SR-Can (スウェーデン)
フォルスマルク及びラクセマルにおけるKBS-3処分場の長期安全性 − SR-Canプロジェクト 主要報告書、TR-06-09、SKB社(2006年10月)
SKB; Long-term safety for KBS-3 repositories at Forsmark and Laxemar - a first evaluation Main Report of the SR-Can project, SKB TR-06-09 (October 2006)
<if group == tidb>SR-Can Main Report (SKB TR-06-09)</if>
安全評価書の位置付け
スウェーデンにおける高レベル放射性廃棄物の処分概念(KBS-3システム)では、使用済燃料をキャニスタに封入する施設(キャニスタ封入施設)と、その処分場(使用済燃料処分場)の2つの施設が必要である。建設許可申請には、施設の操業に関する安全報告書のほか、処分の長期安全性に関する安全報告書(SR: スウェーデン語で Säkerhetsredovisningという。)が必要である。
SKB社が『研究開発実証プログラム2004』(2004年9月)で提示した処分事業計画では、キャニスタ封入施設の建設許可申請を2006年に、使用済燃料処分場の建設許可申請を2008年に提出する計画であった。SKB社は、キャニスタ封入施設についてはSR-Can(Canはキャニスタを意味する)、使用済燃料処分場についてSR-Siteと呼ばれる長期安全性の評価報告書を取りまとめる計画であった。しかし、研究開発実証プログラム2004の審査過程において、使用済燃料の処分には2つの施設が共に必要不可欠であるため、2施設の建設許可申請を別々に審査・決定すべきではないという点が指摘された。
この指摘を受けてSKB社は2005年に申請書提出計画を修正し、その結果としてSR-Can報告書は、キャニスタ封入施設の建設許可申請を裏付ける安全報告書としての役割が外され、SR-Siteプロジェクトの準備段階の報告書と位置付けられた。したがって、SR-Canの呼称は、キャニスタ封入施設との関連を想起させるが故に適切なものではなくなったが、進行中の評価プロジェクト名称(SR-Canプロジェクトは2002年に開始)の変更が困難であったため、変更することなくSR-Canという名称が用いられている。なお、SKB社はキャニスタ封入施設の建設許可申請を2006年11月に行っている。
評価のねらい/目的
SR-Can報告書は、最終処分場申請を裏付ける長期安全性の評価報告書を取りまとめるSR-Siteプロジェクトの準備段階の報告書(言い換えると、試行版)である。SR-Can評価の目的は、
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キャニスタ封入施設の建設許可申請書に記載された仕様のキャニスタを、最終処分場の候補地であるフォルスマルクとラクセマルに処分した場合の安全性についての最初の評価を行うこと。
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設計開発、SKB社の研究開発計画、継続するサイト調査、および将来の安全評価プロジェクトに反映情報を提供すること。
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SR-Siteプロジェクトの準備として、適用される規則の解釈についてスウェーデンの規制機関である原子力発電検査機関(SKI)と放射線防護機関(SSI)との対話を促進すること。
とされている。
注記:SKIとSSIは2008年7月に統合し、放射線安全機関(SSM)となっているが、ここではSR-Canの取りまとめ当時の状況でまとめている。
SR-Can安全報告書の構成
SR-Can安全報告書の全体は、右の図に示すように3階層をとっている。最上位(第1レベル)にある『SR-Can主要報告書』(SR-Can Main Report)が評価全体の総括報告書である。第2レベルには9つの主参考資料(Main references)があり、SR-Can評価で行われるステップに対応する報告書がある。第3レベルには、第1または第2レベルの報告書で参照される参考資料(Additional references)である。
SR-Can評価を実施してのSKB社の結論
規制上のリスク基準の遵守については、どのキャニスタも定置後数千年間続く温暖期の損傷はないと評価された。 放射線防護機関(SSI)規定したリスク基準については、フォルスマルクとラクセマルの処分場は予備解析の結果から適合すると評価されたが、ラクセマルの 処分場については、モデルの水理的な解釈が処分場の候補領域外のデータに基づいており、明確に結論できるためには代表的なデータで評価する必要がある。
評価対象の処分システムについて
対象廃棄物
対象廃棄物はスウェーデンの原子炉から発生する使用済燃料であり、1999年と2005年に運転を停止したバーセベック1号機と2号機を除き、全ての原子炉の運転期間を40年間とする使用済燃料の総量は9,300トンと推定されている。SR-Canの評価では、将来的なスウェーデンの原子力プログラムの見通しをもとに、6,000体のキャニスタ(約12,000トンの燃料相当)を収容する処分場を想定している。
使用済燃料はキャニスタに封入して処分される。キャニスタは、鋳鉄製インサートと銅製アウターシェルの二重構造である(長さ約4.8m、直径1.05m)。アウターシェルの厚さは5cmである。インサートは BWR 用と PWR 用の2種類が検討されており、BWRの場合は12体、PWRの場合は4体の燃料集合体を収納する。
処分概念
処分概念は、鋳鉄製インサートを有する銅製キャニスタに使用済燃料を収納して縦置きで定置し、その周囲をベントナイトで取り囲む人工バリア構成をもつKBS-3処分概念に基づいており、キャニスタは地下500mの母岩中に処分する(Figure 4-2)。
処分場の地質環境・立地条件(評価上の設定)
SKB社は、2002年よりスウェーデン南東部のフォルスマルク(エストハンマル自治体)とラクセマル(オスカーシャム自治体)の2カ所でサイト調査(地上からのボーリング調査を含む)を行っている。SR-Can安全評価は、これら2つの処分場候補地を対象として、サイト調査の初期段階で取得した地質データを用いて実施された。
フォルスマルクとラクセマルのいずれの候補地とも、フェノスカンディアと呼ばれる古い大陸性の地殻の上に位置しており、岩盤は19.5~17.5億年前(古原生代)に形成された結晶質岩である。
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フォルスマルク地区の岩盤は、延性変形と塑性変形の両方の影響を受けている。地下施設の候補エリアは歪集中帯の間に挟まれ、断層から一定以上の離れた所にレンズ状の塊となって残っている相対的に安定な岩体(「構造レンズ」と呼ばれる)が検討されている。石英を多く含む変成花崗岩が支配的である。
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ラクセマル北部と南部ではÄvrö花崗岩が支配的であり、南部では石英モンゾ閃緑岩、閃緑岩~斑れい岩で構成される岩盤領域に属する。
放射線防護基準 (安全評価の法令・規制要求事項)
安全評価の形式、内容、並びに処分場の安全性を判断する基準は、原子力発電検査機関(SKI)と放射線防護機関(SSI)の以下の規制文書(規則と一般勧告)に定められている。
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「使用済燃料または放射性廃棄物の最終的な管理と関連する人の健康と環境の防護に関する放射線防護機関の規則」(SSI FS 1998:1)
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「使用済燃料または放射性廃棄物の最終的な管理と関連する人の健康と環境の防護に関する放射線防護機関の一般勧告」(SSI FS 2005:5)
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「放射性廃棄物の最終処分における安全性に関する原子力発電検査機関の規則及び一般勧告」(SKIFS 2002:1)
人間の健康の防護についてのリスク基準
安全評価の指標となる線量はSSIの規則(SSI FS 1998:1)に規定されており、人間の健康の防護について「閉鎖後における有害な影響の年リスクは、最大のリスクに曝されるグループの代表的な個人の場合で10-6を超えない」とするリスク基準の遵守によって実証されなければならないとされている。「有害な影響」は発癌と遺伝性欠陥のことを意味し、放射線被ばくの結果として生じる有害な影響の確率は、国際放射線防護委員会(ICRP)が1990年に発行したPublication 60で示されている確率を用いて計算することをSSI規則で定めている。
