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《英国》NDAが地層処分場の一般的な条件でのセーフティケースを公表

英国の原子力廃止措置機関(NDA)は、2011年2月23日付プレスリリースにおいて、処分システム・セーフティケース(DSSC)を作成したことを公表した。DSSCは、地層処分場の操業前(2040年操業予定)に許可申請と共に提出するものであり、処分の安全性に関連する事項を説明したものである。DSSCでは、廃棄物の輸送、処分場の操業及び数十万年にわたる環境保護に関連した全ての安全性に対する懸念ついて、どのように対応するかを示しているとされている。NDAが今回作成したDSSC1 は、現在、処分サイトが決定していない段階のため、広範な環境及び処分場の設計を考慮に入れた、サイトを特定しない一般的な条件とされている。

NDAウェブサイトによると、DSSCは、①輸送セーフティケース(放射性廃棄物の輸送の安全性)、②操業セーフティケース(地層処分場の建設・操業の安全性)及び③環境セーフティケース(地層処分場の閉鎖後における長期安全性)の3つのセーフティケースから構成されている。また、これらのセーフティケースは、複数の安全評価報告書、様々な分野の研究報告書及びその他のサポート文書が基礎となっている(下図参照)。

DSSCの概要報告書によれば、NDAは、将来、適切に選定されたサイトについて、セーフティケースを作成することができるとしているが、選定されたサイトで研究及び調査を実施することにより、解決が見込まれる以下のような重要な課題が存在するとしている。

  • 処分サイトでの地下水系の理解
  • 処分場で発生したガスの地下水への溶解、または周囲の岩盤からの移行
  • 処分場の詳細な設計開発

また、閉鎖後安全評価に関しては、環境セーフティケースの中で取り扱われている。環境セーフティケースを構成している閉鎖後安全評価書では、特に長期的な安全性を立証する上での不確実性をどのように取り扱うかが示されている。この閉鎖後安全評価書では、放射性核種による将来の放射線学的リスクが生じると考えられるものとして、地下水経路の定量的分析や地層処分場内で発生するガス影響の可能性についての現在の知見をまとめている。さらに、閉鎖後安全評価書では、偶発的な人間侵入及び臨界につながる核分裂性物質の集積の可能性という2つの異なるシナリオを用いた評価及び検討を行っている。さらに、サイト選定が進むに従い、この一般的な条件での閉鎖後安全評価を特定のサイトにおける安全評価に発展させていく手法についても説明している。

DSSCを構成する報告書

DSSCを構成する報告書

【出典】

【2011年3月25日追記】

英国の原子力廃止措置機関(NDA)及びエネルギー気候変動省(DECC)は、2011年3月22日、最新版である2010年版の放射性廃棄物インベントリ報告書を公表した。この報告書は、2010年4月1日現在で英国内に存在する放射性廃棄物、原子力施設の運転や廃止措置などで将来発生すると予測される放射性廃棄物のインベントリの他、使用済燃料などの現在は放射性廃棄物と見なされていない物質のインベントリを示したものである。

英国の放射性廃棄物インベントリは3年毎に更新されており、前回は2008年に公表された。なお、今回の報告書では、2007年版放射性廃棄物インベントリに比べ、低レベル放射性廃棄物は1,200,000m3増加、中レベル放射性廃棄物は51,000m3増加、高レベル放射性廃棄物はほぼ変化なし、放射性廃棄物全体では1,300,000m3増加していることが示されている(下表)。

英国の放射性廃棄物インベントリ
    2007年版報告書   2010年版報告書
 低レベル放射性廃棄物 3,200,000 m3 4,400,000 m3
 中レベル放射性廃棄物 240,000 m3 290,000 m3
 高レベル放射性廃棄物 1,100 m3 1,000 m3
     合計 3,400,000 m3 4,700,000 m3

※廃棄物は調整済の状態を想定したものであり、表の数値は2007年4月1日及び2010年4月1日時点の物量と2100年までに発生すると想定される物量を合計したものである。

【出典】

  1. NDAが今回作成したDSSCは、英国で見つけられるような地質環境を想定し、サイトを特定しないで一般的な条件で作成した処分システム・セーフティケースであり、英語では generic Disposal System Safety Case と呼ばれている。 []

(post by f-yamada , last modified: 2023-10-11 )