英国の地質学会(The Geological Society)は、2015年3月27日に、地層処分施設のサイト選定プロセスの初期段階で実施される、英国全土(スコットランドを除く)を対象とした地質学的スクリーニングの評価を行う独立評価パネル(IRP)を設置した。この地質学的スクリーニングは、高レベル放射性廃棄物等の地層処分の実施主体である放射性廃棄物管理会社(RWM)が行うものであり、RWMが事前に作成するガイダンスをIRPの7名の委員が評価する。
この独立評価パネル(IRP)は、英国政府の要請により地質学会が設置したものであり、英国政府はIRPに対して、以下の点に注視しつつ、RWMが策定する地質学的スクリーニングのガイダンスを評価するよう要請している。IRPは2015年6月までに評価を完了する予定としている。
- 地質学的、技術的な知見に立脚したものであること
- 既存の地質情報を利用して適用できること
- 地層処分施設(GDF)に関する長期セーフティケースの開発を支援できること
今回設置されたIRPの委員は、委員長を含めて7名であり、産業界及び学術界の経歴を有する英国、スウェーデン、カナダの地球科学分野の専門家で構成されている。委員のうち2名の委員は地質学会員を対象とした公募によって選出した委員であり、その他の5名の委員は地質学会が任命した委員である。以下に各委員の氏名・所属等を示す。
委員長 | クリス・ホークスワース教授(英国ブリストル大学、王立協会特別会員) |
委員 | マイク・ビックル教授(英国ケンブリッジ大学、王立協会特別会員) |
委員 | ジョン・ブラック氏(コンサルタント) |
委員 | ロバート・チャプロー博士(コンサルタント) |
委員 | カーリン・ヘグダール博士(スウェーデンのウプサラ大学) |
委員 | ゾー・シプトン教授(英国ストラスクライド大学) |
委員 | リチャード・スミス教授(カナダのローレンティアン大学) |
【出典】
- 原子力廃止措置機関(NDA)、2015年3月27日付プレスリリース、Independent Review Panel announced
http://www.nda.gov.uk/2015/03/creation-of-an-independent-review-panel/ - 原子力廃止措置機関(NDA)、2015年3月27日付プレスリリース、Siting Director’s Update
http://www.nda.gov.uk/2015/03/siting-directors-update/ - 地質学会ウェブサイト、National Geological Screening Independent Review Panel
http://www.geolsoc.org.uk/irp
【2015年6月16日追記】
高レベル放射性廃棄物等の地層処分の実施主体である原子力廃止措置機関(NDA)の放射性廃棄物管理会社(RWM)は、英国全土(スコットランドを除く)を対象とした地質学的スクリーニングのガイダンス案に関して、独立評価パネル(IRP)との公開会合を2015年6月23日にロンドンで開催する。これに先がけ、RWMはIRPのレビュー用に作成したガイダンス案を2015年6月12日付けで公表した。今回のガイダンス案の作成を含む、地質学的スクリーニングの実施に向けたスケジュールについては、2014年10月に開催された技術イベントで公表されていた 。RWMは、IRPによるレビュー結果を踏まえてガイダンス案の完成度を高めた後、2015年内に公開協議を実施したうえで最終化するとしている。RWMは英国地質学会(The Geological Society)とともに、最終化したガイダンスに基づく地質学的スクリーニングを2016年に実施する予定である。
今回、放射性廃棄物管理会社(RWM)が取りまとめた地質学的スクリーニングのガイダンス案では、既存の情報を活用した地質学的スクリーニングの実施方法、また、どのような結果を提示するかなどについて、5つの地質学的なトピックス(岩種、岩盤の構造(断層・破砕帯、褶曲の位置等)、地下水、自然現象(地震・断層活動、氷河作用等)、資源の賦存)ごとに、RWMの取組方針を取りまとめている。
【出典】
- 原子力廃止措置機関(NDA)ウェブサイト、2015年6月12日付プレスリリース、NGS document for panel discussion、 http://www.nda.gov.uk/2015/06/ngs-document-for-panel-discussion/
- 原子力廃止措置機関(NDA)ウェブサイト、Draft National Geological Screening Guidance: A document for the Independent Review Panel、 http://www.nda.gov.uk/publication/implementing-geological-disposal-draft-national-geological-screening-guidance-a-document-for-the-independent-review-panel/
- 2015年6月23日の公開討議の告知サイト、Development of the National Geological Screening Guidance: the Independent Review Panel invites Radioactive Waste Management to a meeting in public、 http://www.eventbrite.com/e/development-of-the-national-geological-screening-guidance-the-independent-review-panel-invites-tickets-17026587983
【2015年7月31日追記】
高レベル放射性廃棄物等の地層処分の実施主体である原子力廃止措置機関(NDA)の放射性廃棄物管理会社(RWM)は、2015年7月29日に、英国全土(スコットランドを除く)を対象とした地質学的スクリーニングのガイダンス案に関して、ロンドンの英国アカデミーで2015年6月23日に開催した独立評価パネル(IRP)との公開会合の会合報告書を公表した。会合報告書によると、公開会合にはIRPの7名の委員のうちの5名、RWMから4名、一般傍聴者の約50名がこの会合に参加した。公開会合の模様は、インターネットを通じてライブ配信1 も行われた。
会合報告書によれば、今回のRWMとIRPとの公開会合では、RWMがIRPのレビュー用に事前に取りまとめ・公表していた地質学的スクリーニングのガイダンス案(2015年6月16日追記を参照)で示していた5つの地質学的なトピックス※のうち、①岩種、②地下水、③資源の賦存についての議論が行われた。公開会合の後、RWMとIRPが一般の傍聴者からの質疑に対する応答が行われた。一般傍聴者からは、独立評価パネルの独立性や委員の選出方法、沿岸域での処分場の建設可能性、地質学的スクリーニング結果の説明先に関する質問などの9つの質問が寄せられている。
※5つの地質学的なトピックスは、(1)岩種、(2)岩盤の構造(断層・破砕帯、褶曲の位置等)、(3)地下水、(4)自然現象(地震・断層活動、氷河作用等)、(5)資源の賦存である。(2015年6月16日追記を参照)
【出典】
- 原子力廃止措置機関(NDA)ウェブサイト、2015年7月30日、http://www.nda.gov.uk/2015/07/national-geological-screening-for-the-disposal-of-radioactive-waste-report/
- 原子力廃止措置機関(NDA)ウェブサイト、2015年7月29日、http://www.nda.gov.uk/publication/national-geological-screening-for-the-disposal-of-radioactive-waste-2/
- 3KQ、National Geological Screening for the disposal of radioactive waste: A meeting of the Independent Review Panel on 23 June 2015、http://www.nda.gov.uk/publication/national-geological-screening-for-the-disposal-of-radioactive-waste-2/?download
- 公開会合の模様は、下記アドレスより閲覧可能である。
https://www.youtube.com/channel/UCpFJyxnagWhTWURacGN42KQ [↩]
(post by f-yamada , last modified: 2023-10-11 )