SSIの一般勧告(SSI FS 2005:5)では、ICRP Publication 60(1990年)に示されている、実効線量をリスクに換算するための係数は1シーベルト当たり7.3%であることが述べられている。この係数を用いると、10-6/年のリスク限度は約1.4×10-5Sv/年(14μSv/年)の実効線量に相当することになる。
処分場の安全性立証に求められる解析・評価
SSIの規則と一般勧告によると、以下に示すリスク解析・線量評価の結果を示すことが必要である。(※SSI FS 1998:1及び2005:5では処分事業者が提示すべき各解析・評価を指す特別な略号は使われていないが、このページの説明では便宜上A1~A3と表記している。)
(A1) 擾乱を受けていない処分場についてのリスク解析結果
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個々のシナリオによるリスク寄与を足し合わせて“リスク総和”(の経時変化)を解析する(仮定された気候変遷ごとに計算)。
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このリスク総和に適用される基準は、SSI規則(SSI FS 1998:1)に規定されているリスク基準 10-6/年である。
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ただし、最大被ばくを受けるグループが少数の個人だけで構成される場合、10-5/年を許容する。
(A2) 特別なシナリオの解析結果
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特別なシナリオの解析は、リスク解析(A1)とは別に行う解析である。SSIは処分事業者(=SKB社)に対し、処分場の最初の1,000年間における防護能力にとって極めて重要な、一つまたは複数のバリア機能が喪失するような場合の解析結果を示すことを勧告している。
(A3) 処分場が人間活動によって擾乱を受けた場合についての線量評価結果
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処分場に侵入する個人に対する直接的な帰結については、処分事業者に説明責任を求めない。(それ以外については説明責任を求めている。)
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SSI規則(SSI FS 1998:1)では、この種の線量評価結果に適用される基準は示されていない。
リスク基準の適用期間についての考え方
リスク解析を行う期間について、SSIは「使用済燃料または他の長寿命原子力廃棄物の処分場については、十分に予測可能な外的影響を例証するために、リスク解析は少なくとも約10万年、または氷期1サイクルに当たる期間を含むべきである」とし、「リスク解析の期間は、最大でも100万年とし、処分場の防護能力の改良可能性についての重要な情報をもたらす限りの期間まで拡張されるべきである」と勧告している。
リスク基準の適用についてSSIは、10万年(大まかな目安であり、氷河作用などが処分場の防護能力を例証できるような形で選択されるべき年数)以降では、「個人リスクに関する基準に対して、計算されたリスクの値を厳格かつ定量的に比較することは意味をなさない」としている。
解析・評価を行うべきシナリオ
SKIは一般勧告(SKIFS 2002:1)において、「安全評価におけるシナリオは、外部条件と内部条件の組み合わせが処分場の性能にいかに影響するかの記述から構成される」という考え方を示している。
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処分場のバリアの外側で働く、特性、事象、プロセスの形式での外部条件であり、これには、永久凍土、氷床形成、地盤沈下及び地盤隆起のような、気候変化及びその結果として処分場環境に及ぼされる影響、並びに人間の活動の影響が含まれる。
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処分場の内側で働く、特性、事象、プロセスの形式での内部条件であり、これには、核物質、原子力廃棄物及び人工バリアの性質または欠陥、それらに関連するプロセス、並びに周囲の岩盤及びそれに関連するプロセスが含まれる。
このような考え方により、SKIは一般勧告において、“処分場の性能に重要な影響をもつ様々なシナリオ”は以下の3つのカテゴリ(※SKIFS 2002:1では各カテゴリを指す特別な略号は使われていないが、このページの説明では便宜上S1~S3と表記している。)に分類されるとしている。
この分類は、処分場の安全性立証における各シナリオの扱われ方・性質を解説したものであり、個別具体的なシナリオを定めたものはない。逆に言えば、SKIは処分事業者に対し、各カテゴリに属するシナリオの具体的内容、安全性立証において当該シナリオを採用する理由(つまり、3カテゴリのいずれかに割り当てた、その理由)を説明することを求めている。
(S1) 主要シナリオ / The main scenario
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S1の主要シナリオは、擾乱を受けていない処分場のリスク解析結果(上記A1)に反映される性質のシナリオである。
«SKIFS 2002:1の一般勧告より»主要シナリオは、外部条件の予測される変遷に、及び内部条件に関する現実的な想定に、またはそうする理由がある場合には悲観的な想定に、基づくべきである。その将来の外部事象については、安全評価の対象期間における発生確率が非常に高いか、または発生確率が低いことを示すことができないものから構成されるべきである。更に、その内部条件については、製造上の欠陥及びその他の不備の発生に関する根拠ある想定を含めて、可能な限り、信用できる仮定(credible assumptions)に基づいたものであるべきであり、このことによって処分場のバリア機能の解析が可能となる(例えば、廃棄物容器が長期間、密封されていることを常に前提とすることは、たとえこのことが最も確率が高いことを示すことができるとしても十分でない)。主要シナリオは、不確実性がいかに影響するかの解析の出発点として使用されるべきであり、このことは、主要シナリオの解析にもかなり数の計算ケースが含まれることを意味する。
(S2) 発生確率の低いシナリオ / Less probable scenarios
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S2に属するシナリオのうち、将来の人間活動を考慮していないシナリオは「擾乱を受けていない処分場のリスク解析結果」(上記A1)として提示される性質のシナリオである。
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S2に属するシナリオのうち、将来の人間活動を考慮しているシナリオは「人間活動により擾乱を受けた処分場の線量評価結果」(上記A3)として提示されることになる。
«SKIFS 2002:1の一般勧告より»発生確率の低いシナリオは、シナリオの不確実性の評価のために用意されるべきである。これには、主要シナリオにおける事象の進展が異なるバリエーションのほか、バリアが損害を受けるような将来の人間活動を考慮したシナリオ(処分場に侵入する人間が受ける損害は、下記の「残余シナリオ」で例証される)が含まれる。発生確率の低いシナリオの解析においては、主要シナリオの枠内で評価されないような不確実性の解析が含まれるべきである。
(S3) 残余シナリオ / Residual scenarios
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S3に属するシナリオのうち、将来の人間活動を考慮していないシナリオは「擾乱を受けていない処分場のリスク解析結果」(上記A1)としては提示されない。
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S3に属するシナリオのうち、将来の人間活動を考慮しているシナリオは「人間活動により擾乱を受けた処分場の線量評価結果」(上記A3)として提示されることになる。
«SKIFS 2002:1の一般勧告より»残余シナリオには、とりわけ個々のバリア及びバリア機能の重要性を例証するために、確率とは無関係に選択されて調査される事象の進展及び条件が含まれるべきである。残余シナリオには、処分場に侵入する人間が受ける損害を例証するケースのほか、閉鎖されていない処分場が監視されずに放置された結果を例証するケースも含まれるべきである。
安全評価の方法論について
SR-Can安全評価の進め方
SKB社は、SR-Canの安全評価を、以下の主要10段階からなる手順に沿って実施している。
① 考慮すべき要因の特定(FEPの処理)
② 初期状態の記述
③ 外部条件の記述
④ プロセスの記述
⑤ 安全機能、安全機能指標、安全機能指標基準の定義
⑥ インプットデータの集成
⑦ 基本的変遷の定義と解析
⑧ シナリオの選択
