米国の連邦議会は、2007年12月19日、高レベル放射性廃棄物処分を含むエネルギー関係等の2008年度歳出予算を、11分野を対象とした包括歳出法案として可決した。歳出法案に盛り込まれた高レベル放射性廃棄物処分関連予算の金額は3億9,000万ドルで、連邦エネルギー省(DOE)の要求額(詳細は こちら)を1億ドル強下回っている。(米国の予算制度については、こちらを参照)
下表は、可決された歳出法案におけるユッカマウンテン関連の歳出予算案について、2007年度歳出予算額及び2008年度DOE要求額との対比を示したものである。
民間分 | 国防分 | 合計 | |
2007年度歳出予算額(a) | 9,921万 | 3億4,650万 | 4億4,571万 |
2008年度DOE要求額(b) | 2億 245万 | 2億9,205万 | 4億9,450万 |
2008年度歳出法案(c) | 1億8,900万 | 2億 100万 | 3億9,000万 |
前年度比(c-a) | + 8,979万 | △1億4,550万 | △5,571万 |
要求比(c-b) | △1,345万 | △9,105万 | △1億 450万 |
両院協議会報告書と同じ効力を持つとされる歳出法案説明書では、下院で可決された歳出法案 と同様に、廃止された原子炉サイトで貯蔵中の使用済燃料についてDOEが引取計画を策定するよう指示している。中間貯蔵サイトも下院案と同様で、DOEの既存サイト、運転中の原子力発電所、国際原子力エネルギー・パートナーシップ(GNEP)プログラムで検討中の11カ所のサイトを含む競争的に選択されたサイトを検討対象として挙げている。
なお、GNEPについては、約4億ドルのDOE要求額に対し、先進燃料サイクル計画(AFCI)が1億8,100万ドルと半額以下に減額されている。この金額には国立研究所の設備更新予算も含まれており、使用済燃料リサイクル等の研究開発予算は1億5,100万ドルである。歳出法案及び説明書の何れにおいてもGNEPという言葉は使われておらず、実証/商業化のための施設建設の予算は認められていない。
また、ユッカマウンテン・プロジェクトに関連した動きとして、放射性廃棄物技術審査委員会(NWTRB)がDOEによる地下水浸透の評価作業に対する技術的評価報告書を公表した。これは2005年3月に発覚した米国地質調査所(USGS)職員による改ざん事件に関連して連邦議会への報告が必要とされていたもので、品質保証(QA)問題以外の技術的側面からの評価が行われている。同報告書では、以下の4点が勧告として示されている。
- 利用可能なすべてのサイト固有データの使用
- すべての関連するサイト固有データによる浸透モデルのキャリブレーション
- 地表近くでの蒸発や植物による吸収等のモデルへの反映
- トータルシステム性能評価(TSPA)において統計的に修正された地下水浸透の評価を使用することは支持しない
【出典】
- 連邦議会図書館 法令情報ウェブサイト(2008年度包括歳出法案 [H.R.2764])
(thomas.loc.gov/cgi-bin/bdquery/z?d110:h.r.02764: ) - 放射性廃棄物技術審査委員会(NWTRB)「DOEのユッカマウンテン浸透評価に対する技術的評価」、2007年12月(約4MB)
【2008年1月16日追記】
2008年1月14日、予算削減により処分場建設認可申請の提出が目標より遅れる可能性があるとDOEが明らかにしたとの報道を受け、予算削減の働き掛けを行ってきた連邦議会上院トップのリード議員(ネバダ州、民主党)は、自身のウェブサイトにおいて、「ネバダ州及び国民にとって素晴らしいニュースである」との声明を発表した。
(post by 原環センター , last modified: 2023-10-10 )