米国テキサス州のウェイスト・コントロール・スペシャリスト(WCS)社は、2015年2月7日に、低レベル放射性廃棄物のWCSテキサス処分場のサイトにおける使用済燃料の中間貯蔵施設の建設について、2016年4月までに許認可申請を行うとした意向通知(2015年2月6日付け)1 を原子力規制委員会(NRC)に提出したことを公表した。WCS社による使用済燃料の中間貯蔵施設の建設については、WCSテキサス処分場が立地するテキサス州アンドリュース郡が、2015年1月20日に、建設計画を承認する決議を行っていた 。
WCS社は、中間貯蔵施設の建設プロジェクトの専用ウェブサイトを開設し、親会社であるヴァルヒ社からの公式プレスリリースのほか、中間貯蔵施設の建設サイト予定図などのプロジェクトの概要等を伝えている。建設サイト予定図では、中間貯蔵施設は約14,000エーカー(約5,700万m2)のWCS社サイト内に低レベル放射性廃棄物の処分場等と隣接して設置され、第二期分の中間貯蔵施設のための拡張スペースも確保されていることが示されている。
専用ウェブサイトに掲載された公式プレスリリースでは、2016年4月までに「独立使用済燃料貯蔵施設」(ISFSI)の許認可申請書を原子力規制委員会(NRC)に提出する計画であり、2020年12月には許認可手続を経て建設を完了するとの目標が示されている。
専用ウェブサイトに掲載されたプロジェクト概要資料では、建設プロジェクトの実施に向けてAREVA社と協力していること、使用済燃料の輸送は鉄道に拠ることなどが示されている。また、WCS社の計画は、WCS社の顧客と見込まれる連邦政府に対して、原子力発電所から使用済燃料を引き取る契約義務について 、それが果たされる機会を提供するものであるとしている。なお、WCS社は、中間貯蔵施設の許認可・建設等について、連邦政府や州からの資金は求めないとしている。
今回のWCS社の公表に対して原子力エネルギー協会(NEI)は、2015年2月9日に、「集中貯蔵はユッカマウンテン処分場の計画を補完する」とした上で、WCS社による使用済燃料の中間貯蔵施設の建設計画を歓迎するニュースリリースを公表している。NEIのニュースリリースでは、連邦議会に対し、ユッカマウンテン処分場に係る許認可手続の完了のための予算確保とともに、WCS社のプロジェクトなどの機会を活かすため、エネルギー省(DOE)に集中中間貯蔵プログラムに係る実施の権限と予算を与えるように行動することを促している。
【出典】
- ヴァルヒ社(ウェイスト・コントロール・スペシャリスト(WCS)社の親会社)、2015年2月7日付け公式プレスリリース
http://www.wcstexas.com/pdfs/press/2.7.FINAL.PR.pdf - ウェイスト・コントロール・スペシャリスト(WCS)社の中間貯蔵プロジェクトの専用ウェブサイト
http://wcsstorage.com/ - ウェイスト・コントロール・スペシャリスト(WCS)社、プレスキット(2015年2月)
http://wcsstorage.com/resources/ - 原子力エネルギー協会(NEI)、2015年2月9日付けニュースリリース
http://www.nei.org/News-Media/Media-Room/News-Releases/West-Texas-Facility-Promising-Project-for-Interim
【2015年2月12日追記】
ウェイスト・コントロール・スペシャリスト(WCS)社による使用済燃料の中間貯蔵施設の建設計画について、許認可申請に係る原子力規制委員会(NRC)への意向通知(2015年2月6日付け)がNRCのウェブサイトで公表された。今回公表された意向通知では、中間貯蔵プロジェクトの専用ウェブサイトや公式プレスリリースで示されていなかった情報として、以下の点が示されている。
- 中間貯蔵施設の建設に係る許認可申請は、2016会計年度2 の第1半期中に行う。
- 使用済燃料のほか、原子炉関連の「クラスCを超える低レベル放射性廃棄物」(GTCC廃棄物)の貯蔵も行う。
- 中間貯蔵施設の候補サイトとして、WCS社の14,000エーカー(約5,700万m2)のサイトにおける数百エーカーの土地の評価を行う。
- 中間貯蔵施設の建設に係る許認可申請書、及び付随する環境報告書(environmental report)の作成はAREVA社の協力を得て行う。
【出典】
- ウェイスト・コントロール・ スペシャリスト(WCS)社、「意向通知」(2015年2月6日)
https://adamswebsearch2.nrc.gov/webSearch2/main.jsp?AccessionNumber=ML15040A687
【2015年7月2日追記】
ウェイスト・コントロール・スペシャリスト(WCS)社は、2015年6月16日に、使用済燃料の集中中間貯蔵施設の建設に係る許認可申請について、原子力規制委員会(NRC)との許認可申請前ミーティングを行った。公開で開催された本ミーティングの目的は、許認可申請書の一部として提出される環境報告書及び安全解析書の策定方法について協議することとされており、以下の議題が設定されていた。
- 環境報告書
- 環境報告書の準備のための全般的方法
- 社会経済的影響
- その他の環境への影響
- 安全解析書
- 許認可申請の全般的方法
- 集中中間貯蔵施設に固有の問題への対応方法
- 安全解析書の構成の概要
- 一般傍聴者からの質問・コメント
NRCが公表したWCS社の環境報告書のプレゼンテーション資料では、プロジェクトの概要の他、集中中間貯蔵の立地が計画されているWCSテキサス処分場の近傍での他の環境影響評価の事例の参照、地域・公衆の支持、国家環境政策法(NEPA)に基づく代替案の検討を含めた評価の方針及びサイト選定、輸送による影響、社会経済的影響、土地利用・生態等その他の環境影響などについて、策定方針等が示されている。
