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米国

エネルギー省(DOE)は、2014年3月26日付けのニュースリリースにおいて、米国における超ウラン核種を含む放射性廃棄物(TRU廃棄物)の地層処分場である廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)について、適合性再認定申請書(CRA)を環境保護庁(EPA)に提出したことを公表した。WIPPについては、廃棄物処分の開始以降の5年ごとにEPAの適合性再認定を受けることが必要とされており、これまで2回の適合性再認定申請・決定が行われており、今回が3回目の適合性再認定申請となる。

  • 第1回適合性再認定申請:2004年3月26日
  • 第1回適合性再認定の決定:2006年3月29日
  • 第2回適合性再認定申請:2009年3月24日
  • 第2回適合性再認定の決定:2010年11月18日

ニュースリリースでは、今回の適合性再認定申請により、2段階の手続きが開始されることが示されている。第1段階としては、EPAがDOEの適合性再認定申請書の完全性を判断し、必要に応じて審査のために必要な追加的情報の要求が行われる。また、EPAは、適合性再認定申請に対するパブリックコメントも考慮するとしている。第2段階として、EPAは、適合性再認定申請書の完全性について決定した後、6カ月以内の期間で技術的評価を実施し、WIPPの法令への適合性の認定についての最終決定を行うとしている。

なお、ニュースリリースでは、この適合性再認定の手続きは、最近の放射線事象等からの回復作業に関連するものではなく、過去5年間におけるサイトの変化が、EPAのTRU廃棄物処分の環境放射線防護基準に適合していることを証明するための手続きであるとしている。

【出典】

 

【2014年10月2日追記】

環境保護庁(EPA)は、エネルギー省(DOE)に宛てた2014年9月29日付けの書簡により、DOEが2014年3月26日にEPAへ提出した廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)の適合性再認定申請書について、完全性の審査を開始したことを通知した。

DOEに宛てた書簡の中で、EPAは、2014年2月にWIPPで発生した放射線事象への対応が進行中のため、適合性再認定申請書に係る完全性の審査を遅らせていたとしている。また、放射線事象の発生前に適合性再認定申請書が準備されたものであるため、DOEは、処分場の操業の再開に向けてWIPPの処分システムで変更が必要になることを表明しており、規制遵守に与える影響等に関してDOEから補足情報が提供される予定であることなどを伝えている。

【出典】

 

【2014年10月14日追記】

環境保護庁(EPA)は、エネルギー省(DOE)が提出した廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)に係る適合性再認定申請書について、パブリック・コメントの募集を開始することを2014年10月10日の連邦官報に掲載した。EPAは、コメントの提出期限は適合性再認定申請書の完全性の確認後、改めて連邦官報に掲載するとしている。

EPAは、今回の連邦官報の中で、2014年2月にWIPPで発生した放射線事象は、適合性再認定申請書の審査において重要な考慮事項になるとしている。なお、EPAは、放射線事象についてEPAが行ったレビューにおいて、DOEはEPAの基準を遵守しているものの、事象発生時の情報提供には改善の余地があることが確認されたとしている。

また、適合性再認定申請書は放射線事象の発生前に準備されたものであるため、処分場の操業の再開に向けて必要とされるWIPPの処分システムの変更については、DOEから補足情報が提供される予定であること、提供された補足情報はウェブサイトで公開されることも連邦官報に示されている。

【出典】

 

【2014年12月22日追記】

環境保護庁(EPA)は、2014年12月17日に、エネルギー省(DOE)が2014年3月に提出した廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)に係る適合性再認定申請書について、完全性の確認の審査に係るDOEに対する質問書を公表した。

DOEに対する質問書では、適合性再認定申請書の内容に係る技術的な質問などとともに、2014年2月14日に発生した放射線事象に関連する事項として、液体廃棄物を浸み込ませる吸収材として使用された猫砂(Kitty litter)が封入された廃棄物の特性・量などの詳細な記述、有機配位子や界面活性剤など廃棄物の溶解性に影響を与え得る有機物の量、猫砂が放射性核種の移行に与える影響などについて情報が要求されている。

なお、EPAは、完全性の確認の審査のため、今後もさらに質問を行う予定としている。

【出典】

 

【2017年2月28日追記(2017年3月28日再追記:コメント期限を2017年4月10日とする連邦官報2017月3月10日を出典に追加)】

環境保護庁(EPA)は、エネルギー省(DOE)が提出していた適合性再認定申請書に関して、適合性再認定申請書の完全性を確認して決定したこと(以下「完全性決定」という。)について、2017年1月13日付けの書簡でエネルギー長官に通知した。本書簡は、連邦政府の規制情報ウェブサイトの廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)適合性再認定のページにおいて、2017年2月24日に公表された。適合性再認定申請書についてEPAは、既に2014年10月10日からパブリックコメントの募集を行っており、今回の完全性決定に関するコメントの募集は本書簡の連邦官報への掲載から30日後まで続けられる。

EPAは、DOEの適合性再認定申請書を詳細に評価し、関連するパブリックコメントを考慮した上で、適合性再認定に関する最終決定を行うとしている。

【出典】

米国で2014年3月4日に、2015会計年度1 の大統領の予算教書が連邦議会に提出され、大統領府管理・予算局(OMB)のウェブサイトで公表された。2012年1月のブルーリボン委員会の最終報告書・勧告に基づいて、2013年1月にエネルギー省(DOE)が策定した「使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物の管理・処分戦略」(以下、「DOE戦略」という。)の関連予算として、DOEが7,900万ドル(約77億円、1ドル=98円で換算)を要求している。なお、ユッカマウンテン処分場関連予算の要求はない。

大統領の予算教書とともに公表されたエネルギー省(DOE)の予算概要資料では、DOE戦略を実施に移すため、輸送、貯蔵、処分、サイト選定に係る研究開発及びプロセス開発に焦点を当てた活動を行うとしている。DOEの詳細な予算要求資料は、今後、DOEのウェブサイトで公表される見込みである。

なお、ユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可申請書の審査を実施している原子力規制委員会(NRC)については、大統領の予算教書・各省庁の予算概要に記載がない。また、NRCの予算概要資料では、2015会計年度の高レベル放射性廃棄物処分関連として、使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物の処分の将来的な代替戦略のためのデータ収集・モデル化が増加すること、米国としての高レベル放射性廃棄物及び使用済燃料管理プログラムの変化に対応・サポートするための規制枠組み・可能性のある規則策定の評価などの予算が記載されているが、ユッカマウンテン処分場の審査に関する予算要求は記載されていない。

 【出典】

 

【2014年3月18日追記】

米国のエネルギー省(DOE)は、2014年3月14日に、2015会計年度の予算の説明資料を公表した。「使用済燃料処分等プログラム」(UFDプログラム)の予算要求額は7,900万ドル(約77億円、1ドル=98円で換算)であり、「研究開発活動(代替案を特定するための研究開発及び既存・将来の核燃料サイクルに係る放射性廃棄物処分等の研究開発)」とともに、「統合放射性廃棄物管理システムの設計に係る活動」の2分野から構成されている。なお、ユッカマウンテン処分場関連の予算要求額の記述は無いが、DOE原子力局(NE)の管理費の中で訴訟対応費用等が計上されている。

2015会計年度の予算による実施事項のうち、UFDプログラムの「研究開発活動」については、4,900万ドル(約48億円)の予算要求額で以下の事項を行うとしている。

