米国の連邦議会下院議員のハーディー議員(ネバダ州選出、共和党)は、2015年3月22日に、ネバダ州ユッカマウンテンにおける高レベル放射性廃棄物の地層処分場の建設について、議論を呼び掛ける署名記事を地元新聞に投稿した。3月23日には、記事と同様の内容を議員の公式ウェブサイトにも掲載しており、拒絶のみでなく率直な議論が必要などとしている。ハーディー議員は、ユッカマウンテンが立地するネバダ州ナイ郡などからなる選挙区選出の下院議員として、2014年11月4日の連邦議会議員選挙で初当選した。
ハーディー議員は、ユッカマウンテン問題は長らく「中間」を失った問題となっているとして、連邦議会議員が真の解決策よりも再選を気にしているなどの問題点を指摘し、連邦政府が精力的に調査してきたユッカマウンテン処分場について、ネバダ州知事などが一貫して拒絶してきたが、立地が適切であれば信用しようなどとしている。その上で、エネルギー省(DOE)、大統領府などが示していない「ユッカマウンテンでの高レベル放射性廃棄物処分をネバダ州が受入れることができるシナリオはどのようなものか」との基本的な論点を示し、州内の学校への継続的な投資などネバダ州の地位を向上させる投資、コロラド川からの水利権割合の増加、輸送・インフラ投資の増加、世界から学術研究を呼び寄せる教育システムの確立に繋がる可能性など、具体例を挙げながらこの論点に対する問い掛けを行っている。
ハーディー議員は、ネバダ州民がユッカマウンテンでの高レベル放射性廃棄物処分を望まず、上記の論点に対する答えが、そのようなシナリオは存在しないというものであれば、ネバダ州が立地を強制されることがないよう同議員も州民のために戦うとしつつ、シナリオの成立の可能性があるのであれば、安全基準が確実に守られることを前提として、少なくとも率直な対話は行うべきなどとしている。
ハーディー議員の署名記事の投稿に対して、強行にユッカマウンテン計画に反対しているリード上院議員(ネバダ州選出、民主党、少数党院内総務)は、2015年3月22日のプレスリリースにおいて、ネバダ州での高レベル放射性廃棄物処分は絶対に許容できるものでなく、ネバダ州民を環境破壊から守ることに見合う利益はないとしている。また、ネバダ州独自の専門家による評価では、ユッカマウンテンはリスクが大きく、技術的欠点の多い提案であることがわかっているとしている。なお、ネバダ州選出の連邦議会議員では、他にタイタス下院議員(ネバダ州選出、民主党)も公式ウェブサイトにおいて、ハーディー議員の署名記事を批判するプレスリリースを出している。
【出典】
- ハーディー下院議員公式ウェブサイト、2015年3月23日付け論説
https://hardy.house.gov/media-center/editorials/congress-broken-and-so-discussion-about-yucca-mountain - ハーディー下院議員、2015年3月22日付け署名記事(Las Vegas Review Journal紙)
http://www.reviewjournal.com/opinion/hardy-time-nevada-talk-yucca-mountain - リード上院議員プレスリリース(2015年3月22日)
http://www.reid.senate.gov/press_releases/2015-22-03-reid-statement-on-cresent-hardy-op-ed-calling-on-nevadans-to-reopen-yucca-mountain-debate - タイタス下院議員プレスリリース(2015年3月22日)
http://titus.house.gov/press-releases/titus-on-yucca-mountain-there-is-no-middle-ground-when-it-comes-to-protecting-nevada
(post by inagaki.yusuke , last modified: 2023-10-11 )