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《フランス》地層処分プロジェクトのコスト評価に関する進捗状況を公表

フランスのエコロジー・持続可能開発・エネルギー省は2016年1月11日、地層処分プロジェクトのコスト評価の進捗状況として、放射性廃棄物管理機関(ANDRA)が2014年10月に提出したコスト評価に関する報告書、同報告書に対する原子力安全機関(ASN)の見解及び原子力事業者の見解を公表した。

現在、フランスでは、地層処分事業に係る基金制度はあるものの実際の運用はされておらず、原子力事業者は地層処分場の建設・操業等のコストを賄うために引当金を内部留保している。引当金は、2005年に政府、ANDRA、フランス電力株式会社(EDF社)、AREVA社及び原子力・代替エネルギー庁(CEA)が行った評価結果(135~165億ユーロ(約1兆8,100億円~約2兆2,100億円))に基づいて計上している。

地層処分プロジェクトが具体化する中で、ANDRAは新たにコスト評価を行い、2014年10月に、エコロジー・持続可能開発・エネルギー省に報告書を提出していた。今回、同省は2006年放射性廃棄物等管理計画法の規定 1 に基づいて、ANDRAによるコスト評価報告書とともに、ASN及び原子力事業者の見解を公表したものである。

今回公表された2014年10月のANDRAのコスト評価報告書では、コスト総額は344億ユーロ(約4兆6,100億円) 2 との結果が示されている。

■ANDRAによるプロジェクトコストの評価額(金額は2012年価格)
建設費 198億ユーロ
操業費(操業期間は100年以上) 88億ユーロ
41億ユーロ
その他支出 17億ユーロ
合計 344億ユーロ

 

ANDRAのコスト評価報告書について、ASNは2015年2月10日付で以下のような見解を示していた。

  • コスト評価はデータ等に裏付けされた根拠の確かなものである。特に、地層処分場の安全性についてより適切に考慮されていることから、2005年時点のコスト評価から大きな進展があったと評価できる。
  • 原子力事業者の引当金計上のため、コストは早急に確定されなければならない。しかし、コスト評価におけるANDRAの仮定には、将来的な政策変更によって処分対象となる廃棄物インベントリに、商業用原子炉や研究炉の使用済燃料が含まれる可能性が考慮されていない等の楽観的すぎる点がある。
  • 地層処分プロジェクトについて現時点で不確実性があることはやむをえない。このためコスト評価は少なくとも、設置許可や操業認可の発給時やパイロット操業フェーズ終了時など、プロジェクトの重要なマイルストーンにおいて、定期的にアップデートされるべきである。
  • 情報の透明性を確保するため、ANDRAのコスト評価報告書や原子力事業者の見解は公開されるべきである。

一方、原子力事業者(EDF社、AREVA社及びCEA)が共同で示した2015年4月16日付の見解では、地層処分場の事業期間中の技術的、経済的な最適化等により、コスト総額は200億ユーロ(2兆6,800億円) 3 になるとしていた。

また、ASNの見解に対し、ANDRA、EDF社、AREVA社は2016年1月11日の共同プレスリリースにおいて、フランスの会計検査院(CDC)の試算によれば、発電コストに占める地層処分プロジェクトに係るコストの割合は、1~2%とされており、ANDRAと原子力事業者によるコスト評価結果の違いは電気料金へ大きな影響を与えないとしている。

今後、エネルギー担当大臣はこれらの評価結果を踏まえた処分コストの見積額を決定することとなる。

なお、会計検査院(CDC)は2014年5月に公表した原子力発電事業のコストに関する報告書(更新版)において、放射性廃棄物管理事業に備えるため原子力事業者が積み立てる引当金の算定に採用する割引率(将来費用の現在価値への換算係数)について、2007年のアレテ(省令)に規定される割引率の上限の設定方法を見直すべきであると提言している 4

 