  • 長期貯蔵に係る原子力規制委員会(NRC)の許認可を支援するための高燃焼度使用済燃料の検査能力・技術的知識の開発
  • 代替処分環境に関する長期的研究開発と国際協力の継続(フィールド試験を含む)
  • 既存の輸送・貯蔵キャニスタの直接処分への適用の可能性に係る研究開発の継続
  • 超深孔処分の代替設計概念の評価。超深孔処分の実証活動等の開始。
  • 結晶質岩、粘土/頁岩(シェール)及び岩塩の主要な3岩種の評価の継続(フィールド試験を3岩種について適宜実施)

さらに、2015会計年度の予算による実施事項のうち、UFDプログラムの「統合放射性廃棄物管理システムに係る活動」については、放射性廃棄物基金からの2,400万ドル(約24億円)を含む3,000万ドル(約29億円)の予算を要求しており、現行法の権限内で以下の事項を行うとしている。

  • 同意に基づくサイト選定プロセスのための計画策定の継続
  • 廃棄物管理システムへの情報を取りまとめる統合使用済燃料データベース及び分析システムの維持・拡張
  • 廃止措置された原子炉サイト等からパイロット規模の中間貯蔵施設への使用済燃料等の大規模な輸送の準備
  • 乾式貯蔵キャスク及び輸送システム標準化の評価を含め、貯蔵・輸送・処分の柔軟性のある統合アプローチの評価
  • 大規模な中間貯蔵施設の一般的な操業・概念設計オプションの評価(詳細な費用・スケジュールデータの開発を含む)
  • パイロット規模の中間貯蔵施設の一般的安全性評価レポートの策定とNRCのレビュー(キャスク受入・取扱施設を含む)
  • システム構成研究、意思決定分析能力、文書・知識管理の組織的インフラ、使用済燃料受入・許認可の支援などの完結
  • 中小サイズの標準輸送・貯蔵・処分(TAD)キャニスタの包括的な一般設計の完成
  • 処分場概念のシステムレベル解析のための改良モデル化・ツールの開発継続
  • 次世代廃棄物管理システムのロジスティクス分析ツールの検証・確立

UFDプログラムの研究開発活動に係る2015会計年度の予算要求額は、2014会計年度の要求額と比較して1,900万ドル(約19億円)増加しているが、DOEは、その主な要因として、高燃焼度燃料の長期貯蔵に関する技術的知識の開発、超深孔処分の実証活動の開始などを挙げている。

【出典】

 

【2014年7月17日追記】

米国の連邦議会下院は、2014年7月10日に、2015会計年度のエネルギー・水資源歳出法案を253対170で可決した。本法案では、2014年度の下院の歳出法案と同様に、ユッカマウンテン関連の放射性廃棄物処分予算として1億5,000万ドル(約150億円)、原子力規制委員会(NRC)のユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可手続の予算として5,500万ドル(約56億円)が割り当てられている。なお、エネルギー省(DOE)の予算要求では、2012年1月のブルーリボン委員会の最終報告書・勧告に基づいて、2013年1月にDOEが策定した「使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物の管理・処分戦略」を実施に移すための予算が要求されていたが、今回下院で可決された2015会計年度の歳出法案では、ユッカマウンテン計画の中止に繋がる活動への歳出を禁じる条項が規定されている。

2015会計年度の歳出法案の審議過程では、ネバダ州選出の議員から、放射性廃棄物処分関連予算をゼロとするなどのユッカマウンテン計画の中止を求める2つの修正案が提出されたが、いずれも4分の3以上の大差で否決された。一方、ホワイトハウスは、下院で2015会計年度の歳出法案が採決される前日の2014年7月9日に、本法案が成立した場合には拒否権を発動するとの意向を表明しており、その理由の一つとしてユッカマウンテン計画への予算配賦等を挙げている。

米国では、1982年放射性廃棄物政策法において、エネルギー省(DOE)が1998年1月31日から民間の使用済燃料引取りを開始することが定められており、原子力発電事業者とDOEとの間で処分実施のための契約が締結されている。ユッカマウンテン計画の遅れから、DOEは使用済燃料の引取りを実施できないために債務不履行状態にあり、DOEの2013会計年度報告に拠れば推定債務額は前年より28億ドル(約2,900億円)増加して251億ドル(約2兆5,600億円)になることが、下院の2015会計年度の歳出法案に係る歳出委員会報告書で指摘されている。

一方、連邦議会上院でも歳出法案の検討が行われており、2014年6月17日に上院歳出委員会エネルギー・水資源小委員会で法案の原案が策定されたが、2014年6月19日に予定されていた上院歳出委員会での法案策定は、期限を定めず見送ることが決定された。上院歳出委員会エネルギー・水資源小委員会策定の法案原案は公表されていないが、法案の概要説明資料では放射性廃棄物処分に係る言及はされていない。

なお、2014年2月に地下施設での火災事故と放射線事象が発生して復旧に向けた調査・対応が行われている廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)については、下院の2015会計年度の歳出法案では1億2,000万ドル(約102億円)の予算が、上院の歳出法案概要説明資料では3億2,300万ドル(約329億円)の予算が、復旧に向けた活動のためとして記載されている。

【出典】

 

【2014年7月28日追記】

米国の連邦議会上院の歳出委員会は、2014年7月24日に、歳出委員会のエネルギー・水資源小委員会で2014年6月17日に承認された2015会計年度のエネルギー・水資源歳出法案の原案、及び委員会報告書の草案を公表した。ただし、連邦議会上院は、2014年6月19日の歳出委員会で、2015会計年度のエネルギー・水資源歳出法案の正式な策定は行わないことを決定している。

今回公表された2015年度のエネルギー・水資源歳出法案の原案では、2013年6月に上院で策定された2014年度のエネルギー・水資源歳出法案と同様に、2012年1月のブルーリボン委員会の勧告に基づいて、同意に基づくサイト選定プロセスによる使用済燃料の中間貯蔵のパイロット施設の開発等をエネルギー長官に命じるよう規定されている。

「使用済燃料処分等プログラム」(UFD)の歳出予算については、研究開発活動の予算として3,000万ドル(約29億円)が、中間貯蔵のパイロット施設の開発等を実施するための予算として8,900万ドル(約87億円)が、総額で1億1,900万ドル(約116億円)が計上されている。ユッカマウンテン処分場関連の歳出予算はゼロとなっており、これまでに計上された歳出予算の未支出残高も抹消されている。また、原子力規制委員会(NRC)のユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可手続の予算も割り当てられていない。

なお、廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP) については、2014年2月に発生した地下施設での火災事故と放射線事象の復旧に向けた調査・対応が行われており、約3億1,800万ドル(約312億円)の予算が割り当てられているが、復旧活動に係る予算の内訳は示されていない。

【出典】

 

【2014年9月22日追記】

米国の連邦議会は、2014年9月18日に、2015年9月30日までの2015会計年度のうち、2014年10月1日~12月11日を対象とした継続歳出決議を可決した。本継続歳出決議は、エネルギー・水資源分野を含む予算項目に対して、2014会計年度の包括歳出法での予算と同レベルの歳出を認めるものである。継続歳出決議による予算では、原則として前年度予算と同率で比例配分され、特段の指定が無い限りは前年度で未計上の事業・プログラム等の実施は認められない。

