英国政府のエネルギー・気候変動省(DECC)は、2014年3月3日に、2018年の閉鎖予定までにセラフィールドの酸化物燃料再処理工場(THORP)での再処理が終了しない海外を起源とする使用済燃料について、代替管理方針案に関する協議文書を公表し、公開協議を開始した。THORPは、稼働計画の遅れや技術的な問題により、海外起源の使用済燃料の一部を含め、当初予定していた使用済燃料の全ての再処理を完了できないおそれが生じている。公開協議は2014年5月28日までとしており、英国政府は公衆から得られた見解を踏まえ、今後の使用済燃料等の代替管理方針を公表するとしている。
協議文書によれば、再処理契約のある海外起源の使用済燃料等は5,000トンであり、そのうち約95%の再処理が完了している。残存する約300トンの使用済燃料の大部分は、2018年までにTHORPで再処理できる見通しである。しかし、使用済燃料等の管理を行う原子力廃止措置機関(NDA)は、そのうちの約30トンは、当初はドーンレイで再処理する予定1 であった高速炉燃料や混合酸化物(MOX)燃料等の使用済燃料であり、それらをTHORPで再処理することは難しいとしている。その理由として、少量の使用済燃料を再処理するために必要な新たな設備をTHORPに建設し、2018年以降も再処理事業を継続するのは経済的ではないとしている。また、NDAは、少量の使用済燃料について、海外事業者からその所有権を取得し、自身が所有する使用済燃料とともに再処理せずに地層処分するという代替管理方針案を英国政府に示した。英国政府は同案に合意し、代替管理方針の決定に向けて、今回の公開協議の実施に至った。
協議文書では、海外契約分を再処理しない場合には、当該使用済燃料を再処理したものと想定し、実際の再処理によって発生する放射性廃棄物と放射線学的に等価となる放射性廃棄物を海外事業者に返還するとしている2 。また、再処理によって発生する核物質についても同様に等価交換した後、将来の管理方針が決定されるまで英国内に保管するとしている。英国政府は上記の代替管理方針案により、今後のTHORPに関する計画やドーンレイサイトの廃止措置計画をより明確にでき、費用対効果が高く、かつ適時に残存する海外起源の使用済燃料の再処理契約を完了することができるとしている。
上記の構想について、英国政府は、協議文書において以下の3つの質問事項を示し、公衆からの見解を募集している。
- 代替管理方針案について英国政府が想定していないような結果が起こりうるか。
- NDAの代替管理方針案を検討するという英国政府の決定に影響を及ぼすような、英国政府が見過ごしている、または過小・過大評価している重要な要素があるか。
- その他の全般的な見解があるか。
【出典】
- エネルギー・気候変動省(DECC)、公開協議ウェブサイト、英国内にある海外起源の核燃料の管理、2014年3月、
https://www.gov.uk/government/consultations/management-of-overseas-origin-nuclear-fuels-held-in-the-uk - エネルギー・気候変動省(DECC)、協議文書「英国内にある海外起源の核燃料の管理」、2014年3月、
https://www.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/285882/overseas_fuels_consultation.pdf - 原子力廃止措置機関(NDA)ウェブサイト、酸化物燃料、
http://www.nda.gov.uk/strategy/spentfuelsmgmt/oxidefuel/index.cfm
【2014年10月20日追記】
英国政府のエネルギー・気候変動省(DECC)は、2018年の閉鎖予定までにセラフィールドの酸化物燃料再処理工場(THORP)で再処理が終了しない海外を起源とする使用済燃料の代替管理方針案に関して公開協議を実施していたが、2014年10月16日に、公開協議に対する英国政府の回答文書を公表した。
回答文書において英国政府は、使用済燃料等の管理を行う原子力廃止措置機関(NDA)が提案した代替管理方針案を受け入れるとの結論を示した。具体的には、THORPでの使用済燃料の再処理が実施可能であり、経済性もある場合、既存の契約と合意に沿って再処理を実施すべきとしたうえで、再処理が終了しない場合には、使用済燃料を再処理した場合に発生する放射性廃棄物と放射線学的に等価となる放射性廃棄物を海外事業者に返還するとの代替管理方針案を了承した。
英国政府の結論を受けてNDAは、今後、残存する海外を起源とする使用済燃料について、再処理を実施する管理方針を採るか、代替管理方針を採るかをケース・バイ・ケースで決定していくこととなった。あわせてNDAは、以下のことを実施するとしている。
- 海外事業者と使用済燃料の所有権の移管について、適宜、合意及び契約締結を行う。
- サイト許可会社(SLC)による管理方針の実施のための物理的・技術的な実現可能性を担保する。
- 安全・セキュリティ・環境規制要件に従い、SLCが管理方針を実施するようにSLCを指導する。
なお、今回の公開協議は、2014年3月3日から2014年5月28日にかけて実施されたものであり、個人、エネルギー関連企業、NGO、地方自治体等から合計14の見解が提出されている。
【出典】
- エネルギー・気候変動省(DECC)、公開協議ウェブサイト、英国内にある海外起源の核燃料の管理、2014年10月、
https://www.gov.uk/government/consultations/management-of-overseas-origin-nuclear-fuels-held-in-the-uk - エネルギー・気候変動省(DECC)、協議文書「英国内にある海外起源の核燃料の管理」への英国政府の回答文書、2014年10月、
https://www.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/363544/FINAL_Government_Response_to_Consultation_OCT.pdf
(post by f-yamada , last modified: 2014-10-20 )