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§ 2015年9月8日 発行 海外情報ニュースフラッシュ

スイスでNAGRAに対して地質学的候補エリアにおける三次元弾性波探査の実施を州が許可発給

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スイスの処分実施主体である放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)は、2015年8月28日に、地質学的候補エリア「ジュラ東部」における三次元弾性波探査1 の実施について、アールガウ州の建設・運輸・環境省がNAGRAに対して許可発給したことを公表した。NAGRAは、2015年1月末に、地層処分場のサイト選定プロセス第2段階における地質学的候補エリアの絞り込みの結果として「ジュラ東部」と「チューリッヒ北東部」の2カ所を提案していた。サイト選定第3段階に進む地質学的候補エリアが確定するまでの間、NAGRAは2つの地質学的候補エリアにおいて、地表から三次元弾性波探査を実施する予定としていた

三次元弾性波探査の対象範囲とスケジュール

今回のアールガウ州の許可発給を受け、NAGRAは関係する地権者へ説明して承諾を得た後、2015年9月末から12月半ばにかけて、ジュラ東部において三次元弾性波探査を実施する予定である。ジュラ東部では、高レベル放射性廃棄物(HLW)、中低レベル放射性廃棄物(I/LLW)処分場の暫定的な設置範囲とされる区域の全域を含む約96km2(下左図中)を三次元弾性波探査の範囲としている。

ジュラ東部での三次元弾性波探査が終了後、NAGRAは2016年1月から約3週間にわたり、もう一つの地質学的候補エリア「チューリッヒ北東部」の北部約21km2(下右図中)を対象として三次元弾性波探査を実施する予定である。なお、南部の高レベル放射性廃棄物処分場の地質学的候補エリアを中心とする約50km2の範囲については、既存の地質情報としてNAGRAが1997~1999年にかけて実施した三次元弾性波探査の結果が利用可能であるため2 、今回の三次元弾性波探査の範囲は北部に限定したものとなっている。

「ジュラ東部」における三次元弾性波探査対象区域

「ジュラ東部」における三次元弾性波探査対象区域
(NAGRA、パンフレット「第3段階に向けた三次元弾性波探査(ジュラ東部版)」、2015年1月より)

「チューリッヒ北東部」における三次元弾性波探査対象区域

「チューリッヒ北東部」における三次元弾性波探査対象区域
(NAGRA、パンフレット「第3段階に向けた三次元弾性波探査(チューリッヒ北東部版)」、2015年1月より)

 

スイスのサイト選定プロセスにおける三次元弾性波探査の位置づけ

スイスでは、特別計画「地層処分場」(以下「特別計画」という)に基づいて、3段階でのサイト選定手続きが進められている。サイト選定に係る地球科学的調査のうち、地表から行う調査には弾性波探査やボーリング調査などがあるが、弾性波探査のように地下への影響の少ない調査の実施には、原子力法に基づく許可は不要である3 。ただし、原子力法令以外の連邦法や州法で別途定めがある場合は、それらの法令に基づく許可の取得が必要となっている4

サイト選定プロセス第2段階での地質学的候補エリアの絞り込み過程においてNAGRAは、第1段階で選定された全6つの地質学的候補エリアの比較可能性の確保・改善を目的として、2011年から2012年にかけて「ジュラ東部」と「北部レゲレン」(下の地図参照)を中心とするスイス北部を対象に、二次元弾性波探査を実施した。この際には、NAGRAは事前に対象地域の自治体への説明や州当局との協議を行い、土地所有者に連絡をした上で実施した 。なお、ボーリング調査等、原子力法に基づく許可が必要な地球科学的調査については、NAGRAが2010年の報告書において、追加の調査を実施せずに第2段階における予備的安全評価が可能との判断を示しており 、連邦原子力安全検査局(ENSI)もこの判断を肯定している 5

地質学的候補エリア「ジュラ東部」及び「チューリッヒ北東部」の位置

地質学的候補エリア「ジュラ東部」及び「チューリッヒ北東部」の位置
(NAGRA、技術報告書14-01「地質学的候補エリアの安全性の比較及び第3段階において検討対象とするサイトの提案」、2014年12月より

2015年9月現在、スイスにおける地層処分場のサイト選定プロセスは、第2段階の終盤に差し掛かっており、各地質学的候補エリアにおける地層処分場の地上施設の設置地点案(右の地図の赤丸)を含む形で、「ジュラ東部」と「チューリッヒ北東部」の2つの地質学的候補エリアの絞り込み結果についての連邦原子力安全検査局(ENSI)などによる審査が行われているところである。NAGRAは2015年4月に、これら2つの地質学的候補エリアで実施する三次元弾性波探査及びボーリング調査のスケジュールを公表した。NAGRAは、ボーリング調査の実施に当たっては、原子力法による許可が必要となっており、具体的には、環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)から地質学的候補エリアでの地球科学的調査の許可を受ける必要があるとしている。また、ボーリング調査の作業は、NAGRAが提案した2つの地質学的候補エリアを連邦評議会が承認する2017年以降(すなわちサイト選定プロセス第3段階)に開始するとしている

