諸外国での高レベル放射性廃棄物処分

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hlw:de:chap6 [2014/01/07 14:03] sahara.satoshihlw:de:chap6 [2017/05/06 14:34] – 2017年度版 ss12955jp
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-~~bc:6.安全確保の取り組み・コミュニケーション~~+~~ShortTitle:6.安全確保の取り組み・コミュニケーション~~
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 ==HLW:DE:chap6== ==HLW:DE:chap6==
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 {{:wiki:付箋ポイント.png?100&nolink|ポイント}} {{:wiki:付箋ポイント.png?100&nolink|ポイント}}
   * ドイツでは、ゴアレーベンでの高レベル放射性廃棄物処分を想定して、処分概念の検討と共に、同サイトの処分場としての適性を確認する適合性調査や安全評価などが行われてきました。   * ドイツでは、ゴアレーベンでの高レベル放射性廃棄物処分を想定して、処分概念の検討と共に、同サイトの処分場としての適性を確認する適合性調査や安全評価などが行われてきました。
-  * 2009年には「発熱性放射性廃棄物の最終処分に関する安全要件」が策定され、ゴアレーベンへの適用に向け検討が行われていましたが、2013年にサイト選定法が制定されたことを受けこれらの安全要件も含めて再検討することになっています。+  * 2013 年に定されたサイト選定法では3段階かなるサイト選定手続き各段階において予備的安全評価を行い、安全性の確認が行われることになっています。
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 1983年5月、当時の最終処分事業の実施主体であった連邦物理・技術研究所(PTB)は『ゴアレーベンのサイト調査の総括的中間報告書』をまとめています。この報告書では、ゴアレーベンに地層処分場を建設した場合の安全解析が行われ、ゴアレーベンが処分場の建設地として適切であると評価されました。この評価結果を受けて、ニーダーザクセン州が地下探査に関する許可を発給し、探査坑道の建設は1986年から始まりました。 1983年5月、当時の最終処分事業の実施主体であった連邦物理・技術研究所(PTB)は『ゴアレーベンのサイト調査の総括的中間報告書』をまとめています。この報告書では、ゴアレーベンに地層処分場を建設した場合の安全解析が行われ、ゴアレーベンが処分場の建設地として適切であると評価されました。この評価結果を受けて、ニーダーザクセン州が地下探査に関する許可を発給し、探査坑道の建設は1986年から始まりました。
  
-ゴアレーベンでの地下探査活動は、連邦政府の1998年からの脱原子力への政策転換の影響を受けて、2000年10月から10年間にわたり凍結されていました。探査活動は2010年11月に再開されましたが、サイト選定の見直しを受けて2012年11月に中断、その後2013年7月のサイト選定法制定に伴って探査活動は中止することになりました。+ゴアレーベンでの地下探査活動は、連邦政府の1998年からの脱原子力への政策転換の影響を受けて、2000年10月から10年間にわたり凍結されていました。2010年11月に探査活動は再開されましたが、サイト選定の見直しを受けて2012年11月に中断、その後2013年7月のサイト選定法制定に伴って終了することになりました。
  
-連邦環境・自然保護・原子炉安全省(BMU:現連邦環境・自然保護・建設・原子炉安全省)は、2009年7月に「発熱性放射性廃棄物の最終処分のための安全要件」を策定しました。この要件は2010年のゴアレーベン探査再開に先立ち、同年9月に一部改訂されました。+連邦環境・自然保護・原子炉安全省(BMU:現BMUB 旧称)は、2009年7月に「発熱性放射性廃棄物の最終処分のための安全要件」を策定しました。この要件は2010年のゴアレーベン探査再開に先立ち、同年9月に一部改訂されました。
  
 2010年8月には、BMU の委託を受けた施設・原子炉安全協会(GRS)が中心となって、2010年11月の探査活動再開までに得られたデータを基に、この安全要件に基づくゴアレーベンでの予備的安全評価を開始しました。しかし、2013年7月制定の「発熱性放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定に関する法律」(サイト選定法)により候補地であるゴアレーベンが白紙化されたことから、予備的安全評価の作業は中止されました。 2010年8月には、BMU の委託を受けた施設・原子炉安全協会(GRS)が中心となって、2010年11月の探査活動再開までに得られたデータを基に、この安全要件に基づくゴアレーベンでの予備的安全評価を開始しました。しかし、2013年7月制定の「発熱性放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定に関する法律」(サイト選定法)により候補地であるゴアレーベンが白紙化されたことから、予備的安全評価の作業は中止されました。
  
