TURVA-2012(フィンランド)
Safety Case for the Disposal of Spent Nuclear Fuel at Olkiloto - Synthesis 2012
December 2012, Posiva 2012-12, Posiva Oy
評価結果
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2. 処分システムと安全要件 | 対象廃棄物 / 想定処分地 / 処分概念 / 放射線防護基準
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3. 安全評価の進め方 | FEP / シナリオ / モデル / 不確実性の取り扱い
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4. 評価結果>← NOW You are Here!
安全評価の結果はどのように示されるのですか…
規制指針に合わせて、TURVA-2012セーフティケースでは、主要な安全指標として、下記を計算している。
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基盤岩から生物圏(地表環境)に至る放射能の放出:全ての放出シナリオに関して算出
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人間が受ける年間線量:最初の1万年間に地表環境への放出が発生するシナリオに関して算出
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植物及び動物に関する吸収線量率:最初の1万年間で地表環境への放出が起こることが予想されるケースについてのみ算出
TURVA-2012において処分場システムの性能を評価するために示された数量は、ある特定の放射性核種の正規化された放射能放出率または正規化された放射能放出率の総和である。ここで、「正規化された放射能放出率」とは、放射能放出率をそれぞれの放射性核種固有の拘束値で割った値として定義される無次元量である。
TURVA-2012では、処分場システムにおける放射性核種の放出及び移行の解析、地上環境の進展の予想、そして人間、植物及び動物に生じ得る放射線学的影響の解析を含む様々な放射性核種放出シナリオと計算ケースの評価が行われている。
処分場システムシナリオ(BS-RC)
処分場システムの基本シナリオでは、直径1 mmの貫通欠陥を伴う1体または複数のキャニスタが処分場内に存在するという偶発的な逸脱が生じるとし、レファレンス・ケースでは直径1 mmの貫通欠陥を伴う1体のキャニスタを仮定している。なおこのキャニスタは、地圏からの放射能フラックスの面から見て相対的に不利な定置孔に定置されるものと仮定している。
図17に、レファレンス・ケースにおける処分場のニアフィールドから地圏への放射性核種の放出率の計算に基づく変遷を示す。これは、緩衝材から定置孔と交差する地圏亀裂への経路(F経路)、緩衝材から定置坑道のEDZに至る、さらには地圏に続く経路(DZ経路)、緩衝材から坑道埋め戻し材に至る、さらには地圏に続く経路(TDZ経路)という3つの放出経路の合計である。ピーク放出量は閉鎖から約4,500年後に生じ、C-14が支配的な役割を果たす。その後、放射性崩壊によってC-14の放出は低下し、約6万年後より先になると、総放出量において支配的な役割を果たすのはまずCl-36であり、その後にはCs-135及びI-129となる。5種類の核種のうち、Ni-59のピーク放出率が最も低く、約10万年後に発生する。
図18に、ニアフィールド放出及び地圏放出率を示す。線量評価の時間枠(最長で1万年)を見た場合、正規化された放射能の放出率は、STUKの指針の第313段落で定義されている「1」という規準をほぼ4桁も下回る。
なお、放出は1万年間の線量評価時間枠の中で起こることから、レファレンス・ケースの結果は生物圏評価へと伝達されている。
地上環境シナリオ(BSA-RC)
①地上環境への湧出場所
図19に、処分場内でのキャニスタの位置と、それに対応するF、DZ及びTDZ経路(図14参照)を通じた地上環境への湧出場所を示す。F、DZ、及びTDZ経路ごとに、また時期に応じて、地上環境への湧出場所はきわめて大きく異なるが、遠い将来には、湧出場所は比較的限定された区域に収束する傾向が見られた(図19の緑色の点)。したがって、図19で3つの緑色の点に囲まれた区域が、放射性核種がランドスケープ・モデルに入り込む区域とされた。
②地上環境の進展
地表環境における地勢及び生態系がどのように推移するのかに関する予測は『地勢及び生態系の推移に関するモデル化報告書』(Terrain and Ecosystems Development Modelling)に示されている。
③人間への線量
処分場ケースBS-RCにおける地圏放出を対象として実施されたスクリーニング解析の結果から地上環境に放出された放射能がゼロの核種が除外され、BSA-RCにおいては5つの放射性核種(C-14、Cl-36、Mo-93、Ag-108m、I-129)について評価が行われた。
図22に最大被ばくグループ(Emost_exp)、図23にその他の被ばくを受ける人々(Eother)のうちの代表的個人への年間線量を示す。Emost_expに関する最大線量は2.0×10-7 mSvであり、5000年頃に発生する。Eotherの対応する最大線量は1.3×10-9 mSvであり、4000年頃に発生する。これらの結果は、規制放射線量拘束値よりおよそ6~7桁低い。また年間線量において支配的なのはC-14であった。
④植物及び動物への線量
図24に、計算ケースBSA-RCにおける淡水、汽水、半水生域環境及び陸上環境における最大被ばく生物を対象とした植物及び動物の(典型的な)吸収線量率を示す。全ての生物に関する最大線量率は2.6×10-7 mikroGy/hであり、淡水環境内のパイク(キタカワカマス)で観察されるものである。
人間侵入シナリオ(DZ(F))
ボーリング孔の掘削を通じて生じる意図的でない人間侵入に関する複数のシナリオが作成されている。ボーリング技術者及び現場地質学者が受ける(実効)線量の期待値が、線量計算に関する様式化されたアプローチと、一つの指標として示されている侵入事象の年間確率の見積もりに基づいて導き出されている。
「DS(F)-HI-CANISTERにおける線量のピーク期待値は、最も大きな被ばくを受ける人々に関する規制放射線量拘束値をおよそ1桁下回っている(図25,26参照)。
掘削が汚染された緩衝材及び埋め戻し材に影響を及ぼす計算ケース(それぞれ「DS(F)-HI–BUFFER」及び「DS(F)-HI-ACKFILL」)のピーク期待値は、最も大きな被ばくを受ける人々に関する規制放射線量拘束値を数桁下回っている。