、新たな環境モニタリングデータを公表するとともに、「WIPP復旧情報センター」というウェブページを開設し、今回の放射線事象に関する最新の活動状況と複数地点でのサンプリングデータの公表を行っている。公表されたデータによれば、放射線事象の発生翌日の2014年2月15日にWIPPの隣接地点で検出された放射能量は0.87Bq、線量当量では0.03mSvであったが、2014年2月17~18日に同地点を含む複数箇所での簡易分析で検出された放射能量は0.02~0.07Bq、線量当量では0.001~0.003mSvと評価されている。なお、最終的な分析値が得られるまでには、サンプルの採取から最大で2週間が必要としている。

2014年2月19日のプレスリリースで、DOEは、引き続き放射線モニタリングを行うとともに、DOE、労働省鉱山安全保健管理局、防火、換気、鉱山安全等の専門家から成る事故調査委員会(AIB)を設置したことを公表した。また、地下施設への立入りのために他のDOEサイトや国立研究所からの支援を得て、地下施設の調査計画の検討が行われている。

なお、WIPPでは、2014年2月5日に、地下施設内において岩塩の運搬車の火災事故が発生していた。火災は、放射性廃棄物の処分エリアとは反対側の地下施設内で発生したものであり、近くに放射性廃棄物はなく、当日中に鎮火が確認され、被害は火災発生地点の至近範囲に限定されていた。

【出典】

 

【2014年3月10日追記】

ニューメキシコ州のエネルギー省(DOE)のカールスバッド・フィールド事務所(CBFO)は、2014年3月9日のプレスリリースにおいて、2014年2月14日に放射線事象が発生した廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)で復旧に向けたプロセスを開始したことなどを公表した。また、「WIPP復旧情報センター」ウェブページの情報も更新され、最新のサンプリングデータや復旧活動の写真などが掲載されている。

WIPPの復旧プロセスは、下図のように6段階のプロセスとして示されており、2014年3月7~8日には空気取入立坑及び建設工事用立坑に計測機器を下ろして第1段階の無人での放射線・空気観測が行われた。簡易分析の結果では、空気中に放射性物質による汚染は検出されず、空気の状態も正常と見られている。DOEは、このプロセスは、作業員が地下に入る際の防護装備の決定のために重要としており、こうした安全検査の完了後、早ければ2014年3月17日の週の週末にも作業チームをWIPPの地下施設に送る予定としている。

 

6段階の復旧プロセス

6段階の復旧プロセス

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立坑での放射線検出作業の様子

空気取入立坑と建設工事用立坑の安全が確認された後は、両立坑間の汚染状況を検査し、放射線事象の発生直前に作業が行われていた処分エリアに作業チームが派遣される。作業チームは、放射線学的サンプリング等を実施して放出源を隔離し、汚染の危険性を取り除く計画を実施する予定とされている。

DOEのプレスリリースでは、WIPPで勤務する職員の被ばく検査の最新情報も公表されており、2014年3月8日現在で、17名の職員についてバイオアッセイで陽性の結果が出ていたが、追加検査の結果では肺への吸入等は認められず、被ばく線量は極めて低く、健康への影響は想定されないとしている。

また、WIPPサイト内及び近郊でのエアサンプリングのデータも更新されている。公表されたデータによれば、2014年2月17~18日の最終的な分析で検出された放射能量は0.00035~0.01Bq、線量当量では0.00001~0.0004mSvと簡易分析の結果よりも低く、また、2014年2月26日の簡易分析結果については、放射能量は0.019~0.045Bq、線量当量では0.0007~0.002mSvと評価されている。DOEのプレスリリースでは、サイト外では引き続き大きな汚染は確認されておらず、2014年2月14日の放射線事象による公衆の健康及び環境への影響は想定されないとしている。

【出典】

 

【2014年3月12日追記】

ニューメキシコ州のエネルギー省(DOE)のカールスバッド・フィールド事務所(CBFO)は、WIPP復旧情報センター(WIPPの放射線事象のページ)の2014年3月10日の更新情報において、廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)で2014年2月14日に発生した放射線事象の原因を調査するための変更計画を示しており、空気取入立坑及び建設工事用立坑での検査が順調であれば、作業チームが2~3週間以内には地下施設に送られる予定であることを公表した。作業チームは、岩塩の坑道の安定性を確認し、放射性物質の放出源を特定するため、連続的に派遣される計画である。

また、WIPP復旧情報センターでは、2014年3月11日にも追加の資料が掲載されており、2014年2月14日に発生した放射線事象及び2014年2月5日に発生した火災事故の場所が以下の位置図で示されている。

放射線事象と火災事故の場所

放射線事象と火災事故の場所

【出典】

 

【2014年4月4日追記】

ニューメキシコ州のエネルギー省(DOE)のカールスバッド・フィールド事務所(CBFO)は、廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)復旧情報センター(WIPPの放射線事象のページ)の2014年4月2日の更新情報において、WIPPで2014年2月14日に放射線事象が発生した以降、初めて作業チームが地下施設に入坑したことを公表した。

地下施設の作業チームによる調査は、8名編成の2チームによって行われ、最初の作業チームが2014年4月2日13時頃に入坑した後、13時半頃には2番目の作業チームが入坑した。作業チームは、空気取入立坑及び建設工事用立坑の周辺を調査して汚染が無いことを確認するとともに、連続エアモニタ装置や通信装置などを設置し、今後の地下施設での作業の基地を設営した。

WIPP復旧情報センターの2014年4月3日の更新情報では、今回の地下施設での作業エリアなどが下図の通り示されている。

 

2014年4月2日の地下施設の活動エリア

2014年4月2日の地下施設の活動エリア

WIPP地下施設のレイアウト図

WIPP地下施設のレイアウト図

次回の地下施設への入坑は、今回の地下施設への入坑による調査結果を評価した後、2014年4月7日の週に行われる見込みとされている。次回の入坑時には、地下施設内を処分エリアに近い南側に進み、連続エアモニタ装置を追加設置し、通信装置の試験が行われる予定であり、その結果により放射性物質の放出源特定のための第3段階の地下調査の詳細を決定するとしている。

【出典】

 

(post by inagaki.yusuke , last modified: 2023-10-11 )