なお、WCS社の中間貯蔵プロジェクト専用ウェブサイトにおいては、NRCとの許認可申請前ミーティングが順調に行われたとの報告が掲載されている。
【出典】
- 原子力規制委員会(NRC)、ウェイスト・コントロール・ スペシャリスト(WCS)社とのミーティング開催通知及び議題(2015年6月1日)
https://adamswebsearch2.nrc.gov/webSearch2/main.jsp?AccessionNumber=ML15152A412 - ウェイスト・コントロール・ スペシャリスト(WCS)社、集中中間貯蔵施設の環境報告書の許認可申請前ミーティング資料(2015年6月16日)
https://adamswebsearch2.nrc.gov/webSearch2/main.jsp?AccessionNumber=ML15174A008 - ウェイスト・コントロール・スペシャリスト(WCS)社の中間貯蔵プロジェクトの専用ウェブサイト(2015年6月19日)
http://blog.wcsstorage.com/pre-application-meeting-update/
【2015年7月16日追記】
米国の原子力規制委員会(NRC)は、2015年7月10日に、ウェイスト・コントロール・スペシャリスト(WCS)社が計画中の使用済燃料の集中中間貯蔵施設の建設に係る許認可申請について、2015年6月16日に開催されたNRCとWCS社との許認可申請前ミーティングの議事要旨を公表した。議事要旨では、許認可申請書の一部として提出される環境報告書及び安全解析書の作成方法について、NRCとWCS社などとの間で具体的な説明・質疑の概要が報告されている。
議事要旨によれば、WCS社は、NRCへの説明の中で、環境報告書では4万トンの使用済燃料を貯蔵する場合の影響について評価を行うものの、許認可申請書では既に廃止措置された原子炉サイトで保管されている5,000トン未満の使用済燃料のみを対象とすること、その後の貯蔵容量の増加は許認可修正により行う意向であることを表明している。また、WCS社からは、集中中間貯蔵施設が事実上の処分サイトとなる可能性の懸念も表明されたが、NRCは本ミーティングの範囲外との回答であった。さらに、WCS社からは、エネルギー省(DOE)が使用済燃料の所有権を取得しない場合、許認可申請を進めないことが付言された。
本許認可申請前ミーティングは公開で行われており、一般の傍聴者及び電話参加者からも質問・意見表明が行われた。テキサス州に隣接するニューメキシコ州の自治体住民からは、同自治体住民は中間貯蔵を支持しておらず、WCS社の申請に反対であること、環境正義(environmental justice)の評価範囲を広げるべきである、当初から4万トンの貯蔵の申請をするべきなどの意見が出された。また、安全性については、キャニスタの経年劣化、水圧破砕法(シェールガス等の採掘で使用される方法)の影響を含めた地震関連の問題、輸送関連の懸念などについての質問が寄せられたことが報告されている。
【出典】
- 原子力規制委員会(NRC)、ウェイスト・コントロール・ スペシャリスト(WCS)社との2015年6月16日の許認可申請前ミーティングの議事要旨(2015年7月1日付け)
https://adamswebsearch2.nrc.gov/webSearch2/main.jsp?AccessionNumber=ML15182A322
【2016年4月20日追記】
ウェイスト・コントロール・スペシャリスト(WCS)社は、2016年4月18日に、WCS社の中間貯蔵プロジェクトの専用ウェブサイトにおいて、許認可申請に係る現況報告書を公表した。WCS社は、「前進」(Moving Forward)と題する本現況報告書について、集中中間貯蔵施設の建設・操業に係る許認可申請書の原子力規制委員会(NRC)への提出が近づく中で、立地自治体・周辺自治体などに対するコミュニケーションの取組を強化するため、NRCでの許認可申請の状況の報告を行うものとしており、今回公表された現況報告書はその創刊号となる。
WCS社は、2015年2月に、使用済燃料の中間貯蔵施設の許認可申請の意向通知をNRCに提出したことを公表しており、その中で2016年4月までに許認可申請書を提出する予定を示していた3。今回公表された現況報告書では、NRCへの許認可申請書の提出は予定通りに行われる見込みであるとしている。さらに、WCS社は、パートナーのAREVA社とNACインターナショナル社とともにNRCとの許認可申請前ミーティングを重ねてきた中で、NRCの安全審査が標準的な3年間で完了することを確信しており、2019年に建設を開始し、2021年には使用済燃料の受入れを開始できる見込みであるとしている。
今回公表された現況報告書では、その他に、パートナーとして「WCSチーム」を構成するAREVA社とNACインターナショナル社の概要、エネルギー省(DOE)による使用済燃料の中間貯蔵を可能とするための法案提出などの連邦議会における中間貯蔵プロジェクト支援の動き、テキサス州等における民間の中間貯蔵施設開発の動きを支持するとの連邦議会におけるエネルギー長官の証言などが報告されている。
【出典】
- ウェイスト・コントロール・スペシャリスト(WCS)社、「現況報告書:集中中間貯蔵施設に係るWCS社の原子力規制委員会(NRC)への許認可申請」(2016年4月、第1巻1号)
http://wcsstorage.com/wp-content/uploads/2016/04/MovinForward_Vol1_No_1.pdf - ウェイスト・コントロール・スペシャリスト(WCS)社、中間貯蔵プロジェクトの専用ウェブサイト(2016年4月18日ブログ)
http://blog.wcsstorage.com/moving-forward-telling-our-story/
(post by inagaki.yusuke , last modified: 2023-10-11 )