米国の原子力規制委員会(NRC)は、2012年9月6日のプレスリリースにおいて、使用済燃料の中間貯蔵に関する「廃棄物保証」に関する決定及び規則の改定、環境影響評価書(EIS)の作成をNRCスタッフに指示したことを明らかにした。これは、「廃棄物保証」規則の2010年改定を無効とした2012年6月8日の米国連邦控訴裁判所判決 へ対応するものであり、EISの作成及び規則等の再改定を今後24ヵ月以内に完了することとしている。なお、NRCは、2012年8月7日の覚書及び命令において、上記の無効判決への対応が完了するまでは、原子炉の一括許認可(COL)等の審査は継続するものの、新たな許認可は発給しないとする決定を行っていた。
具体的なNRCの指示が示された2012年9月6日付けの委員会指示文書は、2012年7月9日付のNRCスタッフ提案文書に対応する形で出されているが、スタッフ提案文書においては、連邦控訴裁判所判決が指摘した不足事項を以下の3つと整理している。
- 不足事項A:必要な時期に十分な容量の処分場が設置されなかった場合の環境影響の考察
- 不足事項B:将来的に発生が想定される潜在的な使用済燃料の貯蔵プールの漏洩による環境影響の解析
- 不足事項C:貯蔵プールにおける火災の確率及び影響の解析
また、上記の不足事項への対応策について、NRCのスタッフは、以下の4つのオプションによる対応が考えられるとしていた。
- NRCでは、既に原子炉の操業停止後60年以降の期間を対象とした「長期廃棄物保証プロジェクト」において、環境影響評価書(EIS)の作成及び規則の策定の取り組みを開始しており、その中で不足事項に対応すること。
- 判決で指摘された不足事項に対応して「廃棄物保証」規則を再改定する。
- 「廃棄物保証」規則の再改定が完了するまでは、不足事項についての一般的解析を行った上で、個別の許認可手続での環境影響評価において一般的解析の結果を適合させながら使用する。
- 判決への対応の進め方を示した委員会の計画に関する政策文書を発行する。
NRCスタッフ提案文書においては、上記の2.と3.とを並行的に進める案を提案していたが、委員会指示文書では、2.による環境影響評価書(EIS)の作成を指示しており、実施中の原子炉許認可手続きでサイト個別のEISを実施する3.適用については、止むを得ない場合に限定すべきとしている。
また、委員会指示文書では、NRCのスタッフは、可能な限り2010年の「廃棄物保証」規則の改定におけるNRCによる環境アセスメント(EA)を活用すべきであり、連邦控訴裁判所判決が指摘した不足事項に対する追加的な分析に焦点を当てるべきとしている。
【出典】
(post by inagaki.yusuke , last modified: 2023-10-11 )