【出典】

【2016年1月18日追記】

フランスのエコロジー・持続可能開発・エネルギー省は2016年1月15日、「高レベル及び長寿命中レベル放射性廃棄物の長期管理方策の実施に係るコストに関する2016年1月15日付のアレテ(省令)」を制定し、同アレテは2016年1月17日付官報に公示された。

本アレテの第1条では、2016年以降、以下に列挙するような140年間にわたる地層処分プロジェクト全体をカバーするコストの目標額を250億ユーロ(約3兆3,500億円)とすることが規定されている。

  • プロジェクトの第一段階の構造物の設計・建設(10年)
  • 地層処分場のパイロット操業フェーズ(10年)
  • 段階的な地層処分場の操業・開発フェーズ(110年)
  • 地層処分場の閉鎖フェーズ(10年)

また、本アレテの第3条では、プロジェクトの進展状況や、原子力安全機関(ASN)の見解を受けて、必要に応じてコストの目標額を見直すことが規定されている。

なお、本アレテにおいてコストの目標額は、2011年12月31日時点の経済条件に基づくものとしており、目標額の内訳は示されていない。

今回のアレテの制定を受けて、放射性廃棄物管理機関(ANDRA)は2016年1月15日付でプレスリリースにおいて、地層処分場の開発プロジェクトは、操業期間を通じて段階的に進める計画であり、技術の進展に伴うイノベーションや、ANDRA及び原子力事業者による最適化を開発プロジェクトに反映することが可能であるとしている。ANDRAは最適化の可能性について、以下の方法を例示している。

  • 高レベル放射性廃棄物の処分坑道:安全要件を遵守しつつ、処分坑道の長さを100メートル以上に延長することにより、コスト削減が実現できる可能性がある。
  • 掘削技術及び処分坑道の支保技術:技術進展によって、掘削スピードが増大するだけでなく、処分坑道のより最適な支保が可能となる。
  • 長寿命中レベル放射性廃棄物の処分坑道:直径を大きくすることによって、処分に必要な空間を確保しつつ、掘削量を低減できる可能性がある。

ANDRAはこれらの最適化について、2018年に予定されている地層処分場の設置許可申請時までには明確化できるとしており、一部の最適化については、設置許可申請段階において安全性の立証を実施することも可能であるとの見通しを示している。その他の最適化については、段階的な地層処分場の開発プロジェクト期間を通じて、長期的な研究が必要になるとしている。

【出典】


  1. 2006年放射性廃棄物等管理計画法は、ANDRAが地層処分のコストを評価してエネルギー担当大臣に提案すること、エネルギー担当大臣は原子力事業者とASNの意見を徴したうえで、これを公表することを規定している。また、併せて、地層処分場の建設段階以降に、建設・操業等に係るコストを賄うための基金をANDRA内に設置することを規定しており、原子力事業者に対して、同基金に将来的に拠出するため、コスト評価とその資金の確保(引当金の積立てと引当金を保証する排他的な資産としての割当)を要求している。さらに、原子力事業者によるコスト評価に対する資金確保及び管理状況の適切性等を評価する組織として、資金評価国家委員会(CNEF)の設置を規定している[]
  2. プロジェクトに関するリスク等が実現した場合のコストへの影響額は含まない[]
  3. プロジェクトに関するリスク等が実現した場合のコストへの影響額は含まない[]
  4. 「原子力債務の資金確保に関する2007年3月21日のアレテ(省令)」の第3条では、割引率の上限値について「当期の決算日において確認された固定金利タイプ30年満期国債金利(TEC 30)の直近48ヶ月の算術平均に1ポイントを加算したものに等しい」と規定されているが、経済状況の変化により国債金利が低下傾向にある。原子力事業者は同規定に基づいて、2012年まで割引率を5%に設定してきたが、国債金利の低下に伴い、割引率は5%を下回っている。[]

(post by eto.jiro , last modified: 2023-10-11 )