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[size=160%]Posiva Safety Case 2009 Interim (フィンランド)[/size]
評価結果
(セーフティケース中間概要報告書2009:2010年)
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2. 処分システムと安全要件 | 対象廃棄物 / 想定処分地 / 処分概念 / 放射線防護基準
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3. 安全評価の進め方 | FEP / シナリオ / モデル / 不確実性の取り扱い
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4. 評価結果>←
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安全評価の結果はどのように示されるのですか…
評価結果
ポシヴァ社によるシナリオ解析は「決定論的」アプローチを採用している。すなわち、評価シナリオで示された放射性核種の放出による放射線学的影響は、それぞれのシナリオに関して計算ケースの範囲を保守的に設定することによって評価している。シナリオ解析には次の作業が含まれている。
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解析全体に関する一つのベース計算ケース(KBS-3V)、またはそれぞれの特定されたキャニスタ故障モードに関する個別のベース計算ケース(KBS-3H)を定義し、モデル化すること。
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現行の科学的な理解に適合した概念的な代替仮定及びパラメータ値を特定すること。
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個々に、または組み合わせのいずれかにおいてこれらの代替案(すなわち感度ケース、「What-If」ケース及び補完的なケース)を組み込むバリアント計算ケースを定義し、モデル化すること。
[color=red]注意[/color]
中間概要報告書の時点における安全解析では、キャニスタ1体の破損する事象だけを扱っていることに注意しなければならない。ポシヴァ社は、複数のキャニスタ破損が生じる事象の評価における扱い方は、今後の検討事項としている。
ここでは、ポシヴァ社の『セーフティケース中間概要報告書2009』における安全評価の実施状況について、次の3つについて整理している。
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① 処分場評価シナリオの解析結果
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② 線量評価シナリオの解析結果
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③ 人間侵入シナリオの評価
以上の「① 処分場評価シナリオの解析結果」のコンテンツのまとめ方について
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② 線量評価シナリオの解析結果 の構成とそろえたほうが良さそう。
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先に、規制への適合性を示す方法を解説することになるかもしれない。すなわち、上の2サブセクションの順序を入れ替えることになるかも。
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Posiva 2010-02のExecutive Sammaryでは図17を示しているので、Posivaはそっちが重要と考えているはず。このまとめページでは、なぜ、そうした評価結果の見せ方が必要となっているのかを解説する方向でまとめる。
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図16 縦軸単位 Bq/aについて、キャニスタ1本あたりか、それとも処分場全体とすると何本の計算か?
>ニアフィールド核種移行モデルには、キャニスタが1基しか組み込まれておらず、キャニスタのU量も1.44~2.14tU(POSIVA 2010-01 Model and data報告書 Part2 Talbe 1-2)しかないので、核種移行解析ではキャニスタ1基を対象として計算をしているようです。その後、フラックスをキャニスタの本数倍としているかどうかは記述がありません。)
① 処分場評価シナリオの解析結果
基本処分場計算ケースSh1の解析(例示)
処分場評価シナリオにおける、基本処分場計算ケース「Sh1」の解析の概要について以下に示す。
Sh1はキャニスタ欠陥シナリオDCS-IIの一つであり、処分場閉鎖直後(t=0)においてキャニスタ1体に1mmの貫通孔が存在していること、イオン強度が低い低濃度/汽水組成の地下水条件と、地下水流動が初期状態の条件(移行抵抗WL/Q=50000 yr/m)を想定した計算ケースである。