⑨ 選択されたシナリオの解析
⑩ 結論
FEPの取り扱い
安全評価において全ての因子が検討されることを確実にするために、最初のステップとして、解析に含めることが必要なあらゆる要因を特定する。この作業では、長期安全性に係わる処分システムの特性、発生しうる事象、進行するプロセスを抽出して、それらをFEP(特性・事象・プロセス)データベース化している。SKB社が以前に実施した安全評価 SR97(1999年)では、プロセスマトリクスという表形式で整理する方法を用いていたが、SR-Can安全評価ではFEPデータベースを利用することによって要因抽出の確実性と網羅性を高めている。
SKB社は、SR97の成果をFEPデータベース形式に再整理し、OECD/NEAの国際FEPデータベースに含まれている海外のデータベースと比較し、すべての関連因子が考慮されていることが確実であるようにしている。SKB社のFEPデータベースには、KBS-3処分概念(SKB社が採用している処分概念)には直接的に関係しないFEPも含まれている。
SR-Can安全評価を進めるためにSKB社は、FEPデータベースの部分集合として、KBS-3処分概念で取り扱う必要があるすべてのFEPを分別整理することにより“SR-Can FEPカタログ”を作成している。このカタログの分類は“初期状態FEP”、“内部プロセスFEP(プロセスと状態変数に分割)”、“外部影響FEP”などであり、それぞれの情報セットが確実に得られるような分類方法を採用している。
このようなFEPの取り扱いは、SR-Can安全評価における“不確実性への取り組み”の一つでもある(下記参照)。
シナリオ
SR-Can安全評価は、SKIの一般勧告に従って、「処分場の将来の変遷に影響を与える可能性がある事象及び条件に関係するシナリオを確認し、記述する」ために使用された方法についての説明を試行したものである。SR-Can安全評価において、SKB社が選定したシナリオを表1に示す。
以下では、SKB社が用いたシナリオ導出方法について、以下の2つに分けて解説する。
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(1) 「擾乱を受けていない処分場に対するリスク解析」のためのシナリオの導出
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(2) 「将来の人間活動に関連したシナリオ」の導出
(1) 「擾乱を受けていない処分場に対するリスク解析」のためのシナリオの導出
シナリオ導出方法:安全機能の概念を利用した評価シナリオの導出
SKB社は、SKIの一般勧告で示されている「①主要シナリオ」、「②発生確率の低いシナリオ」、「③残余シナリオ」の各カテゴリに属する具体的なシナリオを選択した過程を示すために、次のような段階的な作業を行っている。
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処分場システムの安全機能、その指標及び指標基準を定義し、処分場システムの妥当と考えられる変遷(「基本的変遷」という)を記述し、解析する。その結果に基づき、基本的な変遷に対応する「①主要シナリオ」を選定する。
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「基本的変遷」を出発点として、処分場の安全機能が維持されない状況を導く可能性がある要素に着目して「追加シナリオ」を選定する。
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追加シナリオの解析と評価を行い、当該の追加的シナリオが「②発生確率の低いシナリオ」または「③残余シナリオ」のいずれに該当するかを判断する。
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「②発生確率が低いシナリオ」に該当すると判断した場合、「①主要シナリオ」とともにリスク総和の対象し、処分場の全体的なリスクを評価する。
**安全機能 -> 安全機能指標 -> 安全機能指標基準**
SKB社は、KBS-3処分概念の主要安全機能は放射性物質の隔離と核種移行遅延であるとし、処分場システムの各構成要素がもつ役割(安全機能)、その役割を計るための指標(安全機能指標)、その指標がクリアすべき条件(安全機能指標基準)の検討結果を示している。
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処分システムの構成要素: キャニスタ、緩衝材、埋め戻し材(処分坑道部分)、地圏 (計4つ)
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安全機能(safety function)とは、それによって処分場の構成要素が安全性に寄与する何らかの役割である。
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図中の各ボックスの1行目のこと。C1~C3、Bu1~Bu7、BF1、R1~R4の全15項目ある。
安全機能指標 (safety function indicator)とは、安全機能が満たされる程度を示す、処分場の構成要素の測定可能または計算可能な特性である。-
各ボックスの「2行目の式」の左辺。安全機能を計るための特性の名称(変数名)。
安全機能指標基準(safety function indicator criterion)とは、安全機能指標がこの基準を満たすならば対応する安全機能が維持されるような、定量的な限度(値または形容詞)である。-
各ボックスの「2行目の式」の右辺。安全機能指標が満足しているべき条件を数式で設定している。
(a)基本的変遷に対応するシナリオ(=主要シナリオ)の設定
SKB社は、処分場の基本的変遷の解析を行った上で、キャニスタが初期状態で備えるトレランスに基づいて主要シナリオを設定している。具体的には、主要シナリオでは“最初の10万年間はキャニスタ損傷の発生はない”という想定である。10万年以降では一部の処分孔内(緩衝材部分)が移流条件となり、その結果としてキャニスタの銅製アウターシェル、鋳鉄製インサートが順に腐食・貫通して核種放出に至る、と想定している。SKB社は、キャニスタの腐食損傷発生数について、
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フォルスマルクの場合、10万~100万年までの間にキャニスタ10体
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ラクセマルの場合、10万~100万年までの間にキャニスタ50体
として解析をおこなっている。
なお、主要シナリオは、以下の二つの気候変遷について設定されている。
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ウルム氷期バリアント: 約12万年間隔のウルム氷期サイクルが繰り返され、100万年の間に8回の氷期が訪れると想定するシナリオ。
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地球温暖化バリアント: 処分場閉鎖後、最初に到来する氷期の始まりが約5万年遅くなるシナリオ。
(b)追加シナリオの導出 ->「発生確率の低いシナリオ」と「残余シナリオ」への分類
追加シナリオは、主要シナリオに含まれていない不確実性を例証するためにSKB社が選択したものであり、安全機能の喪失を導く可能性がある要因の解析に基づいて選ばれている。SKB社は「キャニスタの安全機能が喪失するシナリオ」(3種類)と「緩衝材の状態」(4種類)の組み合わせにより、追加シナリオを導出している。
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■キャニスタ損傷の発生
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腐食に起因するケース:安全機能 C1
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過大静水圧に起因するケース:安全機能 C2
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剪断移動に起因するケース:安全機能 C3
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■緩衝材の状態
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(キャニスタが損傷していても)緩衝材の安全機能が維持されている緩衝材(基本状態)
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移流条件を有する緩衝材:安全機能Bu1aまたはBu1bの喪失、特別なケースとして、安全機能Bu6の喪失を含む
