フランスの公開討論国家委員会(CNDP)は、地層処分場の設置に関する公開討論会の一環として実施している「市民会議」について、これまでの2回の開催状況に関する情報をCNDPのウェブサイト上で公表した。CNDPは、2013年5月から開始した公開討論会の初期において、集会形式の公開討論会が反対派の妨害により中止を余儀なくされたことから、2013年7月に、それに代わる強化策として小規模な地元会合やインターネット会議によって公開討論会を実施し、その締め括りとして市民会議を開催することを決定していた 。
市民会議は1970年代からフランスを含む複数の国で導入されている手法であり、異なる地理的、社会・職業的背景を持つ10名程度の市民が、あるテーマについて事前に多様な観点を反映した情報を得たうえで、考えをまとめて見解を表明する仕組みである。通常のステークホルダーのような、積極的に意見表明をする立場にある人の意見だけでなく、一般市民の意見を直接吸い上げることを狙いとしている。
地層処分場の設置に関する市民会議の独立性を確保するため、放射性廃棄物管理機関(ANDRA)のプロジェクトとは独立の立場にある専門家、有識者からなる運営委員会及び評価委員会が設置された。運営委員会が、市民会議に参加する市民パネリスト17名を選出している。市民パネリストは、選挙人名簿または世論調査機関Ipsosが調査用途に使用している名簿から無作為に抽出・選任されている。市民パネリストの選任においては、プロジェクトから直接影響を受ける可能性のある市民を含めるため、8名をムーズ県及びオート=マルヌ県の住民から選出している。
市民会議は2013年12月~2014年2月の週末を利用して全3回で開催する計画であり、第1回と第2回の市民会議が以下の日程・テーマで開催されている1 。
第1回市民会議 |
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2013年12月13日 |
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2013年12月14日 |
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2013年12月15日 |
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第2回市民会議 |
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2014年1月10日 |
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2014年1月11日 |
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2014年1月12日 |
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今後開催予定の第3回の市民会議では、これまでの市民会議で情報提供されたテーマのうち、市民パネルがさらなる議論を希望するものについて、関係者や専門家等からの意見収集を行ったうえで、市民パネルがプロジェクトに関する見解を取りまとめ、2014年2月3日に予定されている記者会見の場で公表するとしている。
なお、市民会議の運営委員会及び評価委員会のメンバーは以下の通りである。
運営委員会
- 委員長:マリー=アンジェル・エルミット …法学博士、国立科学研究センター(CNRS)研究責任者、社会科学高等研究院(EHESS)研究責任者
- 委員:クレモンス・ベデュ …社会学博士、ストラスブール国立水理・環境工学学校(ENGEES)-フランス国立環境・農学技術研究所(Irstea)共同研究プロジェクト研究者
- 委員:フランソワ・ベスニュ …科学博士、放射線防護・原子力安全研究所(IRSN)廃棄物・地圏部長
- 委員:ジャン=マリ・ブロム …ユベール・キュリアン学際的研究所(CNRS/ストラスブール大学)研究責任者
- 委員:ベルン・グランボウ …放射線化学者、ナント国立高等鉱業学校教授、素粒子物理学・関連技術研究所責任者
- 委員:アンドレアス・ルダンジェ …パリ政治学院持続可能開発・国際関係研究所(IDDRI)エネルギー・気候部門研究者
評価委員会
- 委員:ジャン=ミシェル・フルニオー …フランス運輸・整備・ネットワーク科学技術研究所(IFSTTAR)研究責任者
- 委員:ルイジ・ボッビオ …イタリア・トリノ大学政治科学教授
- 委員:セシル・ブラトリクス …生活・環境科学産業研究所(AgroParisTech)政治科学教授
【出典】
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CNDPウェブサイト
http://www.debatpublic.fr/debat-public/conference-citoyens-projet-cigeo.html
- 各々のテーマについて、放射性廃棄物管理機関(ANDRA)、政府、規制機関である原子力安全機関(ASN)の代表、大学等研究機関の専門家が発表を行っ ているが、複数のテーマについては、原子力に否定的な立場をとる世界エネルギー情報サービス(WISE)やグローバル・チャンスの代表も発表を行ってい る。 [↩]
(post by yokoyama.satoshi , last modified: 2023-10-11 )