諸外国での高レベル放射性廃棄物処分

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カナダ カナダにおける高レベル放射性廃棄物処分

カナダにおける高レベル放射性廃棄物処分

全体構成(章別)


3. 処分事業に係わる制度/実施体制

3.1 実施体制

  • カナダでは、使用済燃料の管理責任を有する原子力企業が、核燃料廃棄物管理組織を設立することが規定されており、これに従い、核燃料廃棄物管理機関(NWMO)が使用済燃料の管理実施主体として、原子力企業により2002年に設立されました。
  • また、核燃料廃棄物管理の監督は、天然資源省(NRCan)内の核燃料廃棄物局(NFWB)が所管しており、地層処分場に係る許認可の発給はカナダ原子力安全委員会(CNSC)が担当します。

実施体制の枠組み

核燃料廃棄物管理に関わる主な行政機関として、核燃料廃棄物局(NFWB)とカナダ原子力安全委員会(CNSC)があります。NFWB は天然資源省(NRCan)の内部組織であり、核燃料廃棄物法に基づき核燃料廃棄物管理全体を監督します。また、CNSC は、原子力安全管理法によって設立され、原子力と放射性物質の使用に関する規制機関としての役割を担っています。


実施主体

カナダでは、2002年に制定された核燃料廃棄物法において、使用済燃料の管理責任を有する原子力企業が核燃料廃棄物管理組織を設立することが規定されました。原子力企業とは、オンタリオ・パワージェネレーション(OPG)社、ハイドロ=ケベック社、ニューブランズウィック・パワー社、及びカナダ原子力公社(AECL)を指します。2002年にこれら4社が共同して、核燃料廃棄物の長期管理アプローチの政府への提案、並びに政府が承認・決定したアプローチを実施する組織として、カナダ核燃料廃棄物管理機関(NWMO)を設立しました。

NWMOは核燃料廃棄物法の規定に従い、自らの活動について諮問あるいはレビューを受けるために、諮問評議会を設置しています。この諮問評議会はNWMOに対して助言を行ったり、報告書を独立して評価しています。

なお、NWMO は2009年より、OPG社の委託を受けて、原子力発電所から発生する低中レベル放射性廃棄物の地層処分場(DGR)の安全評価を含む技術支援や地元コミュニケーションなどの業務を実施しています。この処分場では、核燃料廃棄物(使用済燃料)は処分されません。DGRプロジェクトにおけるNWMOの支援活動については、171ページで紹介しています。


安全規則

カナダ原子力委員会(CNSC)の規制文書
その文書の性質により、以下の4種類があります。

  • 規制方針(Regulatory Policy): 文書番号の冒頭に「P」が付されます。規制方針は、規制に対するCNSCの取り組みの根底にある理念、原則あるいは基本的な諸要素を示すものです。CNSCのスタッフに対して規制活動の方向性を示すと同時に、事業者を含むステークホルダーに公表するものです。
  • 規制基準(Regulatory Standard): 文書番号の冒頭に「S」が付されます。規制基準は、規制要件を示すものです。法的拘束力を有する手段によってこの規制規準の適用が指定されている場合、この規制基準を順守する必要があります。
  • 規制指針(Regulatory Guide): 文書番号の冒頭に「G」が付されます。規制指針は、法律や規則、規制基準などで規定された通りに、CNSCが求める規制要件を満足するための方法を許可所有者などに示すものです。
  • 規制通知(Regulatory Notice): 文書番号の冒頭に「N」が付されます。規制通知は、許可所有者などに対して、重要な問題に対して適宜適切な対応ができるように情報を提供するために発行されます。

原子力安全に関しては「カナダ原子力安全委員会(CNSC)の設置及び関連法の改正のための法律」(原子力安全管理法、1997 年3 月20日)により、安全規制当局としてCNSC が設置されています。原子力施設の所有・運転にはCNSC の許認可が必要です。CNSCは、原子力安全管理法に基づいて、原子力の利用や放射線防護に関する規則を策定する権限を有しています。許認可取得者が遵守すべき一般的な要件は、一般原子力安全管理規則に示されており、許認可保持者に対して、原子力施設の廃止、許可の更新や修正、廃止においてCNSCに対する申請を求める規則などが定められています。

