スイス連邦議会のウェブサイトによると、2007年6月22日に「連邦原子力安全検査局(ENSI)に関する連邦政府の法律」(以下「ENSI法」という)の法案が連邦議会で可決された。ENSI法は、現在のスイスにおける原子力部門の監督機関である原子力施設安全本部(HSK)をENSIに改組することを目的としたものである。
スイスの原子力法では、原子力部門の監督機関の独立について規定されている。しかし、現在の監督機関である原子力施設安全本部(HSK)は、組織上、許可発給機関である環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)が所轄する連邦エネルギー庁(BFE)の一部であり、許可発給機関からの独立が確保されていない。今回可決されたENSI法によれば、HSKは連邦原子力安全検査局(ENSI)に改組され、ENSIは法人格を持った連邦政府の機関となり、連邦評議会1 の監督を受けることとなる。ENSI法によれば、ENSIは、ENSI評議会、組織運営部門、監査部門によって構成される。ENSI評議会はENSIの戦略的な目標の策定や業務の遂行の監督などを行うもので、専門家の中から連邦評議会により選任された5~6名の評議員によって構成されることとされている。また、ENSI法によれば、現在のHSKの人員はENSIに移管されることになっている。
なお、原子力部門における諮問機関である原子力施設安全委員会(KSA)のウェブサイトによると、KSAは初期の法案の段階では廃止されることになっていたが、今回連邦議会によって可決されたENSI法案では、KSAに代わり原子力安全委員会(KNS)が設置されることとなっている。
ENSI法は、2006年10月18日に連邦評議会によって法案が策定されており、その後、連邦議会において審議が行われていた。ENSI法は今回の連邦議会での法案の可決により、任意の国民投票2 が行われなかった場合、2008年1月1日から施行されることとなっている。
【出典】
- Kernenergiegesetz(原子力法)、http://www.admin.ch/ch/d/sr/7/732.1.de.pdf
- Bundesgesetz über das Eidgenössische Nuklear-Sicherheitsinspektorat(ENSIG)(連邦原子力安全検査局(ENSI)に関する連邦政府の法律)、2007年6月22日
- 連邦エネルギー庁(BFE)、2006年10月18日付プレスリリース、http://www.bfe.admin.ch/energie/00588/00589/00644/index.html?lang=de&msg-id=7741
- 原子力施設安全委員会(KSA)ウェブサイト、http://www.ksa.admin.ch/website/front_content.php?client=1&lang=1&sid=80d290402c4e2f9e36efa0b50c70b565
- Bundesverfassung der Schweizerischen Eidgenossenschaft(スイス連邦憲法)
【2007年10月23日追記】
連邦エネルギー庁(BFE)は、2007年10月17日付プレスリリースにおいて、2007年6月22日に連邦議会で可決された「連邦原子力安全検査局(ENSI)に関する連邦政府の法律」案について、任意の国民投票は実施されず、国民投票期間が終了したことを公表した。同法におけるENSI評議会に関する規定は、2008年1月1日に施行され、その他の規定は2009年1月1日に施行されるとしている。これによりENSI評議会は2008年初めに設立され、2009年初めの原子力施設安全本部(HSK)からENSIへの移行の準備を行う。
また、同プレスリリースによると、2007年10月17日に、連邦評議会によってENSI評議会及び原子力安全委員会(KNS)の委員が選任された。
- 連邦エネルギー庁(BFE)、2007年10月17日付けプレスリリース、http://www.bfe.admin.ch/energie/00588/00589/00644/index.html?lang=de&msg-id=15181
(post by 原環センター , last modified: 2023-10-10 )