米国の原子力規制委員会(NRC)は、2010年9月15日のニュースリリースにおいて、NRCの連邦規則における「廃棄物保証」に関する規則及び所見1 の改定案を承認したことを公表した。これまでの連邦規則では、地層処分場が2025年までに利用可能となるとされていたが、今回の改定では、処分場の利用可能時期は明確に示さず、「必要な時期に利用可能となる」との記述に変更されている。
今回改定された連邦規則は、NRCの原子炉等の許認可手続における環境影響評価について定めた10 CFR Part 51「国内許認可及び関連規制機能に対する環境保護規則」の第23条(a)項である。これまで同項に規定されていた廃棄物保証では、地層処分場は21世紀の第一四半期内には利用可能となり、原子炉の運転許可期限を過ぎても使用済燃料が少なくとも30年間は環境に重大な影響を与えることなく貯蔵可能であるとされていた。
NRCが今回承認した廃棄物保証に関する規則では、いずれの原子炉から発生した使用済燃料も運転許可期限を過ぎても最低60年間は環境に重大な影響を与えることなく貯蔵可能であり、また、高レベル放射性廃棄物及び使用済燃料の処分のため、必要な時期に地層処分場が利用可能になるとされている。
廃棄物保証については、2008年10月に連邦規則における「廃棄物保証」に関する規則及び所見の改定案を策定し、パブリックコメントの募集が行われていた。2009年9月には、NRCの委員会は、改定案を認めないとしていたが、その後、2010年7月にはNRCの委員会に対して再度改定案が提案されていた。
今回の改定案の承認に際し、NRCの委員会は、NRCスタッフに対して、使用済燃料の貯蔵及び処分に関連した現在の状況や科学的な知見に関する情報を確保するために、より長期間の貯蔵に関する追加的な分析や規則策定作業を行うように指示したとされている。また、NRC委員会は、今回の廃棄物保証の改定が、原子炉サイトでの無期限の貯蔵の承認を示唆するものではないとしている。
この改正案は、60日以内に連邦官報への掲載準備を行い、その後、連邦官報に掲載されることとなっている。
【出典】
- 原子力規制委員会(NRC)、2010年9月15日けニュースリリース
- 原子力規制委員会(NRC)、原子炉運転終了後の使用済燃料貯蔵の環境影響の検討(連邦官報2008年10月10日)
- クラインNRC委員によるSECY-09-0090に関する投票‐NRCの廃棄物保証決定の最終改定(2009年9月16日)
- ヤツコNRC委員長によるSECY-09-0090に関する投票‐NRCの廃棄物保証決定の最終改定(2009年9月17日)
- スヴィニツキNRC委員によるSECY-09-0090に関する投票‐NRCの廃棄物保証決定の最終改定(2009年9月24日)
- 原子力規制委員会(NRC)、廃棄物保証に関する最終改定(2010年7月22日)
【2012年1月5日追記】
原子力規制委員会(NRC)は、2012年1月3日、使用済燃料の長期貯蔵に関する環境影響評価書(EIS)のスコープなどを示した報告書案を公表するとともに、同報告書案に対する意見募集を開始した。NRCは、2010年9月の「廃棄物保証」の規則及び所見の改定案の承認に際し、原子炉の運転許可期限を過ぎても最低60年間は環境に重大な影響を与えることなく貯蔵可能であることをNRCは承認しているが、それ以降貯蔵が長期化する可能性もあるため、許可期限後60年間以降の貯蔵について責任を持つため、「廃棄物保証」の長期間にわたる延長を検討し、検討の一部としてEISを策定するようNRCスタッフに指示していた。
報告書案によれば、EISでは、今世紀半ばから約200年間について、使用済燃料の長期のハンドリング、貯蔵及び輸送の影響を評価するとしており、最終的には地層処分場への輸送に至るまでの以下の4つの評価シナリオを示している。
- サイトでの長期貯蔵及びオフサイトの独立貯蔵施設での長期貯蔵
- サイトでの中間貯蔵及び地域の貯蔵施設への輸送
- サイトでの中間貯蔵及び1か所の集中中間貯蔵施設への輸送
- サイトでの中間貯蔵及び少なくとも1か所の再処理施設への輸送
NRCは、今後、寄せられた意見を検討した後、最終報告書を2012年春に公表すること、2013年にEISの作成の意向を連邦官報に掲載することなどのスケジュールを報告書案に示している。
【出典】
- 原子力規制委員会(NRC)、2012年1月3日付けニュースリリース
- 原子力規制委員会(NRC)、長期間にわたる廃棄物保証の改定-環境影響評価書に対する背景及び暫定的仮定、意見募集のためのドラフト報告書(2011年12月)
【2012年6月11日追記】
米国連邦控訴裁判所2 は、2012年6月8日に、2010年9月の原子力規制委員会(NRC)による「廃棄物保証」規則の改定に対してニューヨーク州などが起こしていた訴訟に関して、改定を無効とする判決を行った。
今回の連邦控訴裁判所の判決では、「廃棄物保証」に係る決定は主要な連邦政府の行為に当たるため、1969年国家環境政策法(NEPA)に基づいて環境影響評価(EIS)(詳細はこちら )を実施する必要があるとしている。そのうえで、NRCが「廃棄物保証」規則の改定において、地層処分場の利用可能時期を「必要な時期に利用可能となる」とした点について、必要な時期に処分場が設置されなかった場合の環境影響評価を実施していないとしている。
これらの判断に基づき連邦控訴裁判所は、「廃棄物保証」規則の改定を無効とし、更なる手続きのためNRCに差し戻すことを命令した。
【出典】
- 廃棄物保証に関する所見(waste confidence findings)とは、原子力規制委員会(NRC)の原子炉等の許認可手続における環境影響評価で必要とされる、原子炉から発生する使用済燃料による環境への影響について、NRCが一般的な決定事項を示したものである。具体的には、使用済燃料が安全に処分可能か、処分場またはサイト外貯蔵施設がいつ頃利用可能となるか、原子炉施設等の許可期間が終了した後もサイト外での処分または貯蔵が可能となる時期まで安全に貯蔵可能かという点を示している。この所見に基づいて、NRCの環境影響評価に関する連邦規則である10 CFR Part 51が規定されている。 [↩]
- 連邦控訴裁判所のうち、コロンビア特別区(D.C.)巡回区控訴裁判所が担当(米国の首都ワシントンD.C.地区における訴訟事件を取り扱う)。 [↩]
(post by inagaki.yusuke , last modified: 2023-10-11 )