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《フィンランド》地下特性調査施設(ONKALO)における調査の動向―試験用処分孔の掘削完了及びトレーサー試験の開始

フィンランドにおける高レベル放射性廃棄物(使用済燃料)処分の実施主体であるポシヴァ社は、2012年2月1日付のプレスリリースにおいて、オルキルオトに建設中である地下特性調査施設(ONKALO)の実証坑道で、使用済燃料キャニスタの定置試験で使用する最初の試験用処分孔の掘削を1月中旬に完了したことを公表した。ONKALOは、処分場の建設許可申請に必要な情報・データを得ることを目的として、建設・調査・試験が実施されているものであり、処分場は建設許可を受けた後に建設が開始されることとなっている。また、定置試験で用いる使用済燃料キャニスタは、模擬のものが使用されることとなっている。

プロトタイプの処分孔掘削機Rhino 500HSP(ポシヴァ社ウェブサイトより引用)

同プレスリリースによれば、今回掘削された試験用処分孔は、直径が1.77m、深さ8.3mで実際の処分が行われる処分孔と同じ規模とされている。掘削には、狭い地下空間で使用するために新たに開発したプロトタイプ掘削機である「Rhino 500HSP」1 を使い、実証坑道の床面を掘り下げたとしている。試験用処分孔1本の掘削に約1週間を要し、2012年2月中にさらに4本の試験用処分孔を掘削する予定である。

今回の試験用処分孔の掘削の目的は、実際の処分孔に求められる要件を満たす掘削方法と使用機器を確認することとしている。また、掘削した試験用処分孔では、地下水の浸出量の測定、岩盤の亀裂の確認などの地質学的調査、及び試験用処分孔の形状や位置の確認などの物理的測定を行うとしている。

また、ポシヴァ社の2012年3月8日付プレスリリースによれば、ONKALOにおいて低収着性の放射性核種を用いたトレーサー試験を開始し、岩盤マトリクス2 中の核種の拡散挙動について今後3年間ほどかけて調査する予定である。この調査では、処分深度(地下420m)の坑道壁面から水平方向に掘削した長さ約20mのボーリング孔のうちの2mを塞ぎ、その塞いだ部分にトレーサー3 となる低収着性の放射性核種を含む溶液を非常にゆっくりと連続的に注入する方法で行われる。岩盤を移行したトレーサー核種の放射能を測定することにより、岩盤マトリクス中での拡散による放射性核種の移行・遅延効果について、予め作成されたモデルや予測の正確性を確認するとしている。なお、岩盤の放射性核種の移行・遅延に関する研究は、これまでにも、スイス、スウェーデンの地下研究所などで行われているが、今回ONKALOで実施する試験手法と装置を用いたものは初めてであるとしている。

なお、ONKALOでは、2010年6月に掘削が処分深度の地下420mに到達し、処分深度での実証坑道の建設が進められている。ONKALOでの研究によって得られたオルキルオトの岩盤特性に関する情報は、2012年にポシヴァ社が予定している使用済燃料処分場の建設許可申請に必要とされている。また、ONKALOは最終的には処分施設の一部として使用される予定である。

【出典】

  1. ポシヴァ社の2011年8月12日付プレスリリースによれば、幅3.5m、高さ5m弱の小さな坑道内で、直径1.75m、深さ7.8mの処分孔を坑道床面から鉛直に掘削する課題に対応するために専用の処分孔掘削機を開発したとしている。 []
  2. 岩石中の径の大きい粒の間隙を微小な粒子によって埋められている部分をいい、基質とも呼ばれる。亀裂がない岩盤では放射性核種はマトリクス中の連結した微小間隙ネットワークを介して拡散によって移行すると考えられている。 []
  3. 液体など流体の流れ、あるいは特定の物質を追跡するために使われる、微量添加物質。 []

(post by t-yoshida , last modified: 2023-10-11 )