フランスにおいて、1991年放射性廃棄物管理研究法(詳しくは こちら)で定められている3つの研究分野における成果報告に対する総括評価報告書が国家評価委員会(CNE)により公表された。同報告書では、地下研究所のあるビュール・サイトにおいて、可逆性のある地層処分が放射性廃棄物管理の基本方策として採用できるとの評価結果を示した。同法では政府が2006年に放射性廃棄物管理に関する法案を議会に提出することが定められており、CNEは2006年上半期における法案審議に向け、2006年1月末までに同報告書を提出するよう政府から求められていた。政府及び議会は同報告書等に基づいて、法案の作成及び審議を行うとされている。なお、同報告書では、政府は2006年以降についても研究成果の中立的な評価のため引き続き科学的評価の能力を確保することが必要であるため、今後の科学的評価の在り方についての勧告も2006年中にCNEに求めていることが示されている。
同報告書によると、研究の成果は十分に得られており、今後の高レベル及び長寿命中レベル放射性廃棄物管理について適切な戦略上の決定を行うことが可能としている。3つの放射性廃棄物管理研究の中で最も進んでいるのは、放射性廃棄物管理機関(ANDRA)による可逆性のある地層処分に関する研究であり、ビュール・サイトでの研究活動は国際的に最高水準にあるとしている。しかし、CNEは、処分場建設の最終決定のための要件はまだ整備されておらず、地下研究所は十分な期間にわたって操業され、立地に好ましいとされる地質特性についてはサイト内地域の対象を広げて検証されなければならないとしている。
原子力庁(CEA)による長期中間貯蔵に関する研究については、その貯蔵期間が問題となると同報告書では示されている。貯蔵期間が100年以内の場合は、高レベル放射性廃棄物の冷却には十分であるが(60年間の冷却期間を前提とした地層処分への熱影響の点で問題はない)、これより長期間(例えば300年)にわたる場合には、建設すべき中間貯蔵施設の耐久性の問題を考慮する必要があるとしている。また国家評価委員会(CNE)は、長期中間貯蔵は将来世代に放射性廃棄物管理という重い負担を負わせるものだとしている。
また、同報告書で原子力庁(CEA)による核種分離・変換の研究については、中長期的な便益(高レベル及び長寿命中レベル放射性廃棄物のインベントリと発熱量の低減)と短期的なリスク(高レベル放射性廃棄物等の処理の複雑性等)とのバランスを考える必要があり、少なくとも百年以上の期間にわたって原子力を利用する場合にしか意味を持たない長いプロセスであるとしている。したがって、こうした見地に立って、極めて高度な研究・技術開発が継続実施されるべきであるとしている。
同報告書におけるCNEの主な勧告は以下の通りである。
- 放射性廃棄物管理の全体戦略を15年の研究成果から策定すること
- 地層処分を基本方策として採用し、徹底的に研究すること
- 地下研究所内及びビュール・サイトにおける研究を段階的プログラムにより継続実施すること
- 地層処分場の周辺地域における、処分場設置と処分実施に関する全ての問題(地下掘削、輸送、雇用、地域の産業・経済・社会に対する影響)について研究すること
- 廃棄物パッケージ管理の諸段階を踏まえ多種類の廃棄物コンテナに関する研究を深めること
- 天然放射性物質及び人工放射性物質の長期挙動に関する研究を継続すること
- 長期中間貯蔵が管理方策として採用される見込みの場合は研究用のサイトを選定すること
- 核種分離技術を分離後の生成物の将来との関連において開発すること
- 核種分離・変換に関する研究を第四世代の原子炉系の要求との関連において方向付けをし直し調整すること
- 核種変換に関するEUROTRANS研究プログラムの終了時において加速器駆動炉システム(ADS)の役割と将来について結論を出すこと
なお、国家評価委員会(CNE)は放射性廃棄物管理研究に関する科学的な評価を行うのみであり、経済的及び社会的な評価を行うことにはなっていない。CNEは、過去11年にわたって年次報告書を公表し、研究成果についての詳細な評価、勧告を行ってきた。
【出典】
- 国家評価委員会(CNE)、1991年12月30日法律のもとに実施された諸研究に関するCNEの総括評価報告書(政府系ウェブサイトに て公表、www.ladocumentationfrancaise.fr/rapports-publics/064000240 /index.shtml)
(post by 原環センター , last modified: 2023-10-12 )