-ドイツでは今後、サイト選定法に基づく「高レベル放射性廃棄物処分委員会設置され、2015末を目途とて処分の安全要件や複数サイトの比較を前提としたサイト選定基準、選定手続を検討していくことています。+ドイツでは2013 年7月にサイト選定法が制定され、今後同法に基づき、サイト選定が行われることになっています。サイト選定法に規定された選定手続きでは、3段階からなる手続きの各段階において予備的安全評価を行い、安全性の確認が行われることになっています。また、サイト選定法に基づき設置された高レベル放射性廃棄物処分委員会が20167月に提出た最終報告書では、安全評価のため安全基準を含む安全要件についてはサイト選定法に組み込むべきことなどが勧告されています。今後、この勧告に基づき、安全要件の改定など必要な法整備が 
 +行われます。
  
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 ====== 6.2 処分事業の透明性確保とコミュニケーション ====== ====== 6.2 処分事業の透明性確保とコミュニケーション ======
  
-<WRAP tip round box> +<WRAP round box> 
-  * ドイツでは、実施主体である連邦放射線防護庁(BfS)やドイツ廃棄物処分施設建設・運転会社DBE社)は、地元自治体等さまざまコミュニケーション図ってきました。管轄官庁の連邦環境・自然保護・原子炉安全省(BMU)は2010年秋再開されたゴアンでの探査活動して、情報提供や住民と対話集会を行っています。 +{{:wiki:付箋ポイント.png?100&nolink|ポイント}} 
-</WRAP> +  * 2013年7月に制定された「発熱性放射廃棄物の最終処分場のサイト選定に関する法律」サイト選定法は、新たに公衆や地元自治体等の参加を得がら複数サイトから処分場建設地の候補絞り込んでいくプロセスが導入されました。 
-<WRAP clear></WRAP>+  * またサイト選定法基づき設置されたレベル放射性廃棄物処分委員会は、2016年7月提出た最終報告書において、連邦レベル、地域横断レベル、地域レベルのそれぞれにおいて公衆参加のため委員や合議体設置して、公衆参加を促進することを勧告しています。
  
- 
-===== 情報を提供し、意見を受けるための制度 ===== 
- 
-<WRAP rss right 300px> 
-{{:hlw:de:eia-de.png?300&nodirect|ドイツにおける環境適合性審査の流れ}}\\ 
-<fc #080>ドイツにおける環境適合性審査の流れ</fc> 
 </WRAP> </WRAP>
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- 
-原子力法では、放射性廃棄物の処分場の建設に当たって、計画確定の手続きを行うことが必要となっており、この手続きの中で、環境適合性審査を行うことになっています。 
- 
-この審査では、最初に許可申請者が処分事業の全般的な目的を通知し、環境影響評価の調査予定範囲を許認可当局と共に確認するプロセスが行われます。その結果をもとに、許可申請者が環境影響評価計画書を作成します。この計画書は、処分事業の概要を記述した概要資料を含めて公告・縦覧されます。そして国民は2カ月の間に異議の申立てをすることができ、申立てがなされた場合には公聴会が開催されます。 
- 
-寄せられた意見を反映する形で、許可申請者が環境影響評価書を作成することになるとともに、許認可当局も意見の反映度を勘案した形で承認の判断ができるようになっています。 
- 
-ただし、こうした制度に基づく形での情報の提供や地元住民の意見表明などの機会は、計画確定の手続きを開始する段階に至っていないため、現時点では行われていません。 
- 
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 <WRAP clear></WRAP> <WRAP clear></WRAP>
-\\ 
-==== サイト選定手続委員会(AkEnd)における市民参加の試行(1999~2001年) ==== 
  
-<WRAP rss right 350px> +===== 「サイト選定法」に基づく選定ロセスにおける公衆参加 =====
-{{:hlw:de:akend-workshop-photo1.png?200&nolink|AkEndのワークショッの開催模様(1)}}+
  
