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《スイス》EKRAが「スイスにおける放射性廃棄物処分戦略への貢献」を公表

スイスにおける放射性廃棄物処分概念専門家グループ(EKRA)は、2002年10月9日に放射性廃棄物管理に関して、「スイスにおける放射性廃棄物処分戦略への貢献」という新しい報告書を公表した。EKRAは、放射性廃棄物の処分概念を検討する目的で、1999年に連邦環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)により設立された専門家グループであり、2000年には処分の技術的な観点から「放射性廃棄物の処分概念」という報告書を公表している。一方、UVEKは多くの制度的な問題点にも注目し、EKRAに対して検討を要求していた。EKRAは、今回の報告書で処分事業の進捗が遅い理由を責任体制、法制度、社会的な対話と公衆参加、廃棄物プログラム、研究、資金確保といった観点から分析した上で、以下のような勧告を行っている。

  • 放射性廃棄物の地層処分に対する権限は、連邦レベルに委ねられるべきである。
  • 連邦政府は、放射性廃棄物の処分場の操業開始について拘束力のあるスケジュールを設定し、計画管理体制を整えるべきである。
  • 許可発給および安全規制を行う連邦官庁は、膨大な任務を効果的に遂行するために財政的および組織的に強化がなされるべきである。
  • 放射性廃棄物管理に関連する機関は、達成されるべき目的に則した実施計画を策定すべきである。
  • 放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)の予算、資金計画および事業計画は、独立した組織による評価が行われるべきである。
  • 安全性に関連するすべての活動に対する高質の安全管理システムのための概念が提案されるべきである。
  • 「廃棄物管理協議会」(訳者注:放射性廃棄物管理は社会的な対話が必要となる問題であるため、そのような社会的な対話や公衆参加を促進するための協議会)を設立する根拠が国内外の知見を活用して、用意されるべきである。
  • 独立した学際的な廃棄物管理研究プログラムおよび深い地層への処分実施に関する特定の調査研究プログラムを進め、これに対する財政支援が行われるべきである。
  • 地層処分を実現化するためには、財政面からのバウンダリー・コンディション(例えばモニタリング期間やその技術的な側面など)が明確に規定されるべきである。
  • 「原子力における賠償責任に関する法律」が改正された場合を想定して、安全性の理由から実施される廃棄物の回収に対する保険制度の確立について検討が行われるべきである。

【出典】

  • 環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)連邦エネルギー庁(BFE)プレスリリース http://www.energie-schweiz.ch/bfe/de/information_links/medienmitteilungen/2002/oktober/unterseite1/index.html
  • EKRA「スイスにおける放射性廃棄物処分戦略への貢献」 http://www.energie-schweiz.ch/imperia/md/content/informationenlinks/broschren/13.pdf
  • EKRA「付録:報告書の背景」 http://www.energie-schweiz.ch/imperia/md/content/informationenlinks/broschren/14.pdf

(post by 原環センター , last modified: 2023-10-10 )