今回可決された2015年度の継続歳出決議では、放射性廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)について特別の規定が置かれており、歳出予算の範囲内において、処分場の復旧及び改修に必要な活動が必要に応じて実施できるよう認められている。なお、ユッカマウンテン処分場関連など、その他の放射性廃棄物処分に関する特別な規定は無い。

【出典】

 

【2014年12月15日追記】

米国の連邦議会は、2014年12月13日に、2015会計年度包括歳出・継続予算法案を可決した。本包括歳出・継続予算法案の条文には記載されていないが、付随する説明文書において、「使用済燃料処分等プログラム」(UFDプログラム)の歳出予算として、「研究開発活動」についてはエネルギー省(DOE)の予算要求額通りの4,900万ドル(約53億円)、「統合放射性廃棄物管理システムに係る活動」についてはDOE要求額より750万ドル少ない2,250万ドル(24億3,000万円)と示されている。

2015会計年度包括歳出・継続予算法案では、ユッカマウンテン計画に関する記述は無く、ユッカマウンテンでの高レベル放射性廃棄物処分場に係る開発関連予算は与えられていない。ただし、連邦議会下院の歳出委員会が公表した法案の要約資料では、2014会計年度と同様に、政治的事項の一つとして「ユッカマウンテンの将来利用のための可能性を維持し、安全性評価報告(SER)を完成させるための先年予算の継続」が示されている。

また、2015会計年度包括歳出・継続予算法案の説明文書では、廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)について、復旧の取り組みを支援するためとして、DOE予算要求額より約1億ドル多い3億2,000万ドル(345億6,000万円)の歳出予算が示されている。

なお、2015会計年度の歳出予算については、2015会計年度が開始される2014年10月1日までに歳出法が制定されず、2014年12月11日までの継続歳出決議による予算が執行されていたが、2015会計年度包括歳出・継続予算法の制定手続の遅れから、再度、2014年12月13日までの継続予算が執行されていた。

【出典】


  1. 米国における会計年度は、前年の10月1日から当年9月30日までの1年間となっており、今回対象となっている2015会計年度の予算は2014年10月1日からの1年間に対するものである。 []

廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)周辺の環境放射線モニタリングを行っているニューメキシコ州立大学付属のカールスバッド環境モニタリング・研究センター(CEMRC)は、2014年2月19日のWIPPから約1kmの観測地点での微量のアメリシウム241及びプルトニウム239/240の検出結果の公表に続いて、2014年3月5日に、WIPPの排気塔内のエアフィルター(直径47mm、1μmの細孔径を持った紙フィルター)から回収されたサンプルの放射線学的分析結果を公表した。これは排気塔内のHEPAフィルターの前後に設置されたエアーサンプリング装置のフィルターを分析したものであり、以下のような数値が報告されている。

(単位:Bq/m3
サンプリング地点 サンプル回収日時 アメリシウム241 プルトニウム239/240

HEPAフィルター通過前

2014/2/15 06:30

1,365

672

2014/2/15 23:30

130

17

2014/2/21 08:45

0.65

0.06

HEPAフィルター通過後

2014/2/18 16:55

1.81

0.224

2014/2/21 08:28

0.12

0.012

※エアーサンプリング装置のフィルターは、最初に回収されたサンプルは2014年2月14日の午前8時前に設置されたものであり、以後は約8時間毎に回収されている。なお、2014年2月21日の数字は1日当たりの放出量。

カールスバッド環境モニタリング・研究センター(CEMRC)は、放射線事象の発生直後のHEPAフィルター通過前のサンプルの放射能濃度は高い数値を示しているものの、約1日経過後には激減し、1週間後には非常に低いレベルに低下しているとしている。また、実際のWIPP周辺への影響を示すHEPAフィルター通過後の放射能濃度は、放射線事象の発生直後にはやや高くなったものの、環境保護庁(EPA)の基準値である37Bq/m3と比較すると非常に低いレベルであったことを指摘している。

【出典】

米国のエネルギー省(DOE)のニューメキシコ州のカールスバッド・フィールド事務所(CBFO)は、2014年2月15日のプレスリリースにおいて、廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)で2014年2月14日の午後11時30分に放射線事象が発生したことを公表した。地下での放射線の検知後に換気システムが自動的にフィルターモードに切り替わり、地表への放射性物質の漏洩は最小限に抑えられ、健康や環境に影響はないとされたが、WIPPでの操業は中止されている。

WIPPは、軍事起源のみのTRU廃棄物の地層処分場であり、操業者であるDOEは、1999年3月26日の操業開始以降、順調に放射性廃棄物を受入れて、地下での処分を実施してきた。

DOEのプレスリリースでは、2014年2月15日の午後2時49分に放射線事象の発生の第一報と合同情報センター(JIC)の設置が公表され、2014年2月16日の午後6時32分にJICの閉鎖が伝えられるまで3度にわたる放射線事象報告で情報の更新が行われた。これらの放射線事象報告では、WIPPの敷地境界での放射線計測により、健康や環境に影響がないことが強調されるとともに、装置類・人員・施設の汚染はないが、重要業務以外の職員はサイト外へ退去したこと、放射性物質の発生源は調査中であることなどが公表された。

一方、2014年2月19日には、WIPP周辺の環境放射線モニタリングを行っているニューメキシコ州立大学に付属するカールスバッド環境モニタリング・研究センター(CEMRC)が、WIPPから約1kmの観測地点で微量のアメリシウム241とプルトニウム239/240を検出したことを公表した。これは、2014年2月16日の午前に回収された環境エアサンプリングステーションのフィルタを分析したものであり、アメリシウム241として0.64Bq、プルトニウム239/240として0.046Bqが検出されている。なお、これまでのCEMRCの観測では、アメリシウム241とプルトニウム239/240は過去に4回検出されているが(最高でアメリシウム241が0.004Bq、プルトニウム239/240が0.0005Bq)、何れもWIPP起源のものではなく、過去の核実験によるものとされている。

また、DOEも2014年2月24日のプレスリリースにおいて、新たな環境モニタリングデータを公表するとともに、「WIPP復旧情報センター」というウェブページを開設し、今回の放射線事象に関する最新の活動状況と複数地点でのサンプリングデータの公表を行っている。公表されたデータによれば、放射線事象の発生翌日の2014年2月15日にWIPPの隣接地点で検出された放射能量は0.87Bq、線量当量では0.03mSvであったが、2014年2月17~18日に同地点を含む複数箇所での簡易分析で検出された放射能量は0.02~0.07Bq、線量当量では0.001~0.003mSvと評価されている。なお、最終的な分析値が得られるまでには、サンプルの採取から最大で2週間が必要としている。

2014年2月19日のプレスリリースで、DOEは、引き続き放射線モニタリングを行うとともに、DOE、労働省鉱山安全保健管理局、防火、換気、鉱山安全等の専門家から成る事故調査委員会(AIB)を設置したことを公表した。また、地下施設への立入りのために他のDOEサイトや国立研究所からの支援を得て、地下施設の調査計画の検討が行われている。

なお、WIPPでは、2014年2月5日に、地下施設内において岩塩の運搬車の火災事故が発生していた。火災は、放射性廃棄物の処分エリアとは反対側の地下施設内で発生したものであり、近くに放射性廃棄物はなく、当日中に鎮火が確認され、被害は火災発生地点の至近範囲に限定されていた。