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(熱により)変形・変質した緩衝材:安全機能Bu5の喪失
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(氷期の影響により)氷結した緩衝材:安全機能Bu7の喪失
SR-Can安全評価においてSKB社は、これらの組み合わせで得られるシナリオの解析結果を示すと共に、各シナリオが「発生確率が低いシナリオ」または「残余シナリオ」のいずれのカテゴリに分類されるかの判断結果を示している。SKB社は「発生確率の低いシナリオ」カテゴリ(=リスク解析に含めることが必要なシナリオ)に属するものは以下の2つがあるとし、他のシナリオは「残余シナリオ」に分類している。
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「定置孔における移流条件」と「全面腐食によるキャニスタの破損」の組み合わせシナリオ: 氷河融水が地下深部まで流入して、緩衝材(ベントナイト)がイオン強度が低い水と接触すると、ベントナイトがコロイド化して流出・侵食する。定置孔内で移流条件が優勢となり、地下水に含まれる成分(硫化水素やメタン)によって、銅製アウターシェル(キャニスタ)の腐食が進行して損傷する。アウターシェルの腐食貫通後、インサートが腐食・貫通して核種の放出に至る、と想定している。この損傷モードは、基本的変遷、つまり主要シナリオにおいて発生するものと同じである。この追加シナリオは、基本的変遷では扱われていない不確実性を包括するするために解析するシナリオであり、基本的変遷の場合よりも大きな影響があるケースを扱っている。
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SR-Can安全評価では、地下水流量と組成について悲観的に想定することにより、腐食損傷が起こる時期を早めている。損傷は1,000年以降で生じ、100万年までにフォルスマルクでは37本、ラクセマルでは120本のキャニスタが損傷する、という扱いである。(リスク解析結果を示した図13-2では、細い実線で表示されている。)
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キャニスタの剪断破壊シナリオ:大地震(例えば退氷期に発生する)によって引き起こされる、岩盤剪断運動に起因する損傷。この損傷モードでは、キャニスタの銅製アウターシェルと鋳鉄製インサートの両方が同時に破壊する、と想定している。このシナリオの発生確率は低いが、完全に排除することはできない。
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SR-Can安全評価では、100万年間に6,000体のキャニスタのうちの1本が損傷する確率(フォルスマルクの場合0.117、ラクセマルでは0.0645)が、1,000年から100万年までの間に一様分布で表現できると仮定している。(リスク解析結果を示した図13-2では、丸マーク付きの細い実線で表示されている。)
(2) 「将来の人間活動に関連したシナリオ」の導出
シナリオ導出方法
SKB社はSR-Can安全評価において、将来の人間活動に関連して評価すべきシナリオ(Future Human Actionsから、 FHAシナリオと呼ばれている)を以下のような手順で選定する考えを示している。
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人間活動の技術的分析 (人間活動とは、処分場の安全機能に影響を及ぼす可能性があり、技術的視点からその実施が確実に可能なもの)
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社会的要因分析
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代表的ケースの選定
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選定ケースのシナリオ作成と影響解析
「人間活動の技術的分析」では、人間活動が処分場に及ぼす影響の観点から、熱的影響(T)、水理学的影響(H)、力学的影響(M)、化学的影響(C)に分類し、処分場の安全機能に対する潜在的な影響を検討している。「社会的要因分析」では、将来に破壊的行為が実施される原因と、一般的知識や規制といった現代の社会的諸条件について検討している。これらの検討を踏まえて、SKB社はSR-Can安全評価においては、代表的ケースとして以下の3つを挙げている。ただし、SR-Can安全評価では、最初に挙げている「ボーリングによるキャニスタの貫通」ケースについてのみ、線量計算ケースを設定して評価結果を示しているにとどまっている。
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ボーリングによるキャニスタの貫通
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処分場周辺の岩盤施設
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フォルスマルクサイト周辺の鉱山
なお、SKIの一般勧告では「残余シナリオ」として、「処分場へ侵入する人間に対する損害」を例証するケースと「監視されずに放置された処分場」の被害影響を例証するケースの評価結果の提示が勧告されているが、SR-Can安全評価ではSKB社は後者のケースは検討していない。
モデル
サイト記述モデル(SDM):サイト条件(岩盤条件・地圏)のモデル化
評価対象地点(フォルスマルクとエストハンマル)の岩盤特性や地下水流動の形態は、複数のモデル化手法を組み合わせてモデル化している。
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連続多孔質媒体モデル (CPMモデル:Continuum Porous Medium model)
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等価連続多孔質媒体モデル (ECPMモデル:Equivalent Continuum Porous Medium model)
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離散亀裂ネットワークモデル (DFNモデル:Discrete Fracture Network model)
DFNモデルは、亀裂をもつ岩盤を様々な半径と方向をもつ仮想的な円形亀裂の集合で表現し、仮想円形亀裂面が相互に交差している部分を辿ったネットワークが優先的な地下水流動経路となると見なすモデルである。仮想亀裂の方向や半径によって、地下水流動の方向や流量が模擬される。DFNモデルを利用することにより、岩盤特性に備わる異方性を多孔質媒体モデルに取り入れたものを“ECPMモデル”としている。
核種移行解析モデルの概要
SR-Can安全評価における核種移行解析フローは、SR-Can安全報告書のFigure 10-12に示されている。移行解析の全体的な概要は以下のようになっている。
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損傷したキャニスタの外部と燃料の間に連続した水みちが形成される以前には、キャニスタからはいかなる放出も起こらない。放出が生じるような水みちが形成されるまでには何千年もかかるであろう。放射性壊変によって放射性核種の量と燃料の放射線学的毒性は減少してゆく。
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連続した水みちが形成されると、インベントリのうちの瞬時放出となる核種はキャニスタ空隙にある水に溶解する。それ以外の核種は、燃料ペレット(UO2)の溶解とともに水に溶解する。水中の核種濃度は、溶解度限度以上には高くならない。水に溶解した核種はキャニスタの外部に移行できるようになる。
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核種は緩衝材内で吸着されるが、その効率は変動する。拡散と吸着の特性によって緩衝材を拡散移行で通過するのに要する時間が決まる。もしもこの時間が核種の半減期の数倍よりも短ければ、その核種は通り抜けて岩盤の中に入る。
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岩盤中では、岩盤の核種吸着特性、及び移行特性によって、岩盤から生物圏への核種の移行に要する時間が決まる。核種が十分な程度に減衰する前に地層を通過するかどうかは核種の半減期によって決まる。
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生物圏中では、核種固有の放射線学的毒性と、核種が放出される生物圏タイプにおける核種の収支変動に依存して線量に寄与する。これら両方の因子は、“ランドスケープ線量換算係数”(LDF)で扱っている。