図16は代表的な重要核種について、ニアフィールドとファーフィールド(地圏)の放出率(単位:Bq/年)の経時変化を示したものである。同図の左図がニアフィールド、右図がファーフィールドの放出率である。Ni-59(上図の赤実線)やSr-90(下図の赤実線)などの短寿命核種や媒体への収着性が高い放射性核種が大きく減衰するのに対し、C-14(上図の青実線)、Cl-36(上図緑実線)、I-129(下図緑実線)などの長寿命かつ媒体への収着性が低い放射性核種の減衰がはるかに弱いことを示している。後者の放射性核種は、後述の線量評価(生物圏計算ケース)での支配核種となっている。
規制拘束値との比較例(線量を十分に確からしく評価できない評価期間)
フィンランドの安全規制では、「人々が被ばくする放射線量を十分に確からしく評価できる期間」(少なくとも数千年間)では “年間線量拘束値” の規制規準を用いている。この期間以降の評価期間では、地圏から生物圏に漏出する放射性核種の平均放出率に対する拘束値(放出量拘束値)を規制規準として用いている。「処分場評価シナリオ」の解析は、後者の規制規準「放出量拘束値」に対する適合性の評価に対応する。
ポシヴァ社は、処分場計算ケースで算出した各核種の年間放出量(フラックス)の放出量拘束値に対する比(核種放出比)を算出し、その経時変化を示すことで規制拘束値との比較を行っている。ポシヴァ社は、各核種放出比を計算対象の全核種について合計した値を「総放出比」と呼んでいる。
STUKの指針(案)では、Cl-36、C-14、Cs-135、I-129、Ni-59の放出量拘束値を、それぞれ、0.3、0.3、0.3、0.1、30(GBq/年)としている。核種放出比と総放出比はいずれも1以下でなければならない。
中間概要報告書におけるポシヴァ社の評価提示例として、基本処分場計算ケースSh1での重要核種の「核種放出比」と「総放出比」の経時変化を図17に示す。また、中間概要報告書のTable 7-3では、総放出比のピーク出現年とピーク値、上位3核種の核種放出比のピーク値(各核種のピーク出現年は異なることに注意)が示されている。
図18 2009年のKBS-3V安全解析において実施された欠陥キャニスタシナリオ、岩石せん断/地震シナリオ、緩衝材劣化シナリオ、ガスの影響を受ける放出シナリオで選択されたケースの総放出比の最大値と総放出比の発生時期
ポシヴァ社は、様々な処分場評価シナリオに対して選択・設定した処分場計算ケースについて、総放出率比の最大値と発生時期をプロットした結果を図18のように示している。放出率比の最も高い値は、岩石剪断/地震シナリオ(AD-I)の計算ケースRS1において発生する。計算ケースRS1では1000年後に定置孔を横切る剪断運動がおこり、キャニスタが破損する。地下水組成は低濃度/汽水であるが、地下水流動は高い流量条件(移行抵抗WL/Q=5000 yr/m)となっている。この「What-If」ケースにおける総放出率比最大値3.1×10-2(上表参照)においても、図18にあるように、規制ガイドライン(「1」)より低い値となっている。
しかしながら、RS1の計算ケースにおいてもキャニスタ1体の破損だけを考慮したものに過ぎない。ポシヴァ社は、複数のキャニスタ破損が生じる事象に関しては、今後の検討事項としている。
② 線量評価シナリオの解析結果
線量評価基本シナリオCL1-LU1の「現実的な生物圏計算ケース」の解析(例示)
ランドスケープ・モデルを用いた線量評価では以下のことが考慮される。
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処分場から漏出した核種が生物圏で放出される地点(放出点)の分布
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各放出点における核種放出率の時間的変化
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モデル上に配置される生物圏オブジェクトの種類の移り変わり(例:海 → 沿岸 → 耕作地など)
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ランドスケープ(地表景観)の変遷につれた、最大被ばくグループの存在地点の変化
ランドスケープ・モデルでは、生物圏オブジェクトの配置点に居住・生活する人々の人数を、そのオブジェクトの種類(耕作地、沿岸など)に応じて割り当てる。このことにより、生物圏への核種放出率の時間的変化(処分場評価シナリオの解析結果)だけでなく、ランドスケープ(地表景観)が時と共に変化するにつれ、最大被ばくグループが存在する場所が変化することも考慮可能となっている。
生物圏計算ケースでは2種類のランドスケープ線量(EgroupとEpop)を算出する。
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Egroup : 最大被ばくグループの1人の代表的個人の線量。最大被ばくグループ員の平均線量として算出する。
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Epop : 被ばくを受ける人間集団に属するその他の代表的個人:被ばくを受ける人間集団から最大被ばくグループ員を除外した人々の平均線量として算出する。
