Learn from foreign experiences in HLW management

《ドイツ》連邦議会が放射性廃棄物処分の実施体制を変更する法案を可決

ドイツの連邦議会は2016年6月23日に、「最終処分分野における組織体制刷新のための法案」(以下「法案」という)を可決した。法案の発効後は、ドイツにおいて放射性廃棄物処分場のサイト選定から建設・操業・廃止措置を、単一の国営組織が担う体制が構築されることになる。また、放射性廃棄物処分関連の安全規制機関の名称変更が行われる。本法案は、2016年6月24日付で連邦参議院に回付されており、今後、連邦参議院の同意を得たのち、連邦官報に公示され、発効する見込みである 1 。

本法案は、「発熱性放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定に関する法律」(以下「サイト選定法」という)に基づく「高レベル放射性廃棄物処分委員会」(以下「処分委員会」という)が提案した、放射性廃棄物処分の新たな実施主体の設置 や、放射性廃棄物処分場のサイト選定プロセスを中立的な立場から監視する「社会諮問委員会」の早期設置などを目的として策定されたものであり、原子力法やサイト選定法をはじめとする計15の関係法令を改正する条文で構成されている。

放射性廃棄物処分の新たな実施主体の設置

本法案には原子力法とサイト選定法の改正が含まれている。改正原子力法には、放射性廃棄物処分事業の実施責任を、連邦環境・自然保護・建設・原子炉安全省(BMUB)の監督下に置かれる「連邦が100%所有する私法上の組織」に一任するとの規定が盛り込まれる。同様に、改正サイト選定法では、高レベル放射性廃棄物処分場のサイト選定の実施責任者が、現在の連邦放射線防護庁(BfS)から、「連邦が100%所有する私法上の組織」に変更される。

なお、処分委員会は2015年3月の決議において、処分実施主体となる「連邦放射性廃棄物機関(BGE)」を100%国営組織として新たに設置することを提案しており、本法案は処分委員会の決議を反映したものである

放射性廃棄物処分の実施責任に関する現行法上の体制と、関係法令の改正後における体制を整理すると、下表のとおりとなる。

実施責任範囲

現行法上の体制

改正案による新体制

放射性廃棄物処分場のサイト選定・建設・操業・廃止措置

連邦放射線防護庁(BfS)

(実際の処分場の建設・操業等の作業については、ドイツ廃棄物処分施設建設・運転会社(DBE社:民間会社)及びアッセ有限会社(国有会社)に業務委託)

連邦が100%所有する私法上の組織(※)。監督官庁は連邦環境・自然保護・建設・原子炉安全省(BMUB)。

(※連邦放射性廃棄物機関(BGE)として設置される見込み)

 

放射性廃棄物処分場のサイト選定プロセスを監視する社会諮問委員会の早期設置

現行のサイト選定法において社会諮問委員会は、サイト選定手続きへの公衆参加を実現するための組織と位置づけられているが、具体的な役割、委員構成等に関する規定は含まれていなかった。本法案の発効後は、社会諮問委員会の設置時期が、現行の「連邦議会による処分委員会の最終報告書の評価後」から、「2016年6月30日の処分委員会の最終報告書提出後」に前倒しされる。社会諮問委員会は、処分委員会の活動終了後からサイト選定の開始までの期間においても、関連機関の諸活動に関与することになる。また、社会諮問委員会の役割が明確化され、処分場サイトの決定に至るまでの公衆参加の実施状況も含めて、サイト選定手続きを中立的な立場から監視するとともに、関係者間の調整を行うことになる。

なお、処分委員会は、最終報告書提出後に公衆参加の空白期間が生じることを回避する目的で、社会諮問委員会の設置を早めることを提案していた。

社会諮問委員会の設置時期と体制、役割について、現行法と改正案における規定内容を整理すると、下表のようになる。

項目

現行法

改正案

設置時期

連邦議会による処分委員会の最終報告書の評価後に設置。

2016年6月30日の処分委員会の最終報告書提出後に設置。

委員構成

委員構成は多元性に配慮しなければならない

設置時(9名):連邦議会・連邦参議院から6名、市民代表2名、若年層代表1名。

連邦議会による処分委員会の最終報告書の評価後に見直しを実施。

委員任期

規定なし。

3年(再選2回まで)。

主な役割

サイト選定手続きへの公衆参加を実現。

  • サイト選定手続きを公衆参加の実施状況も含めて中立的な立場から監視及び関係者間の調整
  • 処分委員会の活動終了後からサイト選定の開始までの期間の諸活動に関与

 

放射性廃棄物処分関連の安全規制機関の名称変更

処分場サイト選定手続全体の監督、調整を担う規制機関として、2014年9月に連邦放射性廃棄物処分庁(Bundesamt für kerntechnische Entsorgung, BfE)が設置されている。本法案の発効後は、同機関の名称が「連邦放射性廃棄物処分安全庁(Bundesamt für kerntechnische Entsorgungssicherheit, BfE)」に変更される。また、放射性廃棄物の貯蔵や輸送に関する許可発給権限は、連邦放射線防護庁(BfS)からBfEに移管される。

連邦放射線防護庁(BfS)の反応

連邦放射線防護庁(BfS)長官は、本法案の連邦議会通過を受けて公表された2016年6月24日付の声明において、最終処分関連の組織体制変更は、最終処分事業のこれまでの経験に照らして、理に適ったものであると評価しており、その上で、組織体制の刷新は、高レベル放射性廃棄物処分場の新たなサイト選定にとって必要であり、体制の重複を避け、外部から見て責任の所在がわかりやすい構造とする必要があると述べている。

【出典】

 

【2016年7月13日追記】

ドイツの連邦参議院は2016年7月8日に、連邦議会が可決した「最終処分分野における組織体制刷新のための法律」について、同法の内容に異議を申し立てないことを決議した 2 。今回の連邦参議院の決議により、同法に関する議会両院の手続が終了して法律として成立した。同法は今後、連邦官報に公示され、発効する見込みである。

【出典】


  1. ドイツの国会は二院制であり、連邦議会と連邦参議院がある。連邦参議院は直接選挙で選出されるのではなく、州が代表を送って構成される。ドイツ基本法では、連邦法は連邦議会が議決すると規定しているが、法律の内容によっては連邦参議院の同意が必要となる。[]
  2. ドイツの法律制定過程における連邦参議院の関与には2通りあり、連邦参議院の同意が必要なものと、異議権限が認められるものがある。連邦参議院が異議を唱えた場合、両院協議会が設置され協議が行われるが、連邦議会は異議を覆すことが可能である。[]

(post by tokushima.hideyuki , last modified: 2023-10-10 )