【出典】

 

【2014年3月10日追記】

ニューメキシコ州のエネルギー省(DOE)のカールスバッド・フィールド事務所(CBFO)は、2014年3月9日のプレスリリースにおいて、2014年2月14日に放射線事象が発生した廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)で復旧に向けたプロセスを開始したことなどを公表した。また、「WIPP復旧情報センター」ウェブページの情報も更新され、最新のサンプリングデータや復旧活動の写真などが掲載されている。

WIPPの復旧プロセスは、下図のように6段階のプロセスとして示されており、2014年3月7~8日には空気取入立坑及び建設工事用立坑に計測機器を下ろして第1段階の無人での放射線・空気観測が行われた。簡易分析の結果では、空気中に放射性物質による汚染は検出されず、空気の状態も正常と見られている。DOEは、このプロセスは、作業員が地下に入る際の防護装備の決定のために重要としており、こうした安全検査の完了後、早ければ2014年3月17日の週の週末にも作業チームをWIPPの地下施設に送る予定としている。

 

6段階の復旧プロセス

6段階の復旧プロセス

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立坑での放射線検出作業の様子

空気取入立坑と建設工事用立坑の安全が確認された後は、両立坑間の汚染状況を検査し、放射線事象の発生直前に作業が行われていた処分エリアに作業チームが派遣される。作業チームは、放射線学的サンプリング等を実施して放出源を隔離し、汚染の危険性を取り除く計画を実施する予定とされている。

DOEのプレスリリースでは、WIPPで勤務する職員の被ばく検査の最新情報も公表されており、2014年3月8日現在で、17名の職員についてバイオアッセイで陽性の結果が出ていたが、追加検査の結果では肺への吸入等は認められず、被ばく線量は極めて低く、健康への影響は想定されないとしている。

また、WIPPサイト内及び近郊でのエアサンプリングのデータも更新されている。公表されたデータによれば、2014年2月17~18日の最終的な分析で検出された放射能量は0.00035~0.01Bq、線量当量では0.00001~0.0004mSvと簡易分析の結果よりも低く、また、2014年2月26日の簡易分析結果については、放射能量は0.019~0.045Bq、線量当量では0.0007~0.002mSvと評価されている。DOEのプレスリリースでは、サイト外では引き続き大きな汚染は確認されておらず、2014年2月14日の放射線事象による公衆の健康及び環境への影響は想定されないとしている。

【出典】

 

【2014年3月12日追記】

ニューメキシコ州のエネルギー省(DOE)のカールスバッド・フィールド事務所(CBFO)は、WIPP復旧情報センター(WIPPの放射線事象のページ)の2014年3月10日の更新情報において、廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)で2014年2月14日に発生した放射線事象の原因を調査するための変更計画を示しており、空気取入立坑及び建設工事用立坑での検査が順調であれば、作業チームが2~3週間以内には地下施設に送られる予定であることを公表した。作業チームは、岩塩の坑道の安定性を確認し、放射性物質の放出源を特定するため、連続的に派遣される計画である。

また、WIPP復旧情報センターでは、2014年3月11日にも追加の資料が掲載されており、2014年2月14日に発生した放射線事象及び2014年2月5日に発生した火災事故の場所が以下の位置図で示されている。

放射線事象と火災事故の場所

放射線事象と火災事故の場所

【出典】

 

【2014年4月4日追記】

ニューメキシコ州のエネルギー省(DOE)のカールスバッド・フィールド事務所(CBFO)は、廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)復旧情報センター(WIPPの放射線事象のページ)の2014年4月2日の更新情報において、WIPPで2014年2月14日に放射線事象が発生した以降、初めて作業チームが地下施設に入坑したことを公表した。

地下施設の作業チームによる調査は、8名編成の2チームによって行われ、最初の作業チームが2014年4月2日13時頃に入坑した後、13時半頃には2番目の作業チームが入坑した。作業チームは、空気取入立坑及び建設工事用立坑の周辺を調査して汚染が無いことを確認するとともに、連続エアモニタ装置や通信装置などを設置し、今後の地下施設での作業の基地を設営した。

WIPP復旧情報センターの2014年4月3日の更新情報では、今回の地下施設での作業エリアなどが下図の通り示されている。

 

2014年4月2日の地下施設の活動エリア

2014年4月2日の地下施設の活動エリア

WIPP地下施設のレイアウト図

WIPP地下施設のレイアウト図

次回の地下施設への入坑は、今回の地下施設への入坑による調査結果を評価した後、2014年4月7日の週に行われる見込みとされている。次回の入坑時には、地下施設内を処分エリアに近い南側に進み、連続エアモニタ装置を追加設置し、通信装置の試験が行われる予定であり、その結果により放射性物質の放出源特定のための第3段階の地下調査の詳細を決定するとしている。

【出典】

 

米国の原子力規制委員会(NRC)は、2014年1月31日に、連邦控訴裁判所が2013年8月13日付けの判決で命令したユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可申請書の審査の再開について、2013年12月の月次状況報告書を公表した。本月次状況報告書は、連邦議会下院の関連委員会に送付されたものであり、2013年12月までの審査再開に係る活動状況が示されている他、再開された審査活動のプロジェクト計画書も添付されており、今後の審査活動の内容、取組体制、スケジュールなどが示されている。

今回NRCが公表した2013年12月の月次状況報告書では、以下が示されている。

達成事項

  • 2013年11月18日のNRCの委員会決定に対応するための「ユッカマウンテン審査活動プロジェクトプラン」の策定
  • 審査活動を実施するための体制の再編、人員の確保を進め、安全性評価報告(SER)の審査を開始
  • 規制支援機関である放射性廃棄物規制解析センター(CNWRA)に対する作業仕様書の策定
  • 法務官によるユッカマウンテン関連の訴訟対応、許認可審査の再開方法への申立ての処理

今後の活動のスケジュール及び費用

  • 安全性評価報告(SER)の完成は、約12カ月を要し、2015年1月に終了予定
  • 許認可支援ネットワーク(LSN)(詳細はこちら)に登録されていた文書のNRCデータベース(ADAMS)の非公開領域への登録を2014年5月までに完了
  • エネルギー省(DOE)に策定を要求した補足環境影響評価書(SEIS)の採択に向けた対応予定等の検討(スケジュールはDOEのSEIS完了予定に依存)
  • 安全性評価報告(SER)の完成・発行に要する費用は、2013年9月の見積で830万ドル(約8.1億円)であり、補足環境影響評価書(SEIS)の審査やADAMSへの文書登録を含めた総費用の見積額は約960万ドル(約9.4億円)

放射性廃棄物基金の状況

  • 放射性廃棄物基金から支出される金額は、2013年12月までに約23万ドル(約2,300万円)であり、2013年12月末の未使用予算残高は約1,300万ドル(約12.7億円)1

関係者とのコミュニケーション・対応など

  • エネルギー省(DOE)とのコミュニケーションを開始し、2014会計年度第2四半期2 にSEIS策定に係るパブリックミーティングを計画

なお、月次状況報告書に添付された「ユッカマウンテン審査活動プロジェクトプラン」では、NRCが取り組むユッカマウンテン関連のスケジュールが下図のように示されている。

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NRCのユッカマウンテン関連活動のスケジュール
(NRC「ユッカマウンテン審査活動プロジェクト計画」より引用)

