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《フィンランド》研究炉の廃止措置許可が発給-低中レベル放射性廃棄物はロヴィーサで貯蔵・処分へ

フィンランド国有の有限責任会社で研究開発機関であるフィンランド技術研究センター(VTT)は、2021617日付のプレスリリースにおいて、VTTが所有する研究炉FiR1の廃止措置に関して、フィンランド政府が許可を発給したことを公表した。廃止措置に伴い発生する低中レベル放射性廃棄物は、ロヴィーサ原子力発電所を所有・運転するフォルツム・パワー・アンド・ヒート社(FPH社)が今後、ロヴィーサで貯蔵・処分する計画である。なお、FiR1の廃止措置に伴って発生する低中レベル放射性廃棄物の総放射能量は5テラベクレル(TBq)以下であり、中間貯蔵用容器へ収納した場合は140トン、100m3程度になると推定されている。

研究炉FiR1は、首都ヘルシンキの西隣のエスポー市にある旧ヘルシンキ工科大学(現在のアールト大学)に置かれ1962年に運転を開始し、1971年にVTTへ移管された。これまで原子力に関する教育訓練や放射線治療などで活用されてきたが、VTT2015年にFiR1の運転を停止し、2017年に政府へ廃止措置に係る許可を申請した。なお、FiR1は、フィンランドで廃止措置される初めての原子力施設となる。

研究炉由来の放射性廃棄物管理について

フィンランドでは原子力法に基づいて、原子力利用に伴い発生する放射性廃棄物については発生者がその管理・費用に対して責任を有することが定められている。VTTは、研究炉FiR1の運転及び廃止措置で発生する放射性廃棄物について、その処分を含めた管理の計画・実施に関する責任を有している。これまでのFiR1の運転で発生した放射性廃棄物は、研究炉の施設内において貯蔵されている。また、VTTは原子力法に基づいて、雇用経済省(TEM)が所管する国家放射性廃棄物管理基金(VYR)に廃棄物管理費用を積み立てている。

VTTは放射性廃棄物処分場を有していないため、国内の原子力発電事業者と交渉を行い、20203月にFPH社と研究炉の廃止措置に係る協力協定を締結した。FPH社は、協力協定に基づき廃止措置に係る計画策定、原子炉の解体、低中レベル放射性廃棄物の貯蔵・処分を実施することとなる。今後FPH社は、それらの放射性廃棄物をロヴィーサ原子力発電所において貯蔵・処分するために必要な許可を取得する予定である。VTTは、2017年に政府へ提出した廃止措置に係る許可申請書において、自社が責任を有する放射性廃棄物について、それらが処分される処分施設が閉鎖されるまで、引き続き管理責任を全うすることを記している。

なお、研究炉で使用していた燃料は米国から供給されたものであり、米国との協定に基づいて20211月に使用済燃料は米国へ返還されており、研究炉に由来する高レベル放射性廃棄物はフィンランドに存在しない。フィンランドでは原子力法により使用済燃料の輸出入は禁止されているが、研究炉の使用済燃料については例外扱いとなっている。

今後の予定

VTTは、廃止措置に向けた準備を既に開始するとともに、並行してFPH社と協力して廃止措置計画書の最終化を進めている。放射性物質を含む構造物の解体を開始するには放射線・原子力安全センター(STUK)の許可を受ける必要があるため、VTT2022年初頭に廃止措置計画書を提出し、審査を受ける計画である。2022年末にはFPH社が解体作業を開始し、解体には約1年を要する見通しである。廃止措置の完了後、原子炉が設置されていた建屋は所有者であるアールト大学に返還されることとなっている。

【出典】

(post by t-yoshida , last modified: 2023-10-17 )