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諸外国での高レベル放射性廃棄物処分

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hlw:ch:chap6
HLW:CH:chap6

スイス スイスにおける高レベル放射性廃棄物処分

スイスにおける高レベル放射性廃棄物処分

全体構成(章別)


6. 安全確保の取り組み・コミュニケーション

6.1 地層処分の安全確保の取り組み

ポイント

  • 放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)は2002年に「処分の実現可能性実証プロジェクト」の報告書を取りまとめました。2006年に連邦評議会が実証結果を承認し、スイス国内に地層処分の実施が原則的に可能であることが確認されました。

安全性の確認と知見の蓄積

oplinus clay
チューリッヒ北部のベンケンで採取された
オパリナス粘土のボーリングコアで見つかった
アンモナイトの化石

source: NAGRA


「保証プロジェクト」報告書 「クリスタリン-I」報告書 swi1_3_01.png
「処分の実現可能性実証プロジェクト」報告書

スイスでは、1978年に連邦議会の「原子力法に関する連邦決議」により、原子力施設の建設許可及び運転許可の前提条件として、施設を建設しようとする者に対して、連邦評議会(内閣に相当)が発給する概要承認の取得が義務付けられました。既存の原子力発電所の運転の継続や新規発電所の認可条件として、放射性廃棄物が確実に処分可能であることが条件とされました。

この「処分の実現可能性の実証」に向けて、連邦政府は1985年を期限として、実際の地質条件に基づいた、地層処分の実現可能性を評価する「保証プロジェクト」の実施をNAGRAに求めました。このプロジェクトではスイス北部の結晶質岩に注目して検討が進められました。このプロジェクト報告書を受けて、1988年に連邦評議会が示した評価では、地層処分場の建設可能性や安全性は確認されたものの、必要な大きさを備えた母岩を見つけ出せるかどうかについては立証できていないとし、堆積岩も調査対象とすることを要求しました。

NAGRAは、既存の地質情報に基づきスイス全土から絞り込む形で粘土質を多く含む岩種に着目し、現地調査を行う第一優先区域として、1994年にはチューリッヒ州北部を選定しました。連邦当局の承認を得て、選定区域での3次元反射法地震探査を行うとともに、1998年からは同区域にあるベンケンという場所でボーリング調査も行われました。

2000年になると、環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)が設置した放射性廃棄物処分概念専門家グループ(EKRA)が「監視付き長期地層処分」という概念を提案します。

EKRAの勧告を受け、処分実施主体であるNAGRAも監視付き長期地層処分に基づく処分場システムの検討と安全評価を実施し、2002年に「処分の実現可能性実証プロジェクト」報告書において、高レベル放射性廃棄物の長期安全性が確保できる見通しを明らかにしました。規制当局の評価が行われた後、2006年に連邦評議会は処分の実現可能性の実証結果を承認する決定を行いました。

なお、NAGRAは上記の報告書において、今後の調査対象をチュルヒャー・ヴァインラント(チューリッヒ州北東部)のオパリナス粘土に絞ることを提案していましたが、連邦評議会はその提案を退け、都市計画法に基づく特別計画を策定して地層処分場のサイト選定を進めることにしました。


6.2 処分事業の透明性確保とコミュニケーション

ポイント

  • 特別計画「地層処分場」は、放射性廃棄物処分場のサイト選定手続において、情報提供とコミュニケーションが重要であるとしています。サイト選定においては、連邦政府の担当官庁である連邦エネルギー庁(BFE)が中心となって、さまざまな方法で透明性の確保とコミュニケーションの実現が図られています。

処分事業とコミュニケーション

ヴェレンベルグ・サイト
ヴェレンベルグ・サイト
source: GNW94-01, Technischer Bericht zum Rahmenbewillungsgesuch, (1994)

[8] スイスにおける州民投票とは?
州民投票とは、州民による発案に対して一定数以上の有効署名が集まった場合に、発案の是非について住民が直接的に意思表明を行うことができる制度です。州レベルでの発案の権利は、広範囲にわたって認められており、州憲法の改正や州法の改正も対象となっています。なお、連邦レベルにおいても同様の国民投票制度が設けられています。

処分事業を進めていくためには、住民の理解を得ることが重要となります。スイスにおいて放射性廃棄物処分に関し、住民との間に十分なコンセンサスが得られなかった例として、ヴェレンベルグでの中低レベル放射性廃棄物処分場計画が挙げられます。

この計画では、電力会社と地方自治体の共同出資によって設立されたヴェレンベルグ放射性廃棄物管理共同組合(GNW)が、1994年にスイス中部のニドヴァルデン州ヴェレンベルグにおける処分場建設計画を発表し、概要承認手続を開始しました。しかし、1995年6月の州民投票[8]で、処分場建設のための地下空間利用の州への許可申請等が否決され、GNWは連邦、州政府、放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)などの協力のもとに処分概念の見直しを実施しました。2002年にGNWは再び、処分場建設に向けた探査坑掘削のための地下空間利用の許可申請を州に提出しましたが、同年9月の州民投票で州の許可発給が再度否決されたため、ヴェレンベルグ・サイトを断念する決定がなされ、GNWは解散しました。