処分場評価シナリオDCS-IIの2つの処分場計算ケース「Sh1」と「Sh4Q」で算出した“ファーフィールド核種放出率“の経時変化データをランドスケープ・モデルのインプットとして用いた解析例として、ポシヴァ社は Figure 7-7(Egroupの評価例)と Figure 7-8(Epopの評価例)を提示している。
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Sh1 : 基本処分場計算ケース
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Sh4Q : t=0において、キャニスタ貫通孔の大きさが直径4mm、低濃度/汽水の地下水組成と高い流量(WL/Q=5000 yr/m)を仮定した〔核種移行〕計算ケースである。
中間概要報告書でポシヴァ社が示している評価結果から整理すると、処分場パネルA、B、Cから漏出した核種による、ランドスケープ線量の最大値(※評価期間は約1万年であることに注意)、最大値の発生年、最大値で被ばくを受ける人数は以下のようになっている。
生物圏への 核種放出率の 計算ケース名 | Egroup | Epop | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
最大値 | 発生年 | 人数 | 最大値 | 発生年 | 人数 | |
(mSv/年) | (西暦) | (名) | (mSv/年) | (西暦) | (名) | |
パネルA | ||||||
Sh1 | 7.9×10-7 | 11920 | 50 | 1.2×10-7 | 3970 | 3,269 |
Sh4Q | 1.4×10-5 | 6570 | 50 | 4.7×10-6 | 3970 | 3,269 |
パネルB | ||||||
Sh1 | 1.6×10-6 | 11870 | 50 | 2.0×10-8 | 12020 | 5,309 |
Sh4Q | 1.2×10-5 | 11820 | 50 | 2.0×10-7 | 3570 | 3,299 |
パネルC | ||||||
Sh1 | 3.9×10-6 | 11870 | 50 | 2.9×10-8 | 3570 | 3,299 |
Sh4Q | 3.1×10-5 | 11820 | 50 | 4.5×10-7 | 3920 | 3,272 |
※(上表は、BSA-2009のTable 7-6, 7-7, 7-8 から整理したもの。)
線量拘束値との比較 (線量を十分に確からしく評価できる評価期間)
フィンランドの安全規制では、「評価期間のうち、人々が被ばくする放射線量を十分に確からしく評価できる期間であって、かつ少なくとも数千年にわたる期間(several millennia)」については、線量拘束値による基準が適用される。この線量拘束値は、以下のように2つの被ばくグループについて規定されている。
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(1) 最大の放射線被ばくを受ける人々に生じる年間線量が 0.1 mSvより低いこと。
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(2) その他の人々が受ける平均年間線量が無視できるほど低く抑えられること。… 規制機関STUKは、最大被ばくを受ける個人に対する拘束値 0.1 mSv の1/10~1/100 の値を超えないことを求めている。
上記2つの線量拘束値の基準について、生物圏計算ケースで算出している2種類のランドスケープ線量(EgroupとEpopが対応する。
中間概要報告書におけるポシヴァ社の評価提示例として、様々な生物圏計算ケースのランドスケープ線量算出値(EgroupとEpop)と線量拘束値の比較状況を 右図(Figure 10-1と 10-2)に示す。
これらの図では、EgroupとEpopの計算値は、処分場パネル別に算出されていること、生物圏への核種放出量はキャニスタ1体のみで評価していることに注意する必要がある。
③ 人間侵入シナリオの評価
中間概要報告書の中では、人間侵入シナリオの定量的な評価はしていない。このシナリオの評価は、ポシヴァ社は2012年までに生物圏評価の一部として実施する予定であるとしている。
ポシヴァ社は、「将来の人間活動の性質に関する、さらに科学技術の最新レベルの変遷に関する不確実性は大きいものとなるため、人間侵入シナリオの発生確率及び影響はともに “様式化された仮定” に基づいたものにならざるを得ない」とし、「この様式化された仮定は、全面的な立証を行うことも、最大限に保守的であることを示すこともできない」としている。
以下、書き直す前の部分
生物圏計算ケースは、ランドスケープ・モデルを用いて解析する。処分場から漏出した核種が生物圏で放出される地点(放出点)の分布は、地下水流動モデルで評価している。ポシヴァ社の生物圏評価 BSA-2009 では、処分場をパネルA~Cの3つに分け、各パネルから放出した核種が、生物圏に達するまでの時間と放出点の評価結果に基づき、生物圏オブジェクトの構成と必要数を検討している。
ポシヴァ社による「現実的な」生物圏計算ケースでは、西暦2020~12520年(約1万年)の変遷をモデル化するために、〇〇地点を対象に延べ166個の生物圏オブジェクトを用いている。(Figure 7-3 と Table 7-1 を参照)
