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《カナダ》核燃料廃棄物管理機関(NWMO)が2013‐2017年の実施計画案への意見募集を開始

カナダの使用済燃料処分の実施主体である核燃料廃棄物管理機関(NWMO)は、「適応性のある段階的管理」(APM)(詳細はこちら)の実施に関して、2013年~2017年の5年間における実施計画案を公表し、2013年1月10日までの期限で、意見募集を開始した。NWMOは2008年から毎年、5年間の行動計画をまとめた実施計画案を公表し、幅広く国民の意見を反映して最終化する手順を踏んでいる1

今回公表された実施計画案においてNWMOは、7つの戦略的目標を掲げ、各項目について、2013年~2017年おける活動内容と2013年における活動内容を簡潔に記載している。これらの戦略的目標や、その実現のための活動の適切性について、NWMOが国民の意見を聴きたいと考えている事項を具体的な質問形式にまとめ、巻末に返信用アンケートを添付している。

〔7つの戦略目標とアンケートの設問は下記の表を参照のこと〕

NWMOは、2010年5月から、9段階で進められる使用済燃料処分場のサイト選定プロセスを進めている。今回の実施計画案における戦略的目標の第2項目であるサイト選定に関しては、2010年に開始したサイト選定プロセスの第4段階までのスケジュールを見据えた内容となっており、2013年の活動項目として第3段階の第1フェーズ2 の実施が盛り込まれている。

戦略的目標の第3項目に該当する処分場の設計やセーフティケースの開発に関しては、研究段階からエンジニアリング段階への移行を開始するとされている。今後5年間においてNWMOは、結晶質岩及び堆積岩における処分場の設計及び閉鎖後安全性に関するカナダ原子力安全委員会(CNSC)の事前審査を完了し、2021年頃と予定しているサイト準備・建設に係る許認可申請書の提出へ向けて、設計の最適化を進めるとしている。また、使用済燃料の処分容器の試作品の設計・製造を、カナダ国内の大学や研究機関と連携して進め、処分容器と輸送容器の工学的技術を確立するともに、試験施設を設置し、製造技術等の研究を継続していくとしている。そのために、使用済燃料輸送容器の容器承認のアップデート、地層処分環境での微生物学的プロセスの統合レビューの完了を2017年までの実施項目として設定している。また、2013年には以下の活動を実施するとしている。

  • 処分容器に利用する銅コーティング技術の評価
  • 堆積岩中の高塩濃度環境での銅・鉄の腐食に関する研究の完了
  • 処分容器の密閉に用いる溶接技術の評価
  • 処分容器の定置に関する代替技術のレビュー
  • 適応性のある段階的管理(APM)のための安全解析の準備
  • 緩衝材の製造プロセスに関する研究
  • 使用済燃料の鉄道輸送に関する調査
  • スウェーデン・エスポ岩盤研究所での研究プロジェクトへのNWMOの参加の終了
  • 独立技術評価グループによる技術研究プログラムの年次評価の実施

 

NWMOの2013~2017年の戦略的目標〔案〕 NWMOが公衆の意見を聴きたい
と考えている事項(アンケートの設問)
①関心のある人々との持続可能で長期的な関係の構築及び将来の方向性の設定への参画
②十分な情報の提供を受けた上で、処分場を受入れる意思を示した地域での処分に向け、協力的なサイト選定手続きの実施
③結晶質岩及び堆積岩の双方における処分場のジェネリックな設計とセーフティケースの向上と開発、及び最善の手法に従った継続的な改善を実現するための技術研究と開発の実施
④長期間にわたって確実に使用済燃料を管理するために必要な資金の確保
⑤新たな知見、国際的な最善の手法の事例、技術の高度化、社会的な期待・価値の変化、及び政策変更に適応した処分計画の策定
⑥NWMOの事業の実施に対する一般公衆の信頼の向上に寄与するような責任あるガバナンス体制の維持
⑦社会的、環境的、技術的能力及び財務上の能力を備えた実効的な実施主体の構築と維持
Q1. 実施計画案で示された7項目の戦略的目標は適切か。
Q2. 実施計画案で示している作業や活動計画は適切か。
Q3. 実施計画案は今後予測される課題とその対応について示しているが、今後5年間において対処が必要な重要な課題として何が考えられるか。
Q4. 上記の課題への対応としてNWMOが実施すべきことは何か。
Q5. その他のコメント、質問、提案はあるか。

 

【出典】

  1. NWMOの実施計画の策定やそのための意見募集は、核燃料廃棄物法で定められたものではない。それに対して、毎年公表されている年報や3年に一度公表される「3年次報告書」は、「核燃料廃棄物法」の規定に基づいて策定される。 []
  2. 第3段階では潜在的な適合性の予備的評価が実施される。第3段階は2つのフェーズで構成され、第1フェーズでは机上調査が行われ、第2フェーズでは現地でのフィールド調査や周辺地域の調査も実施される。詳細は2012年7月18日付既報参照。 []

(post by sahara.satoshi , last modified: 2023-10-11 )