キャニスタの損傷発生のモデル
キャニスタの損傷発生形態(モード)として、以下の4つの形式(モード)を検討している。SR-Can安全報告書では、これらの損傷モードの概要をFigure 10-2で説明している。(※SR-Can安全報告書ではキャニスタ損傷モードを指す特別な略号は使われていないが、このページの説明では便宜上M1~M4と表記している。)
これらの損傷モードのうち、M2とM3は、主要シナリオ及び追加シナリオで解析しているシナリオで用いられている。シナリオを設定するにあたり、キャニスタ損傷の発生数や発生時期の推定には、サイト条件のモデル化に使用しているDFNモデル手法を利用している。
(M1) ピンホール欠陥成長モード ("growing pinhole failure" mode)
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このモードは、最初の小さな損傷がやがては大きな損傷にまで至る場合の影響を検討するために使用されている。基本的変遷では、キャニスタ(銅製アウターシェル部分)の初期条件の設定は貫通ピンホール欠陥がないという前提であるが、キャニスタ損傷が発生した場合における処分場構成要素の性能を解析するために使用されている。
(M2) 移流・腐食損傷モード ("advection/corrosion failure" mode)
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ベントナイト緩衝材が浸食された場合に起こるキャニスタの損傷モードであり、低イオン濃度の氷河融水が緩衝材と接触した場合に生じうる。 安全機能C1と対応している。
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銅製アウターシェルの腐食貫通発生時と、その内側の鋳鉄製インサートの腐食貫通発生時は異なる。
★DFNモデルを用いたキャニスタ損傷の発生時期と本数の推定
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移流・腐食損傷モードは、亀裂が処分孔を横切っており、地下水がベントナイト緩衝材と接触している場所で発生すると考えられる。
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処分孔を横切る「DFN仮想亀裂面」のサイズ(=地下水流量の大きさ)に応じて、ベントナイト緩衝材が流出して移流条件が生じるまで時間が変わる。
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したがって、DFNモデル空間における処分孔レイアウトに基づいて、キャニスタ損傷本数の経時変化を算出できる。
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see p.362 Figure 9-103, Table 9-22 (Forsmarkの場合)
(M3) せん断移動損傷モード ("shear movement failure" mode)
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処分場付近での大きな地震(例えば、氷床荷重が変わる退氷期に発生する)の影響によって誘起される2次的な岩盤の移動の影響として起こりうる損傷モードである。安全機能C3と対応している。
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銅製アウターシェルと鋳鉄製インサートは、同時に損傷する。
★DFNモデルを用いたキャニスタ損傷の発生確率の推定
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処分場から半径5km以内でマグニチュード6以上の地震が、12万年(氷期サイクル1回)あたりに発生する確率は3×10-2(3%)である(専門家の判断)。
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地震が発生した場合、ある一定以上の半径をもつ「DFN仮想亀裂面」の半径が大きくなり、処分孔を横切る位置で剪断移動損傷モードが発生すると考えられる。
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したがって、DFNモデル空間における処分孔レイアウトに基づいて、潜在的に剪断移動損傷モードが発生しうる処分孔の割合(潜在的に不適切な位置に設けられる処分孔の割合)を算出できる。
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上記の処分孔の割合に、地震発生確率を乗じると、キャニスタ損傷数の期待値が計算できる。
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see p.332 Figure Table 9-19
(M4) 地殻均衡荷重損傷モード ("isostatic load failure" mode)
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氷河の上載荷重による地殻均衡圧が増加した結果起こりうる損傷モードである。安全機能C2と対応している。
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銅製アウターシェルの損傷発生時と、その内側の鋳鉄製インサートが腐食によって貫通する時は異なる。
ランドスケープモデル:生物圏のモデル化と線量換算係数の導出方法
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ランドスケープ・モデル(Landscape model)は、定訳がないが(カナ表記では長くなるため)「地形モデル」とも言われる。
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このモデルを用いて導出する線量換算係数は、ランドスケープ線量換算係数 (Landscape Dose Factor)と言い、LDFと略記する。
ランドスケープモデルは、生態系の空間分布(生物圏)を複数のコンパートメント(区画)から構成されるネットワークとしてモデル化したものである。各コンパートメントには、沿岸、沼地、森林、農耕地、湖、海の生物圏オブジェクト(biosphere object)を割り当てる。各コンパートメントに割り当てる生物圏オブジェクトを変えることにより、地表景観(ランドスケープ)の変遷を描写する(例えば、海 → 沿岸 → 農耕地 → 森林)。コンパートメント・ネットワークは、核種放出点の経時変化と生態系の経時変化をすべて扱えるような複雑さをもつように構成する(Forsmarkは25個、Laxemarは26個のコンパートメントでモデル化)。
生物圏をランドスケープモデルで扱うことにより、放射性核種の生物圏全体での蓄積・分布状況の経時変化を現実的に表現する。例えば、海底の泥に蓄積していた核種が後になってから陸地に現れ、農耕地の土壌となって放射線源として被ばくに寄与する状況が考慮される。
ただし、ランドスケープモデルでは、井戸利用による被ばくは分けて扱っている。これは、井戸利用は地表に放出される前の地下水利用の形態であり、地表景観に依存しないためである。
ランドスケープモデルを用いた線量換算係数(LDF)の評価方法
ランドスケープモデルとして模擬された生物圏に、地圏から放射性核種が1Bq/yで放出されると仮定する。この生物圏において最大被ばくを受けるグループの実効線量を計算することにより、線量換算係数(単位:Sv/y per Bq/y)を評価している。
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処分場候補地域(フォルスマルクとラクセマル)について、BC.8000年(紀元前)~AC.10000年(西暦)まで(約2万年間)の地表景観(ランドスケープ)の変遷を1,000年単位でシミュレーションする。
このシミュレーション期間は、処分場候補地が氷期に積み重なった氷床が消失した時(BC.8000)から始まり、処分場候補地域は海面下にある(水没期)。氷床荷重が解放された結果としての隆起が続くことにより、処分場候補地域が海面上に現れる沿岸期、ボスニア湾(バルト海)が消失(AC.9000頃)して淡水湖沼が残る陸地期へと変遷する。シミュレーションの終わりは、気候が寒冷化して最初の永久凍土が生じると予想される直前まで(AC.10000頃)である。 -
各コンパートメントに、生物圏オブジェクト(biosphere object)を割り当てる際には、すべての資源をそのコンパートメントから得ることができる人口グループの数も設定する(例えば、海の場合には1000人規模であり、陸地では1名未満のこともある)。
