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《米国》2013会計年度の予算要求-「使用済燃料処分等プログラム」(UFD)に対して約6,000万ドル要求

2012年2月14日に、米国で2013会計年度1 の大統領の予算教書が連邦議会に提出され、大統領府管理・予算局(OMB)のウェブサイトで公表されるとともに、エネルギー省(DOE)のウェブサイトでDOEの予算要求資料が公表された。DOEの予算要求資料では、2012年1月26日に公表されたブルーリボン委員会の勧告への対応に関連した研究開発が含まれる「使用済燃料処分等プログラム」(UFD、Used Nuclear Fuel Disposition)について、5,966万8,000ドルが要求されたことが示されている。また、ユッカマウンテン処分場関連予算については要求されていない。

DOEの予算要求資料では、オバマ政権は連邦議会やステークホルダーと協力してブルーリボン委員会の勧告を十分に検討し、使用済燃料などの管理の実施シナリオを評価していくとしている。さらに、2012会計年度の歳出法に示されたように、6カ月以内に検討結果を連邦議会に対して報告するとしている(2011年12月20日追記参照)

DOEの予算要求資料では、ブルーリボン委員会の研究開発に関連した短期的な優先事項に基づいて、2012会計年度のUFDにおいて予算配分を調整しているとしており、以下のような活動を行っているとしている。

  • 標準的な輸送・貯蔵・処分コンテナの開発及び許認可のサポート
  • 処分場の地層の特性調査
  • サイトに依存しない地層処分に関する研究開発
  • 貯蔵オプション及びそれぞれの利点の評価
  • 有力なパートナーシップの仕組みを含め、使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物の代替管理方策の評価の開始
  • 使用済燃料の貯蔵の安全性に関連した課題へのDOEの評価能力の強化

また、2013会計年度の予算要求では、2012会計年度の活動を踏まえ、高レベル放射性廃棄物処分などに関連した活動では、以下に焦点を当てるとしている。

  • 集中中間貯蔵及び輸送の課題の評価(最初は廃止措置された原子炉サイトを対象)
  • 産業界と協力して使用済燃料管理アプローチの標準化
  • 使用済燃料貯蔵の長期化をサポートするため材料試験の実施
  • 使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物の安全輸送に関する全米科学アカデミー(NAS)レポートのレビューによって特定された実施作業の開始
  • 代替環境での地層処分の研究の開始(システムモデル化、天然バリア、人工バリア、設計概念の評価及び試験)

なお、ユッカマウンテン処分場の許認可申請書の審査を担当している原子力規制委員会(NRC)の予算要求資料では、2012会計年度に引き続き、2013会計年度の高レベル放射性廃棄物処分関連の予算要求はゼロとなっている。NRCは、2011年9月にユッカマウンテン処分場の許認可申請書の審査手続きを停止している。

【出典】

【2012年2月16日追記】

エネルギー省(DOE)は、2012年2月15日付けのプレスリリースにおいて、エネルギー長官がジョージア州のヴォーグル原子力発電所を訪問した際の発言の内容を公表した。この中でエネルギー長官は、ブルーリボン委員会の最終報告書での勧告の評価を行うとともに、勧告に基づいて使用済燃料などの長期管理戦略を策定するためのワーキンググループをDOE内に設置することを明らかにした。

なお、エネルギー長官の発言の中で、ヴォーグル原子力発電所の3・4号機は、2012年2月10日に原子力規制委員会(NRC)が建設・運転の一括許認可(COL)を発給したものであり、DOEは、融資保証、新たな原子炉の炉型(AP 1000)の承認においてサポートを行ったとしている。