また、「ユッカマウンテン審査活動プロジェクトプラン」では、これらのNRCの審査活動のため対応計画や実施体制などが示されており、実施体制、安全性評価報告(SER)の策定方法は以下の通りとされている。

実施体制

  • 安全性評価報告(SER)の完成に係るNRCの主たる組織は核物質安全・保障措置局(NMSS)の使用済燃料代替戦略部(SFAS)となるが、他の関連部局による支援に加え、規制支援機関である放射性廃棄物規制解析センター(CNWRA)が技術的支援を行う。
  • 使用済燃料代替戦略部(SFAS)内では、4部門の内の3部門が、閉鎖前チーム(安全性評価報告(SER)第2分冊)、閉鎖後チーム(SER第3分冊)、管理・プログラムチーム(SER第4・5分冊と補足環境影響評価書(SEIS))としてSER策定作業等に専念する。
  • 核物質安全・保障措置局(NMSS)が主導し、委員会秘書室(SECY)や議会調整局などの関連NRC内部局や原子力安全・許認可委員会パネル(ASLBP)などで構成される「ユッカマウンテン・コアグループ」がユッカマウンテン関連活動の状況を定期的にレビューする。

安全性評価報告(SER)の策定方法

  • ユッカマウンテンチーム(YMT)が、技術評価報告書(TER)と安全性評価報告(SER)の最新ドラフトとを比較した上で、最も効率的な対応を検討する(例えば、規制上の確認も行われていたSER第3分冊はドラフト報告書を基に作業し、他の分冊はTERを基にするなど)。
  • 目標期限遵守のため、例えば、DOEによる対応の遅れなどのスケジュールに影響する問題が確認された場合には各担当管理者に解決を求める。
  • 安全性評価報告(SER)の各分冊が完成した場合には、核物質安全・保障措置局(NMSS)の責任者の署名を経てNUREGシリーズの文書として発行する。
  • 既存の作業ファイルの活用体制、執筆体制などについては、ガイドラインとして示したとおりとする。

【出典】

 

【2014年4月8日追記】

米国の原子力規制委員会(NRC)は、2014年3月28日に、連邦控訴裁判所が2013年8月13日付けの判決 で命令したユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可申請書の審査の再開について、2014年2月度の活動状況をまとめた月次状況報告書を公表した。今回の月次状況報告書では、2014年2月末時点までの達成事項・活動状況、今後の活動に要する費用・スケジュールの見通し、支出実績などが示されている。

特に、これまでの月次状況報告書で2015年1月に終了する予定が示されていた安全性評価報告(SER)の策定については、各分冊・章ごとに、策定作業及び公表に向けたマイルストーンがチャート形式で示されている。各分冊の公表予定は以下のとおりであり、閉鎖後の処分場の安全性に係る第3分冊は、最も早い2014年11月6日の公表が予定されている。

分冊名 全章の策定完了 レビューを経て公表
第1分冊「一般情報」 (完成、公表済み) 2010年8月23日

第2分冊「閉鎖前の処分場の安全性」

2014年9月24日

2014年12月4日

第3分冊「閉鎖後の処分場の安全性」

2014年8月27日

2014年11月6日

第4分冊「管理上及びプログラム上の要求事項」

2014年9月10日

2014年11月20日

第5分冊「許認可仕様」

2014年9月24日

2014年12月11日

なお、今後の活動に要する費用については、安全性評価報告(SER)の策定等に要する費用は以前の想定から変化がないとされているが、エネルギー省(DOE)が補足環境影響評価書(SEIS)を策定しないことによる影響については評価を実施中とされている。

【出典】


  1. NRCが保有するユッカマウンテン許認可手続のための未使用予算残高は約1,100万ドル(約10億円)とされていたが、その後に締結済みの契約の解除などにより約220万ドル(約2.2億円)が利用可能となったため、使用可能な予算残高は増加している。 []
  2. 米国における会計年度は、前年の10月1日から当年9月30日までの1年間となっており、2014年1月~3月の四半期となる。 []

米国の連邦議会下院のエネルギー・商務委員会の委員長などは、2013年12月11日に、エネルギー長官に対して、ユッカマウンテン計画に係る連邦控訴裁判所判決等へのエネルギー省(DOE)の対応を問う書簡を送付した。本書簡では、ユッカマウンテン処分場の許認可申請の審査の再開を命じた2013年8月13日の連邦控訴裁判所判決、2013年8月13日の判決を受けて原子力規制委員会が決定した2013年11月18日の「覚書及び命令」、放射性廃棄物基金への拠出金の徴収停止を命じた2013年11月19日の連邦控訴裁判所判決について、DOEの具体的な対応計画などの質問が示されている。

書簡では、エネルギー長官やDOE高官が判決への適切な対応や法律の遵守を約束した証言を委員会の公聴会で行っているにも拘わらず、許認可手続再開についてはNRC指示への適合という限定的な対応を示唆したことに失望したとしている。また、2013年11月19日の連邦控訴裁判所判決においても、DOEは法律上の義務を未だに実施していないとされている状況を指摘した上で、質問に対する回答・情報を2014年1月2日までに提出するように要求している。なお、2013年11月19日の連邦控訴裁判所判決では、ユッカマウンテン計画を中止し、代替案を検討するのは1982年放射性廃棄物政策法に違反しているとの判断が示されていた。

書簡では、以下の7つの質問が示されている。

  1. 2013年11月19日の連邦控訴裁判所判決への対応について、DOEは、拠出金額をゼロに変更する提案を行うのか、あるいは、1982年放射性廃棄物政策法の遵守に着手するのか、いずれの意向であるかを示すこと。
  2. 仮に、DOEが拠出金額をゼロにする提案を連邦議会に提出するのであれば、提案の提出期限を示すこと。
  3. 仮に、DOEが1982年放射性廃棄物政策法の遵守に着手するのであれば、処分実施の担当部署である民間放射性廃棄物管理局(OCRWM)の再設置及び処分場プログラム再開の計画(スケジュールと必要リソースの推定を含む)、関連する契約者の業務委託リストを提出すること。
  4. NRCの2013年11月18日の「覚書及び命令」で要求された、地下水の影響に対応する補足環境影響評価書(SEIS)の完成のための計画(費用・スケジュールの詳細を含む)を提出すること。
  5. NRCにおける許認可手続を完結させるために必要なDOEの推定リソースを提出すること(現状の推定が無い場合は、最も最近の推定)。
  6. DOE次官の月次状況報告書(2013年12月2日)で示された放射性廃棄物基金からの支出59万3,000ドル(約5,810万円)の活動項目別の詳細な明細及び今後2年間の推定支出を提出すること(元ユッカマウンテン従事者の年金債務の関連情報、同年金を放射性廃棄物基金から支給する基準なども提出)。
  7. 上記の月次状況報告書で示されたように、当面の拠出金の徴収継続を含めて放射性廃棄物基金の管理をDOEが行う中で、放射性廃棄物基金の状況に係るOCRWM月次報告書を2010年に廃止した理由を説明すること(以下を含む)。
    1. ある州の電力消費者による放射性廃棄物基金への拠出状況などを公衆が知り得る上記のような報告書の作成・公表を再開する時期
    2. 使用済燃料の発生者(使用済燃料引取り、放射性廃棄物基金への拠出金支払いに係る標準契約を締結した者)における使用済燃料発生日・発生量をDOEが把握している方法及びその公表可能性の説明
    3. これら情報の公表を中止した決定がDOEの公開性・透明性の考え方にどう適合するかの説明