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24個の森林サブオブジェクト、19個の湿地サブオブジェクト、15個の耕作地サブオブジェクト、11個の湖サブオブジェクト、29個の河川サブオブジェクト、そして68個の沿岸サブオブジェクト(延べ166個のサブオブジェクトで構成)。
Figure 7-3では、キャプションで示すように処分場パネル(A~C)から漏洩した核種の放出地点をマル印で示し、核種の放出量に比例しマル印の大きさを変えている。Realistic release patternでは、Tankarienjärvi(同図では湖となっている)に、パネルA起源の核種の14%、パネルB起源の94%、パネルC起源の71%が放出されるとポシヴァ社は評価している。
上は、モデルのセクションで語ることにする。
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スパゲッティのように説明するのではなく、適宜「見出し」をつけて区切りを入れる必要がある。
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評価結果のページと、方法論ページで内容が重複するので、切り分けを再考する必要がありそう。
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最初に結論を示すのなら、BSA-2009の図10-1,-2がベストかも。先にこれらを見せて、どうやってこれを作ったかを説明するというやり方。
STUK指針(案)YVL D.5では、最も被ばく量の多い個人に関する年間線量と、処分場から放出した核種の放射能にさらされる可能性がある比較的大きな人々のグループに関する年間線量について拘束値を規定している。セーフティケースにおいて、年間線量評価では、ICRP Pub. 101(2007年)が示す「代表的個人」の受ける線量評価方法の概念を採用している。最も被ばく量の多いグループの代表的個人とそれ以外の被ばくを受けた人々とに関する年間ランドスケープ線量の最大値(Egroup及びEpop)を計算している。Egroup及びEpopの線量は、被ばくを受けた人間集団に属する様々な個人の間の年間ランドスケープ線量の分布(線量分布)を基に導出している。
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(Egroup)最大被ばくグループの1人の代表的個人:当該最大被ばくグループ内の全ての人物に関する平均ランドスケープ線量
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(Epop)被ばくを受ける人間集団に属するその他の代表的個人:被ばくを受けた人間集団から最大被ばくグループを除外した人々の平均ランドスケープ線量
「シナリオ」の項で示した線量評価基本シナリオ(中間概要報告書で実施に解析された唯一の線量評価シナリオ)においても、個別の計算ケース(生物圏計算ケース)を用いた解析を実施している。
中間概要報告書では、生物圏計算ケースを「現実的な線量評価ケース」と「感度線量評価ケース」の2つのタイプに分類している。
中間概要報告書では、3件の現実的な線量評価ケースを定義し、これらの線量評価ケースは図12にあるようにキャニスタを定置するパネルに対応している。3件の現実的生物圏計算ケースの名称は以下の通り。
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現実的(放出パターン)-A
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現実的(放出パターン)-B
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現実的(放出パターン)-C
中間概要報告書では処分場レイアウトの3つの異なるパネルに定置したキャニスタから核種が放出された場合の帰結を評価するものとなっている。
図12のRealistic-A,B,Cは、パネルA,B,Cと対応しているに過ぎない。「つまり、パネルAの現実的放出パターン」。「現実的-A」と訳すと、現実的な計算がA,B,Cの3種類あるように誤解されてしまう。それぞれのパネルごとに計算しているだけということを説明すればよい。
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処分場全体を3つのパネルに分けて計算している。パネルA~Cまでを一回の計算で済ませればいいのに。分割している理由は単に計算量の問題かもしれないが、ポシヴァ社報告書での説明が見つからない。
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上記の「現実的-A」は、パネルAについての計算のことである。「保守的-A」とか、「悲観的-A」という計算もやるのかもしれない。が、中間概要報告書の取りまとめ時点では未実施なのだろうか?BSA-2009の表5-1を見て初めてわかった。「現実的-A」では誤解される。
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BSA-2009(Posiva 2010-03)のTable 5-1を見ると、Realistic release patternとAlternative release patternがある。これらが、上で言う「現実的な線量評価ケース」と「感度線量評価ケース」に相当するのか?
