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《米国》連邦控訴裁判所がDOEに放射性廃棄物基金への拠出金額の妥当性を評価するよう指示

米国の連邦控訴裁判所1 は、2012年6月1日に、全米公益事業規制委員協会(NARUC)などが放射性廃棄物基金への拠出金の徴収の停止を求めていた訴訟に関して、現時点でエネルギー省(DOE)に対して徴収の停止は指示しないとする一方で、6カ月以内に拠出金額の妥当性の評価を実施するよう指示するとの判決を行った。

1982年放射性廃棄物政策法では、民間で発生する使用済燃料、高レベル放射性廃棄物の処分については、発生者が費用を負担する責任を有すことが規定されており、廃棄物発生者である原子力発電事業者は原子力発電1kWh当たり1ミル(0.001ドル)を放射性廃棄物基金に拠出している。また、1982年放射性廃棄物政策法では、エネルギー長官が拠出金額の妥当性について毎年評価することを規定している。

DOEは、2008年にユッカマウンテン処分場での処分に基づいて評価を行い、放射性廃棄物基金への拠出金額が妥当であるとの判断を示していた。その後、DOEは、ユッカマウンテン計画を中止する方針を示した後、2010年に過剰、または不十分な拠出金額を徴収していると判断する合理的証拠はないなどとする覚書を示し、この覚書に基づいて拠出金額の変更をしないとする決定を示していた。この覚書では、具体的な処分費用の見積りや処分費用を賄うために必要とされる拠出金額などは示されていなかった。

NARUCなどは、訴訟において、DOEが高レベル放射性廃棄物の処分費用の評価を実施していないなどとし、1982年放射性廃棄物政策法に規定された義務を履行していないとしていた。また、ユッカマウンテン計画が中止されたため、処分計画は不確実で処分費用を見積ることができないとして、新たな処分計画の策定まで拠出金の徴収を停止するよう求めていた。

今回の連邦控訴裁判所の判決では、2010年にDOEが示した拠出金額に関する決定について法的に不適切であるとしたが、拠出金の徴収を停止することは時期尚早であるとしている。そのうえで、DOEに対して拠出金の妥当性の評価を実施するという法的な義務を6カ月以内に果たすよう指示している。

【出典】

【2013年1月22日追記】

エネルギー省(DOE)は2013年1月16日に、連邦控訴裁判所の指示に従い、放射性廃棄物基金への拠出金額の妥当性に関する評価報告書(以下「妥当性評価報告書」という。)を公表した。
エネルギー長官は、妥当性評価報告書で示された評価結果に基づいて、1982年放射性廃棄物政策法(1987年修正)の規定により連邦政府が負担する費用を賄うために徴収されている金額に過不足はなく、現時点で放射性廃棄物基金への拠出金額の変更は提案しないとしている。
妥当性評価報告書においては、DOEが2013年1月11日に公表した「使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物の管理・処分戦略」において示した処分システムの構成及びスケジュールを前提として用いており、地層処分場の操業開始は2048年と想定している。また、妥当性評価のための費用見積りでは、集中中間貯蔵施設のサイト選定、建設、操業、廃止措置等のための費用も考慮されている。

【出典】

【2013年2月1日追記】

全米公益事業規制委員協会(NARUC)は、2013年1月31日に、連邦控訴裁判所に対して、訴訟手続を迅速に再開し、放射性廃棄物基金への拠出金額の妥当性に関するエネルギー省(DOE)による決定を審理すること、DOEに対する拠出金の徴収停止の命令を求めることを内容とする申立書を提出した。
申立書において、2013年1月16日にDOEが公表した拠出金額の妥当性評価報告書は、検討で前提とされた「使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物の管理・処分戦略」が1982年放射性廃棄物政策法の規定に沿ったものではなく、今後の連邦議会の承認が必要であること、追加での拠出金の必要性が十分に示されていないことなどから、妥当性評価報告書には欠陥があり、拠出金の徴収は停止されるべきであるとしている。

【出典】

  1. 連邦控訴裁判所のうち、コロンビア特別区(D.C.)巡回区控訴裁判所が担当(米国の首都ワシントンD.C.地区における訴訟事件を取り扱う)。 []

(post by inagaki.yusuke , last modified: 2023-10-12 )