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BC.8000年からAC.10000年まで、ランドスケープモデル内に1Bq/yでの核種放出が継続するとして計算する。地圏から生物圏への放出は、地表の水理地質モデルに基づく予想放出点をもとに、複数のコンパートメントに配分する。1000年単位で、各コンポーネントへの割り当て作業を行いつつ、当該コンポーネントですべての資源を得る人口グループが受ける実効線量を評価する。
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各計算ステップで、核種毎に、全コンパートメントについて見た場合の、構成員の実効線量の分布を“余累積分布関数”(CCDF: Complementary Cumulative Distribution Function)で近似評価する。これにより、最大被ばくを受ける個人の実効線量を算出する。(Figure 10-4を参照。近似曲線で、N=1となる場合の線量?)Figure 10-4を例にすると、青色破線で描かれた縦線で示された値(3.5×10-13Sv/y per Bq/y)がこれに該当する。
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最大被ばくを受ける個人の実効線量率と、その1/10 の範囲における算術平均値から、最大被ばくを受けるグループの代表的個人に対する実効線量率を計算する。Figure 10-4を参照のこと。Figure 10-4を例にすると、青色破線と赤色破線で挟まれた線量区間に含まれるコンパートメントには、1,173人が含まれ、この集団が「最大被ばくを受けるグループ」となる。1,173人の線量の算術平均値が「最大被ばくを受けるグループの線量」となり、緑色破線で示された値(5.9×10-14Sv/y per Bq/y)がこれに該当する。
LDFの設定
SR-Can安全評価では、ランドスケープモデルを用いたシミュレーション結果から、LDFを以下の4期間について設定している。井戸利用シナリオで評価された線量換算係数がランドスケープモデルでの求められた値よりも大きい場合には、LDFの値は井戸利用シナリオで算出された値を設定する。
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間氷期 (Interglacial period) … ランドスケープモデルを用いた線量計算結果から、BC.8000~AC.10000の間で最大の線量を与える計算区間(1000年単位)での換算係数をLDFとする。
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永久凍土期 (Permafrost period) … AC.10000年(間氷期が終わる時点)におけるコンパートメントへの生物圏オブジェクトの割り当て状態について、農耕地が割り当てられているコンパートメントを森林または沼地に置き換えて計算することでLDFを設定する。
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氷期 (Glacial period) … BC.8000年(間氷期の始まる時点)の線量換算係数をLDFとして設定する。
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温暖化シナリオの場合の間氷期 (Greenhouse case) … AC.10000年(間氷期が終わる時点)におけるコンパートメントへの生物圏オブジェクトの割り当て状態がAC.50000まで維持され、ランドスケープモデルに1Bq/yの核種放出が継続するとして、BC.8000~AC.50000の間で最大の線量を与える計算区間(1000年単位)での換算係数をLDFとする。
不確実性の取り扱い
SKB社はSR-Can安全評価において、“安全評価の目的(purpose、なぜ安全評価を行うのか)は、不確実性の取り扱い方(マネジメント)を左右するものである”と述べた上で、安全評価を行う目的として次の2つをあげている。
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規制要求事項に対する適合性を評価すること
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処分システムの設計、研究開発、サイト調査にフィードバックを提供すること
第1の目的について、十分な安全裕度を確保できるならば、多くの不確実性を悲観的に取り扱うことで目的を概ね達成できる。しかしながら、第2の目的については、処分場の安全性にとって重要な不確実性因子を明らかにし、詰め切っていない設計部分をどのように決定していくべきかを検討するために、洗練されたマネジメントが必要となるとの見解を述べている。
不確実性の分類
SKB社は、安全評価において取り組むべき不確実性を、以下のように分類している。
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問題構造に起因する不確実性 (System uncertainty) … 問題の捉え方が十分に包括的であるか、重要な側面を解析で正しく取り扱っているか。
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概念の不確実性 (Conceptual uncertainty) … 処分場の変遷(経時変化)で起こるプロセスのメカニズムの理解が正しいか、解析に用いるモデルの追従性と限界についても正しく理解しているか。
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データの不確実性 (Data uncertainty) … データ項目間での相関(相互に矛盾している使い方はないか)、モデル変数(パラメータ)が自然の変動性を近似的に集約している性質のものかどうか、モデル変数自体の前提条件と実験データの取得条件間の整合性、データの外挿/内挿の扱い方など
SR-Can安全評価における“不確実性への取り組み”
“専門家の判断”の文書化
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安全評価において「専門家の判断」を要するものには、実験結果に関する科学者の見解から、将来の気候変遷の影響に関する専門家の判断、処分場の変遷に係わる特定のプロセス/現象が発生する見込みに関する評価まで、様々なものがある。安全評価のトレーサビリティを確保する観点から、データとプロセスの文書化において、所定の“書式テンプレート”(記述項目の見出し)を採用している。このテンプレートを共通的に使用することにより、どこで専門家の判断が行われ、誰によってどのように判断されたかを明確化するように工夫している。
問題構造に起因する不確実性への対応 -> KBS-3処分概念に特化したFEPのカタログ化
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安全評価において全ての因子が検討されることを確実にするために、FEP(特性・事象・プロセス)のデータベースを用いている。 FEPデータベースの網羅性を確保するとともに、その部分集合として、KBS-3処分概念(SKB社が採用している処分概念)で取り扱う必要があるすべてのFEPを収録したSR-Can FEPカタログを作成している。カタログを“初期状態FEP”、“内部プロセスFEP”、“外部影響FEP”などから構成しており、それぞれの情報セットが確実に得られるような分類方法を採用している。
シナリオの選択における対応 -> 安全機能を起点としたシナリオ導出
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評価するシナリオを選択するという作業は「主観的性質」を帯びるものだとの認識を踏まえ、誰にとっても納得感(confidence)のあるシナリオの選定結果に至るように、処分システムの安全機能に着目した、論理的なアプローチによって評価すべきシナリオを導出している。また、非現実的なシナリオを含めて、影響の上限を把握するための計算ケースも解析している。
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最終的に選定されたシナリオの解析結果をまとめる際に、それらのシナリオによって不確実性のカバー(ヘッジ)状況を整理して報告するセクションを用意している。
概念の不確実性への対応
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“処分システムの内部プロセス”の文書化では、記述すべき内容を定めた書式テンプレートを共通的に使用しており、プロセス及びそれに付随する概念の不確実性を一貫した方法で説明するように工夫している。各プロセスについて、安全評価を行う時点で残されている不確実性についても述べた上で、その情報に基づいて安全評価における当該プロセスの取り扱いを確立するという順序である。
