英国Nirex社1 は、2003年1月7日に英国の放射性廃棄物に関する最新のインベントリを公表した。このインベントリには、2001年4月1日現在の英国に存在する放射性廃棄物の保管量と将来の予測量が記載されている。今回発表されたコンディショニング済みの廃棄物の予測量は、高レベル放射性廃棄物が1,510m³、中レベル放射性廃棄物が237,021m³、低レベル放射性廃棄物が1,508,420m³となっている。
今回の報告は、廃棄物の処理・パッケージング・貯蔵・長期管理に関する廃棄物管理政策、規制、計画に不可欠な最新情報を提供するものであり、その取りまとめは、環境・食糧・農村地域省(DEFRA)とNirex社によって行われている。このインベントリを公表した目的は、放射性廃棄物問題に関心のある人々に、開かれた透明性のある方法でデータを提供することであり、英国の原子力活動を行っている機関と主要な環境団体にも配布されている。また、今回の報告書は一般の利用向けに英国国立図書館に収められるほか、DEFRAおよびNirex社の図書室でも閲覧することが出来る。
放射性廃棄物のインベントリは1980年代初めより定期的にまとめられており、現在では3年毎に公表されている。前回は1998年4月1日現在のものが1999年7月に公表されている。今回報告された将来の予測量は、前回に比べて高レベル放射性廃棄物は20%減少、中レベル放射性廃棄物は10%増加、低レベル放射性廃棄物は19%減少している。こうした予測量における変動は、操業の内容と規模の変更、廃棄物のコンディショニングとパッケージングの前提条件の変更、廃棄物量の見積り方法の改善などによって生じるものである。
今回の報告は、主報告書と要約の2分冊および、英国核燃料公社(BNFL)、英国エネルギー(BE)社、英国原子力公社(UKAEA)、国防省等の主要な廃棄物発生者毎の6分冊の詳細報告書の計8分冊で構成されている。
主報告書では、全ての発生源(原子力産業活動および放射性廃棄物発生者)からの廃棄物量を取りまとめている。また、廃棄物の放射性物質の量と含有物質量に関する情報も含められている。この主報告書にはインベントリのとりまとめ方法に加え、廃棄物発生量の見積りのための基礎となるシナリオが提示されている。
一方、6分冊からなる各廃棄物発生者の詳細報告書には、廃棄物量、廃棄物の物質成分、化学的性質、現在および計画されている廃棄物のコンディショニングおよびパッケージングプロセス、放射性物質の量、放射性核種の濃度、計1,000以上もある廃棄物発生ルートにおける放射線レベルに関するデータなどが含まれている。また、それぞれのサイトにおいて、コンディショニングおよびパッケージングの際に貯蔵されている廃棄物量についてもまとめられている。
なお、これらの報告書については、Nirex社のウェブサイト(http://www.nirex.co.uk/)を通じて、CD-ROM版を入手することが可能である。
【出典】
- 英国Nirex社プレスリリース (http://www.nirex.co.uk/inews.htm)
- 英国Nirex社(UK Nirex Limited)は中・低レベル放射性廃棄物を対象に、地層処分の安全、環境及び経済面についての調査を行うために、政府との合意によってUKAEA、BNFL等によって1982年に設立された有限責任会社。 [↩]
(post by 原環センター , last modified: 2023-10-10 )