【出典】

【2012年9月25日追記】

2012年9月22日、米国の連邦議会上院は、9月13日の下院での可決に引き続いて、2013会計年度2 のうち、2012年10月1日~2013年3月27日を対象とした継続歳出決議を可決した。これは、2012会計年度のエネルギー・水資源歳出法などを含む、2012会計年度の歳出法での予算と同レベルの歳出を認めるものである。継続歳出決議による予算では、原則として前年度予算と同率で比例配分され、特段の指定が無い限りは前年度で未計上の事業・プログラム等の実施は認められない。
2012会計年度のエネルギー・水資源歳出法の予算においては、エネルギー省(DOE)に対して、ブルーリボン委員会の最終報告書を受けた使用済燃料などの管理戦略の策定、「使用済燃料処分等プログラム」(UFD、Used Nuclear Fuel Disposition)が認められており、継続予算の下でも実施可能となる。
一方、原子力規制委員会(NRC)のユッカマウンテン処分場に係る許認可審査関連費用については、2012会計年度のエネルギー・水資源歳出法で予算が割り当てられていなかったため、継続予算においても予算はゼロとなる。

【出典】

【2012年11月8日追記】

1982年放射性廃棄物政策法(1987年修正)に基づいて高レベル放射性廃棄物処分に係る勧告等を連邦議会及びエネルギー長官に対して行う目的で設置された放射性廃棄物技術審査委員会(NWTRB)は、2012年10月17日に、NWTRBの全体会議を開催しているが、今般、エネルギー省(DOE)による「使用済燃料処分等プログラム」(UFD)の取組状況の資料が公開された。
DOEの資料によると、UFDにおける処分に関する研究開発の目標は、以下の3点とされている。

  • 実施可能な複数の処分オプションが存在しているという点についての確かな技術的根拠の提示
  • 一般的な条件での処分概念のロバスト性(頑健性)に対する信頼性の向上
  • ボアホール処分の概念を立証するための短期的な計画を策定すべきとする「米国の原子力の将来に関するブルーリボン委員会」(以下、「ブルーリボン委員会」という。)の勧告の評価

また、DOEの資料では、UFDの枠組みにおいて進められている研究開発として、以下の2点が示されている。

  • 一般的な条件での処分概念の開発(岩塩、結晶質岩、粘土/頁岩)
  • 共同研究開発の実施(スイス・モンテリ岩盤研究所及びグリムゼル試験サイト、韓国原子力研究所(KAERI)地下研究トンネル(KURT)における研究計画への参画、「熱-水-応力-化学連成モデルの開発・確証に関する国際共同プロジェクト」(DECOVALEX)の2012年春に開始された計画への参画)

なお、ブルーリボン委員会の最終報告書の公表後6カ月以内に策定するよう連邦議会が指示していた使用済燃料などの管理戦略については、現在、DOEで検討を実施中としている。

【出典】

【2013年3月26日追記】

米国の連邦議会は、2013年3月21日に、2013年包括・再継続歳出法を可決した。2013年包括・再継続歳出法は、既に可決している2012年10月1日~2013年3月27日を対象とした継続歳出決議を補うものとして、2013年9月30日までの2013会計年度全体に対して、2012会計年度のエネルギー・水資源歳出法などを含む、2012会計年度の歳出法での予算と同レベルの歳出を認めるものである。

2013年包括・再継続歳出法による予算は、原則として2012会計年度予算に計上されていた事業・プログラム等に同率で比例配分される。したがって、2012会計年度のエネルギー・水資源歳出法においてエネルギー省(DOE)に対して認められていた「使用済燃料処分等プログラム」(UFD、Used Nuclear Fuel Disposition)などは、2013年包括・再継続歳出法による予算の下でも実施可能となる。

【出典】

  1. 米国における会計年度は、前年の10月1日から当年9月30日までの1年間となっており、今回対象となっている2013会計年度の予算は2012年10月からの1年間に対するものである。
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  2. 米国における会計年度は、前年の10月1日から当年9月30日までの1年間となっており、本来、2013会計年度の予算は、2012年10月からの1年間に対するものである。しかし、今回のような継続歳出決議は、歳出法案が成立しないなどの場合、期限を切って予算を立てるために上下院で決議が行われる。 []

(post by inagaki.yusuke , last modified: 2023-10-11 )