→パネルA,B,CはRNT-2008ではパネル1,2,5と表記されています。RNT-2008 p.43を見ますとパネル1,2,5はWCA(Well Characterized Area:調査により特性がよくわかっている領域)内にあり、パネル3,4,6はWCAの範囲外にあると示しています。
パネルCより放出した核種が、生物圏に達するまでの時間と放出点の評価結果を、BSA-2009報告書のFigure 5-4に示している。
そうした放出点の分布にあわせて、生物圏オブジェクトをBSA-2009報告書のFigure 7-3に示すように配置している。
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24 forest sub-objects, 19 wetland sub-objects, 15 cropland sub-objects, 11 lake subobjects, 29 river sub-objects and 68 coast sub-objects.
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(訳)24個の森林サブオブジェクト、19個の湿地サブオブジェクト、15個の耕作地サブオブジェクト、11個の湖サブオブジェクト、29個の河川サブオブジェクト、そして68個の沿岸サブオブジェクト(合計166個のサブオブジェクトで構成)。
この図では、キャプションで示すように処分場パネルから漏洩した核種の放出地点をマル印で示し、核種の放出量に比例しマル印の大きさを変えている。Realistic release patternでは、Tankarienjärvi(同図では湖となっている)に、パネルA起源の核種の14%、パネルB起源の94%、パネルC起源の71%が放出する。(Table 5-1を参照)
Tankarienjärviの生物圏オブジェクトは、西暦2020~3020年まではバルト海オブジェクト、西暦3520年~12520年は湖オブジェクトである。(BSA-2009, Table 7-1を参照)
中間概要報告書において、ランドスケープ線量は、9件の処分場計算ケース(過渡な保守的な計算ケースは回避されている)と3件の現実的生物圏計算ケースの組み合わせによる、27通りについて求めている。
この27通りは、現実的ケースななのか。それとも感度解析ケースも含んでいるのか。
Egroupの範囲は、約5×10-7~3×10-5 mSvであり、Epopの範囲は約10-8~5×10-6 mSvであった。
処分場パネルA~Cのそれぞれについて実施した9件の処分場計算ケースから、基本処分場計算ケース「Sh1」と、最も線量が高い結果となった処分場計算ケース「Sh4Q」のランドスケープ線量(Egroup及びEpop)を以下の表に示す。Sh4Qは、キャニスタ欠陥シナリオDCS-II(図15)において、キャニスタ貫通孔が4mmであり、低濃度/汽水の地下水組成と高い流量(WL/Q=5000 yr/m)の計算ケースである。
以下の2つの表の列名として記載されている、FI、WI、I-EEの意味は以下の通りである。
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FI:食物の摂取による線量最大値への寄与、
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WI:水の摂取による線量最大値への寄与
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I-EE:吸入及び外部被ばくによる線量最大値への寄与
[size=120%]■ 最も被ばく量の大きいグループの代表的個人に関する年間ランドスケープ線量の最大値(Egroup) [/size]
(BSA-2009のTable 7-7相当、概要報告書のTable 7-5に相当)
ケース | Egroup (mSv) | 年 | FI(%) | WI(%) | I-EE(%) | C-14 | Cl-36 | I-129 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
パネルA | ||||||||
Sh1 | 7.9×10-7 | 11920 | 94 | 6 | 0 | 0 | 46 | 54 |
Sh4Q | 1.4×10-5 | 6570 | 96 | 4 | 0 | 99 | 0 | 0 |
パネルB | ||||||||
Sh1 | 1.6×10-6 | 11870 | 99 | 1 | 0 | 0 | 42 | 58 |
Sh4Q | 1.2×10-5 | 11820 | 99 | 1 | 0 | 0 | 47 | 53 |
パネルC | ||||||||
Sh1 | 3.9×10-6 | 11870 | 100 | 0 | 0 | 0 | 41 | 59 |
Sh4Q | 3.1×10-5 | 11820 | 100 | 0 | 0 | 0 | 45 | 55 |
FI:線量最大値に対する食物の摂取の寄与WI:線量最大値に対する水の摂取の寄与I-EE:線量最大値に対する吸入被ばく及び外部被ばくの寄与
[size=120%]■ それ以外の人々の代表的個人に関する年間ランドスケープ線量の最大値(Epop)[/size]
(BSA-2009のTable 7-8相当、概要報告書のTable 7-6に相当)
ケース | Epop (mSv) | 年 | FI(%) | WI(%) | I-EE(%) | C-14 | Cl-36 | I-129 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
