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フィンランド政府が使用済燃料処分場の建設許可を発給

使用済燃料処分場のイメージ図

使用済燃料処分場のイメージ図(出典:Posiva Oy)

フィンランド政府は2015年11月12日付のプレスリリースにおいて、同日、エウラヨキ自治体オルキルオトに計画されている使用済燃料処分場について、処分実施主体のポシヴァ社に処分場の建設許可を発給したことを公表した。使用済燃料処分場に対する建設許可の発給はフィンランドが世界初となる。

使用済燃料処分場は、フィンランド南西部のエウラヨキ自治体オルキルオト島内に建設される予定であり、地上のキャニスタ封入施設と地下400~450mに設置される最終処分場で構成される。使用済燃料の処分は、外側が銅製で、内側が鋳鉄製の2重構造の容器(キャニスタ)に封入した上で、その周囲を緩衝材(ベントナイト)と岩盤からなる多重バリアによって安全性を確保するものである。

使用済燃料の処分概念(出典:Posiva Oy)

使用済燃料の処分概念(出典:Posiva Oy)

フィンランド政府のプレスリリースによれば、建設許可を発給した処分場において最大6,500トン(ウラン換算)の使用済燃料を処分することを認めている1 。また、建設許可には許可条件として、今後予定されている処分場の操業許可の申請において、申請書に以下の事項を含めるよう求めている。

  • 処分施設が環境に及ぼす影響に関する解析
  • 使用済燃料の回収可能性
  • 輸送リスク
  • 事業に影響を及ぼす可能性のある要因

フィンランドにおける使用済燃料の処分実施主体であるポシヴァ社は、2012年12月に使用済燃料処分場の建設許可申請書を政府に提出していた。原子力に関する監督機関である雇用経済省は建設許可申請を受け、原子力法・原子力令に規定されている意見聴取手続きに従って、エウラヨキ自治体及び周辺自治体などに対して意見書の提出を求めていた。その一環として、安全規制機関である放射線・原子力安全センター(STUK)は、2015年2月に処分場を安全に建設することができるとする審査意見書を雇用経済省に提出していた。雇用経済省は提出された意見書を元に、政府による発給に向けて、建設許可の許可条件に関する検討を行っていた。
 建設許可の発給を受けてポシヴァ社は、2015年11月12日のプレスリリースにおいて、今後、処分場の建設段階に進むこと、使用済燃料の処分を2020年代初めに開始できるよう計画していることを明らかにした。

フィンランドにおける使用済燃料処分の経緯

フィンランドでは原子力発電から生じる使用済燃料を再処理せず、高レベル放射性廃棄物として地層処分する方針としている。使用済燃料の処分場のサイト選定は1983年に開始され、ポシヴァ社は1999年にオルキルオトを処分地として選定し、同年、原子力施設の建設がフィンランド社会全体の利益に合致することを政府が判断する「原則決定」と呼ばれる原子力法の手続きに基づいて(詳しくはこちら)、オルキルオトに使用済燃料の処分場を建設することについて、政府へ原則決定の申請を行った。政府はポシヴァ社の申請に対して2000年に原則決定を行い、翌2001年に国会が政府の原則決定を承認したことにより、オルキルオトが処分地として決定していた。

ポシヴァ社が使用済燃料の処分を開始するためには、原則決定の後に政府から処分場の建設許可、及び操業許可の発給をそれぞれ受ける必要がある。ポシヴァ社は建設許可の申請に向けて2004年には地下特性調査施設(ONKALO)の建設を開始し、並行して建設許可申請に必要な岩盤や地下水等のデータ取得や、坑道の掘削による地質環境への影響等について調査をしてきた。これまで調査施設として利用されてきたONKALOは、今後は処分場の一部として利用される予定である。

【出典】

  1. ポシヴァ社が2012年12月に提出した建設許可申請書では、フィンランドで現在、テオリスーデン・ヴォイマ社(TVO社)とフォルツム・パワー・アンド・ヒート社(FPH社)が運転している4基の原子炉、及びTVO社が建設中の1基と計画段階の1基を含む、合計6基の原子炉から発生する最大で9,000トン(ウラン換算)の使用済燃料を処分する計画としていた。しかし、TVO社は計画していた新規原子炉について建設許可の申請を断念したため、政府による建設許可で認められた処分量は、計画を取りやめた原子炉から発生する見込みであった量に相当する分だけ減少している。 []

(post by t-yoshida , last modified: 2023-10-12 )