諸外国では、高レベル放射性廃棄物を含む放射性廃棄物の管理に必要な費用を賄うために様々な形で資金確保が行われている。日本を含め多くの国においては、基金制度が導入されており、費用負担責任のある電力会社等は決められた拠出金を基金に払い込む方式を取っている。ただし、基金が設けられている場合でも、基金の対象となる費用の範囲は国により異なっている。
一方フランス、ドイツ、英国では放射性廃棄物処分に関する基金制度が設けられていないため、廃棄物発生者が、各々に将来に必要な資金を引当金として内部留保している。最近、スウェーデン・スイス・カナダが2002年度の基金の情報を公表したことを受けて、以下に基金制度の有無別に、高レベル放射性廃棄物処分に関連する各国の資金確保制度の概要と最新の基金残高または引当金額を表にまとめた。
1.基金制度が導入されている国について(2003年6月現在)
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基金で賄われる費用 | 基金残高 | |
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スウェ|デン |
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放射性廃棄物管理全般
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2002年末時点の基金残高(市場価格):313.1億スウェーデン・クローネ【4,070億円】 |
スイス |
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原子力発電所の廃止措置後の放射性廃棄物管理全般(廃止措置に関しては別途基金が設けられている) | 2002年末時点の基金残高(市場価格):14億3,200万スイスフラン【1,160億円】 |
カナダ |
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核燃料廃棄物管理(研究開発費含む) | 2002年末時点の基金残高(市場価格):5億5,000万カナダドル【429億円】 |
米国 |
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高レベル放射性廃棄物および使用済燃料の管理全般 | 2002年9月末時点の積立額:192億8,500万米ドル【2兆3,335億円】 |
フィンランド |
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放射性廃棄物管理全般(廃止措置を含む) | 2001年末時点の基金残高:11.9億ユーロ【1,410億円】 |
スペイン |
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放射性廃棄物管理全般(廃止措置を含む) | 2001年末時点の基金残高:17億ユーロ【2,030億円】 |
日本 |
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特定放射性廃棄物の最終処分 | 最終処分積立金:平成13年度末時点の残高1,705億8,200万円 |
2.基金制度が設けられていない国について(2003年6月現在)
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引当金の対象 | 引当金 | |
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フランス |
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英国 |
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ドイツ |
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放射性廃棄物管理費用全般(廃止措置を含む) | 電力会社11社引当金総額(2000年調査):366億ユーロ【4兆3,500億円】 |
換算レートは、日本銀行の平成14年1~6月の基準外国為替相場および裁定外国為替相場に基づき、1米ドル=121円、1スウェーデン・クローネ=13円、1スイスフラン=81円、1ユーロ=119円、1カナダ・ドル=78円、1スターリング・ポンド186円を使用。表中の数字は何れも概算。
【出典】
- スウェーデン:放射性廃棄物基金理事会 2002年年次報告書 2003年3
- カナダ:核燃料廃棄物管理機関(NWMO)ウェブサイト(www.nwmo.ca)信託基金情報
- 米国:エネルギー省民間放射性廃棄物管理局(DOE OCRWM) 月別プログラム財務・予算情報 2002会計年度末報告書
- スイス:連邦エネルギー庁2003年6月13日基金プレスリリース
- フィンランド:貿易産業省(KTM)国家放射性廃棄物管理基金パンフレット(2002年)
- ドイツ:エコロジー研究所 調査報告書(2000年)
- スペイン:放射性廃棄物管理公社(ENRESA)2001年次報告書
- フランス:電力公社(EDF)2002年年次財務報告書
原子力庁(CEA)財務報告書 2001年
核燃料公社(COGEMA社)2000年次財務報告書 - 英国:BE社 2001/2002年年次報告書 2002年
英国核燃料公社(BNFL) 2001/2002年年次報告書 2002年
英国原子力公社(UKAEA) 2001/2002年年次報告書 2002年
(post by 原環センター , last modified: 2003-07-08 )