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《英国》放射性廃棄物管理会社(RWM)が地質学的スクリーニングのガイダンス案の公開協議を開始

高レベル放射性廃棄物等の地層処分の実施主体である原子力廃止措置機関(NDA)の放射性廃棄物管理会社(RWM)は、2015年9月8日、英国全土(スコットランドを除く)を対象とした地質学的スクリーニング(下記コラム参照)のガイダンス案を公表するとともに、意見提出期限を2015年12月4日までとする公開協議を開始した。RWMは一般への情報提供を目的として、公開協議期間中の10月から11月初めにかけて、ロンドンを含めて11の地域でワークショップを開催する予定である1

英国では2015年3月に、英国政府の要請を受けた英国地質学会(The Geological Society)が、放射性廃棄物管理会社(RWM)の作成する地質学的スクリーニングのガイダンスが技術的な知見に立脚していることを確保するため、独立評価パネル(IRP)を設置している2 。2015年6月に、RWMはIRPのレビュー用にガイダンス案を作成し、IRPはガイダンス案の評価を実施している(2015年6月16日の追記を参照)。RWMは、このIRPの評価結果を踏まえ、今回公表した地質学的スクリーニングのガイダンス案を作成している。ガイダンス案は以下のものから構成されている。

① 地質環境が関与する地層処分施設の7つの長期安全要件の提示

  1. 地層処分施設の人工バリア機能が維持されること
  2. 地下水に溶け込んだ放射性核種または毒性物質によって安全性が損なわれないこと
  3. 地層処分施設内で発生したガスによって安全性が損なわれないこと
  4. 自然事象や自然変動によって安全性が損なわれないこと
  5. 安全性を立証するためにサイト特性調査が十分に実施できること
  6. 長期挙動が安全性に与える影響が理解可能なこと
  7. 潜在的な人間侵入の影響が評価可能であること

② 長期安全要件に関して考慮すべき5つの地質特性についての説明
  (1)岩種、(2)岩盤の構造(断層・破砕帯、褶曲の位置等)、(3)地下水、(4)自然現象(地震・断層活動、氷河作用等)、(5)資源の賦存

③ 上記5つの地質特性を理解するために使用する既存の地質情報の情報源についての説明

④ 既存の地質情報を基に実施する地質学的スクリーニングの結果の提示方法の説明:イングランド、ウェールズ、北アイルランドを13の地域に区分し(下図参照)、地域ごとに地質学的スクリーニングを実施する。地質学的スクリーニングの結果は、各地域の地質環境の主な特徴と安全性の関連を説明したものを適宜、地図でわかりやすく例示する。

英国地質学的スクリーニング置ける地域区分

また、放射性廃棄物管理会社(RWM)は、今回の公開協議において、地質学的スクリーニングのガイダンス案について以下の4つの質問事項を示し、一般からの意見を募集している。

  • 長期安全性に関する既存の地質情報の提供方法は適切なものか。
  • 既存の地質情報の情報源は適切かつ十分なものか。
  • 地質学的スクリーニングの結果の提示方法に賛成か反対か。
  • 地質学的スクリーニングのガイダンス案で示された内容について他に意見があるか。

放射性廃棄物管理会社(RWM)は、公開協議で得られた意見を踏まえ、地質学的スクリーニングのガイダンス案を更新し、独立評価パネル(IRP)の評価を受ける予定である。RWMは2016年中に最終版の地質学的スクリーニングガイダンスを公表し、これに基づいて地質学的スクリーニングを実施するとしている。

地質学的スクリーニングについて

RWMは、2014年7月にエネルギー・気候変動省(Department of Energy and Climate Change, DECC)が公表した白書『地層処分の実施-高レベル放射性廃棄物等の長期管理に向けた枠組み』 に基づき、地層処分施設のサイト選定プロセスの初期段階において、英国全土(スコットランドを除く)を対象とした地質学的スクリーニングを実施することになっている。地質学的スクリーニングは、自治体を含む地域が地層処分施設の設置について検討を行う際、安全面において重要な地質に関する情報を利用できるようにするため、既存の地質情報を活用し、地質学的スクリーニングのガイダンスを適用して実施されるものである。なお、地質学的スクリーニングの結果は、地層処分施設の設置に「適格」または「不適格」なエリアの判定やサイトの絞り込みに使用されるものではないと位置づけられている。 

【出典】

  1. ワークショップにおいて表明された見解や意見は、公開協議において提出された意見とはみなされない。 []
  2. IRPは、RWMが作成する地質学的スクリーニングのガイダンス案の評価だけでなく、RWMが実施する地質学的スクリーニングへのガイダンスの適用についての評価も行う。 []

(post by f-yamada , last modified: 2023-10-11 )