CNSC は、放射性廃棄物管理施設を含むクラスI原子力施設について、該当施設のサイト準備、建設、操業、廃止措置の実施の際には許可が必要であると規定しています。放射線防護規則において、許認可取得者が原子力従事者に対して放射線防護に関する義務等を規定しており、線量限度については国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告に沿った値を採用しています。

これらの規則の他に、CNSCは法律や規則を補足する規制方針、規制基準、規制指針、規制通知等の規制文書を策定しています。放射性廃棄物処分に関係する策定済みの規制文書としては、規制方針P-290「放射性廃棄物の管理」と規制指針G-320「放射性廃棄物の長期安全性の評価」があります。


3.2 処分に関わる法制度

事業規制

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  • カナダでは「核燃料廃棄物の長期管理に関する法律(核燃料廃棄物法)」により国内の原子炉から発生する核燃料廃棄物を長期的管理するための枠組みが定められています。
  • 核燃料廃棄物法では、原子力発電を行なっている企業に対し、廃棄物管理プログラムを実施する主体組織を設立すること、廃棄物管理のための資金確保の方策として信託基金を創設することなどが定められています。実施主体組織は、核燃料廃棄物を長期的に管理するためのアプローチを研究し、研究成果としてアプローチを連邦政府に提案し、承認されたアプローチの実行に責任を有しており、これらを行うこととされています。また、廃棄物の長期管理に対し提案されたアプローチ及び要求された報告書を吟味しコメントすることを目的とした諮問組織を創設することとされています。
  • 核燃料廃棄物法を受けて核燃料廃棄物管理機関(NWMO)が使用済燃料の管理実施主体として、原子力企業により設立されました。

安全規制

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  • 「カナダ原子力安全委員会(CNSC)の設置及び関連法の改正のための法律」(原子力安全管理法)により、安全規制当局としてCNSC が設置されています。CNSC は、原子力安全管理法に基づいて、原子力の利用や放射線防護に関する規則を策定する権限を有しており、原子力施設の所有・運転にはCNSC の許認可が必要とされています。
  • 放射性廃棄物管理施設はCNSC によりクラスI 原子力施設として分類されており、そのサイト準備、建設、操業、廃止措置の実施の際には許可が必要であるとされています。また放射線防護規則において、許認可取得者が原子力従事者に対して放射線防護の観点から行わなければならない義務等が規定されています。
  • また、CNSC は規則の他に、法律や規則を補足するために規制方針、規制基準、規制指針、規制通知等の規制文書を策定しています。

資金確保

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  • 廃棄物管理のための資金確保については、核燃料廃棄物法により、核燃料廃棄物の管理の責任を持つ事業者が、信託基金を創設することが定められています。
  • 事業者は核燃料廃棄物法で定められた一定の金額を毎年、信託基金に納付することとされており、廃棄物管理プログラムの主体組織のみが信託基金から資金を引き出すことができます。

環境

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  • 「連邦の環境評価プロセスの確立のための法律(環境影響評価法)」に基づいて、放射性廃棄物処分場を含む原子力施設の建設に際しては環境影響評価(EIS)が実施されます。
  • 環境影響評価法では、カナダ環境影響評価庁、CNSC または国家エネルギー委員会により環境影響評価が必要であると判断されたプロジェクトについて、潜在的な環境への悪影響の特定、悪影響を緩和する措置を提案し、環境への影響を最小限にすることを目的として環境影響評価を行なうこととされています。
  • 放射性廃棄物処分場を含む原子力施設の建設については原則的に、プロジェクト毎に選定される専門家で構成される評価パネルによって審査されます。評価パネルの審査においては、聴聞会やパブリックコメントを実施することが義務付けられており、評価パネルはこれらの公衆の意見を考慮して、審査結果を環境大臣に提出することとされています。また、評価パネルの審査は、パネルでの審査が決定されてから原則的に2年以内に完了することが定められています。

原子力責任

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  • 原子力損害賠償に関しては、原子力損害の民事責任に関する法律(原子力賠償法)において規定されています。原子力賠償法では、原子力事業者に対して、自身の施設における事故で発生した損害を、1 件の事故につき7,500万カナダドル(60億円)まで賠償する責任を課しています。また、原子力賠償法の適用範囲や原子力事故から生じる補償請求の処理のための委員会の設置、責任賠償額が7,500万カナダドルを超える場合の措置等が定められています。





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カナダ
hlw/ca/chap3.1363150431.txt.gz · 最終更新: 2013/03/13 13:53 (外部編集)