なお、2005年2月に施行された原子力法では、処分場などの原子力施設の立地などに関しては、州政府による許可が必要とされないことが規定されています。


特別計画「地層処分場」における 透明性確保とコミュニケーションに関する規定

サイト選定手続等を定めた特別計画「地層処分場」は、2006年3月の最初の草案の公表以降、国内や隣接諸国の当局や組織及び個人、スイスの州などから提出された意見を踏まえて、2008年4月に連邦評議会により承認されました。

同計画は、サイト選定の担当官庁である連邦エネルギー庁(BFE)の役割の一つとして、コミュニケーション方針の作成や公衆への情報提供、及び広報活動を定めています。また、放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)には、関係者に対する専門的な知見の提供が求められています。

また、特別計画によるサイト選定手続においては、情報提供や関係する州、地域、自治体及び公衆の関与が重要と考えられており、地域参加はそのための主要な手段とされています。特別計画は「サイト地域」に属する自治体が地域参加の組織を設置することを定めており、2011年から6つのサイト地域においてBFEの主導により設置された「地域会議」が活動を始めています。

地域会議

各地域会議は約85名から最大110名までのメンバーで構成されており、①州やサイト地域を構成する自治体の代表者、②経済団体、政党、教会等の代表者、③住民が参加しています。また、サイト地域にドイツの自治体が含まれる場合はドイツからも地域会議に参加します。 NAGRAの2012年年次報告書によると、地域会議にはのべ約200の自治体が参加(複数の地域会議に参加する自治体もある)しており、その中にはドイツの12の自治体も含まれています。

地域会議は土地利用や社会経済発展に関する調査を実施し、地域の持続的発展に資するプロジェクトを作成する役割を担っています。また、NAGRAの提案と別に、地域会議が地上施設の配置と立地について独自に提案することもできます。 ジュラ東部とジュートランデンでは、地域会議が提案した地上施設の設置区域案をNAGRAが採用しました。

地域会議の予算は、1つの地域会議あたり年間約50万スイスフラン(約5,650万円、1スイスフラン=113円として換算)となっています。地域会議は予算案と活動費用に係る請求書を連邦エネルギー庁(BFE)へ提出し、BFEはこの予算案を承認し、係る費用をNAGRAへ請求します。この予算は地域会議の事務局の運営費のほか、広報活動や会議参加の費用などに割り当てられており、地域会議のメンバーは活動への参加に対する報酬を受け取っています。


6.3 意識把握と情報提供

ポイント

  • 特別計画「地層処分場」は、サイト選定における地域参加プロセスの実施、及び州や自治体等のさまざまな関係者が参加する委員会などの設置を規定しています。また、連邦エネルギー庁(BFE)や放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)は、多様な媒体を通じて情報提供を行っています。

広報活動(情報提供)

ここでは、放射性廃棄物処分場のサイト選定手続において実施されている意識把握のための活動や、情報提供活動を紹介します。


<委員会などの設置>

特別計画「地層処分場」は、州や自治体からも代表者が参加して構成される委員会などの設置を規定しており、これらは既に活動を開始しています。

州・自治体が参加する委員会 (特別計画「地層処分場」で設置規定があるもの)

名称 役割
処分場諮問委員会 地層処分場サイト選定手続の実施において環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)をサポート
州委員会 サイト選定に関係する州や近隣州、近隣国の政府代表者間の協力を図り、選定手続の実施で連邦をサポート、連邦に勧告を提出
州安全専門家グループ 安全性に関する資料の評価時に州をサポート/アドバイス
安全技術フォーラム 住民、自治体、団体、州、関係近隣国で影響を受ける自治体の技術的な問い合わせへの対応


<情報提供の取り組み>

NAGRAによる情報提供活動の様子
NAGRAによる情報提供活動の様子

地層処分場の候補サイト区域の提案の公表後の2008年11月から12月にかけて、連邦エネルギー庁(BFE)の主催によりドイツを含めた9カ所で、情報提供イベントが開催されました。このイベントでは、連邦原子力安全検査局(ENSI)及びNAGRAもプレゼンテーションを行っています。

Nagra-time-ride.png
”Time Ride”の展示(2012年4月)
(写真提供:NAGRA)

NAGRAは2012年にチューリッヒ中央駅で”Time Ride”と題する大型展示を開始しました。この展示は地層の歴史やオパリナス粘土が処分に適している理由などを紹介するものです。その後、ベルン、シャウフハウゼン、ヴィンタートゥールの見本市でも展示を実施しています。

NAGRAが作成しているパンフレット
NAGRAが作成しているパンフレット

また、NAGRAは、独自に情報提供のためのイベントを実施する他、パンフレット等の作成や教育機関への情報提供、地下研究所を利用した情報提供活動などを行っています。





全体構成
スイス
hlw/ch/chap6.txt · 最終更新: 2015/10/19 13:39 (外部編集)

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