【出典】

米国の連邦控訴裁判所1 は、2013年11月19日に、全米公益事業規制委員協会(NARUC)などが放射性廃棄物基金への拠出金の徴収の停止を求めていた訴訟 に関して、エネルギー省(DOE)に対して、拠出金額をゼロに変更し、実質的に徴収しないよう命じる判決を下した。放射性廃棄物基金への拠出金については、連邦控訴裁判所の指示により、DOEが2013年1月に拠出金額の妥当性評価報告書を公表していたが、妥当性評価報告書には欠陥があり、拠出金の徴収は停止されるべきとするNARUCらの主張が認められたものである。

今回の連邦控訴裁判所の判決では、DOEは法的に適切な拠出金額の妥当性の評価を行うことは明らかに不可能とした上で、DOEが1982年放射性廃棄物政策法を遵守する選択をするか、または、連邦議会が代替の廃棄物管理計画を法制化するまでは拠出金額をゼロに変更するとの提案を連邦議会に提出することが命じられた。

判決理由では、DOEが拠出金額の妥当性の評価の前提とした「使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物の管理・処分戦略」(DOE戦略) は、1982年放射性廃棄物政策法に直接的に反する前提に基づいているとして、以下の点が指摘されている。

  • 1982年放射性廃棄物政策法は、ユッカマウンテン以外のサイトを代替の処分候補地と見なさないとしているが、DOE戦略はユッカマウンテン以外の選択を前提としている。
  • DOE戦略では、原子力規制委員会(NRC)による処分場の建設認可の発給がない状況で、2025年までの中間貯蔵施設の操業開始を想定している。しかし、1982年放射性廃棄物政策法は、そのような前提条件を置いている。暫定施設を利用することにより、ユッカマウンテンの建設の遅延の影響を回避できるよう制度設計されている。
  • DOE戦略は処分場立地に州等の同意が必要としているが、1982年放射性廃棄物政策法は連邦政府に州の反対を覆す権限を与えている。
  • DOE戦略では処分場の操業開始を2048年としているが、1982年放射性廃棄物政策法は1998年までの処分場完成を命じている。

なお、1982年放射性廃棄物政策法においては、DOEが拠出金額をゼロに変更する提案を連邦議会に提出した場合、連邦議会が送達を受けてから90日間の経過時点で変更した拠出金額が有効となるが、上院または下院が不承認決議をした場合は変更した拠出金額が無効になることが規定されている。

 

【出典】

 

【2014年1月6日追記】

エネルギー省(DOE)は、2014年1月3日に、放射性廃棄物基金への拠出金額をゼロに変更し、実質的に徴収しないよう命じる2013年11月19日の連邦控訴裁判所による判決に対して、連邦控訴裁判所の大法廷での再審理を求める申立てを行った。

DOEは、連邦控訴裁判所の判決に対して再審理が認められるべき理由として、以下のような点を主張している。

  • 1982年放射性廃棄物政策法は、原子力発電の販売電力に対して1ミル(0.001ドル)/kWhを標準の拠出金額とし、その変更については、「収入が不足または超過」することが確認された場合に「全費用の回収を確実にするため」に行うとの前提条件を規定しているが、連邦控訴裁判所の判決は本条文に反している。
  • 連邦控訴裁判所の判決では、ユッカマウンテン処分場の費用想定を使用することも、ユッカマウンテン以外の処分場の費用想定を使用することも不可とする、矛盾し誤った命令を下しているため、DOEは拠出金の妥当性評価を行うことが実質的に不可能である。
  • 本件は異例の国家的な重要事項のため、判決を正すために大法廷での審理が必要である。

 

【出典】

 

【2014年1月14日追記】

エネルギー長官は、2014年1月3日に、連邦控訴裁判所の2013年11月19日の判決での指示に従い、放射性廃棄物基金への拠出金額を現状の1ミル(0.001ドル)/kWhからゼロに変更する提案を連邦議会に提出した。

エネルギー長官は、連邦議会の上院及び下院の議長に宛てた書簡の中で、この拠出金額の変更提案の位置付けを以下のように説明している。

  • 変更提案は、1982年放射性廃棄物政策法で必要とされるエネルギー長官の妥当性評価の結果に基づくものではない
  • エネルギー長官は拠出金額が過剰とも不足とも決定していない
  • したがって、連邦控訴裁判所に指示された本変更提案は、1982年放射性廃棄物政策法に規定された拠出金額の変更プロセスと一致していない

エネルギー長官は、本変更提案を提出した2013年1月3日に、連邦控訴裁判所に対して大法廷での再審理を求める申立ても行っており、今後の司法決定により変更もあり得るとの前提で本変更提案を提出するとしている。

また、エネルギー長官は、連邦議会が変更提案を受領してから90日以内に上院または下院が不承認決議を行った場合には変更提案が無効になるという1982年放射性廃棄物政策法の規定は最高裁判所で違憲(一院のみによる拒否規定が違憲)とされていること、本規定は、連邦議会は90日の検討期間内に立法措置によって変更提案を覆すことが出来ると解釈されていることを書簡中で付言している。

なお、今回の判決での原告である原子力エネルギー協会(NEI)は、2013年1月9日付けのニュースの中で、エネルギー省(DOE)が法律上・契約上の義務を果たすまでは拠出金は徴収されるべきでないなどとした上で、連邦控訴裁判所の判決は維持されるべきであり、原子力発電事業者や消費者は、DOEが意図的に中止した計画のための支払いから開放されるべきとの見解を示している。

【出典】

 

【2014年3月19日追記】

放射性廃棄物基金への拠出金額をゼロに変更して実質的に徴収しないよう命じる2013年11月19日の判決について、エネルギー長官が大法廷での再審理等を求めて2013年1月3日に申立てを行っていたが、連邦控訴裁判所は、2014年3月18日に、その申立てを却下した。

エネルギー長官は、連邦控訴裁判所の2014年11月19日の判決の指示に従って、放射性廃棄物基金への拠出金額を現状の1ミル(0.001ドル)/kWhからゼロに変更する提案を2014年1月3日に連邦議会へ提出している。このため、本提案を連邦議会が受領してから90日2 の検討期間内に連邦議会が変更提案を覆す立法措置を取らない場合には、本提案が有効となり、放射性廃棄物基金への拠出金額がゼロとなる。

なお、今回の放射性廃棄物基金への拠出金の徴収停止に係る訴訟の原告である全米公益事業規制委員協会(NARUC)及び原子力エネルギー協会(NEI)は、2014年3月18日付けのプレスリリースなどにおいて、本判決は原子力発電による電気の消費者にとって勝利であるとの歓迎の意向とともに、ユッカマウンテン計画の再開などを求める見解を示している。

【出典】

 

【2014年5月16日追記】

米国のエネルギー長官は、連邦控訴裁判所の2014年11月19日の判決の指示に従って、放射性廃棄物基金への拠出金額を現状の1ミル(0.001ドル)/kWhからゼロに変更する提案を2014年1月3日に連邦議会へ提出していたが、2014年5月16日に本提案が有効となり、放射性廃棄物基金への拠出金が実質的に停止される。今回の提案が有効となったのは、1982年放射性廃棄物政策法の規定に基づいており、連邦議会が提案を受領してから90日以内に、拠出金額をゼロとする提案を覆す立法措置を取らなかったため、自動的に有効となったものである。