-{{ :hlw:de:akend-workshop-photo2.png?200&nolink|AkEndクショプの催模様(2)}}+「発熱性放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定に関する法律」(サイト選定法)では、まず国民各層の代表者33名で構成される「**高レベル放射性廃棄物処分委員会**」が、安全要件やサイト選定基準、サイト選定手続きの検討を行ってきました(「[[chap4|IV. 処分地選定進め方と地域振興]]」参照)。この委員会の会合はすべてインタトで中継され、議事録や会議資料、報告書も公されています。
  
-<fc #080>AkEndクショ開催模様</fc>\\ +選定手続き開始後は、実施主体である連邦放射線防護庁(BfS)が提案する複数の候補地域から、公衆参加プロセスを経て対象を絞り込むことになっています。サイト選定法において、これら手続きの期間を通じて、市民対話やインタトなどメディアを介して関連の情報発信・意見聴取を行うことを規定しています。
-<fs 70%>source:<nowiki>www.akend.de</nowiki></fs> +
-</WRAP>+
  
 +また、サイト選定に関わる以下のような重要な事項については**<abbr>市民集会 [Bürgerversammlungen]</abbr>**を開催するほか、関係する州や地元自治体の参加の上で決定しなければならないとしています。
  
-1999年に連邦環境・自然保護・原子炉安全省(BMU)の下に設けれたサイト選定手続委員会(AkEnd)では、サイト選定手続きあり方に関する検討が行われました。AkEndはワークショップなど形式を採用して社会と接点を重視する形で検討作業を進め、2002年に取りまとめた最終報告書において、サイト選定の各段階において市民参加を得ることが重要性を指摘しました。しかし当時は、AkEndが提案したサイト選定新たな制度や枠組みの策定に結びつかず、市民との接点を重視した手続の導入は実現しませんでした。+  * 候補地域、地上かの探査対象サイト選定 
 +  * 地上から探査計画策定 
 +  * 地下で探査対象サイト選定 
 +  * 地下で探査計画策定 
 +  * 候補サイトの最終比較
  
 +===== 公衆参加の枠組み =====
  
 +サイト選定では、連邦レベルにおける国民意見反映のための組織として、国民のさまざまな層で構成される「**社会諮問委員会**」を設置することになっています。サイト選定法に基づき、社会諮問委員会の詳細を含め、公衆参加についても検討することとなっていた高レベル放射性廃棄物処分委員会は、2016 年7月に公表した最終報告書において、公衆参加の枠組みについて、連邦、地域横断、地域の3 つのレベル
 +で、市民代表や各地域の住民などで構成される委員会や合議体を設置することを勧告しています(下表参照)。これらの委員会・合議体は、サイト選定プロセスの各段階において、公衆参加の結果を報告書としてとりまとめ、提出することとされています。
  
-<WRAP clear></WRAP> +[imagebox1b{{:hlw:de:サイト選定手続きにおける公衆参加枠組み.png?640|公衆参加の枠組み| 
-\\ +}}]
-===== 過去コミュニケーション活動(ゴアレーベン) =====+
  
-<WRAP rss right 300px> 
-{{:hlw:de:gorleben-dialog-web.png?300&nolink|www.gorlebendialog.de}}\\ 
-<fc #080>ゴアレーベン・ダイアログのウェブサイト</fc>\\ 
-<fs 90%>(探査中止に伴い、現在は提供中止となっています)</fs>\\ 
-<fs 70%>source: //<nowiki>www.gorlebendialog.de</nowiki>//</fs> 
-</WRAP> 
  
 +これらの委員会・合議体のうち、連邦レベルでの公衆参加組織である社会諮問委員会については、2016年11月に議会選出委員の6名、及び市民代表委員3名の合計9名が任命されました。市民代表委員については、全国5か所で市民フォーラムを開催し、サイト選定に関する課題、今後の選定手続きや社会諮問委員会の役割について学ぶ取り組みなどを行ったうえで選出されました。3名の市民代表委員には、16歳~ 27歳の若年層を代表する委員が1名含まれています。なお、サイト選定選定手続きの開始後、社会諮問委員会の委員は18名に拡大され、本格的に活動を行うことになっています。
  
  
-2013年のサイト選定法により探査活動が中止されるまで、ゴアレーベン地域において、連邦環境・自然保護・原子炉安全省(BMU:現在の連邦環境・自然保護・建設・原子炉安全省)や、実施主体であ連邦放射線防護庁(BfS)が対話活動や情報提供を行っていました。+===== 候補地域・候補サイトにおる対話活動 =====
  