パネルA | ||||||||
Sh1 | 1.2×10-7 | 3970 | 33 | 67 | 0 | 84 | 2 | 14 |
Sh4Q | 4.7×10-6 | 3970 | 32 | 68 | 0 | 94 | 1 | 5 |
パネルB | ||||||||
Sh1 | 2.0×10-8 | 12020 | 31 | 69 | 0 | 2 | 77 | 21 |
Sh4Q | 2.0×10-7 | 3570 | 0 | 100 | 0 | 0 | 1 | 99 |
パネルC | ||||||||
Sh1 | 2.9×10-8 | 3570 | 0 | 100 | 0 | 100 | 0 | 0 |
Sh4Q | 4.5×10-7 | 3920 | 0 | 100 | 0 | 95 | 1 | 4 |
FI:線量最大値に対する食物の摂取の寄与WI:線量最大値に対する水の摂取の寄与I-EE:線量最大値に対する吸入被ばく及び外部被ばくの寄与
考察 (仮題)
上記結果についてのいくつかの特徴を以下に記す。
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一般にランドスケープ線量Egroupの最大値は、生物圏評価期間(少なくとも数千年間)の終わり頃に現れる。これは、C-14の地圏 → 生物圏への移行フラックスの最大値が5000年頃(Sh1では6600年、Sh4Qでは3200年(RNT-2008報告書表7-3より))に現れ、その後、Cl-36とI-129のフラックスが増加するためである。
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ランドスケープ線量Epopの最大値は、3500~4000年頃に現れる。これは、Epopに対して支配的な核種C-14が水消費量に関係し、その頃に海から陸地に変化する地形変化によって河川の面積が小さくなり、濃度が高くなる傾向になるためである。
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Egroupの線量は、食物の経口摂取の被ばく経路が支配的となる。
求められたランドスケープ線量Egroupの最大値3.1×10-5 mSvは、STUKの安全指針案で示された線量拘束値0.1 mSvを満たしており、同様に求められた最大のEpop線量(4.7×10-6 mSv)についても、0.001 mSv(=1.0×10-3 mSv)の線量拘束値を満たしている。
規制拘束値との比較
Safety Case 2009:中間概要報告書の取りまとめ段階でのまとめ
線量を十分に確からしく評価できる評価期間 における評価(少なくとも数千年)
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇。
線量を十分に確からしく評価できない評価期間 における評価(上記の期間以降)
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図18 キャプション 「〇〇シナリオの計算ケース」としないとわかりにくい。原典通りに固執すると、日本人への配慮が足らなくなる。
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→ 赤堀さんが図18の表題を詳しくすることで対応してくれた。多謝。
図18 2009年のKBS-3V安全解析において実施された欠陥キャニスタシナリオ、岩石せん断/地震シナリオ、緩衝材劣化シナリオ、ガスの影響を受ける放出シナリオで選択されたケースの総放出比の最大値と総放出比の発生時期
地圏-生物圏の境界面を通じた放射性核種の最大放出率に関する拘束値に関して、核種固有の放射能の放出量とそれぞれの拘束値の間の比の合計は「1」未満である。これらの拘束値は、放射性防護基準の項目にあるように、将来の数千年を超えた期間に適用する。図18に、解析された総放出率比の最大値と、2009年のKBS-3V安全解析で検討された計算ケースのサブセットにおけるそれらの発生時期を示した。
放出率比の最も高い値は、岩石剪断/地震シナリオ(AD-I)の計算ケースRS1において発生する。計算ケースRS1では1000年後に定置孔を横切る剪断運動がおこり、キャニスタが破損する。地下水組成は低濃度/汽水であるが、地下水流動は高い流量条件(移行抵抗WL/Q=5000 yr/m)となっている。この「What-If」ケースにおける総放出率比最大値3.1×10-2(上表参照)においても、図18にあるように、規制ガイドライン(「1」)より低い値となっている。
しかしながら、RS1の計算ケースにおいても、キャニスタの破損は一つとしており、複数のキャニスタ破損が生じる事象に関しては、今後の検討事項の一つとなっている。
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2. 処分システムと安全要件 | 対象廃棄物 / 想定処分地 / 処分概念 / 放射線防護基準
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3. 安全評価の進め方 | FEP / シナリオ / モデル / 不確実性の取り扱い
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4. 評価結果 ←
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