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“処分システムの外部影響”(例えば、生物圏や気候変遷)については、様式化する際に、将来に起こりうる変遷の範囲をカバーできるように検討することで不確実性の大部分を管理している。
データの不確実性への対応
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SKB社は、安全評価の定量的な側面において使用される全ての入力データは、不確実性を伴うものであると認識している。計算結果の品質は、特に「入力データの品質」と「入力データの不確実性を取り扱う際の厳格性」に左右される。したがって、不確実性を伴う入力データの選定、及びその不確実性の取り扱いのために、方法論的アプローチが必要だとしている。
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SKB社の“値の割り当て手順”は、安全評価用のあらゆる関連データに使用すべきプロトコルという形を取っている。これはQA手順の一部でもある。データと不確実性の推定は、様々な対象領域で行なわれる。各種条件下における不確実性の評価や入力データの最終的な選定過程は、データ報告書に標準形式で提示する方法を採用している。具体的には、各データ項目について、専門家から提示された入力を列記し、それを踏まえてSR-Canチームが行なった判定結果を記述する方法である。
モデルの文書化
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安全評価で用いるモデルを文書で解説し、計算を再現して監査できるようにすることも必要である。このためモデルの文書化においては、コードの検証結果や他のモデルとのベンチマーク結果を参照できるように配慮している。SR-Can安全評価ではプロセスとモデルの対応関係や様々なモデル間の関係を説明するために、評価モデルフローを図式化したり、プロセスとモデルの対応関係を明瞭にする方法を検討している。
安全報告書の結論セクションにおける “不確実性の取り扱い”の総括のしかた
SKB社は、使用済燃料の処分場の建設許可申請に添付する安全報告書(SR-Site)では、その結論部分において、安全評価結果に対する“信頼度の声明文”(Statement on the confidence)を提示する意向である。SKB社は、安全評価の結果に対する信頼度(confidence)の議論には、安全評価の“完全性”あるいは“包括性”が問題を含まれるとの認識であり、次の2つの質問に対する回答を用意することが必要である、と考えている。
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長期安全性と関連する因子はすべて特定されているか?
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特定されたすべての因子が、安全評価において十分に扱われているか?
これら2つの事項を確実にすべく成された取り組みは、安全評価での不確実性への取り組みに関する説明と重なると認識されている。SKB社は「SR-Canでの評価は包括的なものである一方、厳密な意味での完全性は決して証明し得ない」と考えており、「完全性が達成されないとして、たとえば重要な有害プロセスの特定を保証するためのあらゆる努力にもかかわらず、それが特定されないまま残るとした場合の考えうる影響を議論するのが妥当である」という考え方を述べている。SR-Can安全評価の段階では、その最も極端な例として「安全機能が早期に、かつ完全に喪失する場合の影響を議論する」という案を提示しているにとどまっている。
評価結果
SR-Can安全評価で行われている解析結果のうち、“処分場の安全性立証に求められる解析・評価”への対応として提示されているシナリオの評価結果を整理する。スウェーデンではリスク解析が求められているが、ここでは線量での評価結果を先に示し、その後リスク評価の結果を示す。
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擾乱を受けていない処分場についてのリスク解析 (「主要シナリオ」と「発生確率の低いシナリオ」)
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(1)「定置孔における移流条件」と「全面腐食によるキャニスタの破損」が組み合わされたシナリオ の線量評価
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(2) キャニスタの剪断破壊が生じるシナリオ の線量評価
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処分場が人間活動によって擾乱を受けた場合についての線量評価
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(3) 将来の人間活動に関連するシナリオ の線量評価
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リスク基準の遵守の評価
(1)「定置孔における移流条件」と「全面腐食によるキャニスタの破損」の組み合わせシナリオ の線量評価
緩衝材の浸食の結果として、処分孔内で移流条件が優勢となった場合に発生する、銅(キャニスタ)の腐食に起因する損傷。イオン強度が低い氷河融水によって、ベントナイト緩衝材がコロイド化して流出・浸食される。キャニスタが地下水と接触できるようになると、水に含まれる硫黄とメタン成分により、銅製アウターシェルの腐食が進行する。アウターシェルが腐食貫通した後、鋳鉄製インサートが腐食が進み、貫通すると核種放出に至る。
銅製アウターシェルの腐食: キャニスタの側面部分において、キャニスタの半周分が幅35cmの帯状にわたって均一に腐食する。
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Realisticな推定([HS]+[CH4]=10-6M) : 100万年までは銅製アウターシェルが腐食で貫通することはない。
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Cautiousな推定([HS]+[CH4]=10-5M) : 100万年間での銅製アウターシェルの腐食貫通は、フォルスマルクの場合には10体、ラクセマルの場合には50体のキャニスタで生じる。 ⇒ 「主要シナリオ」としての想定
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Pessmisticな推定([HS]+[CH4]=10-4M): 100万年間での銅製アウターシェルの腐食貫通は、フォルスマルクの場合には37体、ラクセマルの場合には120体のキャニスタで生じる。⇒ 「発生確率の低いシナリオ」としての想定
鋳鉄製インサートの腐食: 銅製アウターシェルが腐食貫通した後、インサート部が腐食貫通するまでの時間は、1,000年から10万年の間の三角形状分布で10万年にピークを持つと仮定している。このため線量評価の結果は、統計処理を行った後のものである。以下に示すFigure 12-14と12-15で示されている線量の経時変化は、1万回の個別計算(10,000 realisations)で得た値を平均したものである。
評価結果:フォルスマルクの場合
フォルスマルクに処分場を設置した場合の線量評価結果は、Figure 12-14に示されている。黒線(図中ではCase A)が「主要シナリオ」に相当、赤線(図中ではCase B)が「発生確率の低いシナリオ」に相当する。(いずれも、太線が地圏での核種移行を考慮した計算結果、細線は考慮していない計算結果である。)
評価結果:ラクセマルの場合
(2) キャニスタの剪断破壊が生じるシナリオ の線量評価
大規模な地震(例えば氷期サイクルの退氷期に発生する)によって引き起こされる、岩盤剪断運動にともなってキャニスタが損傷する。岩盤の剪断面がキャニスタと交差するように発生すると仮定し、銅製アウターシェルと鋳鉄製インサートが同時に損傷する。この損傷モードの発生確率は低いが、完全に排除することはできない。⇒ 「発生確率の低いシナリオ」としての想定
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悲観的な推定では、キャニスタ6,000体のうちの1体が損傷する確率について、最初の氷期サイクルが終わる12万年時点での値は、フォルスマルクの場合は0.014、ラクセマルの場合は0.0077と見積もっている。また100万年時点での値は、フォルスマルクの場合は0.117、ラクセマルの場合は0.0645と見積もっている。
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キャニスタの周囲の緩衝材(ベントナイト)も岩盤剪断運動の影響を受ける。解析上は実質的な厚さが35cmから20cmに減少(15cm分減少)すると仮定している(緩衝材での核種移行は、移流条件ではなく拡散条件が維持される)。
