カナダの核燃料廃棄物管理機関(NWMO)は、2005年11月3日付のニュースリリースにおいて、使用済燃料の長期管理アプローチに関する最終報告書「進むべき道の選択」を天然資源大臣へ提出したことを公表した。 NWMOは、核燃料廃棄物法に基づき2005年11月15日までに使用済燃料の長期管理アプローチを天然資源大臣に勧告することとなっており、今回の最終報告書で、2005年5月に公表されたドラフト報告書で提案されていた「適応性のある段階的管理」(詳しくは こちら)を使用済燃料の長期管理アプローチとして正式に勧告している。
今回の最終報告書と同時に公表された、ドラフト報告書からの変更に関する資料によると、最終報告書では、先住民や市民との対話、パブリックコメントへの対応等の反映や最終報告書での検討のためにNWMOの諮問評議会が提案した分野においての情報の詳細化等がなされたとしている。
ニュースリリースによると、核燃料廃棄物法によってNWMOが検討することとなっていた地層処分、サイト貯蔵、集中貯蔵の3つの管理アプローチは、どのアプローチも利点を持っているものの、いずれも市民が重要と考える目的全てを満たしておらず、NWMOは3つのアプローチそれぞれの利点に基づいた4つ目のアプローチを開発したとしている。
同ニュースリリースでは、適応性のある段階的管理について以下のように述べている。
- 現世代が作り出した使用済燃料の管理へ向けて、現世代が最初のステップを踏み出す。
- 制度や管理形態の変化する中で、長期間にわたり人間の管理システムに依存することは適切ではないことを認める。
- 設計やプロセスを通して厳格な安全基準等に適合させる。
- 段階的な意思決定が可能で、経験や社会変化に対応する柔軟性を提供する。
- 財政的に保守的なアプローチを採用すること及び世代から世代へと受け渡されることに適合できる能力を備えることで、真の意味での選択を提供する。
- 継続的な知見の向上を促進し、性能を強化したり不確実性を減少させる操業や設計の改良を可能とする。
- 最終段階が実施される前に、技術及び支援システムへの信頼性を構築する。
- 将来の世代が施設の閉鎖に十分な信頼を置けるまで、使用済燃料の回収可能性を維持した形で、現実的で、安全確実な使用済燃料の長期貯蔵を提供する。
- 自然もしくは人為的な不測の事態に対する継続的な監視及び備えを提供する。
- 市民の価値、倫理観、及びそれぞれのステップへ進むための十分な確実性が存在するかどうかについて、社会的な判断を可能にする市民の参加に基づく。
同ニュースリリースによると、カナダ政府による使用済燃料の管理アプローチの決定後、NWMOは管理アプローチの実施主体となるとしている。NWMOによれば、サイト選定は開かれた包括的で公正なものでなくてはならず、全ての関心のある地域が自らの見解をNWMOへ伝える機会を持ち、それらが考慮されなくてはならないとしている。また、集中中間貯蔵施設を設置する地域については、核燃料サイクルに直接関わっているオンタリオ、ケベック、ニューブランズウィック、サスカチュワン各州に重点を置くことを示している。
今後は、核燃料廃棄物法に従い、天然資源大臣が使用済燃料の長期的な管理アプローチに関して勧告を行い、最終的に総督によって管理アプローチが決定されることとなっている。
【2005年11月17日追記】
2005年11月4日、天然資源大臣はNWMOの最終報告書「進むべき道の選択」を議会へ提出した。
- 核燃料廃棄物局(NFWB)プレスリリース(2005年11月4日)(http://www.nfwbureau.gc.ca/english/view.asp?x=645&id=34)
【出典】
- 核燃料廃棄物管理機関(NWMO)2005年11月3日付けニュースリリース
http://www.nwmo.ca/default.aspx?DN=1498,50,19,1,Documents - 核燃料廃棄物管理機関(NWMO)、ドラフト報告書から最終報告書への変更点に関する資料
- 核燃料廃棄物の長期管理に関する法律(An act respecting the long-term management of nuclear fuel waste)
(post by 原環センター , last modified: 2023-10-10 )