SAFIR2 (ベルギー)
処分システムと安全要件
(SAFIR2 - 安全評価・実現可能性第2次中間報告書: 2001年)
-
2. 処分システムと安全要件 | 対象廃棄物 / 想定処分地 / 処分概念 / 放射線防護基準 ← NOW You are Here!
-
3. 安全評価の進め方 | FEP / シナリオ / モデル / 不確実性の取り扱い
-
4. 評価結果
処分システムの概要
どのような廃棄物を、どのような場所に、どのような方法で処分する場合の安全評価なのか…
対象廃棄物
(当該の安全評価で対象にしている廃棄物)
ベルギーでは、国内にある7基の商用原子力発電所から大部分の放射性廃棄物が発生している。調整済放射性廃棄物は、放射線学的基準及び熱出力基準によってカテゴリA、B、Cの3つの主要カテゴリが定義されている。このうち、カテゴリBとCの放射性廃棄物を1カ所の処分場で地層処分する計画である。
-
カテゴリA: オープングループに属し、→ 浅地中での処分を計画
-
カテゴリB:長寿命低中レベル放射性廃棄物 → 地層処分
-
カテゴリC:高レベル放射性廃棄物 → 地層処分
SAFIR2では、カテゴリBとCに属する放射性廃棄物として、以下の3種類の廃棄物が性能評価の対象とされた。これらの放射性廃棄物の物量は、7基の原子力発電所が40年間の運転後に停止されると仮定して予測している(表1参照)。
-
ZAGALC : ガラス固化高レベル放射性廃棄物
-
ZAGALS : 使用済燃料(UO2燃料とMOX燃料)
-
HAGALC2 : 圧縮雑固体廃棄物及び構造廃棄物(ハル・エンドピース)
ベルギーでは発電後の照射済み核燃料を原則再処理することを前提とし、フランスに再処理を委託してきたが、1993年以降新たな再処理契約を凍結している。このため、SAFIR2では、
-
全ての廃棄物を再処理する“全量再処理オプション”と
-
現在の再処理契約に含まれる核燃料を再処理し、残りを直接処分する“直接処分オプション”
の2つのケースを検討しており、ZAGALC、ZAGALS及びHAGALC2について別々に、発生量が最大になるケースでの線量計算を行っている。
-
ZAGALCの場合:9,859本(直接処分オプション)
-
ZAGALSの場合: 3,915本(完全再処理オプション)
-
HAGALC2の場合:6,410本(完全再処理オプション)
表1 廃棄体パッケージの予想発生量(本)
再処理委託分以外の使用済燃料の戦略 | ||
---|---|---|
全量再処理オプション | 直接処分オプション | |
ZAGALS (使用済燃料) | 0 | 9,859 |
ZAGALC (ガラス固化体) | 3,915 | 420 |
HAGALC2(再処理廃棄物) | 6,410 | 820 |
図2 ステンレス鋼製オーバーパック
ZAGALC廃棄物はステンレス鋼製のCOGEMA型キャニスタ(容量150L、外径0.43m、壁厚5mm)に封入され、更にステンレス鋼製オーバーパック(長さ1.55m、外径0.52m、壁厚20~30mm)に収納される(図2参照)。
ZAGALS廃棄物は、壁厚30mmのステンレス鋼製オーバーパックに収納される。
ハル・エンドピースはステンレス鋼製のCOGEMA型キャニスタ(容量150L、外径0.43m)に収納される。
処分場の地質環境・立地条件(評価上の設定)
ベルギーではサイト選定作業が開始されておらず、最終処分地は未定であるが、ONDRAF/NIRASは、以下に示す母岩層及びサイトにおいて、方法論的研究を目的としたサイト特性調査を行っている。
-
Boom粘土層をレファレンスの母岩層、モル(Mol)-デッセル(Dessel)原子力施設区域をBoom粘土層に関する方法論的研究のためのレファレンスサイト
-
Ypresian粘土層を代替母岩層、ドール(Doel)原子力施設区域をYpresian粘土層に関する方法論的研究のため代替サイト
SAFIR2では、上記の2つの母岩層及びサイトについて特性調査の結果を取りまとめているが、Boom粘土層とYpresian粘土層とでは得られている知見のレベルに差異があることから、安全評価はMol-Dessel原子力施設区域地下のBoom粘土層のみを対象として行っている。Boom粘土層の上部にある帯水層中での放射性核種の移行を計算するためには、地質環境中での処分場の正確な位置を考慮できることが肝要である。したがって、安全評価において処分場のレファレンスサイトを特定する唯一の目的は、その場所特有の核種移行計算を行うことにある。
