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《フィンランド》TVO社が極低レベル放射性廃棄物の地表埋立て処分場を計画

フィンランドでオルキルオト原子力発電所を運転するテオリスーデン・ヴォイマ社(TVO社)は、2021年5月14日付のプレスリリースにおいて、TVO社がエウラヨキ自治体にある同発電所エリアで計画している極低レベル放射性廃棄物の地表埋立て処分に関する環境影響評価(EIA)報告書を雇用経済省(TEM)に提出したことを公表した。TVO社は、オルキルオト原子力発電所の保守・点検作業等で発生した防護服やプラスチック製養生シート等の放射能レベルが極めて低い放射性廃棄物について、今後、地表埋立て処分を行う計画である。

TVO社による極低レベル放射性廃棄物処分計画の概要

オルキルオト原子力発電所では、原子炉2基がそれぞれ1978年と1980年に運転を開始しているほか、欧州加圧水型炉(EPR)である3号機が2022年に運転を開始する予定である。TVO社は、原子炉の運転に伴って発生する低中レベル放射性廃棄物を、同発電所サイト内の地下60~100mの岩盤空洞中に建設された処分場(サイロ型の地下空洞処分場)において、1992年から処分している。所定のクリアランスレベルを満足する廃棄物は、発電所に隣接する自社敷地内の埋立て地で産業廃棄物として処分している。しかし、放射能レベルが極めて低いがクリアランスできない廃棄物については、低レベル放射性廃棄物として地下空洞処分場で処分していた。

フィンランドでは原子力令の2015年改正により、「極低レベル放射性廃棄物」(1kgあたりの放射能量が10万Bq未満)が定義され、これに該当する廃棄物は地表での埋立て処分が可能となった。TVO社は、今後発生する廃棄物については極低レベル放射性廃棄物を分別し、それらを地表埋立て処分することにより、既存の地下空洞処分場の処分容量を有効に活用したい考えである。

TVO社が検討している地表埋立て処分場の概念は、地表地盤上にシーリング層を構築し、その上に廃棄物パッケージを積み上げた後、雨水の浸入を防止する上部シーリング層を施工して覆土するものである。地表埋立て処分場の大きさは80m×110mを予定されている。廃棄物パッケージの処分は5~10年毎のキャンペーン方式で実施され、2090年代まで続く見通しである。地表埋立て処分場の底部に設置された排水/集水システムにより、浸出水の水質をモニタリングする。最終的に処分される極低レベル放射性廃棄物の総放射能量は1TBq未満である。

環境影響評価手続きの流れと予定

TVO社は、今回の環境影響評価(EIA)報告書の提出に先立ち、2020年8月に雇用経済省に極低レベル放射性廃棄物の地表埋立て処分事業に関するEIA計画書を提出していた 。TVO社はEIA計画書に対する公衆の意見や監督官庁の意見書を踏まえて、地表埋立て処分による環境影響の評価を実施し、EIA報告書を取りまとめている。当初、EIA計画書で示された地表埋立て処分の説明では、クリアランスされた廃棄物用の埋立て地(既存)を転用する案が残されていたが、EIA報告書ではその案が削除されている。

雇用経済省(TEM)は、TVO社から提出を受けたEIA報告書について、2021年6月1日から7月31日にかけて公衆などからの意見募集を行うほか、2021年6月17日に公衆向けのオンラインセミナーを開催する予定である。

なお、TVO社はEIA報告書において、地表埋立て処分場は重大な原子力施設には該当しないため、原子力法に基づく政府による原則決定、建設・操業許可の申請手続きは不要であるものの、極低レベル放射性廃棄物の地表埋立て処分を実施するためには、原子力法に基づき放射線・原子力安全センター(STUK)が発給する許可が必要となると説明している。TVO社は、極低レベル放射性廃棄物の処分を2023~2024年頃に開始する予定である。

<参考>環境影響評価(EIA)

フィンランドでは環境に重大な影響が生じる可能性がある事業について、市民を含む利害関係者が情報を事前に入手し、計画策定や意思決定に参加する機会を増やすことを目的として、環境影響評価制度が設けられている。

EIAは、①EIA計画書の作成段階と、②EIAを実施して報告書にまとめる段階から構成されている。事業者がEIA計画書を監督官庁(原子力施設の場合は雇用経済省)に提出し、監督官庁が対象地域住民を含めた利害関係者に意見を求め、寄せられた意見を踏まえて、監督官庁は、必要に応じて計画書に変更を指示することとなっている。

また、EIA報告書が提出された後に雇用経済省は、原子力法の規定に基づき、地元自治体で公聴会を開催するとともに、公告を通じた意見募集で寄せられた意見を踏まえ、実施されたEIAの適切さについての判断を意見書として取りまとめることとなっている。

環境影響評価(EIA)手続きの概要

環境影響評価(EIA)手続きの概要

【出典】

 

(post by t-yoshida , last modified: 2023-10-17 )