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§ 2016年10月25日 発行 海外情報ニュースフラッシュ

ドイツで連邦政府が放射性廃棄物管理のための公的基金設置等を定める法案を閣議決定

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ドイツ連邦政府は2016年10月19日に、「原子力バックエンドの責任分担刷新法案」を閣議決定した。同法案には、「脱原子力に係る資金確保に関する検討委員会」(以下「検討委員会」という)が2016年4月27日に提出した最終報告書において示した勧告 を実施するための規定が含まれている。同法案は今後、2016年内の発効を目指し、連邦議会での審議が行われる予定である。

原子力バックエンドの責任分担刷新法案には、二つの新法――①放射性廃棄物管理のための公的基金の設置に関する法律、②原子力発電所運転者からの放射性廃棄物管理の資金及び実施に係る義務移管に関する法律――を制定及び関連法令の改正を行う内容が盛り込まれている。同法案に含まれる法律案及び関係法令の改正案の概要は以下の通りである。

放射性廃棄物管理のための公的基金の設置に関する法律案〔基金設置法案〕

ドイツでの原子力発電事業者は、放射性廃棄物管理の将来費用を引当金として内部留保してきた。放射性廃棄物管理のための公的基金の設置に関する法律案(以下「基金設置法案」という)では、新たな公的基金を設置し、連邦政府が責任を負う放射性廃棄物管理(中間貯蔵から最終処分場閉鎖まで、後述)について、必要な資金を基金に拠出して管理するための規定が含まれている。なお、この基金は、連邦経済エネルギー省(BMWi)が所管する。

○基金の構成

新たに設置される基金は、監査組織である「管理委員会」と基金を運営する「運営委員会」から構成される。管理委員会は、連邦財務省、BMWi及び連邦環境・自然保護・建設・原子炉安全省(BMUB)の代表者の計3名で構成される。運営委員会の委員は、管理委員会によって、資金管理経験者3名が指名される。

○原子力発電事業者による基金への払い込み

原子力発電事業者による基金への払込金は、放射性廃棄物管理の将来費用(基本払込金)と、リスクに備えるための保険料(基本払込金の35.47%)で構成される。原子力発電事業者は、基本払込金約174億ユーロ(約1兆9,700億円)に保険料約62億ユーロ(約7,000億円)を上乗せした合計約236億ユーロ(約2兆6,700億円)を基金に払い込むこととされている。これらの金額は、概ね2016年4月の検討委員会の勧告と同様である(下表参照)。

原子力発電事業者は、法律発効から7カ月後までに基本払込金、2022年末までに保険料を払い込むことが規定されている。ただし、連邦財務省同意の上でBMWiと合意すれば、基本払込金とリスク保険料の合計額を2026年末までに分割で支払うことも可能とされている。

表:原子力事業者による放射性廃棄物管理基金への払い込み金額

基金設置法
(払込時点で再調整可能性あり)
検討委員会勧告
(2014年価格)
 A. 基本払込金  約174億ユーロ(1兆9,700億円)  a. 引当金から基金への資金移管額  約172億ユーロ(約1兆9,400億円)
 B. 保険料(Aの35.47%)  62億ユーロ(約7,000億円)  b. 保険料(aの約35%)  約61億ユーロ(6,900億円)
 C. 払込総額
(A+B)
 236億ユーロ(約2兆6,700億円)  c. 払込総額
(a+b)
 約233億ユーロ(2兆6,300億円)

 

原子力発電所運転者からの放射性廃棄物管理の資金及び実施に係る義務移管に関する法律案〔義務移管法案〕

原子力バックエンドの責任分担刷新法案には、原子力発電事業者と連邦政府の間での放射性廃棄物管理に関する責任分担を変更する新法を制定する条文が含まれている。「原子力発電所運転者からの放射性廃棄物管理の資金及び実施に係る義務移管に関する法律案」(以下「義務移管法案」という)の概要は以下の通りである。

○中間貯蔵と処分の実施・資金管理責任の変更

義務移管法案では、放射性廃棄物の中間貯蔵の実施責任者を従来の原子力発電事業者から連邦政府に変更するとともに、資金管理責任についても連邦政府の責任とする規定が設けられている(下表参照)。なお、廃止措置に関しては引き続き、実施・資金確保ともに原子力発電事業者が責任を有する。

保険料を含む基金への払い込み完了により、資金確保を含め、中間貯蔵以降の放射性廃棄物管理に関する責任は連邦政府に移行することになる。したがって、払い込み完了後は、最終処分場の操業開始遅延などに伴い費用が増大した場合でも、原子力発電事業者が追加の負担を求められることはない。

表:放射性廃棄物管理における原子力発電事業者と連邦政府の責任分担

 

現在の責任分担

移管法による責任分担

中間貯蔵

最終処分

中間貯蔵

最終処分

実施

事業者

連邦政府

連邦政府

資金

事業者(各自費用を引当)

連邦政府(ただし基金への払い込み完了後)

