ドイツの連邦環境・自然保護・原子炉安全省(BMU)は、2009年7月15日付のプレスリリースにおいて、発熱性放射性廃棄物(高レベル放射性廃棄物を含む)の地層処分に係る新たな安全要件を策定したことを発表した。この安全要件は、2008年7月29日に草案が公開され、2009年3月18日に草案の改訂版が出されていたものである。
今回策定された安全要件は、発熱性放射性廃棄物の地層処分のみに適用されるものであり、発熱性放射性廃棄物処分に適用されるという観点で、1983年の「鉱山における放射性廃棄物の最終処分に関する安全基準」に代わるものとされている。また、プレスリリースによれば、新たな安全要件は、最新の科学技術に適合したものであり、ドイツにおける放射性廃棄物の処分事業の実施主体である連邦放射線防護庁(BfS)が計画を立てる際の基盤となるものとされている。
プレスリリースによれば、今回策定された安全要件では、1983年の安全基準と比較して、主に以下の点が変更されている。
- 処分場から放出される放射性物質は、僅かで限られたものであることが100万年にわたって示されなければならない。
- 処分場の安全性は、処分場の計画段階から閉鎖に至るまで、定期的な安全性の確認により最適化されなければならない。
- 問題が発生した場合に備え、少なくとも処分場の閉鎖までは、処分場からの放射性廃棄物の回収可能性を維持しなければならない。
さらに、今回策定された安全要件では、処分場の閉鎖後段階における放射線防護の基準(リスク基準)については、対象となる事象の発生確率により、以下の通り定められている。
- 100万年の評価期間にわたる発生確率が10%より大きい事象(10-7/年): 個人が生涯に重大な影響を受けるリスク(放射線被ばくにより、ガンの発生、遺伝子損傷といった重篤な病気にかかる確率)は10-4未満(寿命70年とすると約10-6/年)とならなければならない。
- 100万年の評価期間にわたる発生確率が10%未満かつ1%より大きい事象(10-8/年): 個人が生涯に重大な影響を受けるリスクは10-3未満(寿命70年とすると約10-5/年)とならなければならない。
なお、上記の「発生確率が10%より大きい事象」とは安全評価において通常発生する事象を、「発生確率が10%未満かつ1%より大きい事象」とは低頻度事象をそれぞれ示す。
【出典】
- 連邦環境・自然保護・原子炉安全省(BMU)、2009年7月15日付プレスリリース、
http://www.bmu.de/pressemitteilungen/aktuelle_pressemitteilungen/pm/44587.php - Sicherheitsanforderungen an die Endlagerung wärmeentwickelnder radioaktiver Abfälle
(「発熱性放射性廃棄物の最終処分に関する安全要件」)、2009年7月
http://www.bmu.de/files/pdfs/allgemein/application/pdf/endfassung_sicherheitsanforderungen_bf.pdf
(post by j-nakamura , last modified: 2023-10-11 )