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§ 2019年11月28日 発行 海外情報ニュースフラッシュ

フランスの国家討論委員会が「放射性物質及び放射性廃棄物の管理に関する国家計画」(PNGMDR)に関する公開討論会の成果を取りまとめ

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フランスの国家討論委員会(CNDP)1は、2019年11月25日に自身のウェブサイトにおいて、政府が策定中の2019~2021年を対象とした「放射性物質及び放射性廃棄物の管理に関する国家計画」(PNGMDR)に関して、2019年4月17日~9月25日にかけて実施した公開討論会の実施報告書を公表した。フランス国内約20都市で開催された討論会には、延べ3,400人以上が参加し、443件の意見表明、86件の質問、3,043件のメッセージが寄せられた。

国家計画であるPNGMDRは、2006年の放射性廃棄物等管理計画法に基づいて、政府による3年ごとの策定・改定が義務付けられており、フランスにおける全ての放射性物質と放射性廃棄物の管理の現状分析と管理方策の実現に向けた取組(研究開発を含む)を取りまとめたものである。2017年の環境法典の改正により、PNGMDRの策定に際して公開討論会の実施が法制化されているが、これを受けて開催されるPNGMDRに関する公開討論会は今回が初めてとなる。環境連帯移行省は2018年2月に、CNDPに対して今回のPNGMDRに関する討論会の実施を付託していた。

■PNGMDRの策定プロセスに関する議論

今回の公開討論会を実施するに際してCNDPが設置した特別委員会(CPDP)は、実施報告書の結論において、公開討論会を通じて公衆から提起された関心や疑問に対応し、PNGMDRの策定プロセスにおける公衆参加を確保するために、国レベルあるいは地域レベルでの公衆対話の場を構築することが望ましいとの見方を示している。また、次回のPNGMDRに関する公開討論会の開催や公衆対話の継続にあたり、PNGMDRの策定主体である原子力安全機関(ASN)と環境連帯移行省のエネルギー・気候総局(DGEC)が配慮すべき事項を以下のように指摘している。

  • PNGMDRの策定プロセスにおける、独立した規制機関であるASNの役割を明確化すること
  • 現行のPNGMDRの進捗を事前に評価し、計画と成果の乖離とその原因を明らかにしておくこと
  • 公衆がPNGMDRの戦略的方向性を十分に理解できるように、PNGMDRの策定主体は、公開討論会の議論のために取りまとめる文書を改善すること
  • 公開討論会において、各カテゴリーの放射性廃棄物の管理オプションについて議論できるように、上記の文書において、対照的かつ信頼性のある少なくとも2つの管理シナリオを提示して説明すべきである
  • PNGMDRの策定プロセスにおいては、環境法典に基づいて少なくとも10年ごとに政府が実施するものとして、放射性物質及び放射性廃棄物の管理に関する法的・組織的措置とその実施に対する評価との関係性を意識すべきである

■PNGMDRの内容に関する議論

PNGMDRの策定主体である原子力安全機関(ASN)と環境連帯移行省のエネルギー・気候総局(DGEC)は、今回の公開討論会に向けた説明資料において、公衆から意見を引き出したい5つのテーマを挙げていた。公開討論会を運営した特別委員会(CPDP)は、その報告書において、公開討論会で得られた意見を以下のように取りまとめている。

  • 放射性物質と放射性廃棄物の分類
    一部の放射性物質(以降の用途が見込まれないもの)について、それを放射性廃棄物として分類し直すか否かについて検討が必要である。特に、燃料サイクルにおける使用済燃料の取り扱いについては、再処理技術の変化や実際の燃料需要も踏まえて検討すべきである。
  • 使用済燃料の貯蔵容量
    2030年までに使用済燃料の貯蔵容量の拡大が必要である。また、2030年以降の長期的な期間を視野に入れ、再処理政策による貯蔵容量への影響や、乾式貯蔵や湿式貯蔵等の様々な貯蔵方法の適切性について、フランスの状況に照らして検討することが必要となる。
  • 増大する極低レベル放射性廃棄物量の管理
    極低レベル放射性廃棄物の原子力施設内での発生場所によるゾーニングを用いた管理方法を変更して、クリアランス制度を導入するか否かを検討すべきである。
  • 長寿命低レベル放射性廃棄物管理
    長寿命低レベル放射性廃棄物の管理が難航しているのは、本カテゴリーに含まれる放射性廃棄物の特性が一様ではないにも関わらず、一つの考え方で管理しようとしてきたことが原因である。異なる特性を持つ放射性廃棄物に合わせた複数の管理方法を決定するためには、追加的な技術的研究を実施し、公衆との協議や地域への影響を考慮する必要がある。
  • 高レベル放射性廃棄物及び長寿命中レベル放射性廃棄物の地層処分場のパイロット操業フェーズ
    地層処分プロジェクトは非常に長期にわたるため、パイロット操業フェーズ中に、その後の地層処分プロジェクトの進捗のステップを決定することが必要である。