○連邦政府への中間貯蔵の移管時期及び実施主体

義務移管法案によれば、原子力事業者から連邦政府への中間貯蔵の実施責任の移行時期は次の通りである。

  • 発熱性放射性廃棄物(使用済燃料及びガラス固化体等):2019年1月1日
  • 非発熱性放射性廃棄物(発熱性放射性廃棄物以外):2020年1月1日

なお、中間貯蔵施設は原子力発電事業者が費用を負担して設置したものであるが、上記期日を以て、無償で連邦政府に引き渡されることとされている。

放射性廃棄物の中間貯蔵に関する実際の活動は、連邦環境・自然保護・建設・原子炉安全省(BMUB)の監督下に置かれる「連邦政府が100%所有する私法上の組織」によって実施される。放射性廃棄物の最終処分についてはすでに、「最終処分分野における組織体制刷新のための法律」(2016年7月30日発効)による原子力法改正がなされており、連邦政府が100%所有する実施主体として、連邦放射性廃棄物機関(BGE)が新たな処分実施主体となることが決まっている。中間貯蔵の実施主体についても、今後新たな組織が設置されることになる。

 

その他の法令の改正案など

「原子力バックエンドの責任分担刷新法案」による「基金設置法案」及び「義務移管法案」の2件の新法制定に伴い、放射性廃棄物管理に係る各種料金や分担金の支払い方法の変更に関係する法令の改正がなされる。関係する法令には以下のものがある。

  • 原子力法
  • 発熱性放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定に関する法律(サイト選定法)
  • 最終処分場設置の前払金令
  • 放射線防護令

 

【出典】

【2016年12月20日追記】

ドイツの連邦議会は2016年12月15日に、放射性廃棄物管理のための公的基金設置等を定める「原子力バックエンドの責任分担刷新法案」を賛成516、反対58で可決した。また、連邦参議院が12月16日に、同法案への同意1 を決議したことにより成立した。

なお、発効日については、別途、連邦官報に公示されることが規定されている。

【出典】

【2017年5月11日追記】

ドイツでは、2016年12月に成立した「原子力発電所運転者からの放射性廃棄物管理の資金及び実施に係る義務の移管に関する法律」(以下「義務移管法」という)に基づいて、今後2020年1月までに、放射性廃棄物の中間貯蔵の実施義務を、従来の原子力発電事業者から連邦政府に段階的に移管する方針である。使用済燃料や放射性廃棄物の処分前に行われる中間貯蔵は、連邦政府が100%所有する私法上の組織が実施することになっている。

ドイツ連邦環境・自然保護・建設・原子炉安全省(BMUB)と原子力サービス社(GNS社)とは2017年5月8日に、GNS社の所有する中間貯蔵の新たな実施主体「連邦中間貯蔵機関」(BGZ)の株式及びGNS社が所有・操業しているゴアレーベン及びア―ハウスの集中中間貯蔵施設について、2017年8月1日に連邦政府に引き渡すことで合意したことを公表した。現在、BGZはBMUBとGNS社が共同出資した合弁会社として存在しているが2  、引き渡しにより連邦政府が100%所有する組織となる。

GNS社は原子力事業者が共同出資して設立された民間会社である。ドイツ北部のニーダーザクセン州にあるゴアレーベン中間貯蔵施設においては、原子力発電所から発生した放射性廃棄物や使用済燃料のほか、フランスと英国に委託した再処理からの返還ガラス固化体の中間貯蔵を実施している3 。ドイツ西部のノルトライン=ヴェストファーレン州にあるアーハウス中間貯蔵施設では、原子力発電所から発生した放射性廃棄物の中間貯蔵のほか、主として研究炉や高温ガス炉(実験炉と実証炉、いずれも1980年代に廃止)の使用済燃料を乾式貯蔵している4 。

今夏に行われるBGZの株式、ゴアレーベン及びア―ハウスの集中中間貯蔵施設の連邦政府への移管は、義務移管法に規定された中間貯蔵の実施責任移管の第一段階である。義務移管法では次の段階として、原子力事業者が各原子力発電所構内に設置している使用済燃料等の中間貯蔵施設12カ所を2019年1月1日までに、また、原子力発電所の運転・廃止措置に伴って発生する放射性廃棄物の中間貯蔵施設12カ所を2020年1月1日までに連邦政府へ移管することが規定されている。

【出典】


  1. ドイツの国会は二院制であり、連邦議会と連邦参議院がある。連邦参議院は直接選挙で選出されるのではなく、州が代表を送って構成される。ドイツ基本法では、連邦法は連邦議会が議決すると規定しているが、法律の内容によっては連邦参議院の同意が必要となる。 []
  2. ドイツ連邦環境・自然保護・建設・原子炉安全省(BMUB)と原子力サービス社(GNS社)は、義務移管法の2016年12月成立を受けて、2017年3月1日に共同出資によるベンチャー企業として「連邦中間貯蔵機関(BGZ)」を設立していた。 []
  3. ゴアレーベン中間貯施設は、GNS社の子会社であるゴアレーベン燃料貯蔵会社(BLG)が実施している。1995年から返還ガラス固化体の受け入れを開始したが、2013年の連邦政府とニーダーザクセン州の合意に基づく原子力法の改正により、現在は受け入れが行われていない。今後返還されるガラス固化体は、原子力発電所サイトで中間貯蔵することが計画されている。 []
  4. アーハウス中間貯蔵施設は、GNS社の子会社であるアーハウス燃料貯蔵会社(BZA)が操業している。 []

(post by tokushima.hideyuki , last modified: 2017-05-12 )