今回の放射性廃棄物基金への拠出金の徴収停止を求めていた訴訟の原告であり、原子力産業界を代表する原子力エネルギー協会(NEI)は、2014年5月15日付けで公表したニュースにおいて、拠出金の徴収停止を歓迎するとした上で、連邦議会はユッカマウンテン処分場の許認可手続の完了のために予算を配賦すべきであること、連邦政府は高レベル放射性廃棄物管理計画を確立し、ユッカマウンテンまたは新しい地層処分場とともに、使用済燃料の集中貯蔵施設を実現すべきなどとした見解を示している。

また、連邦議会下院エネルギー・商務委員会の環境・経済小委員会の委員長は、2014年5月15日のプレスリリースにおいて、エネルギー長官が法的義務を果たしてユッカマウンテン計画を再開することが必要とした上で、今回の拠出金の徴収停止を歓迎するコメントを出している。

【出典】


  1. 連邦控訴裁判所のうち、コロンビア特別区(D.C.)巡回区控訴裁判所が担当(米国の首都ワシントンD.C.地区における訴訟事件を取り扱う)。 []
  2. 「連続する会期の90日間」とされ、上院・下院いずれかが休会の日は計算に含まない。 []

米国の原子力規制委員会(NRC)は、2013年11月18日に、連邦控訴裁判所が2013年8月13日付けの判決で命令した、ユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可申請書の審査の再開について、安全性評価報告(SER)の完成などを優先して行うことを決定し、NRCの決定文書として「覚書及び命令」を公表した。

今回のNRCの決定文書では、審査の再開への対応として以下が示されている。

  • 安全性評価報告(SER)の完成及び発行
  • 許認可支援ネットワーク(LSN)(詳細はこちら)に登録されていた文書をNRCデータベース(ADAMS)に登録
  • 国家環境政策法(NEPA)で必要とされる許認可申請の審査に必要な補足環境影響評価書(SEIS)の策定をエネルギー省(DOE)に要求
  • 原子力安全・許認可委員会パネル(ASLBP)が設置した建設認可委員会(CAB) での裁決手続及びLSNの再構築は上記3項目の完了まで引き続き停止

NRCは決定の理由として、裁決手続再開など他事項との対応順序の違いはあるものの、関係者全員がSERの完成を要求したことを指摘した上で、SER及びSEISの完成はNRCの連邦規則(CFR)での次のステップとして位置付けられること、限られた残予算の中でSERとSEISの完成は可能であるが、裁決手続などは意味ある進展が望めないことなどを挙げている。

SERは、DOEによるユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可申請書に対する審査結果を取りまとめたものであり、2010年8月に第1分冊「一般情報」が公表され、第3分冊「閉鎖後の処分場の安全性」も2010年9月の発行見込みとされていたが、NRCの許認可手続の停止により、結論部分が示されない技術評価報告書(TER)の公表にとどまっていた 。SERは、以下の5分冊から構成され、今回のNRCの決定により第2分冊から第5分冊が完成・発行される予定である。

  • 第1分冊「一般情報」
  • 第2分冊「閉鎖前の処分場の安全性」
  • 第3分冊「閉鎖後の処分場の安全性」
  • 第4分冊「管理上及びプログラム上の要求事項」
  • 第5分冊「許認可仕様」

NRCの決定文書では、SERの第2分冊から第5分冊の作業は同時並行で行われ、完成した分冊から順次公開されること、作業開始から約1年の期間と約830万ドル(約8億円)の費用を要することが示されている。また、別途NRCスタッフに宛てられた指示文書では、SERの作業停止時に行われていたアプローチで効率的に作業を進めること、月次状況報告書を提出すること、SERの完成は優先課題と位置付けるが廃棄物保証に係る作業の障害とならないことなどが指示されている。

なお、LSNに登録されていた文書のADAMSデータベースへの登録については、すべての文書を早急に非公開領域のADAMSに登録すること、SER及びSEISの参照資料となるものは公開することが命令されている。

【出典】

 

【2014年3月3日追記】

ユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可申請書の審査の再開については、原子力規制委員会(NRC)が決定文書で4項目の対応を示していた。これに対してエネルギー省(DOE)は、2014年2月28日に、4項目のうち、DOEに策定を要求していた補足環境影響評価書(SEIS)について、SEISの十分性を最終的に判断するNRCに委ねるとして、自らは策定を行わない旨を回答した。

ただし、DOEは、2009年7月30日付けの技術報告書「ネバダ州ユッカマウンテンでの使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物処分のための地層処分場での閉鎖後の地下水影響の解析」の改定版をNRCに提出するとしており、補足環境影響評価書(SEIS)の策定に必要な技術的情報は、基本的にすべて提供されることになるとしている。

【出典】

 

【2014年4月11日追記】

原子力規制委員会(NRC)によるユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可申請書の審査再開への対応として、NRCがエネルギー省(DOE)に要求していた補足環境影響評価書(SEIS)の策定に関して、NRCとDOEとの会議が2014年4月7日に開催された。本会議は、SEISの策定は行わないとするDOEからの2014年2月28日の回答を受け、2014年3月19日にNRCが開催を要求したものである。

本会議にDOEが提出した資料では、以下のような内容が示されている。

  • DOEは、2009年7月の技術報告書「ネバダ州ユッカマウンテンでの使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物処分のための地層処分場での閉鎖後の地下水影響の解析」の改定版を2014年6月までに策定する。
  • 新たな情報を踏まえてレビューした結論として、DOEは以下のように結論した。
    • 2009年以降にサイトでの物質の物理的変化はない。
    • 2009年に使用した数値モデルが無効という事実はない。
    • 2009年に使用した数値モデルへの入力データは安全側であり、現在も変わらない。
    • 前回の報告書からの大きな相違は存在しない。
  • 2009年の技術報告書でのすべての結論は、2014年の技術報告書でも不変である。
  • 技術報告書の改定は、DOEの原子力局(NE)使用済燃料処分研究開発室が担当し、前回も分析を実施した契約者を起用する。

DOEの資料では、改定が行われる技術報告書での主要な解析項目、今回の改定作業で新たに反映される情報の内容なども示されている。

【出典】

米国の連邦控訴裁判所1 は、2013年8月13日付けの職務執行令状において、原子力規制委員会(NRC)に対して、ユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可申請書の審査を再開するように命令した。

NRCは予算制約を理由として、この審査手続きを2011年9月に停止していたが、これを不服として、ワシントン州などが審査手続きの再開を求めて連邦控訴裁判所に提訴していた。裁判での口頭弁論においてNRCは、許認可申請書の審査の停止理由について、審査を完了するには十分な予算が連邦議会により割り当てられていないことなどを主張していた。このため、当初、連邦控訴裁判所は、2012年8月3日に、連邦議会における2013会計年度の歳出法案での許認可申請書の審査予算の検討動向などを踏まえるため、一時的に訴訟手続を停止し、2012年12月14日までに、2013会計年度の予算に関する最新の情報を提出するよう求める決定を行っており、最終的な決定を先送りした形となっていた。

