ドイツ連邦放射線防護庁(BfS)は2005年9月28日付プレスリリースにおいて、地層処分の安全上重要で体系的・概念的な12の検討事項に対して、第三者機関により取りまとめられた報告書が公表され、これらの報告書をピアレビュー1 するワークショップが行われたことを公表した。BfSはワークショップの成果と第三者機関の報告書の内容をまとめた要約報告書を作成し、年末には公開する予定であるとしている。
同プレスリリースによると、上記の一連の作業の出発点となったのはゴアレーベンにおける新たな探査活動の凍結を決めた連邦政府と電力会社の協定であり、岩塩ドームの最終処分のための母岩としての適性のみならず、ドイツ全土で考え得る岩種についての、安全上重要で体系的・概念的な12の検討事項が設定された。これらの問題の検討は、BfSによってドイツ内外の企業や研究所などのさまざまな第三者機関に委託され、その成果が今回公表された報告書である。なお、これらの報告書の結論は概念的なものであり、具体的な最終処分場のサイト選定には関るものではないとされている。
プレスリリースによると、公表された第三者機関の報告書は、結論の正確性を期すため専門家によるピアレビューを受け、専門知識のある複数の人員で構成されたグループによって検討が加えられたとされている。BfSは、最終処分の安全技術に関する検討事項を討議するために約80人の学者や専門家が参加した今回のワークショップの成果、並びに今回公表された検討事項に関する報告書において記述された成果を、「岩種の比較-総括」と題した報告書に取り入れ年末に公開する予定であるとしている。
なお、プレスリリースでは、特に重要な意味を持つ問題点として、次の6点が示されている。
- 諸外国における知見を背景とした、粘土質岩や花崗岩等の岩種と比べた場合の、岩塩の母岩としての適性
- 放射性廃棄物の回収可能性
- 廃棄物の腐食と分解による、高密度な岩塩内におけるガス発生のコントロールの可能性
- 人工バリアと天然バリアの役割
- 核分裂物質の臨界防止
- 意図的ではない処分場への人間侵入
また、前述の12の各検討課題に対しBfSのウェブサイトに公表された報告書の表題は次の通りである。
作業グループ1:処分の実現可能性の実証
- 「放射性廃棄物の最終処分のためのさまざまな地質構造や岩種の天然の隔離能力、及び処分の実現可能性の時間軸の規定」
- 「モデル計算」
- 「自然物と人工物の比較によるプロセス志向的な評価と、放射性廃棄物の最終処分施設のための安全評価における信頼を構築する要素としての評価」
- 「放射性廃棄物の最終処分の長期安全性の評価のための安全性指標」
作業グループ2:個別の観点
- 「放射性廃棄物の最終処分におけるガス発生メカニズム、及びそれによる最終処分場の安全性に関連した影響の調査」
- 「地球化学的なモデル化のためのデータの選別・設定・及び評価」
- 「さまざまな岩種の地層における使用済燃料最終処分場の操業終了後の臨界安全性調査」
- 「あらゆる種類の放射性廃棄物における化学的有害物質の種類と量の算定、及び水管理法の防護目標の観点におけるその放出の評価」
作業グループ3:概念的な基本問題
- 「ドイツ国内の地層に直接最終処分する際の、国際的な核物質の監視(「セーフティ・ガード」)」
- 「放射性廃棄物の最終処分場への人間侵入及びそれと関連する長期的安全性の実証に対する影響の研究」
- 「定置された廃棄物を処分場から回収するというオプションの可能性、及びその安全技術的な帰結の研究」
- 「防護目標の遵守を証明する際の放射性廃棄物最終処分場の多重バリア概念の意義」
【出典】
- 連邦放射線防護庁(BfS)、2005年9月28日付プレスリリース、 http://www.bfs.de/bfs/presse/pr05/pr0532.html
- BfSウェブサイト、 http://www.bfs.de/endlager/publikationen/Einzelfragen_Endlagerung.html
- 専門家間での評価 [↩]
(post by 原環センター , last modified: 2023-10-10 )