 

【出典】

 

【2015年10月5日追記】

放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)は2015年10月1日に、地質学的候補エリア「ジュラ東部」における三次元弾性波探査を同日に開始したことを公表した。今回の探査はアールガウ州ベツベルク自治体(Bözberg)周辺の約96km2の区域を対象としており、約3カ月をかけて実施する予定としている。三次元弾性波探査の対象区域には、農地や人口密集地が含まれており、NAGRAは探査作業の実施に先立ち、関係住民の同意を得ている。

三次元弾性波探査(反射法)では、人工的に地震を発生させる起振車を用いて、地層の境目で反射した弾性波を地表に設置した受振器で測定する。実際の作業は、NAGRAの委託を受けたドイツのDMT社の120名で実施し、起振車6台、受振器6万台が用いられ、ケーブル総延長は150kmに及ぶとされている。

 

【出典】

 

【2016年10月27日追記】

「北部レゲレン」における三次元弾性波探査対象区域 (NAGRA、パンフレット「第3段階に向けた地球科学的調査」、2016年4月より)

「北部レゲレン」における三次元弾性波探査対象区域
(NAGRA、パンフレット「第3段階に向けた地球科学的調査」、2016年4月より)

放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)は2016年10月24日に、地質学的候補エリア「北部レゲレン」における三次元弾性波探査を開始することを公表した。今回の探査は、ドイツ・スイス両国をまたぐ約91km2の区域を南北2つのブロックに分けて2017年2月まで実施される。北側のブロックは、大部分がドイツ領内(バーデン・ビュルテンベルク州)に属する。一方、南側のブロックはスイス領内である。

NAGRAは、2015年1月末にサイト選定第2段階における地質学的候補エリアの絞り込みにおいて、北部レゲレンをサイト選定第3段階に進む地質学的候補エリアとせず、予備候補とする内容の提案を行っている。この提案について、現在、連邦原子力安全検査局(ENSI)が審査を行っているが、北部レゲレンが予備候補ではなく優先候補となる可能性が残っている。このため、NAGRAは2016年2月に、北部レゲレンが優先候補となる場合を想定して準備作業に着手していることを公表していた。NAGRAは、北部レゲレンにおいても三次元弾性波探査を行うことにより、サイト選定第3段階での作業スケジュールの遅延を回避できるとしている。

 

【出典】

【2017年2月8日追記】

放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)は2017年2月3日に、地質学的候補エリア「北部レゲレン」における三次元弾性波探査を終了した。これにより、地質学的候補エリア「ジュラ東部」「チューリッヒ北東部」「北部レゲレン」を対象に2015年10月から実施された一連の三次元弾性波探査が終了した。

3つの地質学的候補エリアで実施された三次元弾性波探査は、スイスでは過去最大規模のものであり、調査範囲は合計で約200km2に及んだ。測定地点は5万1,000カ所に上った。調査範囲の関係自治体は53であり、NAGRAは地権者3,999人と事前協議を行い、このうち98%に相当する3,907人の地権者から所有地における探査に対する同意を得たとしている。

サイト選定に係る地球科学的調査のうち、原子力法に基づく許可が必要なボーリング調査についてNAGRAは、2016年9月にジュラ東部とチューリッヒ北東部での実施に向けた許可申請書を既に提出しており、今後、北部レゲレンについてもボーリング調査の許可申請を行う意向である

 

【出典】


  1. 弾性波探査(反射法)は専用の車両や小規模の発破を用いて人工的に振動を発生させ、地層の境目で反射した弾性波を地表に設置した受振器で測定する手法であり、地下の岩盤構造の把握を目的として実施される。 []
  2. NAGRAはスイス国内における高レベル放射性廃棄物等の処分の実現可能性を実証した「処分の実現可能性実証プロジェクト」の一環として、1997~1999年に現在の地質学的候補エリア「チューリッヒ北東部」南部に相当する区域を対象に、三次元弾性波探査及びボーリング調査を実施した。プロジェクトの最終報告書は2002年に公表されている。 []
  3. スイスの原子力令第61条において、弾性波探査、並びに、例えば重力探査、電気探査及び電磁探査等の物理探査は、原子力法による地球科学的調査の許可が不要であることが規定されている。 []
  4. 地質学的候補エリア「ジュラ東部」が所在するアールガウ州では、州法「地下及び天然資源の開発に関する法律」第4条において、地下深部の利用を想定した活動を州当局の許可の対象と定めている。 []
  5. NAGRAによる第2段階の絞り込みに向けた現有知識の証明は、特別計画に基づく手続きの一環として実施されたものである。NAGRAの報告書を審査したENSIは2011年、原子力法上の許可が必要な地質学的調査は不要とのNAGRAの判断を認めつつも、41項目の補足要求を付した 。これらの要求項目にNAGRAが対応したことを受け、ENSIは2014年8月に、NAGRAの現有知見は第2段階の絞り込み実施に十分な水準に達しているとの最終判断を示した 。 []

(post by yamamoto.keita , last modified: 2017-02-08 )