諸外国での高レベル放射性廃棄物処分

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Opalinus Clay Project (スイス)

(“オパリナス・クレイ”プロジェクト:2002年12月)



安全評価はどのように行っているのですか…

安全評価の方法論について

安全評価の進め方


図1 セーフティケースの構築手順

図 1は、セーフティケースの構築及びそれに伴うシナリオ、評価ケースの設定手順を示している。オパリナス・クレイプロジェクトにおけるセーフティケースの構築手順の概略は次の通りである。

  ① セーフティケース構築の目的や条件の特定
  ② 処分と安全評価の原則の決定
  ③ セーフティケース構築の方法の決定
  ④ 処分システムの特定
  ⑤ 処分システムに関する既知事項とその変遷について、不確実性も含め整理
  ⑥ システムの感受性の解析と評価ケースの特定
  ⑦ 評価ケースの解析による処分システムの性能評価
  ⑧ 評価結果の提示とプロジェクトの今後の進展のための論点整理
  ⑨ セーフティケースの評価

備考:セーフティケース … オパリナス・クレイプロジェクト安全報告書では、「特定の処分システムが安全であるとする結論を正当化するために使用される一連の論理及び解析の集合であり、特に関連する規制上の全ての安全基準に適合できることを示す証拠の提示が含まれる。また、システム設計及び安全機能を記述し、性能を示し、論理及び解析を裏付ける証拠を提示し、かつ今後の処分場開発に関する意思決定の枠組みの中で不確実性あるいは未解決問題の重要性について論じた一連の文書も含まれる。」と定義されている。


FEP

NAGRAは、安全評価の現象論的完全性を保障するための一環として、安全評価に関係する可能性があるFEPsの包括的データベース(OPA FEP Database)の開発している。それを国際FEPデータベース(NEA FEP Database)と比較することによって網羅性を確保している。


シナリオ

NAGRAは、シナリオ、評価ケースを、シナリオの不確実性に従って以下の様に分類している。

レファレンスシナリオ

  • システムがおおむね予想通りの変化をすると仮定したシナリオである。
  • 非常に透水性の低い均質な粘土バリアシステムを通して、地下水中に溶存した核種が放出される特徴を有する評価ケースで構成される。

代替シナリオ

  • システムがレファレンスシナリオとは基本的に異なる挙動を示す特徴を有しており、拡散された核種の粘土バリアを通した非常に緩慢な放出が突如として大きく変化するという、発生が考えがたいものの可能性がある様なシステムの変遷を含む。
  • 具体的には、ガス移行経路を通じた核種移行と、人間活動により核種移行が影響を受けるシナリオで構成される。

“what if?”ケース

  • 処分システムの頑健性を試験するために設定される評価ケースであり、科学的な証拠により裏づけされる可能性の範囲外にある特定の仮定あるいはパラメータ値が採用される。
  • 網羅性を目指すものではなく、安全機能に影響が高い要素に対する擾乱の影響を試験する評価ケースに限定される。

設計及びシステムのオプション

  • レファレンスシナリオや代替シナリオと異なり、関連する不確実性が処分の実施者により制御されるシナリオである。例えば、代替設計として考えられる銅製キャニスタの使用や将来的な廃棄物量の増大、廃棄物の仕様の変更といった変化に対応するための柔軟性の立証のために実施される。
  • オパリナス・クレイの安全評価では、材料選定などの設計関連の不確実性は廃棄物管理計画の影響を多分に受けることから、設計関連オプションとしてその他の不確実性とは分けて取り扱っている。

生物圏の不確実性よって生じうる影響の例証

  • 将来の地表環境及び人間活動については特に大きな不確実性があり、その不確実性の記述が非常に推測的(speculative)なものとなることから設定された評価ケースである。
  • 人工バリアや地圏に関わる不確実性とは別に、レファレンスケースのニアフィールドと地圏の概念及びパラメータに対して計算された放出速度を用いて、信頼性が広範な生物圏状況の解析により評価されている。
  • 地表環境に影響する不確実性は、生物圏と将来の人間活動に関する不確実性であり、国際的合意に従う様式化された概念を定義し決定論的評価ケースにより取り扱っている。


モデル

(1) レファレンスモデルチェイン

ニアフィールドから生物圏までを対象とした解析コードであり、レファレンスケース及びその他の大部分のケースがこのコードで計算された。

  1. STMANコード群:廃棄体からの核種放出、人工バリアを通過する核種の移行及び地圏への放出を表現するモデル
    • SPENT:使用済燃料(SF)に適用
    • STRENG:ガラス固化体(HLW)に適用
    • STALLION:長半減期中レベル放射性廃棄物(ILW)に適用
  2. 地圏解析コード PICNIC
  3. 生物圏コード TAME

(2) 代替解析コード

Super-FEP(安全評価において特に重要性の高いFEP)では安全性に関連する側面を取り扱えない場合や、科学的理解の上で現状排除することが出来ないにもかかわらず有意な影響を与える仮定を盛り込むことが出来ない場合に、レファレンスモデルチェインの代替モデルとして以下の解析コードが使用されている。

  1. 移行コード FRAC3DVS
  2. ガス移行モデル Gas Model

(3) 確率論的コード

いくつかのパラメータが同時に変化する場合の影響を包括的に検討するために、確率論的感度解析がレファレンスモデルチェインを用いて実施されている。確率密度関数あるいは公式に従ったパラメータを発生し、STMAN等のレファレンスモデルチェインの入力ファイルを自動的に作成する汎用の一般入力処理コードGIPCが使用されている。


不確実性の取り扱い

オパリナス・クレイの安全評価では、材料選定などの設計関連の不確実性は廃棄物管理計画の影響を多分に受けることから、設計に関連する不確実性は、設計関連オプションとして他の不確実性とは別に取り扱われている。

処分システムとその変遷に影響を及ぼす可能性がある不確実性は、処分システムとその変遷に影響するFEPsの理解および変遷を生じる可能性がある経路の概念化において特定される。特定された不確実性は、処分場の安全性の観点から、

  • 安全性に対する影響度合い
  • 事象およびプロセスの発生頻度、信頼性

をもとに判断され、安全性に対する影響が小さい不確実性や発生頻度、信頼性が小さい不確実性はその後の解析で考慮されないか、可能性の範囲外の過程をおく“what if?ケース”に含めて検討されている。安全性に対し影響が大きく、発生可能性や信頼性が高い不確実性は、次の2つの不確実性である。

  • バリアシステムに影響を及ぼす安全性関連の不確実性
  • 地表環境に影響する不確実性

バリアシステムに影響する安全性関連の不確実性については、

  • 科学的に信頼できるモデル、データ、検証済みの解析コードによる影響の定量化
  • 不確実性の回避もしくは低減

について判断され、どちらかが可能な場合には線量評価の評価ケースに組み込まれる。不確実性の定量化が困難で不確実性の回避もしくは低減が可能でない場合には、不確実性は悲観的もしくは保守的な仮定、パラメータを設定することにより取り扱われている。保守的な仮定、設定には、処分システムのロバスト性を示すために安全性に対し有利なFEPsをあえてシナリオや計算ケースに組み込まず除外する留保FEPsが存在する。また、地表環境に影響する不確実性は、生物圏と将来の人間活動に関する不確実性であり、国際的合意に従う様式化された概念を定義し決定論的評価ケースを適用することにより取り扱っている。




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