Learn from foreign experiences in HLW management

スウェーデン・スイス・カナダにおいて2002年度の放射性廃棄物管理のための基金に関する最新情報が公表される-諸外国における放射性廃棄物管理の資金確保状況

諸外国では、高レベル放射性廃棄物を含む放射性廃棄物の管理に必要な費用を賄うために様々な形で資金確保が行われている。日本を含め多くの国においては、基金制度が導入されており、費用負担責任のある電力会社等は決められた拠出金を基金に払い込む方式を取っている。ただし、基金が設けられている場合でも、基金の対象となる費用の範囲は国により異なっている。

一方フランス、ドイツ、英国では放射性廃棄物処分に関する基金制度が設けられていないため、廃棄物発生者が、各々に将来に必要な資金を引当金として内部留保している。最近、スウェーデン・スイス・カナダが2002年度の基金の情報を公表したことを受けて、以下に基金制度の有無別に、高レベル放射性廃棄物処分に関連する各国の資金確保制度の概要と最新の基金残高または引当金額を表にまとめた。

1.基金制度が導入されている国について(2003年6月現在)

 
  1. 基金制度の根拠法令
  2. 基金名
  3. 払込者
基金で賄われる費用 基金残高
スウェ|デン
  1. 資金確保法(1981年制定)
  2. 放射性廃棄物基金(1982年~)
  3. 電力会社4社
放射性廃棄物管理全般

  • 高レベル放射性廃棄物処分(処分場、研究開発、輸送、封入施設)
  • 中間貯蔵
  • 原子力発電所の廃止措置
2002年末時点の基金残高(市場価格):313.1億スウェーデン・クローネ【4,070億円】
スイス
  1. 放射性廃棄物基金令(2000年制定)
  2. 放射性廃棄物基金(2001年~)
  3. 電力会社4社
原子力発電所の廃止措置後の放射性廃棄物管理全般(廃止措置に関しては別途基金が設けられている) 2002年末時点の基金残高(市場価格):14億3,200万スイスフラン【1,160億円】
カナダ
  1. 核燃料廃棄物法(2002年施行)
  2. 信託基金(2002年~)
  3. 原子力企業と原子力公社(AECL)
核燃料廃棄物管理(研究開発費含む) 2002年末時点の基金残高(市場価格):5億5,000万カナダドル【429億円】
米国
  1. 放射性廃棄物政策法(1982年)
  2. 放射性廃棄物基金(NWF)
  3. 電力会社、エネルギー省(DOE)
高レベル放射性廃棄物および使用済燃料の管理全般 2002年9月末時点の積立額:192億8,500万米ドル【2兆3,335億円】
フィンランド
  1. 国家放射性廃棄物管理基金令(1988~)
  2. 国家放射性廃棄物管理基金
  3. 電力会社2社他
放射性廃棄物管理全般(廃止措置を含む) 2001年末時点の基金残高:11.9億ユーロ【1,410億円】
スペイン
  1. 電力法、ENRESA設置令b)放射性廃棄物管理基金
  2. 電力会社
放射性廃棄物管理全般(廃止措置を含む) 2001年末時点の基金残高:17億ユーロ【2,030億円】
日本
  1. 特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律
  2. 最終処分積立金
  3. 電力会社9社、日本原子力発電株式会社、核燃料サイクル開発機構(JNC)
特定放射性廃棄物の最終処分 最終処分積立金:平成13年度末時点の残高1,705億8,200万円

2.基金制度が設けられていない国について(2003年6月現在)

 
  1. 資金確保方法
  2. 廃棄物発生者
引当金の対象 引当金
フランス
  1. 廃棄物発生者が独自に引当金を積み立てている
  2. 電力公社(EDF)、原子力庁(CEA)核燃料公社(COGEMA社)
  • EDF:放射性廃棄物管理費用全般
  • CEA:放射性廃棄物(廃止措置を含む)
  • COGEMA社:バックエンド費用全般
  • (ANDRAの地層処分研究資金は各廃棄物発生者より別途支払われている)
  • EDFの引当金(2002年末):35億1,100万ユーロ【約4,178億円】
  • CEAの引当金(2001年末):34億8,100万ユーロ【約4,142億円】
  • COGEMA社の引当金(2000年末):25億9,900万ユーロ【約3,093億円】
英国
  1. 廃棄物発生者が独自に引当金を積み立てている
  2. 英国エネルギー社(BE社)(電力会社)、英国核燃料公社(BNFL)、英国原子力公社(UKAEA)
  • BE社:放射性廃棄物管理全般および再処理費用(廃止措置については別途基金が設けられている)
  • BNFL:放射性廃棄物管理全般費用(ドリッグ低レベ ル放射性廃棄物処分での処分費用を除く)
  • UKAEA:廃止措置、再処理を含む関連費用すべて
  • BE社の引当金(2002年3月末):27億8,400万ポンド【約5,178億円】
  • BNFLの引当金(2002年3月末):92億4,800万ポンド【1兆7201億円】
  • UKAEAの引当金(2002年3月末):36億4,730万ポンド【約6,784億円】
ドイツ
  1. 廃棄物発生者が独自に引当金を積み立てている
  2. 電力会社11社
放射性廃棄物管理費用全般(廃止措置を含む) 電力会社11社引当金総額(2000年調査):366億ユーロ【4兆3,500億円】

換算レートは、日本銀行の平成14年1~6月の基準外国為替相場および裁定外国為替相場に基づき、1米ドル=121円、1スウェーデン・クローネ=13円、1スイスフラン=81円、1ユーロ=119円、1カナダ・ドル=78円、1スターリング・ポンド186円を使用。表中の数字は何れも概算。

【出典】

  • スウェーデン:放射性廃棄物基金理事会 2002年年次報告書 2003年3
  • カナダ:核燃料廃棄物管理機関(NWMO)ウェブサイト(www.nwmo.ca)信託基金情報
  • 米国:エネルギー省民間放射性廃棄物管理局(DOE OCRWM) 月別プログラム財務・予算情報 2002会計年度末報告書
  • スイス:連邦エネルギー庁2003年6月13日基金プレスリリース
  • フィンランド:貿易産業省(KTM)国家放射性廃棄物管理基金パンフレット(2002年)
  • ドイツ:エコロジー研究所 調査報告書(2000年)
  • スペイン:放射性廃棄物管理公社(ENRESA)2001年次報告書
  • フランス:電力公社(EDF)2002年年次財務報告書
    原子力庁(CEA)財務報告書 2001年
    核燃料公社(COGEMA社)2000年次財務報告書
  • 英国:BE社 2001/2002年年次報告書 2002年
    英国核燃料公社(BNFL) 2001/2002年年次報告書 2002年
    英国原子力公社(UKAEA) 2001/2002年年次報告書 2002年

(post by 原環センター , last modified: 2003-07-08 )