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キャニスタを破断するような大規模な岩盤剪断運動後における岩盤特性の評価は困難であるため、天然バリア(地圏)での核種移行遅延はないと仮定している。
評価結果
キャニスタの剪断破壊が生じるシナリオの線量評価は、Figure 10-51に示されている。黒太線がフォルスマルク、赤太線がラクセマルについて評価した結果である。
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2つの候補地(フォルスマルクとラクセマル)を比較すると、ラクセマルに比べてフォルスマルクのほうがキャニスタの損傷発生確率はフォルスマルクのほうが大きいが、サイトの生物圏条件を考慮した線量換算係数が小さいため、線量の数値はフォルスマルクのほうが小さくなっている。
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線量の経時変化グラフは、3万年以降では上に凸の形状になる。これは、使用済燃料に含まれるU-238系列核種の崩壊連鎖が進み、娘核種Ra-226の寄与が大きくなるためである。
U-238(4.47×109年)→ U-234(2.46×105年)→ Th-230(7.70×104年)→ Ra-226(1,600年)
(3) 将来の人間活動に関連するシナリオ の線量評価
SSI一般勧告(SSI FS 2005:5)によると、将来の人間活動に関して、処分場の損傷による放射線量を評価・算定する必要があり、侵入者自身が受ける影響を評価する必要はない。
SKB社はSR-Can安全評価においては、将来の人間活動の代表的ケースとして以下の3つを挙げている。ただし、SR-Can安全評価では、最初に挙げている「ボーリングによるキャニスタの貫通」ケースについてのみ、線量計算ケースを設定して評価結果を示しているにとどまっている。
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キャニスタを貫通するボーリングの後(計算上は1ヶ月後)における現場周辺(半径3m)での公衆被ばく(ボーリング作業者とは別人の被ばく)
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処分場周辺の岩盤施設
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フォルスマルクサイト周辺の鉱山
「キャニスタを貫通するボーリング実施後における現場周辺での公衆被ばく」シナリオでは、放射線被ばくに至る2つの経路(汚染源)を考えている。それぞれの被ばく経路による線量評価結果を右に示す。
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キャニスタを貫通しているボーリング孔内に貯まった汚染水 → 飲用井戸として使用されて被ばくに至る
→ Figure 12-18 -
ボーリング作業時に発生した掘削くずが散乱した土壌汚染現場 → 農耕地として利用されて被ばくに至る
→ Figure 12-19
いずれの評価でも、キャニスタを貫通するボーリングが実施される時期は、処分場の閉鎖後300年以降としている。
リスク基準の遵守の評価
SR-Can安全報告書では、フォルスマルクおよびラクセマルの年間個人リスクの総和は、Figure 13-2に示されている。
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リスク評価の結果は、線量評価の結果にSSI一般勧告で指定されているリスク換算係数(実効線量1シーベルト当たり7.3%)を乗じて算出している。
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リスク総和は、上記の(1)と(2)のシナリオの結果を足し合わせている。
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将来の人間活動シナリオ(3)の結果は、リスク総和の対象としていない。これは、SSIの規則/一般勧告の内容と合致している。
規制機関によるレビューに関する情報
SKB社が2006年10月に取りまとめたSR-Can安全評価報告書『フォルスマルク及びラクセマルにおけるKBS-3概念処分場の長期安全性-最初の評価』(TR-06-09)に対して、規制機関である原子力発電検査機関(SKI)及び放射線防護機関(SSI)が合同でレビューを行い、2008年3月にレビュー報告書を公表している。
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SKI Rapport 2008:19 / SSI Rapport 2008:04 : SKI:s och SSI:s gemensamma granskning av SKB:s säkerhetsrapport SR-Can (2008年3月)〔スウェーデン語版〕
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SKI Report 2008:23 / SSI Report 2008:4e : SKI’s and SSI’s review of SKB’s safety report SR-Can (2008年3月)〔英訳版〕
レビュー報告書においてSKI/SSIは、SR-Canのレビューを「規制当局とSKB社の事前協議プロセスの一環として行われたもの」との認識を表明している。
レビューの実施方法
SKI/SSIはレビューの観点として以下の3つの観点を挙げ、各観点について独立したレビューを行うために3つの国際レビューチームを組織し、レビューを委託している。
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サイト調査データの統合
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人工バリアの設計
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安全評価方法
SKI/SSIは、サイト調査対象自治体(エストハンマルとオスカーシャム)、環境法典に基づく審査(環境裁判)に関与する環境団体にもSR-Canに対する意見提出を依頼している。これらの意見を踏まえて、SKI/SSIは独自の評価を行って約150ページのレビュー報告書を取りまとめている。なお、SKI/SSIのレビュー報告書の中心は、SKB社のSR-Canに対するコメントであるが、国際レビューチームから受けたコメントに対する見解(同意見とするもの/同意しないものの両方)も表明する形式をとっている。
SR-Canが正式な許可申請に係わる安全評価ではなく、サイト記述が2カ所でのサイト調査(地上からのボーリング調査)の初期段階時点で得た限りのデータに基づいた限定的かつ予備的なものであることに留意して、サイト記述モデルについては詳細なレビューや規制独自の解析を行っていない。また、2カ所でのサイト候補地の優劣に結びつく判断を避けているほか、SKB社が提案する処分概念(KBS-3)に基づく処分場の安全性や放射線防護に関する判断も差し控えている。
SKI/SSIによるレビュー結果の結論(要約)
SKI/SSIは、全体を通したレビュー結果の結論を以下の5つに要約している。
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SKB社の安全評価の方法論(ロジック)は、全体としては適用される規則に従ったものであるが、方法の一部は許可申請に向けて更に開発することが必要である。
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SKB社によるSR-Canでの品質保証は、許可申請の目的としては不十分である。
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緩衝材の浸食など、計算されたリスクに対して潜在的に大きく影響する決定的プロセスについて、知識基盤を強化することが必要である。
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処分場構成要素に仮定している初期特性と、それらの製造、試験、操業の品質保証手順との関連に関する説明は、許可申請前に強化することが必要である。
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処分場からの早期放出に関する見通し(potential)について、より詳細な報告が必要である。
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sa/skb_sr-can.txt · 最終更新: 2011/12/13 19:29 by 127.0.0.1
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