欧州連合(EU)の2008年6月9日付のプレスリリースによると、2008年5月30日に原子力安全及び放射性廃棄物管理に関する高官レベルグループのミーティングが開催され、EU全体での原子力安全、放射性廃棄物管理及び廃止措置に関する取り組みを強化していくことで合意したとされている。
同プレスリリースによると、今回のミーティングでの合意を受けて進められる取り組みは次の通りである。
- 原子力安全条約にはEUの加盟国の全てが、放射性廃棄物等安全条約にもほぼ全てが加盟しており、各国の規制機関は両条約に基づくレビュープロセスを通じて意見交換を行っているが、それに加えて、原子力安全及び放射性廃棄物管理に関する全加盟国での取り組みを強化するため、レビュープロセスで得られた知見に基づいた共通的な教訓を抽出する。
- 現在は加盟国が任意に実施している国際原子力機関(IAEA)によるピアレビュー(総合的規制評価サービス、IRRS)を義務化する。
- 加盟国の規制機関は、放射性廃棄物・使用済燃料管理のさらなる向上に向けた共同作業を進めていくことで合意。数カ月以内に高官レベルグループが、全加盟国における放射性廃棄物管理計画の策定・実施について協議する。
- 加盟国の規制機関は、業務の透明性を高め、公衆に公開していくことで合意。数カ月以内に全加盟国の原子力安全に関する関連データへのアクセスを容易にするウェブサイトを開設する。
また、プレスリリースによると、今回のミーティングでは、EUでの共通的なルールの可能性についての意義についても議論が行われ、欧州全域において、原子力安全に係る最善の基準、及び放射性廃棄物の責任ある管理の実施を保証すべきであるということが認識された。高官レベルグループは、将来的な決定に係る情報を提供するための共通的な措置の得失を明らかにするため、詳細な調査に着手しているとされている。
なお、高官レベルグループは、EU理事会(閣僚理事会(閣僚級代表で構成されるEUの決定機関))の2007年5月8日の決定により設置が決まり、欧州委員会(EC。EUの執行機関)により設置されたものである 。同グループの議長はスロベニアの原子力安全規制機関のトップが務めており、加盟国の原子力規制・安全機関の上級代表者で構成されている。
【出典】
- EU(欧州連合)ウェブサイト、2008年6月9日付プレスリリース http://europa.eu/rapid/pressReleasesAction.do?reference=IP/08/907&format=HTML&aged=0&language=EN&guiLanguage=en
- EUウェブサイト、2008年2月20日付プレスリリース http://europa.eu/rapid/pressReleasesAction.do?reference=IP/08/270&format=HTML&aged=1&language=EN&guiLanguage=en
【2009年7月27日追記】
欧州委員会(EC)は、2009年7月17日付のプレスリリースにおいて、高官レベルグループから改称された「欧州原子力安全規制者グループ(ENSREG)」の最初の活動報告書が公表されたことを発表した。同報告書は、2009年7月に取り纏められ、原子力安全や廃棄物管理などに関するENSREGの勧告等が示されている。また、放射性廃棄物管理に関しては以下の点が示されている。
- 放射性廃棄物管理に係る国家計画の策定
- 加盟国における最良の実施例の特定と有効活用
- 加盟国間でのピアレビュー
- 経験のフィードバックの有効活用
- 新しい設計のプラントの廃棄物安全
- 放射性廃棄物等安全条約のレビュー会合の有効活用
なお、ENSREGのウェブサイト(http://ec.europa.eu/energy/nuclear/ensreg/ensreg_en.htm)も開設されている。
【追記部出典】
- 欧州委員会(EC)、2009年7月17日付プレスリリース、
http://europa.eu/rapid/pressReleasesAction.do?reference=IP/09/1158&format=HTML&aged=0&language=EN&guiLanguage=en - 欧州原子力安全規制者グループ(ENSREG)報告書、2009年7月、
http://ec.europa.eu/energy/nuclear/ensreg/doc/2009_ensreg_report.pdf
(post by 原環センター , last modified: 2013-06-26 )