■今後の予定

今後、PNGMDRの策定主体である原子力安全機関(ASN)と環境連帯移行省のエネルギー・気候総局(DGEC)は、環境法典に基づき、公開討論会の報告書の公表後3か月以内の2020年2月25日までに、公開討論の中で提起された疑問等に対する回答を含め、PNGMDRに加えた変更等についての説明を示すことになっている。なお、環境連帯移行省は2019年11月26日付のプレスリリースにおいて、ASNと共に回答を取りまとめるため、環境保護団体や国会議員等の関係者の意見を聴取する方針であること、また、聴取した意見は2020年に策定されるPNGMDRに盛り込む方針であることを示している。

 

【出典】

 

【2020年2月25日追記】

フランスで政府が策定中の2019~2021年を対象とした「放射性物質及び放射性廃棄物の管理に関する国家計画」(PNGMDR)に関して、PNGMDRの策定主体である原子力安全機関(ASN)及び環境連帯移行省(Ministère de la Transition écologique et solidaire)は2020年2月21日に、2019年4月17日~9月25日に実施された公開討論会の結果を踏まえ、以下のような改定の方針を公表した。

  • エネルギー政策と放射性廃棄物管理政策の一貫性向上:PNGMDRの更新は、多年度エネルギー計画(PPE)と整合させ、原子力事業者の施設等の恒久停止・廃止措置戦略とも連動させる。今回、PNGMDRの対象期間を現行の3年間からPPEの対象期間と同じ5年間に変更することも、併せて提案されている2
  • 放射性廃棄物管理のガバナンス強化:PNGMDRの策定及びフォローアップへの参加については、環境保護団体だけでなく、各種市民団体、国会議員及び地方自治体の代表にまで拡大する。
  • 放射性物質の有効利用可能な特性に関する管理の強化:原子力事業者が定期的に見直す行動計画に基づき、使用済燃料の再処理後の回収ウランなどの現時点では利用されていない放射性物質3 について、利用の進め方やその量に関する管理を強化する。
  • 使用済燃料の追加的な貯蔵容量需要の確保:PNGMDRにおいて、新たな湿式集中貯蔵施設の建設に要する期間を考慮し、設置見通しを明らかにする。また、乾式貯蔵施設が有用と考えられる条件及び状況についても検討する。
  • 一部の極低レベル放射性廃棄物に関して、その再利用が妥当であると考えられる場合、特例措置によって適用対象を限定して利用を認めていく。なお、現在のフランスでは、クリアランス制度は導入されておらず、原子力施設内での発生場所によるゾーニングを用いた管理方法が用いられている。
  • 長寿命低レベル放射性廃棄物管理に関しては、これらの廃棄物の特性が非常に多様であることを念頭に、現行のPNGMDRに示された方向性に沿って研究を継続する。その際、安全の観点からだけでなく、環境や地域の観点から見た課題についても考慮する。
  • 地層処分場プロジェクトの実施条件、特にプロジェクトの節目となる段階への公衆参加の方式、ならびに高レベル及び長寿命中レベル放射性廃棄物の代替的管理手段に関する研究開発の条件を決定するための検討は、今後も継続する。
  • PNGMDRに規定される放射性廃棄物の管理手段が、環境、衛生、経済にどのような影響を及ぼすのかについての評価を強化する。公開討論会では、輸送、環境、衛生、放射性廃棄物の毒性、地域への影響等の分野横断的な問題に対する高い関心が示されたことから、改定版PNGMDRでは、これらの問題についての現状の説明と課題への対応方法を提示する。

原子力安全機関(ASN)と環境連帯移行省は、上記の方針に従ってPNGMDRの改定作業を進め、2020年末までに、改定版PNGMDR案に関する公衆協議を実施する予定である。

 

【出典】


  1. 国家討論委員会(CNDP)は、環境に多大な影響を及ぼす大規模公共事業や政策決定を行うにあたり、事業実施主体の付託を受けて公開討論会を開催する独立した行政委員会である。 []
  2. PNGMDRの対象期間を変更する場合は、環境法典第L542-1-2条の改正が必要となる。 []
  3. 2016~2018年を対象としたPNGMDRでは、主な放射性物質として濃縮ウランと劣化ウラン、使用済燃料、使用済燃料の再処理後の回収ウラン、プルトニウム、トリウムが挙げられている。 []

(post by eto.jiro , last modified: 2020-02-25 )