安全評価において想定された仮想の処分場は、図3に示すように、モル(Mol)のベルギー原子力研究センター(SCK・CEN:Studiecentrum voor Kernenergie / Centre d’Etude de l’Energie Nucléaire)サイトの既存建屋の西方、Boom粘土層の中心に位置している。
Boom粘土層の粘土質部分は10-12m/sのオーダの非常に小さな透水係数が得られており、Boom粘土中の地下水の地球化学的条件は弱アルカリ性(pH=8.2)、還元性(Eh=-0.250V/SHE)であるため、核種の遅延に関して非常に好ましい環境であることがわかっている。
処分概念(処分場の設計)
■ガラス固化体の処分
処分場の施設設計案では、処分場は地下約240mのBoom粘土層中に建設され、地表からは有効径が約6mの2本の立坑により地下構造物にアクセスする。立坑は立坑どうしを繋ぐ連結坑道と直角に交差する直径3.5mの2本の主要坑道と連結する。ガラス固化体の施設設計案(図4参照)では、最初の処分坑道(長さ800m、直径2m)が連結坑道から100m離して主要坑道に垂直に設置され、次の処分坑道からは40m間隔で合計8本の処分坑道が設置される。処分坑道の全長は800 mであり、処分坑道の中央部と主要坑道に設置されるプラグよって、各々200 mのセグメントに分割される。ガラス固化体を収納したZAGALCパッケージは、処分坑道内に横置きで定置する。
■使用済燃料の処分
使用済燃料を収納するZAGALSパッケージについても横置きでの定置を検討しているが、使用済燃料の施設設計案(図5参照)は、ガラス固化体の施設設計案と比較して以下の相違点がある。
-
処分坑道は主要坑道と45°の角度で交差する。
-
処分坑道間の離隔距離を110mとする。
-
新第三紀帯水層の平均温度上昇が6℃を超えない様にするために坑道の横断面あたりのパッケージ数はUO2燃料で4基、MOX燃料で1基に制限される。
■再処理で発生する「ハル・エンドピース」の処分
ハル・エンドピースについては、放射線影響の予備的な評価を行うことを目的として、HAGALC2パッケージの予備的な処分場設計を検討している。この予備的な処分場設計は、廃棄物の全量再処理を前提とし、ガラス固化体(ZAGALC)、ハル・エンドピース(HAGALC2)及びカテゴリB廃棄物を処分するものとして、次の3つのセクションで構成されている(図6参照)。
-
2本のアクセス立坑(内径6m)と立坑間を結ぶ連結坑道で構成される中央セクションを挟んで、2箇所の処分ゾーンを設ける。
-
一方は、図4にも示したように8本の処分坑道で構成される、ガラス固化体(ZAGALCパッケージ)の処分ゾーン。
-
もう一方は、4本の処分坑道で構成される、HAGALC2及びカテゴリB廃棄物の処分ゾーン。
なお、この予備的な設計は、将来ほぼ確実に改定・詳細化されるものである。また、カテゴリB廃棄物は、安全評価の対象としていない。
放射線防護基準 (安全評価の法令・規制要求事項)
高レベル放射性廃棄物及び長寿命中低レベル放射性廃棄物の地層処分に関しては、当局(FANC)による特別な規制は定められていない。
SAFIR2報告書の安全評価では、国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告(ICRP77、81ほか)に基づき以下の線量、リスク拘束値を使用している。
-
基本シナリオ:0.3mSv/y
-
変動シナリオ:個人の放射線リスクRiにより評価する。
Riは、Ri =(ある線量に曝される確率)×(被ばくにより死亡する確率)
=(被ばく確率)×(個人実効線量)×(リスク係数)
使用するリスク係数は、以下の値を用いている。
-
一般公衆:5×10-2(1/Sv)
-
職業人 :4×10-2(1/Sv)
-
非致死性の癌の発生を含めた場合:7×10-2(1/Sv)
-
2. 処分システムと安全要件 | 対象廃棄物 / 想定処分地 / 処分概念 / 放射線防護基準 ← NOW You are Here!
-
3. 安全評価の進め方 | FEP / シナリオ / モデル / 不確実性の取り扱い
-
4. 評価結果