一方、2013会計年度の歳出法については、継続予算決議として成立したため、2012会計年度の予算が継続されることとなり、ユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可申請書のNRCによる審査予算はゼロとなっていた。

今回の判決において連邦控訴裁判所は、NRCが許認可申請書の審査を停止したことは、NRCに対してユッカマウンテンの許認可申請書の審査を行うように規定する法律に違反していると判決した上で、連邦議会が他の決定を下すか、残存している歳出予算を使い切るまで、NRCは即座に法的に命令された許認可プロセスを継続しなければならないとする命令を行った。

なお、NRCのユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可申請書の審査予算は、2012会計年度以降ほぼゼロとされていたが、NRCには、それ以前に割り当てられた許認可申請書の審査予算のうち、約1,100万ドル(約10億円)が未使用で残っていることが認識されている。

【出典】

【2013年9月2日追記】

米国の原子力規制委員会(NRC)は、2013年8月30日付けのプレスリリースにおいて、連邦控訴裁判所が2013年8月13日の職務執行令状によって、ユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可申請書の審査を再開するよう命令したことを受け、2013年9月30日までに、どのように審査を再開するかを関係者に問うための意見の収集を開始したことを公表した。なお、連邦裁判所の命令は、2013年9月3日に発効するとされている。

今回の意見収集は、2011年に停止した許認可審査の手続きを再開するに当たって、約1,100万ドル(約10億円)の未使用の審査予算を効率よく生産的に使用するために実施するものとしている。具体的には、予算を適切に編成するための情報収集をNRC職員に指示するとともに、職員からの情報とともに関係者から出される意見を分析することにより、許認可審査の手続きを進める方法を決定するとしている。

一方、連邦議会下院のエネルギー・商務委員会は、2013年8月23日のプレスリリースにおいて、NRCの委員長に対して書簡を送り、2013年9月10日に開催する公聴会での証言を求めるとともに、この証言に先立ち、連邦控訴裁判所の命令に従うためにNRCが実施した活動の内容、安全性評価報告(SER)の各分冊の公表に向けたスケジュールに関する情報を2013年9月6日までに提出するよう求めたことを明らかにした。また、本書簡においてエネルギー・商務委員会は、利用可能な予算やこれまでに行われたSERの策定作業を考慮に入れた場合、裁判所の命令に従うための最初の行動として、許認可申請書の審査を再開すること、及びSERを完成させ公表することをNRCに対して期待するとしている。なお、今回の措置は、2013年2月28日のエネルギー・商務委員会の環境・経済小委員会の公聴会において、NRCの委員長が裁判所の判決を尊重するなどと証言したことによるものとしている。

【出典】

【2013年10月31日追記】

原子力規制委員会(NRC)は、2013年10月23日に、連邦控訴裁判所の2013年8月13日の職務執行令状を受け、ユッカマウンテン処分場の建設認可に係るNRCの許認可活動の対応状況についての月次状況報告書を連邦議会に提出した。月次状況報告書は、2013年9月10日開催の連邦議会下院エネルギー・商務委員会の公聴会において、NRCの委員長が連邦議会の関連委員会幹部への提出を約束していたものである。

今回提出された月次状況報告書は、2013年8月13日から9月30日までを対象とするものであり、完了した事項として、2013年8月30日付けの関係者への意見提出命令及び本命令を受けた関係者の意見提出、NRCスタッフへの費用推定作業の指示が挙げられている。また、実施中の事項としては、関係者から提出された意見とNRCスタッフによる費用・スケジュール見積りを検討した上で、以下を含む活動について委員会で審議を行って連邦控訴裁判所の職務執行令状による命令への対応を決定することが示されている。

  • 安全性評価報告(SER)の完成
  • ユッカマウンテン処分場の補足環境影響評価書(SEIS)の完成
  • 裁決手続(原子力安全・許認可委員会(ASLB)によるヒアリングの実施)
  • 許認可支援ネットワーク(LSN)(詳細はこちら)の再構築
  • 再開があり得るNRCに対する訴訟への対応

関係者から寄せられた意見でのNRCが優先して実施すべき事項としては、NRCスタッフやネバダ州を含め、安全性評価報告(SER)の完成が挙げられている。裁決手続の再開については、原子力エネルギー協会(NEI)は、SERの完成後に改めて検討すべきとしているが、地元自治体らは原子力安全・許認可委員会(ASLB)の再立上げを含めた迅速な再開を求めている。なお、ネバダ州は、許認可支援ネットワーク(LSN)の再構築を対応事項の筆頭に掲げており、SERの完成に向けた作業と同時に進めるべきとしているほか、ラスベガス地域でのヒアリング施設再整備なども必要としている。また、エネルギー省(DOE)は、対応事項の判断はNRCに委ねるとした上で、自らの予算として約3,000万ドル(約28億円)以上が使用可能との見込みを示している。

NRCの月次状況報告書では、放射性廃棄物基金(NWF)からの予算の使用状況も開示されており、2013年9月末までの報告対象期間で約5万ドル(約500万円)が使われ残額は約1,100万ドル(約10億円)であることなどが報告されている。

【出典】


  1. 連邦控訴裁判所のうち、コロンビア特別区(D.C.)巡回区控訴裁判所が担当(米国の首都ワシントンD.C.地区における訴訟事件を取り扱う)。 []

米国のエネルギー省(DOE)のカールスバッド・フィールド事務所(CBFO)は、2013年8月1日付けのプレスリリースにおいて、廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)の新しい廃棄物定置用の第7パネルについて、2013年7月半ばにニューメキシコ州環境省(NMED)からTRU廃棄物の処分のための使用承認が得られ、運用準備が整ったことを公表した。

WIPPで処分されるTRU廃棄物は軍事起源のもののみであるが、放射性物質と化学的有害物質が混合している廃棄物(混合廃棄物)がほとんどである。放射性廃棄物の処分については、環境保護庁(EPA)の適合性認定を受けているが、有害廃棄物を規制する連邦資源保全・回収法(RCRA)で必要とされる許可については、EPAの承認の下でニューメキシコ州が規制に当たっている。有害廃棄物の許可条件に基づいて、新たなパネルごとに、有害廃棄物の許認可当局であるNMEDの使用承認を受ける必要がある。

現在、第6パネルでTRU廃棄物の定置が行われているが、第6パネルでの定置が終了した後、2013年8月にも第7パネルでの廃棄物定置を開始するとしている。第7パネルでは、ロスアラモス国立研究所(LANL)の地上で貯蔵されているTRU廃棄物、アイダホ国立研究所(INL)で貯蔵されている「直接ハンドリングが可能なTRU廃棄物」(CH廃棄物)及び「遠隔ハンドリングが必要なTRU廃棄物」(RH廃棄物)の処分を実施するとしている。

1999年3月26日の操業開始以来、2013年7月29日までのWIPPへのTRU廃棄物の輸送は11,479回、総輸送距離が約2,209万kmに達し、2013年7月27日現在で、約87,501m3のCH廃棄物と約343m3のRH廃棄物が処分されるなど、順調な操業が継続されている。

なお、WIPPは、「米国の原子力の将来に関するブルーリボン委員会」の最終報告書で同意に基づく処分場立地の米国での良好事例とされるとともに、2013年9月にも最終環境影響評価書(DEIS)が出される予定のクラスCを超える低レベル放射性廃棄物(GTCC廃棄物)の処分の選択肢の一つとされている

【出典】