-ゴアレーベンに1979年から情報センターが設けられていました。また、地元及び周辺自治体の議員で構成するゴアレーベン委員会が、実施主体のBfSや、BfSの委託を受けて現地の探査活動を実施していたドイツ廃棄物処分施設建・運転会社(DBE社)とのコミュニケーションのチャンネルの役割を果たしていました+サイト選定法で、連邦放射性廃棄物処分安全庁(BfE)、サイト選定手続きを監督し、検討対象地域やサイト所在地において、多くの人々が参加可能な形態の市民対話を定することになっていま。また、検討対象地域や地元住民とサポートする組織として、BfE が市民事務局を置するこになっています。市民事務局は独立立場で、地域や地域住民に対、手続きに関する専門的な助言を提供することになっていま
  
-2010年ゴアレーベンの探査凍結が解除された際、BMUは探査活動進め上で地元のステークホルダーや住民の参加プロセスの導入重要との認識を示しています。BMU同年、市民と対話活動「ゴアレーベン・ダイアログ」を開始しした。この対話活動は、探査活動予備的安全評価について、専用のウェブサイトを設けて情報提供や意見募集を行ったほか、市民との対話集会などが開催されました。しかし、サイト選定見直しゴアレーベンの探査が中止されたため、現在はうした対話活動も中断されています。+さらサイト選定法では、計画対象とされた地域内において市民集会開催すこと規定されています。 
 +BfE開催2ヵ月前までに連邦官報同庁のウェブサイト、地元日刊紙に開催告示出し最低1ヵ月間、関連する基礎資料を提示します。 
 +市民集会の議事録はその地域における公衆受容の度合についても記載するとになっています。
  
 +BfE は、探査サイトや処分場サイトの検討を行う際に市民集会の結果を考慮しなければなりません。
  
-<WRAP clear></WRAP> 
  
 +<WRAP clear/>
  
 \\ \\
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 ===== サイト選定法に関する市民フォーラム ===== ===== サイト選定法に関する市民フォーラム =====
 +
 +[30%{{ :hlw:de:市民フォーラムの模様.png|市民フォーラムの模様|
 +サイト選定法に関する市民フォーラムの様子\\
 +<fs 70%>source: BMU</fs>
 +}}]
  
 ドイツでは2013年4月に「発熱性放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定に関する法律」(サイト選定法)の法案が閣議決定された後、同年5月31日から6月2日の3日間にわたり、「サイト選定法に関する市民フォーラム」がベルリンで開催されました。 ドイツでは2013年4月に「発熱性放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定に関する法律」(サイト選定法)の法案が閣議決定された後、同年5月31日から6月2日の3日間にわたり、「サイト選定法に関する市民フォーラム」がベルリンで開催されました。
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 ===== ゴアレーベンにおける広報活動(情報提供) ===== ===== ゴアレーベンにおける広報活動(情報提供) =====
  
-<WRAP rss right 300px> +[30%{{ :hlw:de:display-trailer.png|移動展示車両を用いた展示|
-{{:hlw:de:display-trailer.png?300&nolink|移動展示車両を用いた展示}}\\+
 <fc #080>移動展示車両を用いた展示</fc>\\ <fc #080>移動展示車両を用いた展示</fc>\\
 <fs 70%>source: BfS</fs> <fs 70%>source: BfS</fs>
-</WRAP> +}}]
  
 ゴアレーベンでの探査が中止される以前は、処分の実施主体である連邦放射線防護庁(BfS)が主に一般市民向け、BfSの委託を受けて実際の調査作業を行っていたドイツ廃棄物処分施設建設・運転会社(DBE社)が主にサイト周辺住民向けの広報活動を実施していました。 ゴアレーベンでの探査が中止される以前は、処分の実施主体である連邦放射線防護庁(BfS)が主に一般市民向け、BfSの委託を受けて実際の調査作業を行っていたドイツ廃棄物処分施設建設・運転会社(DBE社)が主にサイト周辺住民向けの広報活動を実施していました。
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-<WRAP clear></WRAP>+<WRAP clear/>
  
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hlw/de/chap6.txt · 最終更新: 2017/05/23 19:31 by 127.0.0.1